ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争㊶

「そろそろクエルプランちゃんを呼ぶか」

「そう言えばランスも呼ばなかったわよね。クエルプラン様を」

「うむ…中々レベルが上がらんからな」

 ランスも早くレベルを上げたいが、今のランスのレベルを考えるとランスの素質をもってしても中々レベルが上がらない。

 クエルプランから貰った腕輪が有るので、モンスターを倒した時の経験値は増えているようだが、流石にレベルが100を超えると必要な経験値が多くなる。

 そうするとどうしてもレベルが上がりにくくなるのは当然だ。

 ランスにも色々とあり、本来はレベルアップが早いはずなのだが中々上がらない。

 ただ、レベルダウンが起こらない程には経験値を稼いでいるのも事実だ。

「という訳で、クエルプランちゃん!」

 ランスが合図をすると、眩い光と共にレベル神の役割としているクエルプランが現れる。

「お久しぶりですね、ランス。レベルアップですね」

「うむ、最近戦いっぱなしだったからな」

「ええ、ではレベルアップをしましょう」

 クエルプランはそう言って呪文を唱える。

「ランスのレベルは109になりました」

「おお! 後1でご褒美だな!」

「レンはレベル116になりました」

「ありがとう御座います、クエルプラン様」

「スラルはレベル91になりました」

「我も100に近いが…限界レベルは本当にいくつなのだろうか…」

「ジルはレベル72になりました」

「そんなに上がったのですね…」

「レベルアップは終了です。それとランス…」

「何だ、クエルプランちゃん」

 ランスを真っ直ぐに見据えながらも、何を話せば良いのか分からないという感じで口ごもっている。

 が、意を決して彼女は口を開く。

 同時にランス以外の者の姿が消える。

「ありゃ? レン達はどうした」

「これは貴方との会話ですので、2人だけにさせて貰いました」

「む、そうか。で、何の用だ」

「…ランスは何を望みますか?」

「決まってるだろうが! それは勿論クエルプランちゃんとセ…」

 クエルプランとセックスしたいと言いかけてランスは言葉を止める。

「いや、ちょっと待て」

「…は、はい。構いませんが」

 ランスが望んでいるのは自分との性交、それは当然彼女も分かっている。

 それを一級神である自分にも隠そうともしない。

 本来であればそんな無礼な存在は塵とするところだが、クエルプランには何故かそんな事をしようとは思いもしなかった。

 それどころか、その言葉を待っているような自分に困惑さえしていた。

「………なあ、クエルプランちゃん。それの望みを増やす事は出来るか」

「…は?」

「俺様はクエルプランちゃんとセックスがしたい! が、その前に何とかしなければならん奴が居る」

「え、ええ…そ、それは…」

『それは構いませんが』という言葉を何とか飲み込み、クエルプランはランスを見る。

 ランスの顔は結構真面目…真剣な顔で自分を見ている。

「望みを増やすとはどのような事ですか?」

「スラルちゃんの体を何とか出来んか。アイテムとかじゃなくて、スラルちゃんの体だ」

「スラル…元魔王スラルの事ですね」

「うむ、スラルちゃんの肉体はもう無いという話だからな。一応アイテムがあれば何とか出来るが、正直それだけじゃどうにもならん。ジルの事もあるからな」

「そうでしょうね。元魔王スラルはその力に肉体が耐えられませんでした。そして魔王の血に呑みこまれて消滅するはずでしたが…あなたは魔王スラルの魂を助け、今も共に居ます」

 本来であればそういう魂も回収し、本来のあるべきところに管理するのがクエルプランの仕事だが、ランスの周囲に対する事は特例として干渉しないのが大原則だ。

 クエルプランはレベル神という神の業務としてランスの担当をしているので唯一の例外と言える状況だ。

「ずばり言おう。スラルちゃんの体を作れんか」

「それが…あなたの願いですか」

「うむ。レベルは上げれば何とかなるが、スラルちゃんはどうにもならんからな」

「………そうですか」

 ランスの言葉にクエルプランは考える。

(…ALICEは人間の事を嘲笑っていました。法王特典に関しても、歴代の法王は全て自分の欲望のために使っていたと)

 そう言ってALICEは人間がいかに下らないかを自分に話して来た。

 クエルプランはそんな話に興味も無かったが、人間とはそんなものだとも思っていた。

 そういう風に作られたのだから、そうするのが当然だと結論付けていた。

(ランスだけが特別な訳では無いのでしょう。でも、ランスは私との事よりもスラルを優先した…)

 願いを他人のために使う、そんなのはある意味馬鹿げだ事だと思っていた。

 ただ、ランスは常に女の為にそういう事をする事を躊躇わない。

「…そうですね。ただ、スラルは元魔王、私の権限でそうした事を決める事は出来ません」

「クエルプランちゃんでもどうにもならんのか」

「本来私にはそういった権限は無いのです。ですが、レベル神の特典としてそれを望むのであれば考える必要があります」

「出来るのか?」

「約束は出来ません。私としては構わないとは思いますが、管轄違いの事で私が出しゃばるのも筋違いです。ですので考える時間を下さい」

「それは構わんぞ」

「それでは…」

「あ、待てクエルプランちゃん」

 消えようとするクエルプランをランスが呼び止める。

「何ですか?」

「俺様が渡したバランスブレイカー…クエルプランちゃんが使ってるのか」

「え? え、ええ…人間からの贈呈品を身に着けているレベル神は珍しくないそうですから」

 ランスから贈られたバランスブレイカー…これがどういう効果を持つかは知らないし興味も無かった。

 ただ、それをシステム神に見せた結果『あなたが身に着けても問題無いですよ』と言われた。

 だから戯れかもしれないが、ランスから贈られたこの指輪をクエルプランは身に着けた。

 勿論神であるクエルプランにバランスブレイカーの効果など発揮しない。

 ただ、システム神がクエルプランが指を身に着けるのを見て意味深な笑みをしていたのが気になった。

「では私はこれで」

 そう言ってクエルプランの姿が消えると共に、眩い光が収まっていく。

「レベルアップは終わったわね。準備だけはしてましょうか」

 レンが何事も無かったかのようにランスに向けて話してくる。

(うーむ、クエルプランちゃんはやっぱり俺様とだけ話したかったという事か? 可愛い所もあるな)

 ランスは内心でそんな事を考えているが、直ぐにジルに視線を移す。

 そしてそのままその頭をポンポンと撫でる。

「ラ、ランス様?」

「あ、今はジルか。やっぱり外見だけじゃ分からんな。ややこしい」

「…お前は我にこんな事をする気だったのか? いや、昔からそういう奴だったが」

 スラルは不満そうな目でランスを睨む。

(やっぱりあの時の内容を知ってるのはクエルプランちゃんだけか。まあそれならそれでいいか)

 何だかんだ言っても体が無くて困っているのはスラルだ。

 ランスもスラル本人とセックス出来ないのは不満だし、何よりもランスはスラルとの約束を完璧には果たせていなかったのだ。

 一応IPボディでスラルの肉体は復活したと思っていたが、やはりアイテムはアイテムなのだ。

「スラルちゃん。やっぱりまだジルの体からは離れられんのか?」

「何だ突然? まあ我無しでも今のジルならばやっていけるとは思う。もう少し肉体の成長は必要だとは思うが、日常生活に関しては問題無いレベルにはなってきているとは思う」

「でもスラルちゃんはジルの体から出て来んな」

「あくまでも我の予測の範囲内でしか無いからな。何しろ魔王の力の残滓だ。いかにジルが魔王の後継者であったとしても、やはり魔王の力は絶大だ」

「じゃあまだジルの中か?」

「予防線は張るべきだ。不測の事態になるリスクは避けるべきだし、万が一が起きた時は恐らくはお前でも対処は難しいだろう」

 スラルはあくまでも慎重な姿勢を崩さない。

 そんな所も彼女らしいところだが、勿論ランスはそれに対しては不満だ。

「早く体をどうにかせんとな。このままじゃ本来のスラルちゃんとセックスが出来んからな」

「…全く、お前は昔から同じ事を言う。一応IPボディが有るから、ジルが落ち着けば我はそこに戻ればいい」

「それ以外に何かあるかもしれんだろう。ま、少し待ってろ。俺様が何とかしてやる」

「そうだな。お前がそう言うのならば期待しておこう」

 そう言ってスラルは笑う。

「それよりも来るわよ」

 2人の会話が終わった時、空から黒い鱗を持ったドラゴンが降りてくる。

「よう!」

「随分遅かったじゃない。闘将を闘神都市Σに送るだけだったでしょ」

「魔軍の連中が襲ってきてな。ムカつくからそいつらを蹴散らして来た」

「あんたね…まあ私達が言う事じゃないけど」

 カインの言葉にレンは呆れた声を出すが、それをカインに言ってもどうしようもない。

「それよりもとっとと闘神都市…なんつったか?」

「闘神都市Θです。ランス様」

「それだそれ。そこに行くぞ」

「突然だな。まあ構わねえけどよ」

 カインとしては魔軍と戦えるのだから何も問題は無い。

「またノスでも現れたか?」

「いや、ノスじゃ無い。どうやら魔人バークスハムが現れたらしい」

「バークスハム…知らねえな。つっても俺が知ってる魔人ってのはカミーラとノスくらいしかいねえしな」

 古のドラゴンであり、記憶が魔王アベル時代で止まっていたカインには魔人がどうなっているのか知る由も無い。

 昔…魔人に無敵結界が無い時代にはドラゴンと魔人は争っていたし、カインも魔人と何度も戦った。

「魔人筆頭、つまりは今現在においての魔人の最上位クラスの存在だ」

「ほぅ…面白そうじゃねえかって言いてえけどよ、無敵結界があるなら徒労なんだよな」

 今でもカインは無敵結界に慣れない。

 それは今でもカインがドラゴンの本能を持ち続けているからに他ならない。

「それよりもとっとと行くぞ」

「おうよ! 行くぜ! 闘神都市に!」

 

 

 

 闘神都市Θ―――

「ぐっ…」

 闘神Θは地に膝をつけていた。

 もしこれが生身ならば荒い息をついていただろう。

「これが…魔人筆頭の力か」

「いいえ、これは別に私が特別に強いという訳では無い。事実、ノスが本気ならばこの闘神都市はとうに地に落ちている。それはそちらも理解しているだろう」

「………」

 バークスハムの言葉にΘは何も答えられない。

 Θがノスと戦えたのはノスが言葉通り遊んでいたからだ。

 そうでなければノスは魔法を使って確実に闘神Θを倒していただろう。

 あくまでも己の肉体だけで闘神Θを倒す事に拘ったからこそ、闘神Θは今でも生きていられたに過ぎない。

 そして本来であれば、ノスとの戦いの途中でレキシントンによってコアを破壊され、闘神都市Θはとうに完全に破壊されていたはずだ。

 つまりはこれが魔人の上位陣の本来の力なのだ。

「まあノスの事はどうでもいい。だが…少々拍子抜けだ。もう少し食いついて貰えると思ったのだがな」

「…まだ私は倒れていない」

 闘神Θは立ち上がる。

 体に疲れは無いが、精神の疲労は避けられない。

 だが、それでも闘神Θは立ち上がった。

 自分が闘神になったのは、魔王と魔人の支配から人類を解放するため。

 そのためには魔人筆頭が相手だろうが、引き下がる訳にはいかないのだ。

「無駄だ。君では私には勝てない。例え無敵結界がなくとも」

「かもしれないな。でも、私もここでただ倒れる訳にはいかない」

「無駄だと分かってもいても立ち向かってくる…これもまた人間というものだな」

(だが、私の攻撃はこいつには当たらない。相手の剣なら何とか出来るが、魔法を使われればどうしようもない)

 闘神Θの攻撃はバークスハムには当たらなかった。

 これはバークスハムが無敵結界を使ったからではなく、純粋に闘神Θの攻撃を完璧に回避したという事を意味していた。

 魔人がそんな事をする意味は無いのだが、それを容易くやってのけるのが魔人筆頭なのかもしれない。

「聖魔教団は…負けない」

「何処にでもあるセリフだ。ただ…私の目的は君ではあるが、まだ倒すには早い…と思っていたのだが、どうやら私の目的の者が来たようだ」

 バークスハムはそう言って空を見上げる。

 闘神Θもそれにつられて空を見上げるが、そこには一体のドラゴンが居た。

 そのドラゴンは闘神都市Θに着地すると、その背からランス達が降りてくる。

「がはははは! 来てやったぞ!」

「ランス! それに皆も!」

 ドラゴンから降りてきたランス一行を見てルシラは嬉しそうに声を出す。

「ようやく来ましたか。いえ、いつ来るかは分からなかったが、必ずここに来ると思っていた」

「フン、男なんぞ見たくも無いが、ルシラがピンチだったからな。ついでにお前もぶっ殺してやる」

「魔人をついでと言ったか。だがそんな事はどうでもいい事」

 バークスハムはそう言って笑う。

 そしてバークスハムから魔人の気配が濃厚になる。

「クッ…今までは様子見…いや、言葉通り遊んでいたという事か」

「ええ。そして久しぶりだ、人間達」

 バークスハムはランスを見て笑みを浮かべる。

「フン、貴様なんぞ覚えてもおらんわ」

「でしょうね。ですがそんな事はどうでもいい。私の目的はお前達だ」

 そしてその猛烈な魔人の気配をランスに向ける。

 それを感じ取り、流石のランスもバークスハムの魔人としての気配に驚く。

(前はこんな感じなかったな。シルキィも言ってたが、あの時は本気じゃ無かったというのは本当だったか)

 シルキィを助けに魔王城へと潜入した時、バークスハムとぶつかった事はシルキィにも話した。

 その時の事をシルキィは苦い顔をして聞いていた。

『それ、バークスハムは本気じゃ無かったわね。間違いなくわざとランス君達をガイ様の所に通したわね。その後の事ももしかしたら計算ずくだったのかもしれないわ。だってバークスハムだもの』

「さて…どれ程強くなったか、改めて確かめさせてもらいましょう。無敵結界などというものは使わない。遠慮なく来るがいい…お前達全員で」

「無敵結界を使わないか。随分と余裕だな、魔人筆頭」

 スラルの言葉にバークスハムは笑う。

「そう、余裕だ。それが魔人筆頭としての力」

「いい気になるのもここまでだ! 死ねーーーーーーっ!!!」

 余裕の笑みを浮かべるバークスハムに対してランスは斬りかかる。

 相変わらずその動きは素早く、常人が捉えられるスピードではない。

 それでいてランスの剣は非常に独特で受けにくく、更にはその技能もあって防御するのも困難という剣だ。

 ランスが振り下ろした剣をバークスハムは軽く避ける。

 勿論相手は魔人、それ自体はそこまで驚く事では無い。

 ランスもそれを織り込み済みで、返す刃でバークスハムに斬りつける。

 バークスハムはその一撃を自分の剣で防ぎ、ランスとバークスハムは間近で顔を突き合わせる形になる。

「成程、前よりも高まっている。ガイ様の行動は正しかったという事か」

「何を訳の分からん事をいってやがる! とっとと死ね!」

 ランスは力でバークスハムを襲おうとするが、その行動に対してバークスハムは笑って見せる。

 逆に力でランスを押し返す。

「う、うおおおお!?」

「私は魔人なのですよ。力で人間が敵う訳無いでしょう」

 そう言ってバークスハムはランスを弾き飛ばす。

「チッ!」

 ランスは舌打ちして体勢を立て直し再びバークスハムに向かって行く。

「ランス! 加勢する!」

「上等じゃねえか!」

 そしてブリティシュと黒部も同時にバークスハムへと向かって行く。

「来るがいい。そして味わうがいい、魔人筆頭の力を」

 バークスハムはブリティシュの剣を弾き、黒部の拳をその腕で受け止める。

「何だと!?」

「言ったでしょう。私は魔人、人の姿に見えてもその力は人を遥かに超えている。あなたならばそれが分かっていたでしょう? 魔人ザビエルと戦った妖怪王ならば」

「てめえ!」

 魔人ザビエルの名前が出た事で黒部は怒るが、バークスハムはそんなのは知った事では無いと言わんばかりに黒部を弾き飛ばした。

「ファイヤーレーザー!」

「ライトニングレーザー!」

「無駄だ」

 ジルとメイが放った魔法もバークスハムのバリアによって弾かれる。

 それを見て闘神Θは茫然と呟く。

「同じだ…」

「同じ? 何が同じだってんだ!」

 闘神Θを守る様に近くに居るカインもまたバークスハムの動きには驚いていた。

 カインもまた魔王ククルククルの時代では多くの魔人と戦って来た猛者だ。

 そのカインから見てもバークスハムは確かに強い奴なのは間違い無かった。

「まるで全ての攻撃を予知しているかのような動きだ。私の拳もバークスハムには一度も当たらなかった」

「どういう事だよ」

「信じがたいが、バークスハムは未来を予知しているとしか思えない動きをしている。だからこそ、ランス達がどう動くか、そしてどの順番にぶつかって来るか、全てを分かった上で対処をしているとしか思えない。一対一ならばともかく、多対一であれほどに完璧に防御できるなどありえない。ましてやランス達を相手に」

 魔人と何体も戦っているΘだからこそ分かる。

 魔人とは理不尽な存在だが、魔人四天王のノスと魔人筆頭のバークスハムはまさにレベルが違う。

 ノスはその肉体という点で非常に理不尽な存在だ。

 バークスハムはその存在自体が理不尽な存在となっている。

 何よりも、バークスハムは闘神を相手に遊んでいない。

(今だから分かる…この魔人はランス達を待っていたんだ。理由は分からない…だからこそ、私を殺せるのに殺さなかった…)

 今の闘神都市Θは正直言えばもう陥落寸前だった。

 魔人ノスの襲撃で闘神を守るはずの闘将達は倒され、次に魔人が襲ってきたらもう落ちるのは目に見えていた。

 その状況で魔人筆頭が襲って来たのだから、ルシラも当然もう終わると覚悟していた。

 だが、バークスハムはそれでも闘神都市Θを落とさなかったのに理由が有るのは分かっていたが、まさかランスを待っているとは想像もしていない。

(バークスハムは間違いなくランス達を知っている…だが、一体何故だ? 何故ランス達を待つ必要がある?)

「さて…今度はこちらから行きましょうか。白色破壊光線」

 そしてバークスハムは闘神Θに向かって強烈な魔法を放つ。

「レン!」

「分かってるわよ!」

 ジル―――いや、スラルとレンが闘神Θの前に立ち魔法バリアでその魔法を防ぐ。

「くっ!」

「強い…!」

 何とか白色破壊光線を防ぐが、その魔力には冷や汗を流す。

「防ぎますか。流石は元魔王、その血は今でもまだ健在という事ですか」

 バークスハムはジルを見て笑う。

 それは嘲りでなどではなく、純粋に感心したような笑みだ。

「元魔王?」

 だが、その言葉に闘神Θの言葉が硬くなる。

「知らなくても当然。その少女は元魔王…魔王ジル本人です。と、言ってももう魔王でも何でもない只の人間ですが」

「!」

 バークスハムの言葉に闘神Θ―――ルシラはジルを見る。

「魔王だったと言われても、私にとっては記憶に無い事です」

「ええ、それは間違い無いでしょうね。あなたと魔王ジルは全く別の存在、あなたに魔王としての力と能力が有る訳でも無い。だが、その器は間違い無い様だ。今でも膨大な魔力を持っている」

「別に元魔王だからと言ってジルに魔力がある訳では無い。これも全てジル本人の才能であり、そこには魔王と何も関係無い。今更そんな言葉を口にするとは、魔人筆頭と言う割には品が無いな」

「ええ、それは間違いありません。例えあなたがジルの体の中でその血を押さえているとしてもね」

 スラルはバークスハムを睨む。

 全てを見通しているかのような言葉にスラルも不愉快になる。

「フッ」

 その時、気配を完全に殺していたランスがバークスハムの背後から完全な不意打ちを仕掛けた。

 が、バークスハムはそれを完全に理解していたかのようにランスの剣を躱す。

「むっ!」

「見えていますよ。その程度の動きはね。さあ、もう少し付き合ってもらいましょうか」

 そう言ってバークスハムは何処までも余裕の笑みを浮かべていた。

 




ようやく落ち着いたのでスピードを少し上げれればいいなあと
バークスハムは魔人筆頭なので非常に強いと思っています
それこそノスが暗殺を企てるくらいに厄介な存在だったのでしょう
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