ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争㊷

「チッ、やり難い奴だな」

魔人バークスハムはランスを完全に手玉に取っていた。

「あなたが分かりやすいのでしょう。ただ、その剣の腕だけは理解が出来ない。それでも私には通用しないが」

余裕の笑みを浮かべてバークスハムはランスを見る。

「ランスの剣を完全に防いでいる。ランスの剣はケッセルリンクでも剣だけで防ぐなど出来ないのだがな…だが、奴はどういうカラクリかは分からないが、完全にランスの剣を見切っている」

スラルはランスの剣を知っているからこそ良く分かる。

「でもあの魔人の剣の腕は相当だ。それこそ技術だけなら僕と同じくらいだと思う。勿論、それがランスの剣を防げるという事にはならないんだけどね…」

ブリティシュもランスと共にバークスハムに斬りかかったが、簡単にいなされてしまった。

魔人としての肉体の強度さを抜きにしても、バークスハムという存在が非常に強い。

剣と魔法を高水準に使いこなすという実にシンプルな力を持っている。

「…だが、バークスハムには何らかの力がある。それは間違い無い。戦っていた私が良く分かる」

「ルシラ…何か分かったの?」

ジルの言葉にルシラは頷く。

「ああ…私の攻撃はバークスハムには当たらなかった。当たっても効果は無いのだが、それでもバークスハムはあえて私の攻撃を躱していた。そして私はバークスハムの攻撃を避けられなかった…」

「ノスの攻撃を完全に見切っていたいたあなたが?」

「それでもだ。バークスハムには魔人としてのまだ隠れている力があるのは間違い無い」

ルシラはそう言って何とか立ち上がる。

闘神ボディが悲鳴を上げているが、それでもまだ倒れる訳にはいかない。

「まだ私は戦える。魔人を倒すために闘神となった私がこんな所で倒れる訳にはいかない」

「ルシラ…」

「ジル、お前がどんな存在だろうとも、私はお前の友達のつもりだ。隠し事があったとしても、人には言いたくない事くらい一つや二つもあるものだ」

「突然どうしたの?」

「恐らくは私もこれで終わりだろう。もうこの体が悲鳴を上げている…だが、唯では死なないさ。魔人を道連れにしてでも倒して見せる!」

そう言ってルシラは最後の力を振り絞りバークスハムに向かってく。

「ルシラ…」

「私はジルの側を離れられないからね。任せるわよ、ブリティシュ」

「ああ。僕だって魔人相手に退く気は一切ない!」

ブリティシュもそう言ってバークスハムに向かって行く。

「魔人筆頭が相手じゃランスも分が悪い。何よりも、あの魔人は厄介な存在だ。私達では気づいていない何らかの力を持っていてもおかしくはない。それに無敵結界だっていざとなれば躊躇いなく使うと見ていい」

今は確かに無敵結界を使っていないが、もし命の危機が迫っているとなれば平気で無敵結界を使うだろう。

カミーラやレイのようにランスと対等に戦うために無敵結界を使わないのではない。

あくまでもランスの力を試すために無敵結界を使っていないだけだ。

「ジル、レン、俺も迂闊には動けない。下手に動けば俺ですら足手纏いになるからな」

「そうね。アンタも強いけど、流石にあそこに割って入るのは厳しいでしょうね。迂闊な動きをしたら私だって守り切れない。それくらい強い相手よ。それにノスと違って戦いを楽しんでいる訳でも無い」

「だからこそ不気味だな。一体何を考えているか分からない、そんな相手だ」

バークスハムはランスとブリティシュ、そして闘神Θを相手に互角以上に渡り合っている。

剣と魔法を駆使し三人を手玉に取っている。

(純粋な剣の腕は恐らくはランスが上…だが、それでもバークスハムはあの三人を相手に無敵結界を使わずに立ち回っている。だが、その理由は何だ? バークスハムに何の得がある?)

スラルからすればバークスハムは異質な魔人だ。

少なくとも、スラルが知っている魔人の中にあのような立ち振る舞いをするような奴は存在しなかった。

「とっとと死ねーーーーーっ!」

「いい剣だ。剣だけならば魔人をも凌ぐだろう。だが、それでも魔人には勝てない」

ランスの剣をバークスハムは己の剣で受け止める。

そこを狙ってブリティシュとルシラが向かって行くが、それを完全に予測していたようにバリアでブリティシュとルシラの二人を弾く。

「ガイ様が認めた剣、改めて受けさせてもらおうか」

バークスハムはそのままランスに斬りかかる。

「フン! 俺様に勝てると思っているのか!」

「魔人に勝てると思っているその思い上がり、どこからくるのですかね」

ランスを挑発するようにバークスハムは嘲笑する。

当然そんな扱いをされたランスは怒る。

そしてその怒りこそがランスの力の一部なのは決して間違ってはいない。

その証拠に、ランスはバークスハムの剣を力づくで弾き飛ばした。

「ほう」

自分を弾き飛ばしたランスの腕力にバークスハムは感嘆の声を上げる。

単純な腕力だけで人間が魔人に敵う訳が無い。

バークスハム自身も剣を使う魔人だからこそ分かる、ランスは腕力だけでなく技術も使いバークスハムを弾き飛ばしたのだ。

一瞬自分の剣に力が入らなくなったのは恐らくはランスが何かをしたからだろう。

その技術そのものは自分には分からないが、それでもそれがランスの技量なのは理解出来た。

「死ねーーーーーっ!」

矢継に放たれるランスの剣だが、バークスハムはそれを避け、時には剣で弾いて一撃も受けない。

「いい腕だ。だが、まだ経験不足という所か」

「やかましい!」

再びランスとバークスハムの剣が交わる。

2人は至近距離で睨み合う形になる。

ただ、ランスは両手で剣を握っているのに対し、バークスハムは片手でランスの剣を押さえている。

それこそが魔人と人間の基礎能力の大きな違いだ。

「人間ならば仕方の無い事」

バークスハムは開いている手でランスの喉元を掴むと、ブリティシュに向かってランスを投げ飛ばした。

「くっ!」

何とかランスを受け止める。

その衝撃で息が詰まるが、それでもブリティシュは平気な顔でバークスハムを睨む。

「成程、ランスという人間だけでは無い様だ。しかし、それでも私には勝てぬよ」

「バークスハム。貴様の真意は何処に有る?」

余裕を見せるバークスハムにスラルは訝し気な顔をする。

「言ったでしょう。私の目的はあなた方だと。勿論この闘神都市を落とす事も目的だが」

相変わらず底を見せないバークスハムにスラルは目を細める。

この手のタイプは非常に読みにくいが、それでも朧気ではあるが掴めてきた。

(この闘神都市を落とすのは目的なのは間違い無い。だが、何故それにランスを巻き込む必要がある?)

スラルは最初からバークスハムの行動を疑問に思っていた。

この魔人はこれまでランスと戦って来た魔人とは根本的に違う。

カミーラやレイ、そしてレキシントンやバボラのように純粋にランスと戦いたい魔人とも違う。

魔人筆頭として、非常に合理的に物事を進めようとしてくるタイプだとスラルは感じていた。

魔人としては珍しい性格なのかもしれないが、そもそも魔人は入れ替わりというのが基本的に無いのだ。

変化に乏しいのが魔人の特徴でもある。

(別に合理的な魔人が居てもおかしく無いが、何故こいつはこんな面倒な事をする?)

闘神都市Θを落とそうと思えばランス達が来る前に落とせていただろう。

バークスハムは魔法にも長けた魔人なので、いくら闘神や闘将だろうとも無敵結界のあるバークスハムには手も足も出ない。

「…強いわね。流石に魔人筆頭と言われるだけはあるわ」

「レン。お前が参加しても無理か?」

「難しいわね。結局は魔人の再生能力の前にはジリ貧だと思う。正直私も下手に動けない」

「お前がそこまで言うか…」

レンの言葉にスラルは唇を歪める。

バークスハムは剣も魔法も全てにおいて高レベルに使いこなすという魔人だ。

それがここまで厄介だとはスラルも想像もしていなかった。

これまでの魔人も特殊能力に長けた奴が多いと感じていたが、バークスハムはそうではなく普通に剣と魔法が高レベルに長けている。

しかもバークスハムは人間を見下してはいない。

なのでランスですらも付け入る隙を見つけられていないのだ。

「ランス! 同時に行く!」

「チッ! 足手纏いになるなよ!」

ブリティシュの言葉には流石のランスも文句を言わない。

それくらいの強敵である事をランスも十分に理解しているからだ。

ブリティシュが前に、そしてその後ろからランスが続く。

「来たまえ。強き人間達よ」

バークスハムはそう言って笑い、2人を迎え撃つ。

そしてブリティシュの剣を受け止め、

「雷の矢」

ランスに対しては魔法を放つ。

魔法は絶対命中なのでランスに直撃する。

が、ランスにはシルキィが作った防具があるので例え魔人の放った魔法だろうと、初級魔法ならばそれだけで倒れるという事は無い。

ランスは痛みを無視し、ブリティシュとは反対方向からバークスハムに剣を向ける。

しかしランスの剣はバークスハムに弾かれる。

「む!?」

「無敵結界ではない。これは只のバリア…魔法バリアだよ」

「そんなものが俺様の役に立つか!」

ランスは全く怯む事無くバークスハムに剣を向ける。

「ぶっ潰す! 鬼畜アターーーーーーック!!!」

ランスアタックを連発するというランスのもう一つの必殺技。

それは避ける事も難しい強烈な必殺技だ。

「ほう!」

バークスハムは自分の予想外の必殺技に驚くと同時に感心する。

(流石にこれは…防げぬか)

未来が視えるとされているバークスハムだろうとも、その体はやはり魔人という存在なのだ。

神のような理不尽な事が出来る訳では無い。

ランスの鬼畜アタックは来ることが分かっていても防ぐ事は難しいのだ。

鬼畜アタックはバークスハムに当たり、その体からは血が噴き出る。

無敵結界を使っていても、ランスの剣は無敵結界を無視して魔人を傷つける事が出来る。

「成程、確かに傷つけられるようだ。だがそれだけではまだ甘い」

バークスハムは己の体が傷つけられた事など意にも介さずにランスに斬りかかる。

「格下の魔人にならば通用するかもしれないが、そんなものは私には通用しない」

バークスハムの剣をランスは防ぐが、やはりそこは魔人の力。

その圧倒的な力でランスの防御を崩すと、その剣がランスの脇腹に突き刺さる―――と誰もが思ったが、ランスは驚異的なスピードで剣を手放し、残された刀でその剣の軌道をずらした。

だがそれは致命傷を避けたというだけで、ランスの脇腹を深く傷つける。

「ぐっ!」

シルキィの作ったランスの強化服ですらも斬られる。

ランスも致命傷を避けるので手一杯だったのだ。

「ランス! ヒーリング!」

レンがランスに向けて回復魔法を放つ。

バークスハムはそこに追撃をするように剣を振るう。

「やらせん!」

ランスの前にルシラが立ち、バークスハムの剣をその闘神ボディで受け止める。

流石のバークスハムでも闘神ボディは一太刀で破壊する事は出来ず、金属がぶつかる音を立てバークスハムが弾かれる。

「デビルビーム!」

そこにジルの放った魔法がバークスハムを襲う。

だがそれはバークスハムの魔法バリアによって弾かれてしまう。

「まだ甘い。電磁結界!」

「この…! 光の壁!」

バークスハムの魔法をレンが防御魔法で何とかダメージを軽減する。

流石にダメージを無効には出来ず、レン達はダメージを受ける。

「クッ…純粋に魔力が高いという事か…!」

「これが高レベルの魔人の強さ…前に戦った魔人とは格が違う…」

ジルは以前に戦った魔人を思い出すが、その魔人とは何もかもが違う。

本当に高レベルで纏まった純粋な戦士、それが魔人バークスハムだった。

変な特殊能力も無いが、その分付け入る隙が見当たらない冷静な存在、それが魔人バークスハムだ。

「貴様!」

ランスはジルが狙われた事に怒り、バークスハムに斬りかかる。

「ほう!」

そのランスの攻撃にバークスハムは驚愕する。

先程よりも明らかに攻撃の鋭さと威力が上がっている。

何よりもその連撃にはバークスハムですらもその顔から余裕の笑みが消える。

「む…!? これ程とは…!」

「とっとと死ねーーーーっ!」

ランスの剣は受け手にとっては非常に受けにくい不可解な剣だ。

元々我流で剣を編み出しており、特定の師をもたなかった男だ。

だが、ランスの才能はそれを開花させ、世界有数の剣の使い手として名を上げている。

そのランスが神の気紛れにより伝説の才能を持たされた―――が、それでもこの世界の絶対的な法則は破る事は出来ない。

無敵結界という神の法則は技能レベルでどうにかなるものでは無かった。

「うぐ! 貴様…無敵結界を使いおって!」

ランスの刀はバークスハムの無敵結界に弾かれる。

剣は無敵結界を無視出来るが、逆に言えばランスの剣以外で無敵結界を無効にする手段は無いのだ。

ならばバークスハムはランスの剣のみに集中すればいいだけなのだ。

「まさか使わされるとはな…認めよう、お前は剣の腕だけならばこのバークスハムすらも凌駕すると」

バークスハムは改めてランスの異常性を理解した。

かつて主君である魔王ガイと対峙し、ガイすらも傷つけた腕前。

ガイはバークスハムにはランスの事を話していた。

それが何を意味するのか分からないバークスハムではない。

(私が見た光景…それを覆すものがこの人間にあるというのか? いや、セラクロラスによる時間の移動…それが偶然とは思えぬ。ならば、この者が波紋となるというのか?)

バークスハムが視た光景が何なのか、それは誰にも明かされる事は無かった。

だが、彼は近い未来に己の使徒を人間界に放ち、小石にしか過ぎなくとも、波紋を呼ぶことを期待した。

「私は運が良い。まさかこのような可能性に出会えるとは」

「何を訳の分からん事を言ってやがる! とっとと死ね!」

ランスはバークスハムの首を狙うが、バークスハムはそれを剣で防ぐ。

「少々気が変わった」

バークスハムは無敵結界を纏ったまま、ランスの首を掴むとそれを乱暴に投げ飛ばす。

「全力で来るがいい。お前がまだ本気では無い事は分かっている」

「何だ貴様偉そうに言いおって! だったら俺様の本気を見せてやる!」

そう言うとランスの体から黒い電撃が走る。

そして天から雷がランスに向かって落ちると、その雷がランスの周囲に纏わりつく。

その雷はドラゴンの形を取り、そのドラゴンもバークスハムに対して強い眼光を向けているように見える。

「ほぅ…それが今のあなたの本気という訳か。ガイ様が気に掛けるだけの事はある。ジルの事を無しにしても」

バークスハムはそう言って笑う。

それは本当に楽しそうな笑いだが、同時に魔人としての気配が濃厚になる。

そのプレッシャーだけで周囲の人間達は震えが止まらなくなるだろう。

「…これが、魔人筆頭」

これまで魔人とも戦って来たブリティシュもその気配には思わず息を呑む。

それ程までにバークスハムの魔人としての気配は濃厚過ぎた。

(…まさかここまでとは。魔王が魔人筆頭として認めるだけはあるか…魔人だったガイと同じような気配を感じるな)

ランスの剣の中でケッセルリンクもバークスハムの力には驚愕する。

魔人だった頃のガイとは親しくは無かったかが、その力は認めていた。

魔王ジルによって魔人筆頭として認められていた魔人ガイ…そのガイに勝るとも劣らない、そんな異質な気配をバークスハムからは感じ取れた。

「フン、魔人筆頭だろうが何だろうが知った事か!」

電撃を身に纏ったランスがバークスハムに向かって行く。

その速度は正に電撃、これまでのランスよりもより鋭い動きだ。

「とーーーーーーっ!」

ランスの一撃をバークスハムはいとも簡単に避ける。

まるでランスの剣の動きが分かっているかのように、紙一重でランスの剣を躱したのだ。

しかもランスの剣から放たれる電撃の間合いすらも完全に見切っているような動きを見せた。

その動きは完全にランスがどう動くかを理解していないと防げない、そんな早さだったはずだ。

「…間違い無い。あの魔人はランスがどう剣を動かすか分かっている」

それを見て改めてルシラは魔人バークスハムの強さを思い知らされた。

「分かっている? どういう事、ルシラ」

「私も似たような事が出来るが、あの魔人は私のソレを遥かに上回っている。それに剣術の腕前も相当なものだ。私ではランスの動きが分かっていても、避ける事が出来ないだろうからな」

ルシラは自分の攻撃が何故当たらないのか、こうして第三者の目から見て理解した。

そして恐らくはそれこそがバークスハムの能力であるという事も。

「純粋に厄介な魔人という事か。そもそもあの魔人は地力が強い。俺が戦ったマリーゴールドという魔人とは根本から違う。何よりも、人間に対しての油断が無い」

「魔人はランスが日光を持っていても油断をする奴なのだがな…ランスを相手に油断をしないのはカミーラとレイくらいだと思っていたのだがな…」

ランスとずっと一緒に居て、ランスと共に魔人とも戦って来たスラルにはよく分かる。

無敵結界を斬れる日光を持っていても、魔人というのは基本的に人間を見下していた。

ランスと戦って生き残っている魔人や、ランスと共に戦った事のある魔人はランス相手に油断しないだろう。

確かにバークスハムとは一度剣を交えはしたが、まさかここまでランス相手に警戒をしているとは思っても居なかった。

「早い、そして鋭い」

バークスハムは本気で感心してランスと剣を交えている。

ランスの剣は正に常軌を逸している。

魔王ガイも剣の使い手であり、バークスハムもガイの剣の腕前は知っている。

ランスは剣においてはそのガイすらも上回るだろう。

ガイが魔王だからランスは勝てないだけで、もしガイが人間だったなら剣だけならばランスには勝てないだろうと思ってしまうくらいには。

ランスの剣はバークスハムを傷つけてはいるが、小さな傷では魔人相手には有効打にならない。

そしてバークスハムもランスの剣で致命傷を受けないように立ち回っている。

「ええい! またバリアか!」

ランスがバークスハムの隙を突き剣を振るうが、バークスハムの魔法バリアに阻まれる。

剣とバリアを使い、ランス相手にも決定打を作らせない。

ランスとしては非常にやり難い相手だ。

「それが魔人というもの。私は他の魔人とは違う」

「フン! だったら同じようにしてやる!」

雷がランスの剣に纏わりつき、ランスの剣が赤黒い光を放つ。

「ほう…これは!」

ランスの体に纏わりついていたドラゴンを模った雷の右腕を模っていた部分がランスの剣と一体化したのだ。

「死ねーーーーーっ!」

強烈なランスの一撃をバークスハムは受けようとはしない。

その剣がいかなる威力を持っているか、それを完全に見切っていた。

が、バークスハムはランスの実力を見誤っていたのだろう。

それはバークスハムが悪いのではなく、ランスが進化したという事なのだ。

バークスハムがランスの剣を避けると、その避けた方向にドラゴンの爪が襲い掛かったのだ。

「ぐ…!?」

それはバークスハムの脇腹を貫き、そこから電撃が放たれる。

「し、ねええええええええ!」

そしてバークスハムが見たのは、ドラゴンの腕と一体化した左腕で剣ではなく、刀を構えているランスの姿だった。

「!」

バークスハムはそこで悟った。

ランスは一撃必殺に賭けて剣を構えたのでは無かった。

剣ではなく、刀が本命―――バークスハムはそれが予期できなかった。

「新ラーンスアターーーーーック!」

雷を纏ったランスの腕が刀を振るう。

そのままバークスハムの体を通り抜けるように刀を振るっているが、バークスハムにはそれが分からなかった。

だが、その刀は確実にバークスハムの体を傷つけた。

「む、ぐ!」

バークスハムでもランスの剣を完全に避ける事は出来ない。

自分の体が無数に傷つけられるのが分かるが、バークスハムはそれでも剣を構えた。

この一撃は本命ではない事をバークスハムには分かっていたかのように動いた。

そしてランスの剣がバークスハムの頭を狙ったが、それはバークスハムの剣で受け止めた。

「なに!?」

まさか止められると思っていなかったランスは驚く。

「魔人の耐久力を甘く見ているな。確かに私にダメージを与えてはいるが、その程度で私が倒れるとでも思ったか!」

そしてランスの剣を弾き、その体に蹴りを加える。

「終わりだ。ライトボム!」

「ランス様!」

皆が見たのは、バークスハムの放った魔法に包まれるランスの姿だった。

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