ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争㊸

「ランス!」

「ランス様!」

 バークスハムの放った魔法にランスが包まれ爆発が起こる。

 魔人の魔力は人間とはまさに格が違う。

 普通の人間はその一撃で死ぬのが当たり前だ。

 だが―――目の前の男はその当たり前が通用しない人間だという事をバークスハムは知らなかった。

「おおおおおおお!」

 血塗れになりながらも爆発の中からランスが出てくる。

 両手に剣を持ち、バークスハムに向かって突撃していく。

「何!?」

 バークスハムもそれには驚いたのか、一瞬動きが遅れる。

 それでもバークスハムはランスの剣に対応しようとはしていた。

 が、そのバークスハムの対応はランスの前には無意味だった。

「とーーーーーーっ!」

 ランスが剣を振るうと、そこから凄まじい衝撃波が生じる。

 それは雷を含んだ衝撃波となり、バークスハムの体を揺らす。

「む…クッ!」

「死ねーーーーーっ! ラーンスアターーーーック!」

 バランスを崩した所にランスが必殺の一撃を喰らわせる。

 が、バークスハムも魔人筆頭、ランスの剣を己の剣を使って―――いや、剣を犠牲にしてランスアタックをやり過ごした。

 ランスアタックはバークスハムの剣をへし折りながらもバークスハムの肩口に突き刺さる。

 しかし、流石のランスアタックでも魔人の持つ剣と魔人の強度の前には必殺の一撃とはならなかった。

 バークスハムの鎧を砕きながらも肩の部分でランスの剣が止まる。

「なるほど、流石に強い…人間を超えては居るが、それでも魔人には及ばない!」

 ニヤリと笑うバークスハムにはランスも流石に背筋が凍る。

 何とか魔法に耐えて攻撃したが、ここまでやり過ごされるとはランスも思っていなかった。

 これまでの魔人と同じように、油断をしているとランスも思ってしまったのだ。

「デビルビーム!」

「ぐはっ!」

 バークスハムの魔法がランスに突き刺さり、今度こそランスは後方に吹き飛ばされて倒れる。

「ランス!」

 レンがランスに向かって駆けよるが、バークスハムがそれを見て笑う。

 が、それ以上に動こうとはしない。

「野郎!」

「雷撃!」

 ランスが倒されたのを見て、黒部が突撃しお町も電撃を放つ。

 が、お町の雷撃は魔人の持つ無敵結界に弾かれる。

 黒部の爪も同じように無敵結界によって防がれてしまう。

 だが、それでも黒部は退かずにランスの盾になる様にバークスハムの前に立つ。

「しっかりしなさい! ヒーリング!」

「うぐぐ…」

「生きてるか! ランス!」

 重症だと思っていたランスだったが、意外と傷は少ないようだった。

 てっきり肋骨の一本や二本が折れているだろうと思っていたレンだったが、ランスの剣が光っているのを見て察する。

(ケッセルリンクか! 魔法バリアでランスを守ったのか…)

 いくらランスがミスリルで出来た服を身に纏い、ドラゴンの加護というアイテムを持っていたとしても、魔人筆頭であるバークスハムの魔法をまともで受けて無事であるはずが無い。

 ライトボムは何とか耐えたが、デビルビームをまともに受けては危険だとケッセルリンクが干渉したのだろう。

「ほう…気を失いませんでしか。確かに普通の人間では無い、何かがあるようだ」

 バークスハムは感心したように声を出す。

「私の剣も砕けてしまった。中々の業物だったのだが…まあいい。どうせもう終わりなのだからな」

「まだ終わってはいない。私が居る限り、この闘神都市Θは終わらない」

 ルシラは闘神ボディから凄まじい気迫を溢れさせる。

 バークスハムとの戦いで大きく傷を負っても、その精神までは折られていない。

 ブリティシュも戦いは終わっていないと言うかのように、剣と盾を構えて油断なくバークスハムの一挙一動を逃すまいと構えている。

「無敵結界があろうが関係ねぇ。魔人は俺の敵だぜ!」

 黒部の凄まじい気迫を前にしてもバークスハムは笑った。

「いいや、終わりだ。闘神都市は確かに中々良い。しかし、その中心部が壊れては終わりだ」

 その声に呼応するように闘神都市Θが揺れる。

「な…まさか!?」

「ええ。来ていたのは私だけではない。今回は私が闘神の足止めという行為をさせて貰った」

「ば、バカな…魔人がそんな事を」

「チィ! 脱出するぞ! 俺に乗れ!」

「そうはさせない。君達はここでこの闘神都市と共に落ちてもらう」

 バークスハムに呼応するように、何処に隠れていたのか飛行魔物兵―――ではなく、飛行出来る魔物達が闘神都市の周囲を飛び回っていた。

 ドラゴン女、ぱたぱた、V2ベベターなど上位のモンスターも多数いる。

「ケッ! そんな雑魚共でこのオレを止められるとでも思ったか!」

 カインの周囲から電撃が放たれ、その角が青白い光を輝かせる。

「その前にこれをあなたに送りましょう」

 バークスハムはその翼に向けて何かを投げつける。

「チッ! 何だ!?」

「差し押さえの札。簡易的な物ですが、役に立つと思って持って来た甲斐があったようだ。それで少しの間翼は使えまい。では私はこれで失礼」

 そう言ってバークスハムの姿が消えていく。

「転移魔法か!? まさかそんなものまで用意していたとは…!」

「スラルさん! その転移の跡を使って僕達も移動出来ないのか!?」

「無理だ! 仮に移動できたとしても恐らくは行き先は魔王城…死地に飛び込むだけだ!」

 スラルは厳しい顔をして周囲を見るが、モンスターがジワジワと迫って来る。

「ならばどうする! このままだと墜落するぞ!」

 メイも弓を構えながら大声を出す。

 そして肝心のルシラは今の闘神都市の地響きを調べ、

「急いでコアに向かう! 今ならまだ間に合うかもしれない!」

 ランス達に向けて怒鳴る。

「ルシラ! どうにか出来るの!?」

「ああ! まだ闘神都市Θのコアは完全に破壊されてない! そうで無ければこんな均等な姿勢を保ったまま落ちるという事は有りえない! だからコアに魔力を注げば完全な墜落は起きないはずだ!」

「だったらとっとと行け! ここに居る連中はこのオレが始末してやる!」

 カインが空に向かって咆哮を上げると、天から無数の稲妻が落ちてきてモンスター達を蹴散らす。

「やれるのね、カイン!」

「ああ! だからさっさと行け!」

「だってランス! 行くわよ!」

「あだだ…もうちょい優しくしろ! 全く…」

 ランスは痛む胸を押さえながらも立ち上がる。

「おいバカイン! こんな所で死ぬのは許さんぞ!」

「お、何だい。心配してくれんのか? 男の俺を」

「アホ! お前が居なくなったら快適な空の旅が出来なくなるだろうが!」

「言うじゃねえか! だったらとっとと行って止めて来い!」

 カインが電撃ブレスで周囲のモンスターを蹴散らしながら笑う。

「フン! とっとと行くぞお前等!」

「はい! ランス様!」

「私が案内する! 急ぐぞ!」

 ルシラを先頭にして、ランス達は闘神都市Θの内部に入り込んでいく。

 ランスも追おうとするが、ダメージが残って居るのか膝をついてしまう。

「まさかこんな所で寝てる訳じゃねえよな!」

 黒部はランスと肩に担いでニヤリと笑う。

「アホか! この程度で俺様がやられる訳が無いだろうが!」

「それでこそだぜ! 行くぜ! しっかり掴まってろ! ジル、お町、お前達もだ! 俺の方が早いからな!」

 そう言って黒部はジルとお町の3人をそのまま掴んで。

 そしてルシラが向かって行った後を追って走っていく。

 それに続くようにレンとブリティシュとメイも闘神都市の内部に向かって走っていく。

 モンスター達はそんなランス達を無視してカインに向かって行く。

「しゃらくせぇ! お前等みたいな雑魚がこのオレに勝てると思うなよ! 空を飛べなくてもお前等如きにものの数じゃねえって事を教えてやる!」

 カインが天に向かって吠えると、再び天から雷が落ちてそれがカインの角に当たる。

 するとカインの体そのものが青白く輝き、その全身が放電し始める。

「どっからでも来な! 近づく奴は片っ端から灰にしてやる!!」

 

 

 

 闘神都市Θ内部―――

 揺れはそこまで大きくは無いが、それでもゆっくりとだが下降していっているのは分かる。

 今こうしてランス達が走れているのは闘神Θが何とかこの闘神都市を制御しようと必死になっている体。

「ルシラ。まだなの?」

「もう少しだ! クッ…本来は闘神都市のマナバッテリーには闘将の防衛があったはずなのだが…ノスの襲撃で闘将はあらかた倒されてしまったからな」

 ルシラ自身、もうこの闘神都市Θは持たないとは思っていた。

 ノスとの戦いはそれ程熾烈を極めたし、今回のバークスハムの襲撃が無くても何れは落とされるというのは避けられない事実だった。

 それを考え、せめて魔人に一矢報いようと思っていたが、正直魔人筆頭バークスハムの襲撃とその行動はルシラも想像もしていない。

「まさか本当にランス達と闘神都市Θを同時に始末すべく考えていたというのか? あの魔人は」

「そんな訳無いだろうが。ハッタリだハッタリ」

 メイの言葉をランスは否定するが、あの得体の知れない魔人ならば…という思いもあるのも事実だろう。

「それよりも本当に何とか出来るのかい? 僕とランスは魔法を使えないからね…」

 魔法に関しては門外漢のブリティシュも難しい顔をする。

「いや、そうでも無いわよ。どうやら招かれざる客が居るみたいだし」

 レンが剣を抜き、襲い掛かって来る魔物を斬り捨てる。

 倒れたのはマグボール―――ではあるのだが、何故か睫毛が綺麗に生えそろっているという奇妙な姿をしている。

「こいつら…まさか」

 レンはその死体を見て露骨に嫌な顔をする。

「ここだ! ここに闘神都市Θのマナバッテリーがある!」

 ルシラがマナバッテリーが置かれている場所に入ると、そこにはランス達が見覚えがあるモンスター達が待っていた。

「待ちかねたぞ! 人間!」

 そこに立っていたのはショートの銀色の髪をして、眼帯を着けた女の子モンスターであるバトルノートが居た。

「あ、お前は…えーと…何だったか」

「フッ…あれ程熱い戦いをしたのに覚えていないとは残念だ。だが、それもまた良し! しかしこんな所でまでお前達と会えるとは乙女の私はセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない!」

 そこに居たのはバトルノートの突然変異のモンスター、殺姫と名乗るモンスターだ。

 その後ろには同じく突然変異種のモンスターの一団がこちらを見ていた。

「おい、何寝言言ってやがる。お前みたいなのが乙女だったら最強魔女ですら乙女だろ。この脳まで筋肉のバトルノートの風下にも置けない奴がよ」

 そう言ったのはドラゴンナイトの突然変異種のようで、普通は白い鱗に黒い鎧を身に纏っているのだが、このドラゴンナイトは銀色の鱗にJAPAN風の着物を着て何故か木刀を持っている。

「黙れ銀之助。大体お前はレギン大将軍の命令も聞かずにこれまでおかし女のおかしを食って寝てたんだ。少しは働け糖尿病予備軍」

「あっ、それ言っちゃう? でも俺ってさ、やっぱり金時丼食べないと手が震えちゃうんだよね」

「フン、相変わらずの奴だ。それよりも連中がオレが言っていた人間共だ。と、言っても人間でない者も居るようだがな」

 そう言って殺姫は好戦的な笑みを浮かべる。

「それよりも貴様等か。闘神都市Θのマナバッテリーを破壊したのは」

 怒気を放つルシラを前にして殺姫は笑う。

「ああ。それも直ぐに落ちないように手加減をしてまでな。全く、魔人筆頭殿も中々無理難題を仰る。が、こんなモノを壊すよりも闘将を壊す方が楽しかったがな」

 そう言って殺姫は破壊された闘将の頭を見て満足そうな笑みを浮かべる。

「闘将と戦うのも中々楽しい。だが、それよりもオレはお前と戦いたい、ランス。魔人がお前を狙い、それを退けるお前との戦いが何よりの楽しみよ!」

 殺姫はランスに向かって指を突き付ける。

「抱きしめたいな! ランス!」

 そしてこの状況でも平気でランスに向かって行く。

「フン! もっと色っぽい格好をしてから言え!」

 ランスは黒部の肩から降りると、向かってくる殺姫を迎え撃つ。

「生憎とオレは女の子モンスターだからな! この衣装が正装! だからこの服で迎え撃つのがオレの最大の礼儀であり決意!」

 相変わらずの狂喜を感じさせる笑顔でランスに向かって行く。

「そんじゃ俺も少しはやらせてもらおうかね。俺の相手はお前さんがいいな、黒いの」

 銀之助と呼ばれたドラゴンナイトが黒部に向かって木刀を向ける。

「上等じゃねえか! 突然変異だろうが只のモンスターがこの俺に勝てると思うなよ!」

 黒部もまたランス同様に突然変異モンスターとぶつかる。

 それを見てルシラはマナバッテリーに向かう。

 モンスター達はそんなルシラを止める事無く、静観するだけなのが不気味だ。

「ジル! レン! 皆手伝ってくれ!」

「手伝うのは良いが、何をすれば良いのじゃ!」

 揺れはどんどんと大きくなり、このままでは闘神都市Θは墜落する。

 今はまだゆっくりと下降しているが、マナバッテリーが完全に破壊された時はそのまま自由落下で地面に突き刺さるだろう。

 そうすれば内部に居る存在が生きていられる訳が無い。

「マナバッテリーに魔力を送り込んでくれ! そうすれば私が何とか闘神都市Θを地上に不時着させる!」

「モンスターは僕達に任せて、魔法を使える君達は闘神の言う通りにしてくれ!」

 ブリティシュはこちらの行動を見てもまだ動かないモンスター達を警戒しながらマナバッテリーの前に立つ。

「分かったわよ、それしか方法は無いみたいだしね」

「分かりました。私もこんな所でランス様を失う訳にはいきません」

「我の魔力、貸してやる!」

「オレは皆ほどの魔力は無いが、それでも少しは足しにはなるだろう!」

 魔法を使える者達はマナバッテリーに向けて魔力を放つ。

 すると少しだけだが、闘神都市の揺れが収まっていく。

 だが、下降をまでは止められないようで、その場に居る者達に不安定に重力が襲い掛かる。

 そんな事などお構いなしに、ランス達は戦いを繰り広げていた。

「ハハハハハ! やはりお前との戦いは最高だ! 闘将も悪くは無いが、やはりお前の剣は恐ろしいまでの美しさと力を兼ね備えている!」

 ランスの剣が当たれば死ぬのを自覚しながらも殺姫は恍惚の表情を浮かべている。

「この気持ち! まさしく愛だ!」

「うーむ、女に言われれば嬉しいセリフだが、お前に言われても嬉しくない…」

 殺姫は確かに美人なのだが、こうも偏執的な性格だと流石のランスでも微妙な顔をするしかない。

「つれないな、ランス。オレはこんなにもお前に愛を向けているというのに!」

「やかましい! どんな愛だ!」

 ランスは殺姫の拳を剣の腹で受け止め、そのまま右手で素早く刀を抜いて殺姫の首を狙う。

 殺姫は凄まじい速度でランスから離れるが、またすぐさま距離を詰めてランスの剣の間合いの内部に入り込もうとする。

 ランスはそれを阻止するために剣を放つが、殺姫もそれを理解して迂闊な攻め方はして来ない。

「ほー、殺姫が言うだけあって強いじゃねえか。ま、こっちもこっちで大変なんだけどよ」

「ハッ! そんなもんでこの俺を倒そうなんて百年早いぜ!」

 一方の黒部とドラゴンナイトの戦いは、黒部が完全に押している。

「力と力で俺に勝てると思うなよ!」

 黒部に木刀が当たっても、黒部は全く応えた様子は無い。

 魔人ザビエル、魔人レキシントンとも渡り合った黒部にとっては、いかに変異モンスターと言えども敵になりえない。

「ランス! お前の方が手間取ってるじゃねえか!」

「やかましい!」

 黒部の軽口にランスは少しイラついたように答える。

「ランス…間違い無い、さっきの魔人との戦いの傷が完全に癒えていないか。レン、お前でも完全には治せないか」

「神魔法だって万能じゃ無いわよ。間違いなく骨にひびが入っているだろうしね。それよりもルシラ、そっちも早く何とかしなさいよ」

 魔力をマナバッテリーに流しながらレンがランスを気にした様子で横目で見ている。

 そのランスは殺姫の猛攻に少々やり難そうにしている。

 ましてやランスは先程雷竜の力を使ったので、今は急激に腹が減っていて力が入り難い。

「利き腕側を痛めているな? だが、オレはそこを見逃さない。お前だってそうだろう?」

 ランスが左の脇腹―――バークスハムの魔法が直撃した部分を痛めており、剣を本気で握れていないのを見て殺姫は本気でランスを殺しにかかる。

「フン!」

 だが、ランスはそんな殺姫の殺意を鼻で笑う。

 確かに殺姫は強い―――が、あくまでもその戦い方は徒手空拳、魔人のような厄介な能力も無敵結界も無い。

 それくらいなら、ちょっと強いモンスターと戦っているのに過ぎない。

 ランスの脇腹を狙って放たれた拳をランスは剣の柄で受け止める。

「何!?」

 その衝撃に殺姫は態勢を崩される。

 そのまま打ち抜けると思っていたのだが、逆に殺姫の方が弾かれる形になった。

 ランスの剣は普通の剣ではなく、今や世界最高峰の剣へと変化している。

 これまでのランスが繰り広げていた激闘と冒険の結果が剣へと宿っているのだ。

「とーーーーーっ!」

 ランスの刀が殺姫の脇腹を斬り裂く。

 殺姫も十分すぎる程達人と言える腕前を持っているので、それは致命傷にはならない。

 が、それでも一瞬の隙が出来てしまった。

 そしてランスにはその一瞬の隙で十分なのだ。

 殺姫はランスに対して距離を取ろうと後ろに下がる。

 ランスは刀が届かないのを承知の上で刀を高速で抜く。

 凄まじい速度の居合抜きにランスアタックと同様のオーラが乗る事で、殺姫に向かって鋭い切れ味の一撃が飛んでいった。

「ぐ、は!」

 そのオーラを察知した殺姫は避けられない事を悟る。

 だが、殺姫も只者ではなく防御が難しいと判断して、ランスのオーラを打ち消す様に己も拳を放つ。

 そうする事でランスの一撃が若干相殺され、体が両断される程の傷は負わない。

 それでも傷は大きく、胸元が大きく斬られ血が飛び散る。

「殺姫! もう限界だ! 飛ぶぞ!」

 銀之助の言葉にモンスター達は素早く動く。

「魔法陣! 転移魔法か!」

 ルシラはその魔法陣を見て驚く。

 バークスハムが闘神Θと戦っている間に既に脱出用の手段を用意していたのだ。

「それじゃあな。人間達」

「逃がすか!」

 モンスター達が撤退しようと魔法陣が輝いた時、ランスの剣から黒い稲妻が爪の形となって伸びる。

 そして殺姫の足に爪が突き刺さると、そのまま殺姫を引き寄せる。

 ランスはそのまま殺姫の腹部に剣の柄を打ち込むと、殺姫はそのまま呻いて気絶してしまう。

「あっ!」

 ドラゴンナイトが手を伸ばすが、転移魔法は既に発動してしまいモンスター達の姿が消えうせる。

「逃げられたか」

 ブリティシュがモンスターが居なくなったのを戦闘態勢を解く。

「それよりもそっちはどうだ!」

 黒部の言葉にも返事が出来ないくらいに魔法使い達はマナバッテリーに魔力を流し続けている。

「ルシラ。どうなんですか」

「くっ…魔力が足りない…普通ならば闘神都市を浮上させるのにも十分な魔力なのだが…」

 闘神都市Θの主である闘神Θだからこそ分かる。

 今この場に居るのは聖魔教団でも幹部になってもおかしくない魔法使い達が揃っている。

 ルーンは一人で闘神都市を打ち上げる程の魔力を持っていたが、今この場に居る者達でもそれに十分な魔力が供給されているはずなのだ。

「やはりマナバッテリーの破損か…それのせいで正常に働いていないのか」

 ルシラは優れた魔法使いではあるが、闘神都市や闘将を作成できる魔鉄匠ではない。

 マナバッテリーに関しても正直に言えばよく分かっていないというのが本音だ。

 そういう事はフリークや他の魔鉄匠の力を持つ者達の役割だった。

「このままでは…山に墜落する! そうなったら中に居るお前達は全滅だ。それは避けなければならない…」

 ルシラは精神を集中させ闘神都市を動かす事に専念する。

 完全に破壊された訳では無いので、何とか闘神都市を動かす事は出来る。

 だが、そのせいでより揺れが大きくなり、ジル達はバランスを崩しそうになるのを何とか堪えてる。

「せめてもう一人居れば…!」

 ランス達を巻き込む訳にはいかない、その思いでルシラは闘神都市Θを動かすが魔力が足りない。

「おいスラルちゃん! どうにかならんのか!」

「無理を言うな! 我とジルは体を共有しているんだ! 魔力も共有、これ以上の事は出来ん!」

「うぐぐ…肝心な時に」

 スラルが居れば魔力は問題無いが、生憎とそのスラルはジルと体を共有している状態だ。

 ジルの体は一つなので、二人分の魔力が相乗するという事では無い。

「…もう一人居れば魔力は足りるのか」

「ああ! せめてもう一人居れば…!」

 誰かが声を発したが、それが誰なのか集中しているルシラには分からなかった。

「ランス。私をメイの所へ」

 それはランスの剣から声を出したケッセルリンクだった。

「何とか出来るのか」

「同胞たるカラーが居る。ならば多少の無理は私にも出来る。ただ、それをするとしばらくの間眠りにつく事になるが…他ならぬお前の命のためだ。今無理をしないでいつするのかという話だ」

「黒部! こいつを押さえてろ!」

「おう!」

 ランスは黒部に気絶した殺姫を投げつけ、メイの元へと向かう。

「メイ、少し君の力を借りるぞ」

「あなたは…ハイ、俺の力存分に使ってください」

「そうさせて貰う」

 ランスの剣から淡い光が放たれたかと思うと、そこからカラーの姿が現れる。

「!?」

 その姿を見てブリティシュは絶句する。

 それは彼もかつて戦った事がある、魔人ケッセルリンクの姿だったからだ。

「我が魔力、使うがいい」

 そして皆と同じようにマナバッテリーに向けて魔力を放つ。

「! 少し安定したか…! 山脈は越えられるけど…クッ!」

 ルシラは闘神都市Θをコントロールしながら呻く。

 どれくらいの時間がったか、

「皆何かに掴まって! 闘神都市は墜落する!」

「おい! 結局落ちるのか!」

「いいから! とにかく掴まりなさい!」

 ランスは近くに居たジルとお町を掴み、そのまま闘神都市の何かの部品に掴まる。

 メイとレンは黒部が引き寄せ、ランスと同じように体を支える。

 ブリティシュも同じようにショックに備える。

「皆そのまま…3、2、1」

 メイのカウントダウンと同時に凄まじい轟音と揺れと共に闘神都市Θは墜落した。

 だが、その墜落した場所は本来の歴史と違う場所であり、それが後にどう影響をするのか…それを知る者は誰も居ない。

 この未来を見たかもしれない魔人バークスハムでさえも。




突然ですが殺姫の性格を若干変更…
あまりにテンションが高すぎたのと、やはりタニノギムレットを参考にするのは難しいなと
なので参考先を変更、某阿修羅すら凌駕する男になりました
相方もまあ当然その阿修羅の人と仲の良い方に
変人の方が動かしやすいというメタ的な理由もあります
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