「ランス…無事か、ランス」
「む…クソ。気を失っていたのか、俺様は」
「ああ。衝撃でお前達は気を失っていた。無事だったのは私と黒部だけだ」
「全く…散々な目にあったぞ」
ランスは痛む体をさすりながら起き上がる。
隣にはジルとお町が寝かされている。
ランスから見て特に外傷は無いので、恐らくはランスと同じように衝撃で気を失ってしまったのだろう。
「それよりも…あれからどうなった」
「それは…すまない、まだ私にも分からない。だが、少なくとも闘神都市Θは破壊されなかった、それだけでも僥倖だと言わざるを得ないな」
ルシラは少し安心しているのか、闘神都市が墜落したというのにどこか穏やかだ。
「ところでその黒部はどうした。それからレンの奴も居ないな」
ランスは周囲を見渡すと、そこには同じように気を失っているメイとブリティシュが寝かされている。
少し離れた所にランスが捕まえた殺姫がロープで縛られている。
ただ、ランスが探している黒部とレンがその場には居ない。
ランスの視線に気づいたルシラがロープで縛られている殺姫を指さす。
「奴は捕獲ロープで縛ってあるから問題無い。どれだけ強かろうが、女の子モンスターには変わりない。聖魔教団が作った強力な捕獲ロープがあれば問題無いよ」
「ほう、そんなのがあるのか」
「それとその二人だけど、入り口が私達が入って来た入り口がどうなっているのか見に行ってくれているよ」
「そうか。まあぶっ壊れたならここに拘る理由も無いからな」
闘神都市が守れなかったのはもう仕方ない。
ランスとしては腹立たしいが、一度怒ってしまった事に腹を立てても仕方が無い。
それに闘神都市Θは何れは墜落していたのは間違い無い。
そもそも未来において残って居るのはイラーピュ…ランスが墜落させた最後の闘神都市だけだ。
「う…うーん」
「むぅ…」
「ジル! 大丈夫か」
「うん…ルシラ? あ、ランス様。アレからどうなったんですか?」
ジルとお町が目を覚まし起き上がる。
「う…体が痛いな」
「命があるだけでも助かったと言うべきか…」
ブリティシュとメイも同じように目を覚まして起き上がる。
「何だ、お前も生きてたのか。死んでても良かったのだがな」
「まさか、これくらいで死ぬなんて思ってはいないよ。僕だってかなりの修羅場をくぐり抜けたつもりだからね」
ランスの言葉にもブリティシュは笑って答える。
「それよりもランス。状況はどうなんだい?」
「俺様だって今起きたばかりだ」
ブリティシュに聞かれても当然ランスには何も答えられない。
その時、足音と共に誰かが部屋に入って来る。
「ふう…お、ランス。目覚めたか」
「ちょっと大変な事になってるんだけど…これ、どうしたものかしらね」
入って来たのは当然レンと黒部だ。
「早かったな。その様子だとあまり良い状態では無い様だが」
「ああ。俺達が想像した以上に大変な事になってるんだよ」
ルシラの言葉に黒部は苦い顔をしている。
レンの顔も何時にもまして深刻だ。
「何だお前等。そんな深刻そうな顔をしやがって」
「深刻にもなるわよ。私達が墜落した場所を言えばね」
「ああ。ちょっと洒落にならねえ場所に落ちた」
その二人の様子にはランスも少し不安になる。
レンと黒部がそう言うのならば、相当に厄介な場所に落ちたのだろう。
「何だ。魔物領にでも落ちたか? それとも山に突き刺さったか?」
ランスの言葉にレンは首を振る。
「それよりもっと悪い場所」
「あの…そんなに酷い場所に墜落したんですか?」
ジルの言葉にレンも苦い顔をする。
「雪の中」
「は?」
「言葉通り雪の中。ここは大陸北部の氷雪地帯なのよ。私と黒部も外に出ようとしたけど、雪の中に埋まってて出れなかったのよ」
「…な、何だとー!?」
闘神都市Θが墜落した場所…それはLP期におけるヘルマンの氷雪地帯。
極寒の万年雪の地に落ちてしまったのだった。
ランス達は取り敢えず闘神都市のコントロールルームというべき場所に案内される。
そこにある機器はランスには何が何だかさっぱり分からない。
ただ、それでも見覚えのある物なので、ここが闘神都市の内部だという事を思い知らされる。
「成程、確かに厄介な所に墜落したな…」
ルシラは闘神なので表情は変わらないが、声色は少々良くない。
「闘神都市のシステムはまだ生きているが、マナバッテリーが直らない限り何れは限界が来る。限界が来た時、人間であるランス達は間違いなく凍死が窒息死のどちらかだ」
「何だと!?」
「しかも闘神都市はこのうちにもどんどん埋もれていく。流石に直ぐに埋もれるという事は無いのだが、外に出ようにも氷雪地帯を歩いて抜ける訳にもいかないだろう。厳しいな…」
ルシラの声色は何処までも硬い。
それだけ厄介な所に墜落してしまったという事だ。
「闘神都市Θが墜落したのは恐らくこの周囲の氷雪地帯だ。まだそれくらいしか分からないな」
「氷雪地帯…あ」
ルシラが指で示した地域を見てランスは思い当たる。
それはランスがヘルマン革命で突っ切った氷雪地帯だったからだ。
ミネバの策略で橋を通れなくなったならず者達は、氷雪地帯を浮遊要塞で突っ切ってヘルマンの首都を奇襲したのだ。
ランスの無茶な行動のおかげでヘルマン革命は成功したのだが、実際にはかなりの賭けだったのだ。
そしてそんな所に墜落したとなっては…ランスでもどうすればいいのか少々困る所だ。
「まずいね…まさかそんな所に落ちてたなんて…」
「そうじゃな…妖怪である我や黒部殿はともかく、人間であるランス達にとっては厳しいじゃろうな」
「今はまだ闘神都市の機能は完全には切れてない。空調も何とかなってるが…時間が来ればそれも切れてしまう。そうなったらおしまいだ」
ブリティシュとお町の言葉にルシラもどうしたものかと腕を組んで悩んでいる。
「ルシラ、闘神都市を動かせないんですか?」
ジルの言葉にルシラは恐らくは難しい顔をしたのだろう。
「完璧に壊れた訳では無いから、修理をすれば動くとは思う。だけど、私は魔鉄匠の技能は無いから修理する事は出来ないんだ。Σならホピンズの技術で何とか出来たかもしれないが…」
「問題なのは外に出れないって事ね。おかげでカインとも連絡取れないし」
「そういやあのバカドラゴンはどうなったんだ」
「さあ…でも、カインでも今の私達を探すなんて器用な真似ができるかしらね」
ランスの言葉にレンは難しい声を出す。
「せめて外に出れればいいんだけどな。それなら俺がペンシルカウとやらに行って奴等を連れて来れるんだけどな」
「それだ。おい黒部、お前1人で行ってこい。死ぬ気でな」
「無茶言うな! 外は猛吹雪なんだぜ! いくら俺でも道しるべ無しにそんな所を歩ける訳無いだろうが!」
「気合で何とかしろ。妖怪王だろうが」
「お前、妖怪王を何だと思ってやがる。とにかく、この吹雪の中じゃ迂闊に動く事も出来ねえんだよ!」
「むぐぐ…八方塞ではないか」
一応墜落死は避けられたが、このままだと闘神都市内で凍死か窒息死の未来が待っている。
それでは全く意味が無い。
「フッフッフ、どうやら困っているようだな!」
縛られてミノムシ状態になっている殺姫が目を輝かせて立ち上がろうとして―――再び地面に倒れる。
「あ、お前生きてたのか」
「この殺姫、思いも遂げずに死ぬなどという事は無いよ。だが、大変な事になっているのは事実のようだ。ここは人間もモンスターも関係無い、協力してこの場から何とか脱出しようではないか!」
「…何を言っとるんだお前は」
「こんな所で無常にも散るという事はオレにも不本意だ。だったらお前達と協力してでも生き延びる手段を探した方がいい。それにオレが望むのはランスとの完全な決着、こんな形で終わるなどあっていいはずがない!」
縛られながらも堂々と胸を張って言い切る殺姫。
「そもそもお前役に立つのか? 本当にバトルノートかどうか怪しいからな」
バトルノートというモンスターをランスは知っている。
捕獲ロープで捕らえた女の子モンスターを従魔という形で従え、冒険に連れて行くという事もした事がある。
バトルノートは頭がよく、魔物将軍もその参謀に据える事もある上位の女の子モンスターなのだ。
「フッ、確かにオレはバトルノートの風下におけない奴とか、生殖本能が全く刺激されないバルキリーだとか、常時魔法を使っていそうな最強魔女とか言われている」
「それ全部悪口じゃないかなあ…」
ブリティシュでも思わず突っ込まざるを得なかった。
「そもそもオレはしつこくて諦めも悪い、俗に言う人に嫌われるタイプだからな! まあ色々と言われ慣れている」
「堂々と言う事か。ランス、やっぱりこいつ頭がおかしいぞ」
堂々と言い切る殺姫にはお町も呆れるしかない。
「だが、オレの本質はやぱりバトルノートでもあるのだと! こういう状況だというのに色々と考えが巡って来て仕方ない! さあ、オレを解放するんだ!」
目を輝かせる殺姫に対して、その場に居る誰もが無言になる。
「…ルシラ、解いてやれ」
「いいのか? ランス」
「別のこの状況で何も出来んだろ。そもそも俺様に勝てる訳が無いからな」
「お前がそう言うのならば構わないが…」
ランスの言葉に若干警戒しつつも、ルシラは殺姫の捕獲ロープを解く。
殺姫は嬉しそうに飛び上がると、ランスにつけられた傷などもう無いかのように腰に手を当てて高笑いする。
「ふはははははは! これで自由! さあランス、オレを頼れ! バトルノートの突然変異種、通称殺姫がお前の力になろう!」
「そ、そうか」
あまりのテンションの高さにランスも付き合いきれないとばかりにため息をつく。
(ガンジーよりも暑苦しいぞコイツ…女の子モンスターは味見したくなるが…こいつは全くそう言う気にならんな)
確かに外見は良いのだが、その言動のせいでそういう対象になれない。
色気も無ければ性的興奮になる材料も無い、まさに残念な美人と言わざるを得ない。
「さて、状況は聞かせてもらっている。それで闘神よ、実際我等はどれだけ持つのだ?」
「今すぐ命に支障をきたす…という事は無い。食料も魔農民が生産しているから、直ぐに枯渇するという事も無い。ただ、問題なのはこのままでこの闘神都市が完全に雪に埋もれてしまうという現実だな。そうなってはここから脱出する手段が無くなってしまう」
「問題はそこね。一番良いのはペンシルカウに誰かが向かい、そこでハンティと話をつける事なんだけど…それが難しいのよね」
一番の問題点はそこで、やはりこの闘神都市から出て人の居る場所に向かうという事がネックとなる。
「外は吹雪だからな。俺のような妖怪ならともかく、人間のお前達ならあっという間に凍死しちまうぜ」
「外に出れても今度は吹雪の問題があるな。ただ、人間のランス達やカラーの俺では自殺行為だ。問題は山積みだな」
部屋内の空気が少し重くなる。
問題点は山積みで、どこから解決すれば良いのかまだ手掛かりも無い。
「吹雪の問題は一応解決策はあるのだがな」
「何だルシラ。そんなものがあるのか。だったらさっさと出せ」
「雪原地帯のダンジョンに『雪のお守り』というアイテムがある。それを持っていれば雪原地帯でも遭難しなくなるし、気温も快適に保てるだろう」
「そんなアイテムがあるのかい? でも、その様子だとこの闘神都市に有るとは思えないけどね」
「その通りだ。ただ、今私達が落ちた場所の近くのダンジョンにあるのは間違い無い。『雪の迷宮』、そこに有るのは間違い無いだろうな」
ルシラが手をかざすと、この世界の地図が浮かび上がる。
「今光っているのが私達が居る場所だ。幸いにもその辺りの設備はまだ生きているようだ」
この闘神都市が墜落した場所は雪原地帯の地域を指していた。
幸いなのは、雪原地帯に落ちたと言ってもそこまで遠くない距離にあるという事だ。
勿論人間の足で動くなど今の状況では不可能なので、ランス達にとってはあまり有難い話では無い。
「聖魔教団の本部の近くか…だが問題のはここまで援軍を送れる戦力は無いだろうな」
ルシラは聖魔教団の本部が近くにある事に少し安堵したが、だからと言ってここまで人員を割けるとも思えない。
そもそもここまで来れそうな鉄兵や闘将は皆今は空の上だ。
「闘神よ。その『雪のお守り』があるというダンジョンの位置は分かるのか?」
「ああ。確かこの辺りで見つけたという話だ。恐らくはまだそのダンジョンに眠っているだろう」
ルシラが位置を示すと、そこは確かにこの墜落した闘神都市から近い位置にある。
「ならばまずはここに行ってそのアイテムを取得するのが優先事項の一つだろうな。このままでは遠からず凍死するのは間違い無い」
「…お前、突然まともな事を言いおって。気持ち悪いぞ」
「フッ…良く言われる。ただ、オレはこういう風に頭を使うと気持ち悪くなってしまう。やはり戦いが一番だ」
「問題なのは誰が行くか、という事だね」
ブリティシュの言葉に皆がランスを見る。
「無理に決まってるだろうが!」
「まあそうよね。だったら答えは単純、私と黒部とお町で行けば良いわ」
「うむ、それしか無かろう。黒部殿、我等ならばこのくらいの距離を移動出来よう」
「ま、人間には無理だろうからな。妖怪の俺らには大したことはねえさ」
レンと黒部とお町は直ぐにでも動こうとする。
やはり時間が足りないのだ。
「待て、レンは大丈夫なのか? レンは人間だろう」
躊躇いなくレンがこの豪雪地帯を外に出ようとするのを見てルシラが困惑したような声を出す。
「問題無いの。だから私達はもう行くわ」
「待て。オレも行こう」
「…お前がか?」
声を上げたのは問題の女、殺姫だった。
「君はそう言って彼等を不意打ちするんじゃ無いだろうね?」
ブリティシュの言葉に殺姫は苦笑する。
「お前達はモンスターを常に人間に害をなす者共と思っているのだろうが、それだけが本質ではない。命の危機となれば人間と協力する事もある。ましてや俺はモンスターの中でもはぐれ者、元々そういう存在だという事だ」
「良いの? ランス。別に私は構わないんだけど」
「連れてけ。そいつは無駄に煩いからな。ここに居ても邪魔なだけだ」
「フッ…つれないな、ランス。だがそれでこそ口説き甲斐がある」
「うーむ、顔は良いのにお前にそう言われても嬉しくも何とも無い…」
殺姫を見てランスは本当に微妙な表情をする。
「アレだな、ベネットと別ベクトルでやろうと思わん奴だな」
「…ランスから見てアレと同レベルなんだ」
ランスの言葉を聞いてレンも微妙な表情を浮かべる。
ベネットもアレだったが、殺姫もランスが手を出そうとしない辺り本当にアレな女なのだろう。
「フッ、その言葉は他のモンスターに言われ慣れているよ」
「慣れるな慣れるな。それより早く行ってこい」
ランスの言葉に合わせるように4人は闘神都市の出口に向かって歩いて行く。
「ランス…良いのかい? というか本当に彼女は大丈夫なのかい?」
ブリティシュも少し驚いた様子でランスに声をかける。
「レンと黒部が居るなら問題無いだろ。だが確かに冷えてきたな…」
ランスの言う通り、明らかに気温が下がってきている。
「快適な温度にする事は出来なくは無いが、それだと今度は酸素や防衛に回す魔力が無くなる。ここはもう雪の中だが、そこからモンスターが侵入してくるだろうからな」
「ああ。この豪雪の中でも動けるモンスターは居るからな。それこそ雪うさぎやフローズン等は平気でここに入って来るだろう」
「ルシラ、何処か大きなフロアは有りませんか? 魔法ハウスを起動出来る位の広さは有るとおもうのだけれど」
「あ、そうか。お前達は魔法ハウスを持っていたな。しかも我々の知っている魔法ハウスよりもより高度なものだったな」
「とにかく案内しろ。俺様は腹が減ってるんだ」
「そうです。ランス様、あの力を使いましたから凄いお腹がすいてますよね。急いで準備しないと」
「ああ。ついて来てくれ。流石にまだモンスターが入り込んでいるという事は無いだろうからな」
ルシラはランス達を案内し、ランスが持つ魔法ハウスを展開出来る程の広さを持つフロアに到着する。
魔法ハウスが展開されても問題無い広さで、ランスも内心では安堵する。
(流石にあの時のような状況は面倒だからな)
ヘルマン革命の時は実は結構な賭けだったという事だったらしい。
あの時程状況は良く無く、このままでは本当に凍死してしまう可能性が高い。
魔法ハウスだって正直延命処置に過ぎない。
(あのバカドラゴンの行方も分からんしな。とにかくペンシルカウに向かわんと)
今の外の状況なんてランスには正直どうでもいい。
カラーの様子は気になるが、この戦争でカラーが全滅するような事は無い事は分かっている。
分かってはいるが、それでもイレギュラーも有るので、なるべくペンシルカウは気にかけるようにしている。
未来ではペンシルカウが残って居るのは分かっているが、何しろやたらと魔人に狙われている。
実際には魔人に狙われる原因はランスにあるのだが、当人はそんな事は知らない。
「ここなら大丈夫だと思うが」
ルシラが案内したのは確かにランスの持つ魔法ハウスも展開できるであろう広いフロアだ。
「何で闘神都市にこんな広場があるのだ?」
「物資の補給とかも必要だからな。確かに我等闘神や闘将には食料などは必要無いが、それ以外の者達の為には必要なものだろう。物流の流れを妨げるような事はしたくない」
その言葉をメイは鼻で笑う。
「所詮は魔法使いのために作られた都市だろう。ここまで広くする必要は無いと思うがな」
「…辛辣だな。君はカラーだろう。闘神都市に何か思う所でもあるのか?」
ルシラの言葉にメイは彼女に鋭い眼光を向ける。
「色々と思う所があるだけだ。が、お前にそれを向けるつもりは無いさ。聖魔教団に協力したのは女王が決めた事だ。例え始祖様が何を思おうとな」
「………」
メイの言葉にルシラは何も言えない。
カラーが協力してくれたのは確かだが、彼女の言う始祖…ハンティ・カラーは最後まで聖魔教団そのものに協力はしてくれなかった。
それどころか、聖魔教団の侵略戦争の際には地上の蛮人―――魔法を使えない者達を守っていたのだ。
メイはそのハンティの思想に共感していた数少ないカラーだ。
だからメイは聖魔教団へは協力的ではなかったが、女王も仲間達も誰も何も言わなかった。
「そんな事よりも早くメシだメシ。ジル、しっかり作れよ」
「はい! ランス様」
ランスは魔法ハウスを展開すると早々に入っていく。
ジルとブリティシュも後に続き、それを見てメイも魔法ハウスに入っていく。
「ルシラ、あなたは?」
「私は今の闘神都市Θがどうなっているか確認してくる。ここは私の闘神都市だからな、今の状況を把握しておく必要がある」
そう言ってルシラは闘神都市の迷宮へと向かって行く。
ジルは少し残念そうな顔をしたが、
「ジル! 早くしろ!」
「あっ、ごめんなさいランス様」
ランスの声に直ぐに着替えて料理へと取り掛かる。
今のランスは本当に体力を失っており、早く食事を取らなければいけない。
ジルが用意をしていると、ランスは本当に疲れたかのようにソファに体を投げ出す。
「…疲れた。本当にコレは疲れるな」
「そこまで疲れるんだね…その力は」
アベルから押し付けられたドラゴンの力、便利だがこの副作用はランスにとっても痛い。
カミーラは慣れれば疲労も少なくなると言っていたが、中々慣れるものではない。
腹が減ると力も出なくなるし、それは戦闘では致命的な弱点にもなる。
だからこそランスも決着をつける時に使う様にしている。
「凄まじい力だが、それでも魔人には及ばなかった。流石は魔人筆頭という所か」
「フン、日光があればこんな苦労はせんのだ。全く、何処におるんだアイツは…」
メイの言葉にランスは今手元に無い日光の事を思い浮かべる。
日光さえあれば魔人が相手でも問題無く…とは言わないが、魔人の持っている厄介な再生能力を殺せるのだ。
それがあるだけでどれだけ戦いが違うか、ランスは改めて思い知っていた。
(こう考えるとカミーラと戦う時はアイツも相当にハンデを背負っていたな。まあそれも俺様の日頃の行いの良さだな、うむ)
その中でも筆頭なのがカミーラで、あの強さにはランスも何度も苦戦させられた。
だが、その度に邪魔が入ったり、カミーラ自身が負傷して全力を出せなかったりと、ランスは運に救われてきた。
もしカミーラが本気でランスを殺す気ならば、いくらランスでもカミーラに殺されていたのは間違い無かった。
それが魔人四天王という存在だからだ。
ただ、その魔人四天王が相手でも日光が有ればチャンスが生まれる…日光はそれ程に魔人に対して特効なのだ。
「僕と違って時間差なのかもしれないね。もし日光が今の状況を知っていれば間違いなく行動を起こしただろうね」
ブリティシュとしても日光が居てくれればと思うが、居ない者を考えても仕方が無い。
「はい、ランス様。食事です」
「ようやくだな」
ジルが料理を並べると、ランスは直ぐに胃袋に納めていく。
別にランスは大食いのタイプでは無いが、ドラゴンの力を使うとどうしても大きく腹が減る。
それだけエネルギーを使っているという事なのだが、レベルや経験値が減る事に比べれば遥かにマシだ。
「しかし問題はどうやってここを出るかだな。いや、出ていった後の方が問題だが」
「そうだね。一番なのはドラゴンに回収してもらう事だけど…」
「カインさんも何処に行ってしまったか分かりませんからね。あ、ランス様。お茶です」
「うむ」
ランスはジルに出された茶を飲み干すとそのままジルを担ぐ。
「ラ、ランス様?」
「腹もいっぱいになった事だし、食後の運動もせんとな」
「こ、こんな状況でですか?」
「がははははは! 俺様はどんな状況だろうがやる事は変わらんのだ!」
そう言ってジルを担いだまま自室へと向かって行く。
そこで何が起こるか、それを理解出来ないブリティシュとメイではない。
「やれやれ…彼の女好きは相当だね。カオスもそうだったけど、彼はカオス以上だよ」
「カラーからすれば好ましい男ではあるがな。もっとも、始祖様に止められているせいか、ランス自身無理にカラーに迫るような事は無いがな」
「そうだね…それはそうと、問題はなのはこれからどうするかだね。正直僕にはどうすればいいのかさっぱりだよ」
「それは誰だって同じだ。だが、あの男は相変わらず自信満々だ。だが、不思議と奴ならば出来るのではないかと思わせる何かがある。根拠が無いのは丸分かりなのにな」
メイの言葉にブリティシュも笑みを浮かべる。
「僕もそう思うよ。彼が居れば何とかなるんじゃないか、そう思ってしまうよ」
雪のおまもり等は鬼畜王ランスから
便利なアイテムだけで正史には出て来ませんでしたね
まあヘルマンでしか必要無いアイテムだしね