「で、ここが闘神都市のお宝がある所か」
ランスが斬った扉の部屋に有るのは確かに価値のある物があるのだろう。
「…だが何なのか全く分からんな」
しかし、それはランス達にとっては何だかよく分からない物だった。
「聖魔教団の者達からすれば当たり前の道具だが、それ以外の者にとっては価値が分からないという事は良く有る事だ。それこそ価値観の違いというやつなのだろう」
ランスの左手をさり気なく支えてるケッセルリンクが周囲を見渡して呟く。
「ランス。武器の類もあるみたいだよ」
周囲を物色していたブリティシュが一振りの剣を手にして観察している。
その目は真剣そのもので、彼が一流の戦士である事がよく分かる光景だった。
「私が皆と一緒に学んでいた時からは信じられないくらいに発達しているんでしょうね。これも基本を全てフリーク先生が作ったものですし」
ランスも置いてある武器を見るが、やはり今のランスの剣と比較できるような武器は無い。
そもそもルーンがバランスブレイカーであるタロコンソードをランスに渡している時点で、最強の武器はランスの手元に有るのだ。
だからランスとしても拍子抜けしたが、一本の剣を見て驚く。
「あ」
「どうした? ランス」
「いや、この剣…どっかで見た事あるような」
ランスが手に取ったのは一本の青い剣。
手に取っても特に何も感じる事の無い、何の変哲もない普通の剣だ。
「これは…ほう、魔力が込められているのか? 氷属性の力を持っているな。こっちは雷属性の力を感じる。我の付与とは少し違うな…」
スラルもランスの剣を見て感心したような声を出す。
「量産されている剣のようだね。でも結構良い剣だよ。僕の持っている剣には流石に及ばないけど」
ブリティシュも剣を手ににて納得したような声を出す。
これ程の剣を武器を量産出来ている聖魔教団の国家としての強さが分かる。
何しろブリティシュの時代には絶対に出来なかった事だからだ。
それよりもランスはこの剣の事をようやく思い出した。
これはLP時代にあった氷山の剣とそっくりなのだ。
ハピネス製薬での依頼の時にランスが使っていた剣で、あの時代では普通に市販されている武器だ。
当たり前のように誰もが使っている武器であり、大して珍しいものでは無い。
だが、その当たり前がこんな昔の時代にあるという事に驚いた。
これもランスが歴史に興味が無い故の事でも有るのだが。
「…まあ大したもんじゃ無いな」
結論としては、量産型の剣でありランスの興味を引く剣では無かったという事実があるだけだ。
ランスは歴史には全く興味が無いので『俺様の時代の剣がこんな昔にあったのか』程度の感想しか無いのだ。
(…成程、ランスが知りえるモノが出てきたという事か)
ケッセルリンクはそんなランスの態度を見て、一つの流れを感じ取っていた。
ランスとの付き合いが長いケッセルリンクは当然ランスの異変には気づいている。
当然その出自にもある程度見当はついていたが、特に行動を起こす事は無かった。
(だがまだ早い…というよりも、現状ではあまり大っぴらには動けんか。ガイは明らかに私を放置しては居るが、それでも奴は魔王だ)
魔王の命令には絶対服従な自分の身が非常に恨めしい。
しかし、その魔人だからこそ出来る事が有ると考えて動くしかない。
そう考えていると、ケッセルリンクは一つの気配を感じ取った。
それは呪いには疎いケッセルリンクですらも顔を顰める程の憎悪や恨みといった感情が感じられた。
(メイの体だからか…メイは剣と弓だけでなく、魔法も呪いも使えるカラーの英雄だ。その体が目の前の存在を感じ取ったか)
ケッセルリンクの視線に入ったのは一本の刀だった。
何故かその刀が目立たぬ所にかけられていた。
「ランス」
「何だ、ケッセルリンク」
ケッセルリンクの視線の先にある刀を見て、ランスも顔を歪めた。
「…何じゃありゃ」
「JAPANの刀だ。だが、明らかに何かある…そう思わせる何かがある」
「そんなもんか」
ランスはかかっている刀を手に取る。
今はランスも刀を持っているが、本来はランスは刀はそれ程使わない。
だが、そんなランスでもこの刀の良さは本能で理解した。
「ほう。中々良いではないか」
「お前がそう言うか」
「うむ、これは俺様が貰ってやるか」
ランスは刀を手に取りがははと笑う。
「色々とあるな。だが、我としてはやはりこれに興味が有るな」
スラルが手にしたのは魔池だった。
それはランスも見たとこがある―――というよりもLP期では日常的に使われている道具だ。
ありきたり過ぎて珍しくも何とも無い、そんなアイテムだが、スラルにとっては興味深い物なのだ。
「…まあいいんじゃないか」
だからランスも何も言わない。
確かにランスも普段から使っていたといっても、魔池が何なのか分かっていない。
そう、ランスは知らない…LP期の魔池と、全盛期の聖魔教団の魔池の違いを。
勿論これに関してランスを責めるのは酷だろう…もし志津香やマジックといった魔法に詳しい者が居れば話は変わっただろうが。
「さて、これだけあるなら持って行っても構わんだろう」
スラルは遠慮なく落ちている魔池をどんどん集めていく。
「僕としては持っていく物は無いかな…」
「ケッセルリンク、お前はどうなんだ」
「私が持って行く訳にもいかないだろう。万が一変な疑いを持たれて困る」
「そんなもんか」
「終わったなら戻ろう。お前の手が心配だ。早くレンに回復魔法をかけてもらうべきだ」
そう言ってケッセルリンクは優しく微笑んだ。
その夜―――
「…お前達、武器庫をどうやって開けた?」
ランス達が戻って来てから、ランスが持っていた彼方を見てルシラは怪訝な声を出す。
この闘神都市の主であるルシラは当然ランスが持って帰って来た刀が何であるか分かっている。
別にランス達が武器庫から武器を持って来たのを咎めているのではなく、まだ開かないはずの扉をどうやって開けたのかが不思議だった。
「斬ったぞ。普通に」
「斬ったって…普通ありえないぞ…」
事も無げに言うランスにルシラは絶句する。
闘神都市の強度は当然ながら高い。
その中でも武器庫等はより強固なセキュリティーをしていたはずだ。
勿論まだ闘神都市の機能は完全では無いが、それでもそう簡単に開くようなものではない。
その扉を斬ったなど、普通に考えればありえない。
だが、ランスがそんな嘘を言う必要は無いし、そもそもそんな嘘ならジルが否定するだろう。
そのジルは曖昧な表情で頷くだけだ。
「…どうやって斬った。それこそ闘将の攻撃でも防げる強度のはずなのだが」
「ランスは普通に斬れる技術を持ってる。それだけよ」
レンの言葉にルシラは納得がいかないような表情をしている―――と思うが、それでも事実は受け入れないといけない。
そして起きてしまった事はもうどうしようもない。
「…全ての機能が回復したら、普通にお前達を案内しても良かったんだけどな」
「何だと!?」
「まさか闘神都市の扉を斬るなんて想像もしていなかったからな…いや、お前ならあり得る事か」
「じゃあ俺様はしなくてもいい怪我をしたという事か!」
「私に対して怒るな! まあそれはともかく、流石にお前ならその刀を選ぶか」
「何だ。価値のあるものなのか」
「ああ。かつて私達がJAPANを相手に戦ってたのを覚えているだろう。その時に手に入れた物だ…と、言うと怒るだろうな」
ルシラは厳しい視線を向けてくるお町を見て言葉を選んだようだ。
「私達は色々な武器も集めた。そういった武器を作る事も聖魔教団にとっては必要な事だったからな」
昔を思い出すルシラだが、侵略された側からすれば忌々しい出来事だろう。
お町も過去は過去だとは思っているが、やはり妖怪王としての矜持もある。
「そこからは我が話そう。ランス、お主が持っているその刀…所謂妖刀という物じゃな」
「妖刀? なんじゃそりゃ」
「大陸のお主には少々分かりにくいか…大陸風に言えば魔剣という奴じゃな」
「魔剣…あのバカみたいな剣か」
魔剣と聞くと、やはり一番最初に思い浮かぶのはあのエロバカ剣だ。
魔人と戦う時にしか役に立たない非常にうるさい剣だ。
一応ランスも使ってやってはいたが、正直今なら日光の方が断然良い。
それにカオスはガイの持つ剣として敵対した間柄なので、将来的にどうなるかもう分からない仲になってしまっているのをランスは全く考えていない。
「妖刀とは持ち主の精神にすら影響を与えるものじゃな」
「精神ね…あ」
そこでランスは思い出した。
ランスはカオスの使い手として何の問題も無いが、本来はカオスはその持ち主の精神を汚染してしまう剣だ。
最初にランスがカオスを持った時も、カオスは『儂を持って問題無いのか?』と問いかけてきたのだが、当然ランスはそんな事は忘れている。
ただ、実害としてマチルダはカオスを持って精神が汚染されてしまったのをランスは知っている。
言葉通り、魔剣カオスは持ち主を選ぶ正真正銘の魔剣なのだ。
「それは妖刀鬼切丸…数多の鬼の血を吸ったと言われる刀よ。そのせいか持ち主に常に闘争を求めさせるという妖刀よ。尤もそれは逸話であり、本当かどうかは我は分からぬ。ただ一つ言えるのは、あの鬼すらも一太刀で斬り伏せるという名刀であるという事よ」
「ほう、あの鬼をかよ」
お町の説明に黒部も興味を抱いたかのようにランスが持って来た刀を見る。
確かにお町の言う通り、名刀で有る事は間違い無い。
「別に俺様は何とも無いがな」
「まああくまでも逸話よ。だが、まさかその鬼切丸を聖魔教団が持って行ったとは思っても居なかったがな」
お町は闘神であるルシラを睨む。
「我々にとっての敵は魔物であり魔人だ。そのためにはあらゆる手段を使う必要が有った。その考えは今でも間違っているとは思っていない」
ルシラはお町の視線を受けても毅然として言い放つ。
「我からすればお主達は侵略者よ。JAPANは帝が治める地…それはJAPANの民は皆そう思っておる」
「だがあの時帝は居なかった。それが現実だ」
「フン…最早過去の事よ。その聖魔教団も今や滅びるのも時間の問題と来ている。それが愉快とは思わぬがな…」
お町も少し複雑な表情をしている。
これほどの力を持つ聖魔教団でも魔人には歯が立たなかった。
無敵結界の前には闘神の力があろうとも無力…それを思い知らされた形になったからだ。
「紆余曲折があってその刀は闘神都市Θに回って来た。ただ、使い手が居なかった故に放置するという結果になってしまったが…」
「使わぬなら返せ。それはJAPANの宝じゃぞ」
「ああ、構わないさ。もう闘神都市Θは墜落したんだからな。ただ、私としてはそれを見つけてきたランスに託したいと思っているが…」
ルシラの言葉にお町はランスを見る。
「ランス、使うか? お主には既に自前の刀があるじゃろう」
「うむ」
ランスは自分の刀を手にする。
相変わらずバスワルドとククルククルの間で揺れ動く不安定な剣。
それでもランスはどっちの力が大きかろうが問題無く扱いこなす事が出来る。
正直に言えば、どんな名剣や名刀だろうが今のランスの剣の前には劣ってしまうのは間違い無かった。
日光があれば話は別なのだが、今は無い物の事を言っても仕方が無い。
「まあ折角だから使ってやるか」
「そうか。お主が望むならば構わぬ。鬼切丸、お主に預けよう」
「別のお前のじゃねえだろ」
偉そうに言うお町の頭部を黒部が軽く突く。
それだけでお町はのけぞり、恨めしそうに黒部を見る。
「ま、ここで死蔵するよかお前が持ってる方が良いだろ」
「妖刀とか言うが、特に特別な力は感じられんがな」
ランスは鬼切丸を抜くが、特に何も変わりは無い。
お町の言うような悪影響もランスには全く無い。
「…やはり違和感はあるな。こっちの方が使いやすい」
使い難い、という事は無いだろうが、やはり今使っているモノの方が手に合う。
「予備として持ってても問題無いでしょ。ミスリルの剣とかのように将来的に使えるかもしれないし」
「そうだな。使わなかったらシルキィにでも渡すか」
ランスは刀を仕舞うと、レンがランスの左手に触れる。
「うーん、やっぱり少し休んだ方が良いわね。細かな所がまだ完全に治っていない感じかな…」
「分かるのか」
「何となくね。これも私の階級が上がったからかもしれないけど…少し安静にしてなさいな」
「やはりあの技はデメリットも多いな。迂闊に練習も出来ないというのももどかしいな」
スラルの言葉にランスも少し忌々しそうに顔を歪める。
鬼畜アタックの時よりも副作用が圧倒的に多い…というよりも、体が傷つくのが何よりもキツイ。
一撃必殺になるのは事実だろうが、外した時のデメリットが大きすぎる。
「少し休め、ランス。無理は良く無いぞ」
「フン、分かっとるわ」
ケッセルリンクの言葉にランスは少し面白く無さそうな顔をするが、それでも素直に従うのだった。
ランス達の闘神都市の探索は順調に続き―――
「がはははは! ランスアターーーック!」
ランスの一撃でとうとうる壺が破壊される。
「結局最後まで残ったわね…」
レンは微妙な顔をして破壊されたる壺を見る。
闘神都市全てに魔力を補充したのだが、結局る壺を破壊するのは最後の最後になってしまった。
特に何かがあったという訳では無いのだが、無駄に時間がかかってしまったのも事実だ。
「なんつーか…ホントに何も起きなかったな。まあ起きたら困るんだけどよ」
黒部も少し退屈そうに頬をかく。
出てくるモンスターも魔物兵に比べれば格段に弱いので障害にもならない。
たまに強いモンスターも出てくるが、今のランス達の前ではそこまでの脅威でも無い。
「アレから本当に何も無かった。俺としては非常に不満だ」
殺姫は地図を片手に不満そうにしている。
武器庫でも殺姫の目に留まる物も無かったし、これまでの過程でも特に新たな発見も無かった。
「本当に何も無いな。イラーピュとは大違いだぞ」
ランスが飛ばされた先にあったイラーピュは中々広大なダンジョンだった。
地上には闘神都市から帰れなくなった人間達の町もあり、生活感があった。
仕方ない事かもしれないが、この闘神都市Θにはそんな物も無いし、イラーピュのような特別な施設も無い。
ランスは知らない事だが、イラーピュは戦争末期に作られた闘神都市。
比較的早く作られた闘神都市Θとは状況が違う。
だからランスが知っているイラーピュとは大きな差異が出るのは当然の事だった。
「ジル、とっととやる事やってここから出るぞ。流石に退屈だ」
特に目新しい発見も無いので、ランスとしても退屈を感じてきた。
変わり映えのしないダンジョンに、特に新たな発見も無い状況。
美女との出会いも無いし、ランスとしても非常に実りの無い冒険になってしまっている。
(志津香が使っていた魔法レベルを上げるなんちゃらとか…そういうのも無かったしな)
あの時はランスが志津香の邪魔をしたので儀式が不完全になってしまい、一時的にしか魔法レベルが3にならなかった。
ランスとしてはジルにあの儀式をさせれば良いかなと思っていたのも事実だ。
流石にこんな状況ではランスも性欲が邪魔する事は無い…多分。
「しかしここは何だか分からぬ所じゃな。我には何が何だかさっぱり分からぬ」
「心配しなくても誰も分からないわよ。スラルが少し分かるくらいじゃないかしら」
「我とて分からぬよ。フリーク・パラフィンとMMルーンは間違いなく天才だな。ランスと藤原石丸が戦闘の天才だとすれば、この二人は技術の天才か。パイアールに近いな」
実際、パイアールもこの闘神都市の技術は評価している。
だからランスにも間接的にマナバッテリーの入手を依頼しているのだが、流石のランスでもマナバッテリーを手に入れるのは難しい。
流石にこの闘神都市Θのマナバッテリーを引き渡すという訳にはいかない。
「しかしこのカプセルのようなものは一体何なのだ? 理解が出来ん」
殺姫はカプセルを見る。
それが何なのかこの場に居る者は誰も理解出来ない―――一人を除いて。
(うーむ、何かこれを見た事があるような気がするぞ)
これと同じような光景をランスは見た事がある。
それもここと同じ闘神都市で。
ただ、それがどういうタイミングで、何があったのかまでは覚えていない。
(何か楽しい事があったはずだ。だが、それが何なのか思い出せん)
思い出すべく頭を捻るが、やっぱり答えは出て来ない。
そして殺姫はそのカプセルが何なのか気になったのか、何か色々いじっている。
もし殺姫に運あれば―――いや、無ければ何も起きなかっただろう。
だが、殺姫にはランスと同じような奇妙な冒険運があった。
適当にいじっている内に、そのカプセルが開いてしまった。
「おお! 開いたぞ! だが、これが何なのか分からないな」
もし殺姫がもう少し警戒心が強く、好奇心が少なければこんな行為はしなかっただろう。
「ほう、人型のサイズの者がすっぽりと入る大きさか」
殺姫がカプセルに寝転んだ時―――そのカプセルが突如として閉まる。
驚く殺姫だったが、その時には既にカプセル―――コールドスリープの装置は起動してしまった。
「あ」
殺姫がカプセルを内側から叩く音は直ぐに聞こえなくなる。
その光景を見てランスはようやく思い出した。
そう、これはかつてランスがイラーピュを探索していた時、あの騎士志望のへっぽこが眠っていたのと同じ物だという事を。
「ようやく全ての魔力回路が繋がった! ようやく全ての施設の把握が出来た…って何が起きている?」
「ルシラ! あ、あの…このカプセルに入っちゃって…」
ジルの視線の先には殺姫が入ってしまっているカプセルがある。
「…コールドスリープ装置じゃないか! よりにもよって破損して私じゃ直せないものに…一体誰が!?」
「その…殺姫が」
「殺姫か…だったらいいか」
カプセルの中に居るのがモンスターの殺姫なのを知り、ルシラも大したことが無くて良かったと言わんばかりにため息をつく。
「出せんのか?」
「落下の衝撃で壊れてしまっている箇所があるからな。コールドスリープ装置が破損しているのは分かっていた。だが、まさか起動しているだなんて思っても居なかったな…」
ランスの言葉にルシラは難しい顔をしているようだが、相変わらず闘神ボディのせいで表情は分からない。
「直して貰うにしても、フリーク先生クラスの者でなければ直せないだろう。まあ中に居るのがモンスターだから別に構わないか」
「そうね。もうこの闘神都市の探索も終わりだしね」
レンもルシラの言葉に同意する。
「うーむ…中々話せる奴だっのだが…まあセックス出来んし仕方ないな」
女の子モンスターである殺姫にとっては人間の精液は劇毒だ。
なのでランスも手を出そうとはしなかったが、まあ女の子モンスターだしいいかと思っている。
「それよりも終わったのなら、戻って来てくれ。最後にやってもらう事がある」
「そうじゃな。まだ我等にはやる事があるからな。殺姫には気の毒じゃが、まあ運が悪かったのじゃろう」
「そうね。早く行きましょ」
「あの…ランス様」
ジルだけは殺姫の入っているカプセルをチラチラ見ているが、
「とっとと行くぞ」
「…はい」
ランスの言葉に少しだけ残念そうにため息をつくしかなかった。
ランス達がお帰り盆栽を起動し、拠点に戻っても殺姫はコールドスリープ装置の中で眠り続ける。
彼女が目覚めるのは―――まだ当分先になる事はまだ誰も知る由も無かった。
「さて…ようやく最後の工程に辿り着いた」
「まだあるのか」
ルシラに案内され、ランス達はマナバッテリーの所に来ていた。
「正真正銘これが最後だ。このマナバッテリーに魔力を吹き込む事で闘神都市Θは少しだが浮き上がる」
「少しとはどれくらいだ」
「今は雪に埋もれているが、その雪の上に浮上できる程だな。完全な浮上は出来ないし、今はそれが精一杯だろう。後は私の持つ魔力で高度を維持するという感じになるな」
「問題はまだ山積みだが、まずはそうしなければならないという事か」
ルシラの説明にケッセルリンクは何かを考える仕草をする。
この雪の中からは脱出出来るが、そこからどう人里に向かうか、そこはまだ解決していないという事だ。
「日数をかけて少しずつ魔力を注入していけば問題無いだろう。心苦しいが、そこはまだ我慢して欲しい」
「むう…」
すまなさそうに頭を下げるルシラに対してランスは難しい顔をするが、魔法に関してはランスは門外漢だ。
なので文句を言いたいが言う事が出来ない。
そう思っていると、ジルが意を決したように前に出る。
「魔力があれば直ぐにでも起動できますか?」
「あ、ああ。それは勿論だ。だが、お前に一人では難しいだろう」
ジルの魔力は知っているが、流石にルーンには及ばない事も分かっている。
というよりも、一人で闘神都市を浮上させられる魔力を持つルーンが規格外なのだ。
「ランス様。本気を出します」
「本気だと?」
「はい。これを一時的に解きます」
ジルはランスに右手の包帯を見せる。
「む…」
その意味を分かっているルシラ以外は驚きの顔をする。
「ジル、制御できるのか?」
「大丈夫です、ケッセルリンクさん。今の私なら、ある程度制御できます。スラルさんの助けで制御できるようになっているのは間違い無いです」
そういってジルは微笑むが、そこには彼女の持つ芯の強さが見て取れる。
「だから…やらせて下さい、ランス様」
暑さもそうだけど災害もね…
友人から大丈夫だと連絡は来たけどやっぱり心配なのは心配です
でも何か送ろうにも個人だと絶対に迷惑なんだよなあ…