ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争㊿

「どうにかなるんだな?」

「はい、ランス様」

「………本当に大丈夫なんだな」

「間違い無いです」

 ランスは非常に複雑な顔をする。

 そんなランスを見て、事情を知らないルシラは怪訝な顔をする。

 この男がここまで渋るという事が少し信じられなかった。

「おい、スラルちゃん。本当に大丈夫なんだろうな」

「ああ、問題無い。暴走する可能性はゼロとは言わないがな」

「アホか! だったらダメだろうが!」

「ランス。お前があの力を制御しようとしているように、ジルもまたあの力を制御しようとしている。あの時の彼女の覚悟、お前とて忘れた訳では無いだろう」

「ぬぅ…」

 スラルの言葉にランスも唸るしかない。

 ジルも今のランスと同じように力の制御をしようとしている、と言われてはランスとしても返す言葉が無い。

 ランスとて強い副作用が有りながらも、何とか使いこなそうとしている。

 魔人という強敵と戦うためには手段は選んではいられないのだ。

「…まあいい。だったら絶対成功させろ」

「はい! ランス様!」

 ランスの言葉にジルは嬉しそうに頷く。

 ランスはある意味この中に居る者達の誰よりも魔王ジルの事を知っている。

 ケッセルリンクも知っているだろうが、敢えてジルから距離を取っていた事も有るし、ジル自身もケッセルリンクを遠ざけていた節がある。

 だからこそ、懸念があるのも事実なのだ。

(まさか魔王のジルに乗っ取られたりしないだろうな…)

 魔王としてのジルはランスをして恐ろしい相手だった。

 ジルが手っ取り早く力をつけるための行動をしなければ勝つ事は出来なかったのは間違い無い。

 そしてジルはまどろっこしいがその行動には必ず意味がある相手だった。

 何かしらの備えを用意する程の周到さ…ランスはそんな風にジルを感じ取った。

 分裂魔法で魔王のジルと人間のジルに分かれたとはいえ、人間のジルにはその後遺症が残って居る。

 それが魔王だった頃の右腕と右足だ。

 普段は隠しているが、その下には恐ろしい程の力を持っているのは間違い無い。

 スラルはその力を中和するために今もジルの中に入っているのだ。

「…何かは分からないが、とにかく何とか出来るのだな? ジル」

「ええ、それは大丈夫です。ランス様も早く動きたいでしょうし、まずは出来る事から片付けて行きましょう」

「分かった。ならば早速始めたいと思う。準備が出来たら声をかけてくれ」

 

 

 そして直ぐにその日は来る。

 ランスとしても一刻も早くこんな何も無い所からは出ていきたかった。

 例えまだ外に出れないとしても、それでも出来る事をしないという事は無かった。

「マナバッテリーか。まだ直っとらんのだな」

「ああ。これは魔鉄匠でないと修理する事は出来ないだろう。まだ完全に壊れてはいないが、同時にその機能は完全じゃ無い。だから余剰に魔力が必要になる」

 ルシラはマナバッテリーに触れてため息をついたようだ。

「魔力が溜まった所で浮上は出来ないし、する気も無いがな。とにかく、お前達を無事に地上に戻す事が先決だ。そのための一歩だよ」

「フン、ジル。準備はいいのか」

「あ、今準備しますね」

 ランスの言葉にジルは返事をすると、おもむろに服を脱ぎ始める。

「…何のつもりだ」

「あ、その…どういう事か、肌を晒さないと上手く制御が出来ないんです」

「…ああ、そういう事か」

「まあ…そうなのかもしれないな」

 ジルの言葉にランスとケッセルリンクは『魔王ジル』を思い出す。

 魔王ジルは何故か常に全裸で…そして異形と化した手と足を持っている。

 その魔王としてのジルが全裸だったのだから、服を脱がないと上手く力が使えないのもあり得ない話では無いのかもしれない。

 ただ、ジルは流石に全裸にはならず、シャツとショートパンツの姿で脱ぐのを止める。

 そこにはシャツを盛り上げる大きな胸があるが、それ以上に右手と右足に巻かれた包帯の方が目立つ。

「…では行きます」

 そう言ってジルは右足と右手の包帯を外す。

 それを見てルシラとブリティシュは完全に息を呑む。

 そこにあったのは異形の右手足があったからだ。

 黒い肌に赤い紋様のが浮かんでいるという人ではない手と足。

 そしてそれが露になった時、確かに周囲の気温が下がった。

 ジルから強大な冷たい圧力が放たれ、ブリティシュも思わず冷や汗が流れる程だ。

「ジル…お前…」

 ルシラはジルが自分達と風呂に入ろうとしなかった意味をようやく悟った。

 この手足を見られるのが嫌だという事では無く、この手足を晒したままならば間違いなくジルという存在の異常さに気づくからだ。

「行きます、ランス様」

「うむ。しっかりやれ」

 ジルは右手に魔力集中させる。

 それだけで周囲の空間が揺らぎかねない程の魔力が集まって行っているのが魔法使い達には分かる。

 ジルも膨大な魔力に冷や汗を流しながらも、何とかマナバッテリーに魔力を流し込んでいく。

「想像以上だな…これもジルの素質、そしてアイツの置き土産か…」

 ジルの口から放たれたのはスラルの言葉だ。

 誰もが固唾をのんで見守る中、ジルの魔力がどんどんと膨れ上がって来る。

 同時にジルの目の色がその髪と同じ色に変わり、同時にその瞳が紅く染まっていく。

「ジル…飲まれるな。奴の置き土産、制御してみせろ」

「はい…スラルさん」

 凄まじい魔力の放流にマナバッテリーが悲鳴を上げそうになった時、ケッセルリンクがジルの体を押さえる。

「もう十分だ、後は私とレンがやるさ」

「そうね。このまま暴走なんていったら洒落にならないし」

 そう言って二人がマナバッテリーに魔力を送る。

 それを見てジルは糸が切れた様に倒れそうになるのをランスが支える。

「なんだ。まだまだ制御出来とらんではないか」

「ランス様…」

 ランスは乱暴にジルの頭をぐりぐりと撫でる。

 それを受けてジルは嬉しそうな顔になると、ランスに抱き着く。

「で、本当に問題は無いんだろうな」

「大丈夫です…この状態での戦闘は出来ませんけど、これくらいなら…」

「そうか。じゃあさっさとその手と足を戻しとけ」

「は、はい」

 ランスの言葉を受けてジルは手足に器用に包帯を巻いていく。

 服を着終えてようやく一息付けたようだ。

「………同じ名前なのかと思っていた。そんな名前を付ける親も珍しいとは思っていたが、かつての魔王の支配から300年以上経っていたのだ、特に変な意味は無いと思っていた」

 ルシラは恐らく真剣な顔でジルを見ているのだろう。

 その言葉は少し硬い。

「魔王…ジル。その両手足は異形の姿だと聞いた事がある…そしてその容姿も。偶然だと思っていた…いや、そうで無いとおかしいのだ。正直今でも私は困惑している」

「ルシラ…」

「ジル…お前は魔王…なのか?」

「違うぞ。こいつは俺様の奴隷だ」

 ランスがジルの頭をぐりぐりとしながらルシラを見る。

「ランス…お前は一体何なんだ? 当然前から疑問に思ってはいた。だが、それをお前に聞くのも無粋だと思って口にしなかった。だが、流石に聞かないといけない」

「そこまでよ」

 そんなルシラに対し、レンが底冷えする程の冷たい声でルシラを制する。

「レン…お前も…」

「言っとくけど私は容赦しないわよ。アンタを排除するのに何の躊躇いも無い。ま、流石に私一人じゃ厳しいけど…この場に居る全員を敵に回す覚悟はある訳?」

 ルシラはその場に居る皆を見る。

「そうか…皆は知っているのだな」

 そしてため息をついてから首を振る。

「だったら聞かない。正直今の私にはどうでもいい事だからな。分かっている事は、私はジルと共に魔法学院で学んだ友だという事だ」

「アンタが完全にランスの味方になるんなら話は別だけどね。でもそうじゃないでしょ」

「ああ。私達闘神には絶対服従魔法がかかっている。もしルーンに聞かれれば私も答えないといけない。だから今は完全にお前達の味方になる事は出来ないからな。個人的にはお前達の味方もしたいんだけどな…」

 ルシラは完全に吹っ切ったように笑う。

「まずは闘神都市を浮上させよう。そうすれば少しはマシになるからな」

 そう言ってルシラは何かの魔法を唱える。

「聖魔法か。しかし人がこのような新たな魔法を生み出すとはな」

 スラルは動き出す闘神都市を感じ取り感心したように腕組みをする。

「大丈夫なのか、スラルちゃん」

「ああ、暴走するような真似はしないよ。ジル自身が強くなっているという事もあるが、そもそもジルの中に残って居る血は我に残って居る血の量と大差ない」

「…フン」

 少しだけ詰まらなそうにするランスを見てスラルは苦笑する。

 実際にはランスが一番安堵しているのだろう。

(…やはりランスは『魔王ジル』に対して何か思う所があるようだな)

 ジルがナイチサによって魔王にさせられた時から気づいていた事だが、スラルは敢えて口にはしない。

 あの時のランスの本気の動揺はスラルも驚いた。

 かつて魔王であった自分と対峙した時でも見せなかったのに、ジルに対しては本気で驚き、そしてナイチサへの怒りを露にした。

(そしてランスは間違いなくこの闘神都市…そして闘神という存在そのものを知っている。という事は『近い』という事か)

 スラルはランスの態度からその時が近い事を感じ取っていた。

「ようやく高度の維持が完了した。ここまで長い様で短かったが…問題はこの後だな」

 ルシラは手元に地図を浮かび上がらせる。

 ようやく今現在、闘神都市Θが何処に墜落したのか完全に把握する事が出来る。

 そして墜落した正確な位置を見て少しだけ安堵する。

「やはりデトナ・ルーカが近い。しかし、それでも人間が歩いて行くにはやはり距離があるか」

「雪道だからな。それに視界も悪い。人間には流石にキツイだろうぜ」

 黒部もルシラが浮かび上がらせた地図を見て呻く。

「こちらに援軍を回す戦力も無いだろうしな…ここからは私もお前達に助言をする事は出来ないな」

「フン、関係無いわ。とっととこんな辛気臭いつまらん所から出ていくぞ」

 そしてランスは速攻で出口へと向かい―――直ぐに戻って来た。

「なんだアレは! 前が全く見えんではないか!」

「だから言っただろう。外は万年吹雪の極寒の地だと。体温はどうにかなっても、視界は無いに等しいしこの雪の中を行軍する装備も無いだろう」

「ぐぬぬ…結局ここから出れんという事では無いか!」

 闘神都市が浮上すれば外に出れる―――その考えは流石に甘かったようだ。

「おいルシラ。闘神都市を動かせ」

「無茶言うな。こうして高度を維持して最低限の機能を動かしているだけで手一杯なんだ」

「ぐぬぬ…」

 ランスは魔法に関しては素人なので何も言い返せない。

 状況は一歩進んだが、そこからの歩みが絶望的に遠い。

 この豪雪では目印なんて意味無いし、遭難すればそれこそ一巻の終わりだ。

「ランス、少し落ち着け。恐らくはもう動いている者達が居るだろう。カインに関してもそうだ。奴がお前を見捨てるというのも考えにくい」

 ランスを落ち着かせるようにケッセルリンクが微笑む。

「そうですよ、ランス様。もうちょっとだけ待ってみましょうよ」

「ああ。食料に関しても余裕が有る。人間はお前達しか居ない訳だからな」

「…フン、仕方ない。もう少し待ってやるか」

 闘神都市が完全に雪に埋もれ、ランス達がここから出られなくなるという事は防げた。

 勿論まだ問題は有るのだが、まだ解決策は見当たらない。

 なのでランス達はゆっくりと待つ事にした。

 魔人と戦争をしているとは思えない程にゆったりとした時間が経過する。

 ただ、そんな時間も積み重なれば暇となってしまう。

「暇だな」

「そうね…この闘神都市が落ちてから結構時間が経ったでしょ。外の様子は別にどうでもいいけど、暇っていうのはやっぱり精神的に嫌よね」

 ランスの言葉にレンが同意する。

 勿論ランスは女達と共に毎日セックス三昧だったが、それでもこう何も出来ない状況はストレスが溜まる。

 闘神都市の起動には成功したが、そこから何一つ進んでいないのだ。

 ぶっちゃけランスにとっては徒労感が増すだけになってしまった。

 勿論今この闘神都市Θが通常通りに起動すると大変な事になるのだが、ランスはそこまでは考えていない。

 とにかく今の状況がランスの精神状況的に良くない、という事だけが頭の中にあるのだ。

 それは別にランスだけに限った訳では無く、ブリティシュもジルも同じように感じている。

「おいルシラ。本当に何ともならんのか」

「ならない。ハッキリもう一度言うぞ。何ともならない。今この闘神都市Θは最小限の機能しか起動させていないと言っただろう。私だって今の聖魔教団の状況は気がかりなんだからな」

「うーむ…それにしてもここまで俺様が放置されるとは。ハンティの奴も何をやっとるんだ」

「始祖様にそれを言うのは酷だろう。あの方はカラーの生存が優先なんだ。今、カラーの立場と言うのは非常に曖昧なのだろう」

「瞬間移動が有るだろうが」

「そこまであの方を絶対視するな。ただ、私としても気がかりな事は有るのだがな…」

 ケッセルリンクは頭を悩ませるが、それでも自分達からは出来る事は少ないと考えて言葉を止める。

(私の使徒達に連絡を取れれば良いのだがな…しかし、今の状況ではそれは酷か。ただ、シルキィとハウゼルならばそろそろ動いていてもおかしくは無いのだがな…いや、バークスハムがそれを許さない可能性も捨てきれない…)

 状況を考えると色々と悪い考えが出てしまうのは、ランスと関わって居るケッセルリンクの悪い癖だ。

(…まあ正直ランス一人をそこまで警戒する理由も無いか。そもそも本当にランスが邪魔ならば、あんな回りくどい事をしなくても直接ランスを害すれば良いだけだからな。日光が無いランスではバークスハムには勝てないからな)

 結局の所、魔王はランスを別に危険視している訳では無いとケッセルリンクは判断せざるを得なかった。

 実際ランスは別に魔王の脅威になる訳でも無い。

 確かに何体もの魔人を倒してはいるが、魔王は別次元の存在だ。

 ランスの剣がどれだけ強くても、ガイにとっては結局は人間の範疇でしか無いのだ。

「む…」

 その時、ルシラが何かに気づいたように立ち上がる。

「どうしたの、ルシラ」

「何かが闘神都市に接近している。それも巨大な何かが」

「巨大な何か?」

「デカントよりも大きい…そんな存在が何故ここを目指す? ここは墜落した闘神都市だ。魔人にとって価値のあるものじゃない」

 魔人が興味を持つのはあくまでも闘神の強さであり、闘神都市そのものには価値を見出していない。

 唯一パイアールだけは闘神都市に興味はあるが、自分は魔法技術には疎いという自覚もあり、そこまで強い興味を抱いているという訳でも無い。

 それは魔物だって同じで、仮に魔物達が闘神都市を接収した所でそれを理解出来るとも思えないし、この闘神都市を利用する事だって出来ないだろう。

「しかも真っ直ぐにこの闘神都市を目指している。まるでこの地に闘神都市Θが有るのを知っているかのようだ」

 ランス達は戦闘態勢に入る。

 巨大な魔物が真っ直ぐにここを目指しているのであれば、それは間違いなく敵だ。

 もしここを壊そうとしているのなら、それは阻止しなければならない。

 幸いにも今日は吹雪も晴れているので、雪のお守りがある今戦闘も問題無い。

 ランス達が闘神都市を出た時、確かにその巨人は存在していた。

 闘神よりも大きく、そして巨大な質量を持つまさに巨人だ。

 その巨人がランス達を見下ろして居た。

「む…こいつは」

 ランスはその巨人の強さを感じ取り―――剣を下ろした。

「ランス?」

 戦闘態勢を解いたランスにブリティシュは驚く。

「どうやってここが分かった、シルキィ」

「やっと見つけた。大変だったわよ…闘神都市が墜落したって聞いてずっと探してたんだから」

 巨人―――魔人シルキィが身に纏っていたリトルを解除し、闘神都市に着地する。

「無事で安心したわ、ランス君」

 そしてランスに向かって行くと、そのままランスの頭を掴み撫で始める。

「だからそれを止めろと言ってるだろうが!」

「お姉さんが弟のしんぱいするのは当然でしょ。それよりも本当に無事で良かったわ」

 リトルを脱いだシルキィを見てルシラが固まる。

「ま、魔人!?」

 ルシラがシルキィを見て身構える。

「大丈夫ですよ、ルシラ。シルキィさんは人間と戦う気は無いですから」

「あ、これが闘神? 初めて見たけど…私のリトルとはやっぱり全然違うのね」

 シルキィが興味深そうに闘神を見上げる。

「ちょ、ちょっと待て! シルキィ…まさか、シルキィ・リトルレーズン!?」

 ランスとジルがシルキィの名前を呼んだ事で、ルシラが目の前にいる魔人の正体を知る。

「魔人シルキィ…人類の裏切り者であると同時に、魔人を倒した英雄…」

 シルキィ・リトルレーズンの名前は本来の歴史とは違う形で人類に伝わっている。

 人類を裏切り魔人となった存在としてだが、同時に魔人を倒した人類の英雄としても扱われている。

「ああ…私ってやっぱりそういう風に伝わってるんだ…」

 ルシラの評を聞いてもシルキィは特に表情を変えない。

 別に自分がどう言われようが、今現在人類が無事ならばそれでいいのだ。

「いや、魔人になったのには人類の解放のため…と私達は聞いている。これはカラーからの言葉で真実がどうかは分からないが」

「取り敢えず戻らないか? この寒空で話す内容では無いだろう」

「…あ! ケッセルリンク!? あなたの呪い解けたの!?」

 初めて生のケッセルリンクを見てシルキィは驚きの声を上げる。

「それを含めてな。まずは戻ろう」

 ランス達はシルキィを連れて魔法ハウスに戻る。

「これが闘神都市か…凄いわね。破壊された闘神都市とは大違い」

「…破壊されてるならばそれは違って見えるだろう。しかしこの闘神都市に魔人を招く事になるとはな」

「あはは…今戦争中だしね。私もガイ様なら戦争にならないと思ってたんだけど…」

 ルシラの言葉にシルキィも力ない笑みを浮かべる。

「だが実際に戦争は起きた。魔人からの襲撃という形でな」

「魔王様が許可した以上もうどうしようもないわ。私がどうにか出来る状況でも無いし。私に出来る事はこの戦いに参加しない事…それだけしか無かったわ」

「…それなのに何故魔人シルキィがここに? それとランスとはどういう関係なのだ」

「ああ、私はランス君の姉だからね。ここに闘神都市が落ちたのを聞いて探しに来たのよ。で、ハンティからこの場所を聞いてようやく探し当てたって訳。私が動いている分には魔物達も何も文句も言えないしね」

「…姉?」

 ルシラは首を傾げてランスを見る。

「こいつが勝手に言ってるだけだ。俺様に姉などおらん」

「いやねえ、ランス君。前から私はランス君の姉だって言ったじゃない。私はランス君のストッパーだもの。それは多分私かランス君が死ぬまで変わらないわ」

「今更だが、お前は本当に人の話を聞かないな」

「お前にそっくりではないか」

 ランスの言葉にルシラが突っ込む。

「それにしても…ケッセルリンク、あなた呪いが解けた…という訳じゃ無いのよね? 魔人の気配が感じないし。それにメイの姿が見えないし」

「ああ。それについては私が説明しよう」

 ケッセルリンクは今起きた事をシルキィに説明する。

「そうなんだ…それもカラーの不思議な力なのかしらね。でもあなたがランスの側に居るなら安心だわ」

 シルキィは少し驚いたが、それ以上にケッセルリンクが一時的とはいえ復活した事を素直に喜ぶ。

「で、ランス君達はここに缶詰めになってるのよね」

「うむ、あのバカドラゴンの奴は今何しとるんだ」

「あー…カインも結構な怪我をしたみたいでね。今翔竜山で体を休めてるのよ。ハンティがカインから話を聞いて、この闘神都市の位置を探し出して、私に伝えてくれたのよ。最初はランス君達と合流しようと思ったみたいだけど、彼女でもこの状況からランス君達を助ける事は出来ないみたいだし」

「じゃあお前なら何とかなるのか」

 ランスの言葉にシルキィは頷く。

「勿論。私がリトルを纏えば、魔法ハウスを持ったまま移動出来るもの。だからお姉さんに任せなさい!」

 そう言ってシルキィは胸を張るのだった。




暑いですよね…ホント
でも去年よりもマシなのかなあとか考えてしまいます
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