ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争 51

「でも取り敢えず、状況を聞きたいんだけど…いい?」

「いいんじゃない? シルキィなら万が一にも私達の事が漏れるなんて事は無いでしょ」

 シルキィの言葉にレンが頷く。

「勝手に決めるな。まあ今は動くつもりは無いから構わんぞ」

 レンが今の自分達の状況を話す。

 魔人バークスハムとの戦いで闘神都市が落ちた事、そして闘神都市の復旧のために動いていた事。

 そしてこの豪雪の中で立ち往生していた事。

「大変だったわね…私が来なかったらランス君達は何年も動けなかったんじゃない?」

「そんな訳あるか。その前にセラクロラスが来るだろ」

「あ、そうか。セラクロラスが居たわね…でも、闘神都市が墜落しても無事だったなんて流石ランス君ね」

 やたらと人間に対してフレンドリーなシルキィにルシラは困惑する。

 これまで数多の魔人と戦ってきたが、魔人とは基本的に人間を見下している。

 ケッセルリンクはこちらを見下しては居ないが、明確な線引きをしっかりとしていた。

 が、このシルキィはそんな事お構いなしだ。

 ただ、厚かましいような感じが無いのは本人の人柄なのだろう。

「それにしても…妖怪王か。私、妖怪って初めて見るのよね」

 シルキィは興味深そうに巨体の黒部を見る。

「…お前、強いな」

 黒部もシルキィを見てその強さを感じ取る。

 藤原石丸やランスと同じく稀代の英雄…その素質を黒部も感じ取った。

 魔人ではあるが、それでもザビエルのような邪悪さは無い。

 純粋に生命力と覇気、そして優しさに溢れた存在のようだ。

「そして…こうして互いに生身で顔を合わせるのは初めてかな? ケッセルリンク」

「そうだな。君はガイによって魔人になったが…私はジル様の時代から魔人としての体には戻れていないからな」

 シルキィとケッセルリンクは初めて生身で顔を会わせる。

 正確にはケッセルリンクの本体では無いのだが、それを感じさせない力が目の前のカラーから感じ取れた。

 それがメイの肉体だからというのもあるだろうが、何よりも魔人四天王であるケッセルリンクの存在感が有る。

 ただ、知っているからシルキィはそう言えるのであり、何も知らない者は彼女を見ても魔人ケッセルリンクだとは思わないだろう。

 魔人の気配が無いのだから無理も無い。

 シルキィも事情を知らなければ彼女をケッセルリンクだとは思わない。

「そして闘神か…私は壊れた闘神しか見てないけど、小柄なのね」

「それは私が闘神としては小柄というだけだ。私よりも大きな闘神だって当然存在している。それよりも、私としてはあの英雄シルキィ・リトルレーズンが目の前に居るという事に感動している」

「私、人類からどういう扱いされてるんだろ…裏切り者だったり英雄だったり、正直さっぱり分からないんだけど」

 ルシラの言葉にシルキィは曖昧な笑みを浮かべる。

 自分の扱いはシルキィも理解しており、それに関しては何の文句も無い。

 後世の人類が平和ならば、自分の悪評などどうでもいいと考えているのがシルキィだからだ。

「少なくともカラーからは英雄視されているのは間違い無い。何しろ魔人メディウサをカラーと協力して倒したという伝説が残って居る」

「うーん…カラーだったらそう伝えるか。あ、変な意味じゃ無いのよ。むしろ良い意味で真実を捻じ曲げていてくれているというか、カラーって律儀なんだなって思ってるだけだから」

「ではカラーに伝わっている伝承は虚偽だと?」

「そこも微妙な話だからね…都合が良いと言えば都合が良いんだけどね」

 シルキィは腕を組んで考える。

 ただ、シルキィとしてもランスの名前が表に出ない事は正直有難い。

 真実を知っている魔人も居るが、別に魔人の事はどうだっていいのだ。

 人間相手に真実を流布するような存在じゃ無いし、あくまでも狙っているのはランスという人間個人だ。

 ただ、人類圏にその話が広まるというのは少々具合が悪い。

「ランス君、どうなの?」

「何がだ」

「彼女…信じられるの?」

「うーむ…こいつが生身の体なら俺様の女にするのだが…こんな体だからなあ…」

 あの健康的で魅力的だったルシラの体は今や硬い闘神ボディになっている。

 これでは当然性的な魅力なんて感じない…というか、人間じゃ無いのだから当然そういう対象ですらない。

「じゃあ止めといた方が良いわね。変に伝わっても嫌だし」

「…何かしら隠された真実があるのは間違い無いが、教えてはくれないか。信用されてないのだな」

「当たり前よ。絶対服従魔法がかかっている奴相手に話す訳無いでしょ」

「それを言われるとどうしようもないな」

 レンの指摘にルシラもため息をつくしかない。

 正直に言えばルシラはもうこの戦争には参加できる状態ではなく、聖魔教団が負けるまで最早何も出来ないのが事実だ。

 だが、その結果ルーンが死ぬかと言われればルシラも信じられない。

 ルーンは聖魔教団最高…いや、人類最高の魔法使いなのだ。

 そのルーンがそう簡単に死ぬ訳が無いとルシラは信じている。

「じゃあ私も何も言わない。それよりもランス君、いつ出発する?」

「直ぐにでも出られる訳じゃ無いだろうが」

「出られるわよ? 私魔人だし。夜でも問題無いし、少しくらい徹夜しても何も問題無いけど」

「そうか。じゃあ直ぐにでも行くぞ」

 ここの生活に飽きてきていたランスは即座に答える。

「そうか…早い方が良いかもしれないな」

 ルシラは少し残念そうだが、ランス達にはランス達の事情がある。

 それにこのまま闘神都市に居たとしても無意味だ。

 ランスの目的は聖魔教団にあるバランスブレイカーのようだが、正直ルシラとしてはその内容には賛同できなかった。

 何しろ魔人ケッセルリンクの呪いを解くアイテムを探しているというのだ、そんなの聖魔教団の人間が教えられる事では無い。

 だから教えてはいないが、この男にはそんな事は関係無いのだろうなと思う。

「で、本当に大丈夫なんだろうな、シルキィ」

「大丈夫よ。こう見えても繊細な動きだって出来るんだから。ランス君の前では着てないけど私は普段はリトルを纏ってるしね」

 再び闘神都市の外に出たランス達は魔法ハウスを展開する。

 ランス達がその魔法ハウスの中に入ると、巨大なリトルを身に纏ったシルキィがその魔法ハウスを持ち上げる。

「…本当に持ち上げた」

 それを見ていたルシラは半ば呆れたように声を出す。

 そして魔人シルキィはそのまま魔法ハウスを抱えたまま雪の中を歩いて行く。

「呆れる程に力技だな…それもまた魔人の力の恐ろしさか」

 改めて魔人シルキィがこの戦争に参加していなかった事を安堵する。

 あれ程の巨体とパワーの持ち主をどう相手にするか…正直見当もつかない。

「さて、私は私で今の闘神都市で出来る事を確認しないとな。これからしばらくの間はスリープモードに移行しなければならないからな」

 ルシラがこの戦争で出来る事はもう無い。

 ならばこの闘神都市を守っていく事、それが今のルシラの役割だ。

「あとどれだけ持つか…いや、地上の人達がどれだけ耐えられるか」

 ランス達の話を聞き、ルシラは地上がどれ程酷い事になっているのか改めて知った。

 闘神都市には魔人が攻めてきている分、魔軍と呼ばれる軍団は全て地上の蛮人と呼んでいる者達に押し付ける結果になってしまっている。

 その話を生で聞いた時、ルシラにはある懸念が生まれた。

 闘神や闘将は疲れも無いし、精神的に疲弊する事も少ないが、生身の者達はそうはいかない。

 そうなった場合にどうなるか…それはこれまで人との間での戦争を経験していたルシラにはよく分かっている。

「願わくば、闘神都市が地上の脅威にならん事を…」

 そう言ってルシラは闘神都市Θへと戻っていく。

 だが、ルシラの願いは裏切られる事となる―――それも己の盟主である男の精神の限界によって。

 そしてルシラもまた、その限界から来る事から逃れられない事をまだ知らなかった。

 

 

 

 シルキィ移動中の魔法ハウス内―――

「まさかここまでの力技とは…魔人シルキィ、恐るべき魔人じゃな」

「あいつは昔からあんな奴だぞ。基本的にあいつは脳筋だ」

 驚きつつも呆れた顔をしているお町に対してランスも呆れたように言う。

「しかしお前の姉を名乗るとはな。クックック、お前でも女に対してあんな態度を取るんだな」

 シルキィの姉発言を聞いた黒部はランスを見てニヤニヤと笑う。

「やかましい。あいつが勝手に名乗ってるだけだ。何度言っても聴かんからな…シルキィは」

「お前を諦めさせるってのがすげぇな」

「昔から結構話聞かない所あったしね。シルキィは」

 レンの言葉にジルも愛想笑いをするしか無い。

 彼女の言う通り、シルキィとはそういう人間だったからだ。

「でも、彼女が魔人になった事で人類を解放させるという事をしたんだ。彼女はまさに英雄さ」

「お前は何も出来んかったからな」

「あはは…面目ない」

 ランスの言葉にブリティシュは苦笑するしかない。

「ランス様。これからどうするんですか? ペンシルカウに戻ったとしても、これ以上私達に出来る事も有るとは思えないんですけど…」

「うーむ…」

 ジルの言葉にランスも悩む。

 正直やりたい事は色々とある。

 ケッセルリンクの体を本体である肉体に戻す事もそうだが、聖魔教団は色々なバランスブレイカーを隠し持っている。

 ルーンから貰ったバランスブレイカーの剣にしても、今のランスが持っている剣が更に上のバランスブレイカーというだけで、普通に有用なアイテムだ。

「…パイアールの依頼はどうするつもりだ? 受けるのか? 尤も、失敗した所で奴は何も言わんだろうがな」

「マナバッテリーか…」

 パイアールからの依頼はシルキィの口を通してランスに伝えられている。

 が、そこに関してはランスにとっては実に悩ましい出来事でもある。

 ランスが知っているマナバッテリーはゼス四天王の塔の地下にあったものと、マジノラインの地下にあった破損していたマナバッテリー。

 そして今まだ建造途中である闘神都市イラーピュのマナバッテリー、そして闘神都市Θにある機能が完全では無いマナバッテリーだ。

 ランスとしてはゼスの所から1個くらいパクっても良いかなと思っていたのだが、思い止まった。

(…あそこのマナバッテリーが無くなったらどうなるのだ)

 ゼスにあるマナバッテリーのいくつかはゼスでの動乱の時にランスが破壊した。

 その結果、マジノラインの魔力供給が崩れた結果、カミーラ率いる魔軍がゼスを蹂躙した。

 ランスが魔人カミーラ達を何とか倒した事と、マジノラインのマナバッテリーを修理して何とか魔軍を追い払う事が出来た。

 別にマナバッテリーを壊そうがランスにとってはどうでも良いのだが、そうする事によって何か変化が起きるのか全く予想が出来ずにいた。

 最悪、あのうるさいが結構話せるガンジーや、その娘でランスの女であるマジックが存在しなくなるのかもしれない。

 それはランスにとっては美味しくない展開だ。

 そこを考えると、まだ未知の闘神都市からマナバッテリーを奪ったり、今回の闘神都市Θのように何とかマナバッテリーを破損させず、尚且つ闘神をぶっ潰すという事が必要になる。

 が、そんな事は正直言って常識的に不可能だ。

 そもそもLP期でマナバッテリーはゼスでしか見つかっていないし、後者に関してはそんな都合の良い事なんてあり得る訳が無い。

 それを考えると色々と難しいという事が分かる。

「…まあそこは後で考えるか」

 今考えても答えは出ないので、出たとこ勝負で行くしかない。

 正直ランスとしてもマナバッテリーを手に入れるというのは面倒な事だとは思っていた。

「そもそも魔人にマナバッテリーを渡すなんて行為をして大丈夫なのかい? そのパイアールという魔人がそれを使って人に牙をむける可能性は有るだろう。魔人は魔王の命令には逆らえない」

 ブリティシュは魔人に苦しめられた時代の人間なので、魔人の危険性や脅威を誰よりも分かっている。

 魔人パイアールの事は良く知らないので、その言葉が出てくるのは当然だろう。

「問題無い。あいつはそういう面倒な事はしない。魔王の命令が無ければ本来は人間など相手にしないと考えている奴だ」

「でもその魔王の命令が有れば…」

「そもそもパイアールの技術が有ればそれだけで人の脅威だ。それに魔法に関しては門外漢、パイアール自身が言っていた事だ。マナバッテリーを手に入れたとしても、それを使った技術で何かを作るという事は無い」

「…僕はそう簡単にその言葉を信じる訳にはいかないんだよね」

 ブリティシュはケッセルリンクに厳しい目を向ける。

 その視線を受けてもケッセルリンクは涼しい表情で余裕の笑みを浮かべるだけだ。

「信じる信じないはお前の勝手だ」

「…まあ皮算用なのかもしれないね。そもそもマナバッテリーを手に入れられるかどうか怪しいからね」

 ブリティシュは少し苦笑する。

「どれくらいでこの雪原地帯を抜けられるか…外の様子は分からぬのがな」

 お町は窓から外を見るが、そこは相変わらずの豪雪だ。

 動いているのは魔法ハウスが少し揺れる事で理解出来るが、その揺れは非常に小さい。

 シルキィが魔法ハウスを壊さぬように慎重に歩みを進めているからだ。

「それにしても冷えて来たね…」

 ブリティシュが毛布を纏いながら呟く。

「人間ってのは大変だな」

 それを見て黒部が何の気なしに呟く。

「黒部には天然の毛皮があるしね」

「レン、お前は寒くねえのか」

「私はこれくらいは問題無いわよ。万が一に備えて戦う準備はしてないとね」

 レンは普段通りに鎧を纏っている。

 万が一にもシルキィが襲われるとは思わないが、それでも万が一の事を考えるのが彼女の仕事だ。

「ランスは意外と落ち着いておるの」

「当然だ。二回目だしな」

「二回目?」

「こっちの事だ。それよりもジル、ケッセルリンク、来い」

「あ、はい。ランス様」

「ああ」

 ランスに呼ばれてジルが嬉しそうにランスの元へと向かう。

 ケッセルリンクもランスに体を押し付け、一緒に毛布に包まる。

 ランスはこの豪雪地帯を超えるのは初めてではない。

 ヘルマン革命では浮遊要塞に乗ってこの豪雪地帯を超えた経験が有る。

 その時に比べれば今の状況は格段にマシだ。

 外気に晒され魔法ハウスの中は確かに寒いが、防寒設備はきちんと用意されている。

 流石にこんな所でセックスをする程ランスはバカではない。

 少しの間、ランス達はシルキィに運ばれ魔法ハウスの中で寒さに耐えていた時、突如としてその寒さが緩くなった。

 煩かった吹雪の音が止み、シルキィの歩みが少し早くなった。

「吹雪を抜けたみたいね」

「ようやくか…」

 ランスは冷える体を震わせながら呟く。

 流石のランスでもこの寒さは堪えた様で、その顔色は少し悪い。

 この場で完全な人間はランスとブリティシュだけなので、2人にはこの寒さはやはり厳しかった。

 それはケッセルリンクも同様のようで、ランス程では無いがその顔色はあまり良くない、

「ランス様、大丈夫ですか?」

 やはり少し人間と違うジルはこの寒さは大丈夫なようで、寒がっているランスに抱き着きながら心配そうに見上げてくる。

「大丈夫じゃない。とっとと温かい風呂に入りたい」

 魔法ハウスはこの外気で完全に凍り付いており、その機能の殆どを停止していた。

 風呂も凍り付いており、使える状況じゃない。

 ランスのコレクションの貝を何とかジルに保護させたが、それ以外の物は寒さの影響を強く受けていた。

「ここまで来たらもう大丈夫でしょ。魔法ハウスはちょっと厳しいけどね…」

 レンは残念そうに言う。

 流石の魔法ハウスもこの状況には耐える事は難しかったが、命があるだけでも十分過ぎる結果だ。

 そしてシルキィの足が止まり、魔法ハウスが地面に下ろされる。

「カラーの森の入り口に着いたわよ、ランス君」

「ようやくか…」

 ランスは気怠そうに魔法ハウスから出てくる。

 元気なのはジルと黒部とお町だけだ。

 シルキィはリトルを体から離し、ランスの顔に触れる。

「冷たい! ごめんね、もう少し早く着ければ良かったんだけど…」

「いや、いい。それよりもとっととペンシルカウに行くぞ」

「そうだな。早くペンシルカウに急ぐか」

 ランスの様子を見て、黒部がランスとケッセルリンクの二人を担ぐ。

「あ、こらお前」

「こんな時くらい大人しくしやがれ」

「じゃああなたは私が運んであげるわ」

 シルキィがランス達と同じように顔色の悪いブリティシュを担ぐ。

「わ、悪いね…」

「それよりも急ぎましょう。豪雪地帯を抜けたのに死んじゃったなんて馬鹿らしいしね」

 こうしてようやくランス達はペンシルカウに戻ってくる事が出来た。

 

 

 

「あー…生き返るな」

「そうだな…こうして森の中に改めて戻ってこれたのは嬉しい事だ」

 ペンシルカウについてからはまずはランス達は温かい温泉へと運ばれた(ブリティシュは一人別の風呂に押し込められた)

「大丈夫ですか? ランスさん。私はこんな事しか出来ないですけど…」

 寒がっているランスをハウゼルが優しく抱きしめる。

「いや、あったかくて良いぞ。もっとひっつけ」

「…大きくなってますけど、エッチな事はダメですからね」

 大きくなったハイパー兵器を感じ取り、ハウゼルは少し顔を赤くしながらもランスにくっつく。

「ケッセルリンク様、大丈夫ですか?」

「私もハウゼル様みたくくっつきたいでーす」

「大丈夫だよ。エルシール、加奈代。それからくっつく必要は無い。私の体はそこまで柔ではないさ」

 主であるケッセルリンクが戻ってきた事に使徒達は大喜びだ。

 例え魔人としての気配が無くても、彼女達にとってはケッセルリンクは大切な主なのだ。

「でもケッセルリンク様とこうして生身で話せるなんて…カラーの術は本当に凄いですね」

「そうですね。でも、魔人としての力を使えないというのも気になります」

 パレロアとシャロンも感心しているが、やはり今のケッセルリンクの状態に不安を覚えている。

「問題無いよ。魔人としての力…無敵結界は無いが、逆に今は昼でも力が落ちない。その点で言えば私は魔人の時よりもランスの役に立てる。私にとってはそれがなによりも嬉しい事さ」

「…ケッセルリンク様はなんでこんなにこの男の事を」

 バーバラは今でも納得いってないが、そんな彼女を誰も咎めることは無い。

 もうそれが彼女の役割だと言わんばかりに生暖かい目を向けるだけだ。

「問題は魔法ハウスね。やっぱり破損してるみたいで水とかが出ないわ」

 同じく温泉につかっていたレンが少し困ったように言う。

「私達じゃどうしようもありませんしね…」

 レンの言葉にエルシールも深刻そうな顔をする。

 彼女も魔法ハウスの便利さ…何よりも、自分が人間だった頃にランスと共に冒険した拠点とも言える魔法ハウスが壊れてしまった事は残念だ。

 だが、この場に居る者ではどうしようもなかったのも事実だ。

「でもフリーク先生の残してくれた装置は使えるんですよね…やっぱり闘神都市と同じ材質みたいで、凄い頑丈ですよ」

「それはどうでもいい。だが、俺様の魔法ハウスが使えなくなるとは…」

 ランスとしても愛用の魔法ハウスが使えなくなるのは非常に困る。

 ペンシルカウのような安定した拠点…さらに言えばLP期のように人類が発展しているのなら話は別だが、今の状況だとやはり魔法ハウスが無いのは非常に不安定だ。

 ランスが少し悩んでいると、ハンティが突然現れる。

「戻ったみたいだね」

「ハンティか」

「で、何やってんの?」

「ランス様は少し体の調子が悪くて…本当なんです」

「別に疑っては居ないさ。それよりもケッセルリンク…だけど、メイの体を使ってるのかい?」

「ええ、始祖様。メイからの進言が有りまして、有難く使わせてもらっています。この体に居る間、私は魔人ではなくカラーのケッセルリンクとして働く次第です」

 そんな事を言うケッセルリンクに対してハンティは少し嬉しそうに笑う。

 昔の事…ケッセルリンク達と協力し、魔人と戦った時の事を思い出したのだ。

「あ、それよりもちょっと話が有ってね」

「何だ。お前がそう言う時は厄介な事しか無いぞ」

「…まあその通りだね。魔人に狙われている闘神都市があってね」

「そんなのどんなのでも同じだろうが」

「まあね。ただ、ここから結構近い所に有るからね。下手したらペンシルカウの近くに落ちるかもしれないって話さ」

 ハンティは少し難しい顔をしている。

「そんなの凄い低い可能性でしょ」

 レンの言葉にもハンティは苦笑する。

「まあそうだけどね。でもさ、一応伝えた方が良いだろうと思ってね」

「で、その狙われてる闘神都市って何だ」

「ああ…その都市はこの近くに浮遊している闘神都市…闘神都市γさ」

 




もうネタバレになるかもしれませんが、闘神γのボディとレッドアイ出すならここしか無いなと
原作だとアニスの魔法で傷ついたから破棄したという奴ですが、やっぱりこいつバカだなとしか…
鬼畜王だと高い魔力で襲ってくる強敵だったんですけどね
最初は出さないつもりだったのですが、やっぱり闘神γのボディは鬼畜王ベースですが有るので、描写しやすいかなと
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