鬼畜アタック―――現在のランスが放てる技の中で最強の必殺技。
威力だけならばバスワルドの力を借りて放つ技こそが最強だが、アレは例外だ。
ランスが個人で編み出した中での最強の技。
そしてそれはランスの現在の剣レベル、そして人類が到達するにはまだ早すぎるレベルも有り魔人に対しても有効的なまさにランスの必殺技だ。
更にそれにドラゴンであるアベルがランスに無理矢理託した力も加わっている。
「ノ、ノーーーーーーー!?」
レッドアイは明確に驚愕していた。
自分が目をつけていた優秀なボディであるはずの闘神ボディが揺らいでいるのだ。
レッドアイ本体には無敵結界があるのでダメージは入らない。
だが、無敵結界が守ってくれるのはあくまでもレッドアイ本体だけであり、寄生したボディまでは完全にはまもってくれない。
それでもランスの放った鬼畜アタックはその寄生した闘神γの体を確実に削っていた。
「がははははは! とっとと死ねーーーーーーっ!!」
ランスの剣だけなく、ランスの周囲に浮かぶ雷で出来たドラゴンもまたその爪と翼を用い、ランスアタックの剣の動きに合わせて闘神γに攻撃を加えていた。
「ア、アンビリーバブル!? こ、この闘神ボディが!?」
魔人の攻撃にも耐え、十数年魔人と戦って来た闘神シリーズ。
それは魔人にとってはまさに壊し甲斐のあるオモチャでしかない。
だが、それは無敵結界という絶対的な防御力があってのものだ。
もし聖魔教団にカオスか日光が有れば、この時代では魔王以外は何とかなっていた程までに闘神というのは常軌を逸した強さを持っているのだ。
その闘神が、目の前に居る一人の人間によって砕かれいる事にレッドアイは驚きを隠せなかった。
無敵結界の上から放たれる斬撃とそれに伴う衝撃波、そして闘神ボディを襲う雷撃から闘神γの体が悲鳴を上げる。
明確に黒い煙が上がり、レッドアイが寄生している闘神γのコアが無事だからまだ壊れていないというだけに過ぎない。
しかし、それでもランスの一撃レッドアイ本体にはダメージを与えられていない。
ランスの剣は今ならば無敵結界を無視出来るはずなのだが、何故だか今はその効果が発揮されていない。
だが、そんな事はランスには関係無かった。
「ノ、ノーーーーーーーー! メイクドラーマ!」
完全にパニックになったレッドアイはランスに向けて魔法を放つ。
「ぐおっ!」
流石にそれは避け切れるものでは無く、ランスもデビルビームを受けて吹き飛ばされる。
「ランス!」
ケッセルリンクはランスを助け起こし、レッドアイの攻撃を防ぐべくバリアを展開しようとする。
「ヒューマン! ユーはギルティ!」
その時、ケッセルリンクは奇妙な気配を感じる。
それは普通の魔法ではなく、何か奇妙な力だった。
「…まさか呪いか!? 闘神γは呪いの力を持っているのか!」
そしてケッセルリンクは気づく。
ケッセルリンクは呪いの技能を持っていないが、この体の本来の主であるメイはその技能を持っている。
だからそれを感じ取ることが出来た。
「ク…ランス!」
「な、何だ?」
レッドアイは何らかの呪いをランスにかけたようだが、それが何なのかは分からない。
「ケケケケケ! ヒューマン、お前のパワーはこれでナッシング!」
「レッドアイ!」
ケッセルリンクの声にもレッドアイは哄笑を上げるだけだったが、その不愉快な笑いが止まる。
「ホワット!?」
「魔人…好きにはさせんぞ!」
その時、レッドアイに乗っ取られていた闘神γが意識を取り戻したのだ。
ランスの鬼畜アタックを受け、レッドアイは激しく動揺してしまった。
そこから相手の意識を乗っ取る力が薄くなってしまったのだ。
そして闘神もまた凄まじい力の持ち主、レッドアイの支配から逃れるための力を持っていたのだ。
「離れるがいい…魔人!」
自分の体に絡みついているレッドアイには無敵結界があって触れる事は出来ない。
だが、闘神γには闘神γ特有の力がある。
「ホワーーッツ!? そんなパワーが!?」
何と闘神γは自分の体をバラバラにする事で、レッドアイがへばりついてる部分をパージしたのだ。
「食らうがいい、魔人め!」
地面に落ちていた闘神γの腕が宙に浮きあがると、その手から魔法が放たれる。
「ノ、ノーーーーーーーー!」
無敵結界はあるが、その衝撃は防げない。
何より、レッドアイは寄生する体が無ければ魔人の中では最も弱いのだ。
そして今レッドアイが寄生しているのは闘神γの胸部…しかし、そこには闘神γの動力魔球は存在していない。
γの動力魔球は胸部では無く、腹部にあるのだ。
「食らえ! ブラティシージ!」
闘神γの体がバラバラになり、そのバラバラになったパーツから魔力砲が放たれる。
「ファーーーーック! こ、このミーが!?」
闘神γの攻撃を受け、レッドアイは遥か彼方へと飛ばされ、とうとう闘神都市γから落下していった。
「ク…何とか魔人を追い返せたか…胸部を失ったが、それで済んだだけで良かったと思うしかない…いや、どちらにしろもうこの闘神都市γは落ちるか…」
闘神γは先程のレッドアイの攻撃でこの闘神都市γが墜落する事は分かってしまった。
「おい、勝手な事言ってないで何とかしろ!」
「おお…お前はあの時鉄兵を倒した人間! いや、しかしその姿は…」
「あん? 俺はお前など知らんぞ」
「む…おお! ジル! そしてレン! 君達も…姿が変わっていないな」
闘神γはジルとレンの二人を見て少し嬉しそうな声を出す。
「…誰?」
「私だ。グジオンだよ」
「…誰だっけ?」
レンは本当に忘れているようで首を傾げる。
「あなた…ギムなんですか!?」
「そうだ、ジル。このような体になっているが…ク、いかんもうこの闘神都市γは持たん」
闘神γはもうこの闘神都市が落ちるのが分かっていた。
魔人から闘神都市の支配を取り戻せたのが幸いと言えるだろう。
「ランス! 終わったのか!」
空に居た魔物兵を全て蹴散らしただろうアベルが闘神都市に着地する。
「ドラゴンか…急いで脱出してくれ。この闘神都市は落ちる…が、落ちる場所を選ばなければならん」
「…このままだと何処へ落ちる?」
ケッセルリンクの言葉に闘神γは苦々しい声を出す。
「…恐らくは森の中、カラーが巻き込まれる可能性がある。それは何としても避けなければならない」
「じゃああなたは…」
「ああ。カラーを巻き込む訳にはいかない。この闘神都市γは別の場所へと落とす…それしかない」
闘神γは何とか体を動かし、闘神都市の中枢へと向かおうとする。
「君達もそのドラゴンに乗って脱出するのだ。このままでは巻き込まれてしまう」
「うーむ…何か闘神からこういう言葉が出るのが違和感しか無いな」
こちらを気遣う闘神γの言葉にランスはやはり背筋がぞわそわする。
闘神Υや闘神MMは人間への敵意が凄かった。
それなのにこうして気遣うような言葉を言われるのは非常に気持ち悪い。
「ランス、それよりも早く脱出をしよう。お前はレッドアイの呪いを受けている。カラーの所で解呪しなければ」
「な、何だと!? あいつ、俺様に呪いをかけたのか!?」
「…どうやらそのようだ。私の体を使って君に呪いをかけたか。私は元々は呪いの技能に長けた闘神だったからな…その力を利用されたか」
「そんな事より早く何とかしろ!」
「分かっている。だが、今の私でも完全な解呪は出来ない。カラーを頼ってくれ…君の呪いの進行は私が何とかする」
そう言って闘神γはランスに向かって何やら呪文を唱える。
「…これでいい。君が死ぬような事は無いが、それでもカラーに完全な解呪をしてもらう必要が有る。レッドアイは君に呪いをかけたが、あくまでも私の力でかけた呪いだ。カラーならば問題無く解呪出来るだろう」
そう言った時、闘神都市の揺れが激しくなる。
「急げ! ランス!」
「チッ…また呪いか」
黒部がランス達の体を抱えてカインの上に乗る。
「ギム!」
「ジル…私が言うべきではないかもしれないが、ルーンの事を頼んだぞ」
カインが空を飛び闘神都市γから離れていく。
それを見届けて、闘神γは闘神都市を制御すべく内部へと向かって行く。
「ルーン…フリーク先生、後は頼む…私は死ぬが、この聖魔教団の力が後世の力になると信じている…」
闘神γの言葉は確かに後世に残る。
が、それは必ずしも彼の望みとは違うものとなるが、それは彼が知る由も無かった。
「そうか…やっぱりアンタ達でも闘神都市の墜落は止められないか」
「当たり前でしょ」
ハンティの言葉にレンは短くそう返す。
「それよりも女王は何処だ」
「何かあったのかい?」
「ランス様が魔人レッドアイから呪いを受けたんです。正確には呪いの力は闘神γの力なんですけど…」
「呪いか…それなら確かに女王の出番だね。ついてきな」
ランス達はハンティに連れられて女王の所に向かう。
そして女王はランスに触れたりと色々と調べてからため息をつく。
「これは…退行の呪いです。かなり高度な呪いなんです」
「退行の呪い? なんだそりゃ」
黒部は聞きなれない言葉に思わず聞き返す。
「そうじゃな。JAPANにも色々と呪術的な物もあるし、妖怪の中には呪いそのものと言える存在もいる。その我等で聞きなれぬ呪いじゃな」
「言葉通り、呪いをかけられた者の時が退行していくのです。若返っていく…と言えば良いのでしょうか」
「…それはある意味良い事ととも取れる気がするね」
呪いの内容を聞いてブリティシュは複雑な顔をする。
確かに言葉だけならば若返るという事は良い事に聞こえる。
そんな言葉を否定するように女王は首を振る。
「いえ、そんな甘い物ではありません。それこそ胎児にまで戻る恐ろしい呪いです。しかも若返る過程で記憶すら失われていく恐怖に襲われるんです」
「それは…拙いな」
呪いの内容を聞いてケッセルリンクは顔を歪める。
「今すぐ解除してください。お願いします」
「勿論です。ですが、相手は魔人の魔力…私でも完全な解除は出来ないでしょう」
女王はランスに向けて手を向けると、何かの呪文を唱える。
「…完全ではありませんが、これで呪いは解呪出来ました。ですが、完璧な解除は私でも不可能です。ここからどうなるか…それは私にも分からないのです」
「何だと!?」
「申し訳ありません…カラーの女王と言えども、魔人の魔力には遠く及びません」
本当に申し訳なさそうにする女王に対してランスも何も言えなくなる。
相手がパステルなら文句の一つや二つも出てくるだろうが、ここまで顔を沈ませている女に対してはランスもそこまで強く言う事は出来ない。
「ランスが死ぬ、という事は無いのね?」
「それは勿論です。魔人は呪いをかけた様ですが、その後で誰かがその呪いをある程度打ち消した痕跡がありました。私に出来たのは呪いそのものの解除ですが、一度進行した呪いは止められないのです」
「ぐぬぬ…ならば俺様は」
「いつ呪いが来るかは分かりませんが…退行の呪いは必ずあなたを襲うでしょう。ですが、それこそ胎児に戻ったり児童にまで戻るという事は無いでしょう」
「そんな面倒くさい呪いがあったなんて…でもそんな呪いがあったなら、解除出来るならばある程度寿命が何とかなったりするのかな?」
ブリティシュの言葉に女王は首を振る。
「そんな都合の良い事は有りません。本来であればその呪いは直ぐにでも発動し、それは精神を汚染するでしょう。それでもこの人が無事なのは、彼の精神力が凄いからです」
「それは納得だな」
ケッセルリンクは女王の言葉に頷く。
「とにかく今は休むことを考えなよ。かなり疲れてるんだろ?」
「そうですね…ランス様もお疲れですよね」
「うむ…あ、その前にハウゼルに会いに行くぞ」
「どうしました? ランスさん」
「その前に…お前、無敵結界は使ってるな?」
「え? あ、勿論ですけど…」
「行くぞ」
そう短く言うと、ランスはハウゼルに向けて剣を振り下ろす。
勿論本気では無く、万が一があればランスは寸止めするくらいの技量はある。
そしてランスの剣はハウゼルの無敵結界に弾かれる。
「…やっぱりか。魔人の無敵結界が斬れなくなっとるな」
レッドアイとの戦いでも気になっていたが、やはりそれは事実だと改めて確認させられた。
「あ、それでか。ランスがレッドアイにダメージらしいダメージ与えられなかったのが気になってたのよね」
「でもどうしてでしょう…確かにあの魔人は倒せたのに」
レンとジルも不思議そうにランスの剣を見ている。
「…ある程度私も推測は出来るのだがな」
「何だケッセルリンク。お前まさか気づいていたとか言うんじゃ無いだろうな」
ランスのジト目を受けて、ケッセルリンクは苦笑しながら首を振る。
「いや、そうじゃない。こうしてハウゼルと会う事で改めて理由が推測出来たというだけだ。そしてハウゼル、君もその理由は分かってるのだろう?」
「そうですね…ランスさんの剣からは私と姉さんの気配を感じ取れてたのですけど、今はその力が弱まっています」
「弱まってる? 一体どうして?」
ブリティシュも不思議そうに首を傾げる。
この剣が有れば魔人を倒せる…ブリティシュはそう思っていたのだが、その力が消えているとなるとやはり気になる。
誰もがハウゼルに視線を向けるが、そのハウゼルが恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「…その、ランスさんと結構離れていた期間があるからじゃ無いでしょうか。戻って来てから直ぐに闘神都市に向かったでしょう?」
「ランス様と離れていたから力が弱まった…? でもノスやバークスハム相手だと問題有りませんでしたよね」
ジルも理由が分からず首を傾げるが、ため息をついてランスを見る。
「我は理由が分かったぞ。全く…お前という男はつくづくそういう事から切り離せんようだな」
ジルの口からスラルが呆れた声を出す。
「何だスラルちゃん。理由が分かったのか?」
「フン、これまでの自分の行動を顧みろ」
スラルは少し不機嫌そうな声を出す。
そしてハウゼルは顔を真っ赤にして目を伏せる。
「…ああ、そういう事か」
その様子を見てお町も分かったと言わんばかりにため息をつく。
どうやら女性達はその理由を察しているようだ。
「何だお前等。勝手に納得しおって。きちんと分かるように説明しろ」
「…お前はここで毎日のように女性を抱いていただろう。その中にハウゼルも当然含まれていた。だが、闘神都市Θの落下があり、ハウゼルの事は抱けなかった。そういう事だろう」
「ケ、ケッセルリンク! そ、そういう事を皆の前で言わないで下さい…」
ハウゼルは顔を真っ赤にしてケッセルリンクを見る。
「ほう。つまりはハウゼルとやればやるほどその力が蓄積されるという事か」
ランスはニヤリと笑ってハウゼルを見る。
その視線を受けてハウゼルは恥ずかしそうにしてランスを見る。
「どうしてそういう仕様なんでしょう…」
「俺様にとっては都合が良いがな」
ランスは上機嫌に笑う。
が、実際には結構危ない所ではあったのだ。
(定期的にハウゼルかサイゼルとセックスしなければ魔人は斬れんという事か? それはそれで意外と厳しいぞ)
ランスは嬉しいのは本当だが、内心ではこうも考えていた。
今の状況は魔人が人間界に干渉出来るように魔王が許可を与えているからこそ、ハウゼルもまた人間界に来れるのだ。
つまりこの戦争が終われば、ハウゼルとサイゼルの力の供給は途絶えてしまう。
ランスも感じ取っていたが、バスワルドの力を大きく発揮するためにはやはり彼女達の力が必要となるのだ。
(それを考えるとこっちにはそういう制約は無いのか)
逆にククルククルがメインの場合にはそういう制約は一切存在しない。
剣もの形はどうしても大型になるが、それは今のランスであれば全く苦にならない。
そういう意味ではククルククルの形態の方が暴れる分には丁度良いのだ。
ただ、今は相手が魔人…どうしてもハウゼルとサイゼルの力が必要になる。
(まあいいか。とにかく楽しむか)
「じゃあ行くぞ、ハウゼル」
「…はい。うぅ」
ランスはハウゼルの肩を掴むと、そのまま彼女を伴って何処かへと行ってしまう。
「新たな問題の発生だな」
「ええ、スラル様。しかし、今の状況ならばさほど問題は出ないでしょう。問題が有るとすれば、やはり動向が掴めぬバークスハムでしょうね」
「レーモン・C・バークスハム…お前も知らぬ魔人だからな」
「人となりはハウゼルとシルキィから聞いて分かりますが…問題はその目的でしょうね。ただ、奴は意識してランスをこの戦争に巻き込もうとしているとも取れます」
「…そうだな。ただ、それが魔王の意思かどうかはまだ分からぬがな」
ランスは魔王ガイとも因縁が有る。
それは魔王ジルを巡っての因縁ではあるが、幸か不幸かガイはランスにもジルにも特に何かしようという気配は見えない。
もし魔王が本気ならばランスのジルの命はとうの昔に尽きているはずだ。
「ランスを巻き込む意味って何かあるの? まあ確かにランスは色々な事に巻き込まれる運命にあるみたいだけど。最終的にランスが巻き込む側にはなるんだけど」
「正直皆目見当もつかない。ただ、私はバークスハムは悪意を持ってランスを狙っているとは思えない」
「それはまた何でよ」
「魔人筆頭という立場は軽くない。正直に言えばランスの実力をもってしてもバークスハムには及ばない。それなのに奴がランスを見逃すという事が不思議なだけだ。カミーラやレイのようにランスと戦う、という意思表示が有れば分かりやすいのだがな」
ケッセルリンクとしてはやはり情報が足りない。
ただ、情報を集めたとて出来る事も無いとも感じている。
「…私も元の体に戻らなければならぬのだがな。難しいものだ」
元の体に戻るという言葉を聞いてブリティシュは複雑な表情を浮かべる。
ブリティシュにとっては魔人は敵なのだが、こうしてランスのために動いている彼女に対して思う所は有る。
ハウゼルやシルキィのように人類にも優しい存在が居るというのも分かったが、やはり彼女達は魔人なのだ。
魔王の命令があればどんな時でも敵に回る…それが魔人という存在なのだから。
「もう…ランスさん、乱暴です」
「がはははは! お前がスケベなだけだろう」
行為の後、2人はベッドの上でイチャイチャしていた。
ランスの胸の中で指をもじもじとさせながらハウゼルはランスを見上げる。
「…でも、実際どうだったんですか? レッドアイは頭が悪いですけど強い魔人ですし」
「む…大したことは無いぞ、うむ」
実際には結構危なかったのだが、ランスは当然の様に強がった言葉が出る。
それを分かっているのか、ハウゼルも心配そうにランスを見る。
「ランスさん…この戦争にどうしても関わらないといけないんですか?」
「どういう意味だ」
「…危険すぎます。魔王様はとにかく、魔人は本気です。今まではランスさんは運が良かったんです。だから死んで無いんです」
「俺様にかかれば魔人なんぞ…」
「日光があれば何とかなるかもしれませんけど…私の力があっても、魔人に対して有効打にはならないでしょう」
ハウゼルは本気でランスを心配している。
「私はカオスと日光の事を知っています。無敵結界を斬る事は勿論、魔人の持っている再生能力を阻害できる事も」
「ぐ…」
居たい所を突かれてランスも黙るしかない。
それはランスも重々に感じていた事であり、魔人の持っている再生能力の前には苦しんでいる。
カオスを持っていても魔人ノスの再生能力には苦労させられていたし、今の剣では魔人相手にはやっぱり力不足を感じる所も有る。
カオスと日光がそれだけ魔人に対して有効という事で、別にランスの剣が悪い訳では無い。
ただ、魔人と関わらないのであればランスの持っている剣が一番馴染むというだけだ。
「ケッセルリンクのため…ですよね」
ハウゼルもランスがここまで関わる理由は分かっている。
「でもケッセルリンクの呪いなら、私とシルキィが魔王様に頼んでみます。だからランスさんも無理をしないで下さい」
「…ダメだ。あいつだけはダメだ」
「もう…子供みたいな事を言わないで下さい」
ランスとガイの関係は当然ながら良くない。
ただ、それはランスからの感情であり、魔王ガイはランスに対して特別な感情を持ってはいないのは明らかだ。
「とにかくあいつはダメだ。俺様が何とかする。うむ、俺様がやるから意味が有るのだ」
「ランスさんはそういう人ですものね…でも、絶対に無理はしないで下さいね」
ハウゼルはランスの顔をその胸に抱きしめる。
そしてその夜は更けていった…何時もと変わらず。
だが、その何時もは突然崩れるものである。
「………え? ランスさん?」
目が覚めたハウゼルは自分の胸の中で眠る一人の少年を見て目を白黒させる。
そこで眠っていたのは明らかにランスの顔立ちをしているが、それでもまだまだ若い少年の姿だった。
「む…何だここは…」
そしてその少年が目を覚ます。
「あ、あの…ランスさん?」
「…誰だお前は。というかここは何処だ?」
その言葉にハウゼルは目を大きく見開き、絶句するしか無かった。
ゲームでよくある主人公弱体イベント
闘神γがどんな闘神かは分からないですけど、狂ってない闘神ってやっぱり人類のために戦っていたのかなあって
Σはホピンズだから結構アレですけど