魔法ハウスの中にあれから多くの家具が運び込まれ、この家もようやく家らしくなってきた。
と言っても、まだまだかつてランスが使っていた魔法ハウスには程遠い。
テーブル、椅子、タンス等の必要最低限のものが運び込まれたに過ぎない。
ランスから言わせれば、ベッドに不満はあるし、自分の部屋もまだまだ殺風景だ。
「改めて…これからどうするの? ランス」
スラルはそこそこ形になってきた魔法ハウスの椅子に腰かけるようにしながらランスに聞く。
「そうね。意外にも早くに目的の物が手に入ったし」
レダも椅子に腰かけながら、水を飲んでいる。
魔法ハウスはどういう原理かは知らないが、こういった水道施設も整っているために非常に便利だと思う。
天界に居た時はあまり考えてはいなかったが、下界で暮らすというのは意外と大変だ。
人間よりも遥かに丈夫だが、それでもこういった欲求を満たすのはやめられない。
「そうだな…これからJAPANに行ってみるか」
「JAPAN?」
ランスの言葉にスラルは首を傾げる。
スラルは魔王としてこの大陸の事を知っているが、JAPANという地名を聞いた事は無かった。
ランスが言うには大陸の一番東にあるとの事だが、そのような地名は部下からも聞いた事は無い。
(JAPAN…かあ)
レダはそれを聞いて複雑な顔をする。
現在の事情をある程度分かっている彼女としては、今の時代にJAPANは無いのではないかと思っている。
自分も正確な事を知っているのではないが、聖獣オロチが暴れてJAPANが出来たというのは知っている。
が、それが一体何時のことなのかまでは知らなかった。
(勉強不足ね…自分の職務が全てだったからその辺の事は詳しくないのよね)
普通のエンジェルナイトはそんな世界の歴史など気にしていない。
自分はランスに負けて犯されてから、この世界の歴史…人間の歴史を少し調べた。
レダが少々変わり者のエンジェルナイトなのだ。
「そのJAPANって何かあるの?」
スラルの目がキラキラと光る。
知識欲が旺盛な彼女としては、ランスと旅をする事で色々と自分の知らない事を知ることが出来るのが非常に楽しい。
そのランスがそのJAPANを目指すというのは楽しみな事であった。
「まあ独特の空気があるな。食事や文化も大幅に違うしな。まあ行ってからのお楽しみだ!」
ランスはがはははと何時ものように笑うが、一方で少し不安そうな顔をしている者もいる。
「私は大丈夫でしょうか…皆様に比べれば体力も無いですし」
その女性―シャロンは不安そうに自分の体を見る。
何しろ彼女は今までは温室育ちの正真正銘のお姫様だ。
自分で体を使わないお姫様にリアがいるが、彼女はそれを補って余りある政治力と人脈を持っている。
しかしシャロンはと言うと、確かにお姫様だが滅んだ国の姫だ。
もうその故郷は無いし、自分を支えてくれる人間もいない。
シャロンの目から見てもランス、レダの実力は人とは思えないもので、そんな強い人達に自分がついていけるのかという不安もある。
「問題は無い。君が戦う必要は無いからな」
そう言ったのはその場に残った最後の一人、魔人ケッセルリンクだった。
「ついて来てくれるのは有り難いけど、魔王の方はいいの? 私は強制的に命令するのは好きじゃなかったから自由にさせてたけど、新しい魔王はどうするの?」
スラルの言葉にケッセルリンクは苦笑いを浮かべる。
「私の体質が体質でして…実力はともかく、私は動かしにくいようで魔王ナイチサからはあまり重用されておりません」
「うーん…まあそうかもしれないけど」
ケッセルリンクは夜ではそれこそ魔人の中でもトップクラスの実力があるが、太陽の下だとどうしても上手く動くことができない。
それでも人間に遅れをとることは無いが、魔王ナイチサにはそれが不満のようだった。
「ですので命令があれば戻らざるを得ませんが、当分は大丈夫でしょう」
「あ、ありがとうございます」
シャロンはケッセルリンクに少し距離をとってしまう。
やはり魔人というのは人間にとっては恐怖の対象なのだ。
「シャロンちゃんは別に戦う必要は無いぞ。俺様がいれば何も問題は無い」
ランスの陽気な笑いにシャロンは思わず顔に笑みを浮かべる。
自分に気を使うではなく、自然体で接してくれるのは嬉しかった。
ちょっと…いや、かなりスケベであるのが気になるが、何よりも人を惹きつける魅力を持っている。
自分のように容姿であがめられるのではなく、己の実力と実行力で人をひっぱっていく所は王族であった身としては非常に羨ましかった。
「それよりも…俺様としては君が予想以上に家事が上手いのに驚いたがな。それに何故か格闘の才能があるのがな」
「私も驚きです。自分にそんな才能があったなんて思ってもいませんでした」
シャロンの家事技能は完璧だった。
流石にビスケッタとは比べられないが、一国の姫だったにも関わらずその腕前は素晴らしいものだった。
シーラもあっというまに家事を覚えたが、シャロンはそのシーラ以上に飲み込みが早かった。
そして姫とは思えぬ技能である、格闘技能を持っているため、才能限界次第では十分に戦力となるだろう。
(そういえばビスケッタさんもかなりの格闘の腕前を持っていたな…出来るメイドは格闘技能でも持ってるのか?)
ランスは思わずそんな事を考えてした。
「移動に関しても、うし車を用意させたから問題無いだろ」
「…そうね。あまり暗い事ばかり考えていても仕方ないわね。私の悪い癖だわ」
スラルは苦笑いを浮かべる。
魔王だった時からスラルは臆病かつ慎重だったが、今はそこまで考える必要は無いと頭を切り替える。
「と言う訳でJAPANに行くぞ!」
「おーっ!」
ランスの言葉にスラルが元気に手を上げ、ケッセルリンクはそれを見て微笑む。
シャロンも初めての旅が少し楽しみなのか、心なしかうきうきしているように見える。
ただ一人、レダだけは難しい顔をして座っていた。
こうしてランス達は旅を開始したのだが、それは順風万端とはいかなかった。
この1ヵ月間移動しているが、まだJAPANにたどり着く事は出来なかった。
何しろランスが知る世界…LP期と比べるとその違いはまさに天と地ほど差がある。
LP期はリーザス、ヘルマン、ゼス、自由都市、JAPAN、そして魔物領と分かれていたが、当初は移動するのも大変だった。
リーザスとヘルマンの戦争、カミーラダーク、JAPAN統一、ヘルマン革命の後はスムーズに移動できるようになっていた。
しかしこの時期にはリーザス等の大きな国は無く、大陸全体がJAPANのような戦国時代のような状態だ。
流石にJAPANの時のように頻繁に戦争が起きている訳ではないが、国から国への移動が本当に面倒くさい。
それに盗賊団や、魔物といった問題も有り中々進む事は出来なかった。
その夜、ランス達は魔法ハウスの中で食事をとっていた。
「だーっ! 全然進めんではないか!」
「怒らない怒らない。仕方ないでしょ」
ご飯を食べながらとうとう怒りを爆発させていた。
そんなランスを宥めながらレダも食事を取る。
本来であればエンジェルナイトはそれほど食事は必要無いはずなのだが、これは今ではレダの楽しみの一つになっていた。
「それでも普通よりも早いスピードだと思うぞ」
「私もそう思います。本来であればもう少し時間がかかるものですよ」
ケッセルリンクとシャロンもランスを諌めるように声をかける。
この一年、ケッセルリンクも人間の暮らしというものを見ていたが、大移動ともなればやはり時間がかかるものだ。
それに比べればランス達の移動力は非常に高い。
ケッセルリンクは昼間は休ませて貰っている分、夜は自らの意志で魔法ハウスの守りを買って出ていた。
ランスとシャロンは人間であるため夜は休ませる必要もあった。
それにレダも人間のように長時間の睡眠を必要とせず、スラルにもそれほど睡眠が必要とないため、話し相手には事欠かない。
「それに食料も豊富だ。水もある。そう考えれば普通の旅よりも順調だろう」
「そうですね…まさかこれほど大量のこかとりすのお肉を見るなんて思いませんでした」
シャロンはその時の事を思い出す。
こかとりすの肉は非常に高価で、王族のシャロンと言えどもそうそう食べれるものでは無かった。
並の兵士では敵わぬ程の力を持っているため、その肉を求めて高値で取引されている。
そのこかとりすをランス達はあっさりと倒して見せた。
おかげで貯蔵庫にはこかとりすの肉が大量に保存されており、食べられない分は保存食として加工されていた。
それでもあまる分は売ってお金に変えたおかげで色々な食材を買い込むことも出来た。
「移動するにも金だの許可だのと面倒くさい事この上ないぞ」
それでもランスの怒りは中々とけない。
元来短気な性格をしている事もあり、遅々として進まない状況にキレていた。
「ランスも少し落ち着いてよ。時間があれば必ず着くんだから」
「まーお!」
スラルもランスをなだめる。
「ぐぬぬ…」
皆にそう言われれば、ランスとしてもこれ以上は言いようがない。
「それよりも…今日は私が夜番を引き受けよう」
「悪いわね、何時も」
「構わないさ。夜は私の時間だ」
ケッセルリンクはそう言うと優雅に本を見始める。
スラルもそれに合わせて本を見る。
「…寝るか」
ランスはその様子を見て、大人しく寝る事にした。
「俺様がそんな大人しく寝る訳が無いだろうが」
ランスは非常に楽しそうな笑みを浮かべていた。
「今夜こそシャロンちゃんを頂くぞ。そろそろ食べ時だからな」
シャロンと出会って一月あまり…ランスとしては意外にもまだ手を出していなかった。
理由としては、シャロンは今までとは違った落とし方をしようと模索していたからだ。
これまでのランスならば、即襲っていただろうが、レダとケッセルリンクという極上の女性が居たために自分を抑える(?)事が出来ていた。
しかしそろそろランスとしてもシャロンを頂いてもいい頃合いと判断する。
「シャロンちゃんは絶対俺様に惚れてるな、うん」
ランスは常に根拠の無い自信に満ち溢れている。
だから、今回もシャロンが自分に惚れている事を信じて疑っていない。
「では早速行くとするか」
ランスはシャロンの部屋へと歩き始めた。
──シャロンの部屋──
「お父様、お母様、皆…今日も無事に終わる事が出来ました」
シャロンは今はいない自分の家族のために祈りを捧げていた。
自分だけが助かった事に罪悪感を覚えていたが、それは月日と共に少しずつ薄れていった。
今は一生懸命生きて行く事が家族への供養になると信じて。
「毎日毎日苦労の連続ですが、もう慣れました」
最初は慣れぬ家事に苦労するかと思ったが、思った以上に自分の体は現在の状況に順応した。
食事に関しても今は少しずつ慣れてきており、自分を助けてくれた人達…ランスやレダが自分の作った料理を食べてくれる事を嬉しく感じている。
「でも…ちょっと悩みもあります」
レダの悩みとは洗濯だった。
それだけは今でも慣れない部分がある…それはランスの使っているベッドのシーツの事だ。
シャロン自身それを否定する事は無いが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
何しろ、ランスが使っているベッドのシーツはほぼ毎日色々な体液で汚れてしまっているからだ。
相手をしているのはレダとケッセルリンクの二人だが、あの人並外れた美貌と強さを持つ彼女達が、ベッドの上で乱れているのかと思うとどうしても羞恥心が込み上げてくる。
さらに悪い事に、最初にランスとケッセルリンクの情事を見てしまってからというもの、どうしても彼の情事を意図せずして覗いてしまう事が多くなってしまった。
(うう…本当に偶然なのでしょうか)
その事を思うとさらに顔が赤くなってしまう。
ある時はたまたま目覚めた時、ランスの部屋の前を通るとランスとレダが濃厚に絡み合っていた。
またある時は寝汗を流そうと風呂に向かうと、ランスとケッセルリンクがやっぱり濃厚に絡み合っていた。
極めつけはランスがレダとケッセルリンクの2人を同時にベッドに上げてHをしているのを見た時だ。
この一月で何回見た光景なのだろうかと思わず頭を押さえる。
そして決まってその光景を見た後は体が火照ってしまい、自分を慰めた事は一度は二度では無い。
「はあ…」
シャロンはため息をつくと、ベッドへと横たわる。
そして今夜もランスがあの二人を抱いているのかと思うと、やはり体が火照ってくる。
「ん…」
そして思わず何時ものように自分を慰めていた時、
「シャロンちゃんもそういう事をするのだな」
突如として聞こえてきた声にシャロンは体をビクリと震わせる。
「な、な、な…」
ギギギと音をたてながら振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべたランスがそこにいた。
「き、キャ…ムグゥ!」
思わず大声を出しそうになるのを、ランスが口を塞ぐ。
ランスはニヤリと笑いながらシャロンのベッドに上がってくる。
(そ、そんな…)
シャロンは顔を青くしながら赤くするという器用な事をしながら、無抵抗にランスに押し倒される。
「やっぱお姫様でもそういう事をするのだな」
「そ、それは…」
ランスの問いにシャロンは何も答える事が出来ない。
まさに言い訳のしようのない状況を見られてしまっていたからだ。
「いけない娘だな、シャロンちゃんは」
「ひぅ…」
ランスの声に思わず体を震わせる。
「実はシャロンちゃんは俺様のセックスを覗いていただろう」
「な、何で…」
「…本当に覗いておったのか」
ランスの言葉にシャロンの顔が最高潮に赤くなる。
もし何かあればそのまま気絶してしまってもおかしくない程だ。
「わ、私のせいにしないで下さい! ランス様が毎日毎日レダ様やケッセルリンク様と…」
「で、それを見て思わず自分を慰めていたという訳か」
実に楽しそうなランスの顔に対し、自分は最大限の羞恥心に押しつぶされそうになる。
「そんな悪いメイドにはおしおきしなければならんな」
「え…?」
おしおきという言葉にシャロンの心臓が跳ね上がる。
その一瞬の硬直の間にランスが一瞬で自分の下着を脱がせる。
同時にランスも一瞬で服を脱ぎ去り、ランスの裸体がシャロンの目に入る。
(あ…凄い)
初めて間近でみる異性の肉体に、シャロンは思わず見惚れる。
ランスの体は細いながらも非常に引き締まった肉体をしている。
そして思わず下半身に視線を向けると、そのハイパー兵器が天に向かってそりあがっていた。
「見えるか。これがシャロンちゃんを女にする俺様のハイパー兵器だ」
「ラ、ランス様…」
シャロンはいつかこんな日が来ることは覚悟はしていた。
いや、むしろ彼女の予想よりもずっと遅いくらいだ。
「い、いけません。ランス様にはレダ様とケッセルリンク様が…」
「がはははは! 俺様は一人の女に縛られるような男ではないのだ! だからシャロンちゃんも気兼ねなく俺様の女になればいいのだ!」
そういうランスの手が、そして口が嫌でもシャロンの性感を刺激する。
その手はシャロンの手よりずっと大きく、硬い…しかしそれは実に繊細な動きとなってシャロンを刺激していた。
(だめ…声をだしてはだめ…)
ふと見るとシャロンの部屋の扉は開いている…そのため、自分の声が下に居る皆に聞こえるのではないかと恐怖心を覚える。
ランスはそれを見透かすかのようにより強い刺激を自分の体に与えてくる。
必死に自分の指を噛む様にして声を出ないようにする。
それでも限界は訪れるもので、涙で自分の視界が歪み、もう声を抑えるのが限界に近づいていた時、自分の唇をランスの唇が塞ぐ。
そしてそのままされるがままに口内をランスの舌が動き回り、シャロンの舌に絡みついてくる。
「ぐふふ…ではいくぞ、シャロンちゃん」
「え…? っ!」
自分の下半身に痛みが走り、同時に自分がとうとう女になったのを自覚する。
そしてどれくらい時間がたったであろうか、自分の下半身に何かが出されるのを自覚する。
(あ…私…)
それを自覚しても、頭はまるで霞がかかったようで何も考える事が出来ない。
「ハァ…ハァ…わ、私…」
「良かったぞシャロンちゃん」
荒い息を吐く自分の頭にランスの大きな手が添えられる。
(終わった…の?)
最早痛みも感じない…聞こえるのは自分の心臓の鼓動と、自分の吐く息の音だけだ。
そんな中、ランスの唇が再びシャロンの唇に触れる。
先程は少々混乱の中での口づけだったが、何も考える事が出来ないのにその感触だけは嫌でも分かってしまう。
「ではもう一度いくぞ」
「…え? ああっ!」
再び下半身に何かが入ってくる感触に今度は大きく声を出すのを抑える事は出来ない。
シャロンにはもう下に居る皆に声が聞こえてしまう事も頭に無かった。
ただ、ランスから与えられる快感に身を任せるだけだった。
下の階では『ギシ…ギシ…』という音が断続的に聞こえていた。
「ランス…やっぱりシャロンに手を出したようね」
レダは複雑そうな顔でスラルとケッセルリンクを見る。
レダからすれば、よくここまで我慢をしたという感想だった。
「いいの? ケッセルリンク。本当は彼女を助けるために来てたんでしょ?」
「構わないさ。彼女の幸せを決めるのは彼女自身だ。ランスの側にいるのが彼女の幸せならば、それが一番良い」
ケッセルリンクは自分で淹れた紅茶を飲みながら、優しい顔をしている。
一方のスラルはレダに負けるとも劣らずに複雑な表情をしていた。
もし肉体があれば、きっとその顔は真っ赤に染まっていただろう。
ランスと旅をして1年以上たつが、どうしても意識してしまう。
「ただな…」
ケッセルリンクは笑みを消し、少し難しい顔をする。
「どうしたの?」
「いや…彼女も初めてだろう。ランスが無茶をしないかそこは不安でな」
「あんたも最初から失神してたしね」
ケッセルリンクの言葉にレダはニヤニヤした笑みを浮かべる。
そのレダの顔にケッセルリンクは顔を赤く染める。
「言うな…」
自分の初体験の事はあまり思い出したくは無い。
あの時はあれしか無かったとはいえ、あんな自分の姿を自分の仲間、そして今でも付き合いのあるレダにまで見られているとは思ってもいなかった。
「そういえばケッセルリンクは魔人になる前から付き合いがあったのよね」
スラルが過去を思い出しながら頷く。
今思えば、ランスが…いや、人間が魔人を倒すなどやはり凄いことだと改めて感じる。
こうして魔王では無くなった今、余計にランスの強さ、そして魔人の強さを実感させられる。
「カミーラはまだ諦めてないの?」
「ええ…カミーラもまたランスに会えると確信しているようです。今は魔王の命令で動けないので不満があるようですが」
「私がいない間に親しくなった?」
「はい。あの経験をした仲ですから」
「…悪いわね」
スラルの表情を暗くなる。
あの経験…間違いなく自分の魔王の血の事だ。
「気にしないでください。あなたは確かに肉体を失いはしましたが、それでもこうして話すことが出来ている」
「あはは…自分でまいた種とはいえ、やっぱりね」
あの時の自分の願いが原因なのはもう分かりきっている。
ただそれでも、いきなり魔王として生まれた自分に自信が持てなかった。
「今夜も長くなりそうね…」
床が少し軋む音は今でも続いている。
たまに音が聞こえなくなるのは、ランスが体位を変えたかシャロンが絶頂を迎えたかランスが満足したか。
ただ、それでも少したてばやはり軋む音が聞こえてくる。
「底なしね、ランスは」
「そうだな。ある意味魔人を上回る体力だ」
「よっぽど好きなのね」
女性三人は顔を突き合わせてため息をついた。
それからさらに1ヵ月がたった。
ランスの言葉が正しければ、ここがJAPANのはずであった。
「なんだこれは」
まずランスがおかしいと思ったのは、あるはずのJAPANと大陸を繋ぐ巨大な橋、天満橋が無い事だった。
その橋を通らなければJAPANに着くことは出来ない。
「何にも無いわね…」
スラルは周囲を見渡すが、ランスから聞いたJAPANの光景というものは見当たらない。
「どうなっとるんだ」
ランスは首をひねるが答えは全く出てこない。
(あーやっぱりか。まだJAPANが出来ていないんだ)
唯一答え知っているレダだけは、今はまだJAPANが生まれる前の時代と理解する。
が、それをランスに言う訳にはいかない。
これはランスが自分で答えを掴まなければいけないことなのだ。
「意味が分からんぞ。俺様の記憶が正しければここが間違いなく巨大な橋があるのだが」
「記憶違いという事はありませんか? ランス様もしばらくこちらには来ていなかったのでしょう」
「むぐぐ」
ランスは頭をかきながら呻く。
記憶違いなどありえないのだが、実際にランスが知るJAPANを象徴する天満橋が見当たらない。
「奇妙な事だな。しかしランスがそんな嘘を言っているとも思えぬ。だとするとランスの記憶とは違う場所にたどり着いたという事ではないか?」
ケッセルリンクの言葉にランスは納得していないようだが、シャロンやケッセルリンクの言うことも一理あると思い、とりあえず移動をする事を決意する。
その時、以前に聞いた気の抜けた声がランスの耳に入る。
「やっほー、ランス。久しぶりー」
「!? まさかセラクロラス!?」
突如として現れた気配にレダは驚きの声を上げる。
ケッセルリンクも突如として現れた彼女の登場には目を見開いている。
あのケッセルリンクがセラクロラスの登場に気付くことが出来なかったのだ。
「じゃあランス。力も溜まったからまたいくねー。てやぷー」
その気の抜けた声と共に、その場にいる全員が光に包まれる。
「これは…あの時の!?」
スラルの驚きの声は、光と共に消えていった。
そしてその場に残されたのは、ランス達が使用していたうし車だけだった。
盗賊稼業終了からの再びセラクロラス
実際NC期で大きな動きが無い時はキンクリしないと大変な事になってしまう…
それも大変ですので許してください!
今回はスラルのステータスを
LV 48
才能限界 77
技能 魔法LV2 諜報LV1 付与LV1 ???
目標 今はそこまで考えていない
趣味 知識を深めること
幽霊ヒロインスラルちゃん!
???は物語が進むにつれて明らかになるという形で…
一応複線のつもりです
諜報LV1持ちなので、嫌でもランスの情事を覗く事になってました