ランス再び   作:メケネコ

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時代の流れ

 ランス達が消えてからの間、世界には色々な事が起きた。

 そしてその内の一つに、後にランスと雌雄を決する事となる魔人の誕生がある。

「ザビエルよ…」

「ハッ、ナイチサ様」

 魔王ナイチサの前に一人の魔人が跪いていた。

 その魔人こそザビエル…後にJAPANを地獄の渦に引き込む、強大な力を持つ魔人だ。

「人間共はどうしている」

「何も変わりませぬ。相も変わらずに直ぐに死ぬ…その程度の存在でございます」

「そうか」

 魔王ナイチサ…後世にて『残忍で凶悪な性格で他の生き物は遊び道具程度にしか思っていない魔王』と称されている。

 その言葉通り、ナイチサは時に何かに引きずりこまれるかのように人間を虐殺していた。

 しかしその後はそれに満足したかのように己の城で過ごしていた。

 魔人達はそんな魔王に多少は困惑しながらも、今の時代を謳歌していた。

 魔物にとって人間は犯し、殺し、蹂躙すべき存在。

 だからこそ先頭に立って人間を殺す魔王こそが自分達にとっての魔物の王なのだ。

 が、以外にもナイチサは人間の住まう地の奥地にまでいって人間を殺すという事も無かった。

 ある程度人間を殺せば忽然と己の城へと戻る…そんな事が続いていた。

 それだけが魔物達の不満と言えば不満であろう。

 そして魔人達に完全な自由を与えない…それもこの魔王の特徴の一つであった。

 それ故に血の気の多い魔人達は人間の住まう地にも中々行くことが出来ない。

「ナイチサ様! 大変でございます!」

 一人の魔物大将軍が息を切らせて入っている。

 ナイチサがその魔物大将軍を睨むと、何体もの魔物将軍をも束ねる魔物大将軍の体が震える。

 魔王は魔物にとっての王であり象徴でもあるが、同時に魔物にも恐怖の存在である。

 気に入らなければ、どんな者であろうとも簡単に切り捨てられる…それが魔王という存在なのだ。

「何が起きた」

「は、ハッ! トッポスが再び現れました!」

 その言葉にナイチサは眉を潜める。

 同様にザビエルもその顔に苛立ちが表れる。

「被害は」

「…その地にいた全ての魔物が全て蹴散らされました。その際に複数の魔物将軍と共に、大将軍の一人が…」

 そこで魔物大将軍が言いにくそうに言葉を濁す。

 ザビエルはその魔物大将軍の態度で全てを察していた。

 恐らくは魔物大将軍の1体がトッポスによって殺されたのだろう。

 魔物大将軍の死はとてつもなく大きい…何しろ、世界に7体しか存在することが出来ない貴重な存在なのだ。

 その内の1体が死んだとあっては、その地域の魔物達はもう既に軍の体制も何も無く、散り散りになって逃げではトッポスに殺されたのだろう。

「…ザビエル、直ちに軍の再編をせよ。トッポスは無視しても構わぬ」

「ハッ…」

 ザビエルは一礼すると、主の命を実行すべく報告に現れた魔物大将軍を伴って歩き始める。

 この世界で最強の存在である魔王と、その血を貰い無敵となった魔人…そんな存在にも頭の痛い事はある。

 それがトッポスという世界に一体だけ存在し魔物を狩って生きている最強生物だ。

 その力は異常というべきであり、魔人が束になっても倒しきることは出来ない。

 無敵結界があるので魔人は負けないが、トッポスの強靭な体には傷をつけることも難しい。

 まさに天災というべきものであり、魔王ナイチサもトッポスについては放置せざるを得なかった。

 さらに最悪なのが卵を産んだ時であり、その状態ではまさに誰も手をつけることは出来ない。

「忌々しい存在だ…人間共の領域に行けばいいものを」

 トッポスは決して人間達を襲うことは無い。

 ただひたすらに、魔物を狩るだけだ。

 魔人ザビエルはこれからの事に少し苛立ちを覚えながら、トッポスに対抗する手段を考えていた。

 

 

 

 ―――魔物界のある城―――

「カミーラ様、トッポスが現れました」

「そうか…」

 七星の報告にもカミーラは特に興味を示さない。

 昔トッポスとやりあった事はあったが、あれは問題外だとカミーラは判断した。

 決して倒されることは無いが、倒す事も出来ないという存在だ。

 それ故に忌々しい事ではあるが、カミーラもトッポスは放置する事にしていた。

「どうだ、七星」

「ハッ…やはり魔物は諜報には向かぬようです。あれから300年程見てきましたが…やはり魔物隊長、魔物将軍がいなければ制御する事は難しいです」

 七星の報告にカミーラは何も答えない。

 ある程度は予想はしていた事であるために、怒りは無い。

「私はナイチサの命令で動けぬ…それ故に新たな試みとも思ったが、少々見通しが甘かったか」

「申し訳ありません、カミーラ様」

 七星は頭を下げるが、カミーラはその必要は無いと言わんばかりに手を振る。

「構わぬ…所詮は戯れよ。だがもう一つの事はどうなった」

「姿を消したケッセルリンク様ですが…やはり目撃したという情報は有りませぬ。人間界に居るとの噂話があるだけですが、信憑性となると少し疑わしいかと」

 ケッセルリンクが姿を消して、330年程経過している。

 カミーラからすると大した時間ではないが、魔人となって間もない彼女にはとても大きな時間だろう。

 幸いにもナイチサはケッセルリンクに対して興味が無いようで、特に彼女に対して何かするという事も無い。

 未だに姿を見せる気配すらない魔人ますぞえ同様に放置されていた。

「しかしカミーラ様…果たしてあの男がまだ生きているのでしょうか? スラル様が亡くなった時に会われたとの事ですが、あれから300年以上たっています。もう死んでいるのが普通です」

「ククク…その普通では無いからこそあの男は面白い。必ず会う日が来る…それまではこの余興を楽しむのも悪くない」

 七星は主の楽しそうな笑みに改めて自分の考不足を思い知る。

(カミーラ様は再びランス殿と出会えると確信しておられる…その根拠はわかりませんが、行方不明のケッセルリンク様が関係しているのでは)

 カミーラの命令の一つに、聖女の子モンスターのセラクロラスを探すという命令がある。

 残念ながらこちらも難航しており、七星も未だに一度もお目にかかった事は無い。

 時たま強力な魔物と子をなした…という噂を聞くぐらいだ。

「引き続き情報を集めよ…人間界だけでは無い、魔物界の事もな」

「ハッ!」

 怠惰な魔人カミーラ…本来は後世にてそう伝えられる彼女だが、この時期は魔王の命令で動けぬだけだ。

 もし魔王の命令が無ければ、直ぐにでもランスを見つけるための行動を起こしているだろう。

 怠惰な魔人は、その目に宿る強い意志をぎらつかせていた。

 

 

 

 

 人間界でも大きな出来事が起きていた。

 大陸東部に超大型地震が起きたかと思うと、大陸の一部が割れ、一つの島国が出来た。

 本来は崩れるはずの大地は、聖獣オロチの力に支えられ今でも宙に浮いている。

 が、そこには誰も行く事は出来ない…その地に住んでいた人間だけがその宙に浮く島で住んでいる。

 いつしかJAPANと呼ばれる国は、まだ誰も行く事が出来ぬ未開の地として存在していた。

 この地に人が訪れるようになるには、まだ100年以上の時間が必要であった。

 

 

 

 

「ケケケケケ! モア、魔力! 邪魔なもの、すべてキル!」

 今現在で最も世界を騒がせているもの…それはガウガウ・ケスチナが対魔王用に作り出した魔法具であった。

 人間の力では魔王に勝つ事は出来ない…ならば強い者の力を借りれば良いというコンセプトの元で開発されたその兵器は、武器・モンスター・巨大生物等と次々と肉体を乗り換え、今ではドラゴンにまで寄生してその力を強めていった。

 その存在こそ、後のLP期にてゼスを長い間苦しませてきた、狂気の存在レッドアイであった。

「ケケケケケ! 今日も元気にキル・あなた!」

 ドラゴンに寄生したレッドアイは恐ろしい程の強さを持ち、人間はおろか魔物ですら手を出すのを躊躇う程の存在になっていた。

「ドラゴンボディ、素晴らしいネ! もっとキル! すべてキル!」

 そしていつしか魔王を倒すべく作られたという目的からかけ離れ、より強い魔力、そしてより強いボディを求めて殺戮を繰り返す。

 その結果、レッドアイにはケスチナの血筋を途絶えると自己崩壊を引き起こすように仕掛けられた。

 本来は製作者個人が死ぬと自己崩壊するようになる所を、事前に気付いたレッドアイがそれを「血筋」へと書き換えた。

 そしてガウガウの死後、その血筋の人間を常に連れ歩いているのだが、それは家畜同然の扱いであり、日常的に虐待を行うという常軌を逸した思考をしていた。

 だがそのレッドアイも現状に不満を覚えていた。

 それは魔人に対してレッドアイの魔力が通じない事だった。

 魔人の持つ無敵結界の前には全ての攻撃は無力…そのため、レッドアイの強力な魔力があっても魔人には勝つ事は出来ない。

 だが狂気のレッドアイにはそんな事は関係ない。

 ただひたすらに魔力を高め、強いボディを手に入れる…それだけがレッドアイの目的だった。

 

 

 

 ―――魔法ハウス―――

 

「またこんな状況か…」

「セラクロラスも何のつもりなのかしら」

「聖女の子モンスターの力とは凄まじいな。ある意味魔王を超えているのかもしれないな」

「そうですね…この力があるのならばランスと再び会えると言った意味も分かる」

「…私はまだ状況を理解できません」

 ランスの持つ魔法ハウス…その中ではセラクロラスの力で新たな時代に飛ばされた5人がテーブルを囲んで話し合っていた。

「で、今度はどうなのだ」

「今はNC331年。だから330年も跳んだ事になるわね」

「300年…想像も出来ませんね」

 この場にいる人間はランスとシャロンの二人。

 一度経験しているランスはともかく、初めて時間が跳ぶという経験をしたシャロンは頭を押さえている。

 スラルは目をキラキラさせて興奮しているが、ケッセルリンクもまた頭を悩ませていた。

 もしかしたら330年間も魔王の命令を無視していたかもしれないのだ。

 魔王は世界最強の存在…その気になればケッセルリンクをあっさりと自殺させる事も可能なのだ。

 ―――尤も、このケッセルリンクの心配は杞憂であり、当の魔王ナイチサは彼女の事などどうでもいいと思っているのだが。

 それを知らぬケッセルリンクとしては、これからの事を考えると少し頭が痛かった。

「カミーラに頼むべきか…しかしあれから330年も経っている。新たな魔人が作られていてもおかしくないか」

「考えても仕方ないだろ。それよりも今後の事だな」

 まさかランスもこうもあっさりとセラクロラスによって移動させられるとは思ってもいなかった。

 幸いにも魔法ハウスはシャロンが手持ちにしていたために問題は無いが、うし車が無くなったのは少々痛い。

「お金が無いのよね…」

 スラルが頬杖をつきながら―実際にはテーブルには手はついていないのだが―現状を物語る。

 うし車の中に路銀を置いていたために、先立つものが無いという現実が待っていた。

「まあ金に関しては適当に襲えば手に入るだろ」

 ランスの言葉に皆の視線が一斉にランスに向けられる。

「な、なんだ」

「いや…発想がまんま盗賊だなーって」

「ランス、直ぐにそういう発想が出るのは控えたほうがいいぞ」

「考え方が完全に弱肉強食なのよね…」

「ランス様…そういうのはあまりよくないかと」

 女性達からの視線に流石のランスもたじろぐ。

「わかったわかった。だがどうやって稼ぐ」

 ランスの言葉にその場にいる全員が口を閉じる。

(…そういえばお金ってどうやって稼ぐのかしら)

(カラーだった時から金など使った事すら無いな)

(金…ハニー…ウッ、頭が…)

(お金…私も貰う事しかありませんでした)

 そもそもこの4人もお金を稼ぐ方法など考えたことも無い。

 この中で「お金を稼ぐ」という行動をとった事があるのは、ランスだけなのだ。

 しかしそのランスにしても、この時代…NC期においてはキースギルドのように仕事を斡旋してくれる所は見たことが無い。

 この時代において、ランスのような冒険者という稼業が珍しいのだ。

「まーおー!」

 その時大まおーがテーブルの上に上がると、複数枚の用紙を広げる。

「なんだこれは」

 ランスがその用紙を見ると、そこには人間の顔と共に数字が書かれている。

 それはLP期にもあるもの…いわゆる賞金首というやつだ。

 ランスも一時期はヘルマンにて手配書に顔が書かれていた過去がある。

「おー! そういやこういうのもあるか!」

「ランス、これはどういう事だ?」

 ケッセルリンクの問いにランスは笑いながら答える。

「ようはこいつを捕まえるなり殺すなりすれば賞金が手に入るという事だ。そうだ、これがいいな」

 ランスは一枚の紙を掴むと、それを手でテーブルに叩き付けるように置く。

「こいつが一番賞金が多い。こいつにしよう」

「えーと何々、盗賊団首領…へー、中々の規模の盗賊団みたいね」

 スラルは魔法で紙を浮かすと、内容を読み上げる。

 そこには殺人・人身売買等様々な罪状が書かれている。

「ではランス様。この方を捕まえるという事でよろしいですか?」

 シャロンはスムーズな動きでボードに手配書を貼り付ける。

「うむ、いいぞ。盗賊団程度、俺様の敵ではないわ」

「まあ…そうね。正直私達ならそれが一番早いかもしれないわね」

 レダもランスの意見に同意する。

 エンジェルナイトは世界の秩序を守るために存在するのであり、人間がどうなろうが知った事ではないというスタンスだ。

 レダは過去に人間に犯されてから、その認識を少し改めたがそれでも人間に対しては苛烈と言ってもいい。

「ふむ…こういう手合いの人間は何処にでもいるものだな」

 ケッセルリンクはからかう様にランスを見る。

 これまでのランスの事を知っている身としては、ランスも賞金首になってもおかしくは無いとも思う。

「どういう意味だ」

「その通りの意味だ。お前ならいつ賞金首になってもおかしくは無いだろう」

 ケッセルリンクは笑いながら話す。

 その様子にはシャロンも思わず笑みを浮かべてしまう。

「シャロン、お前まで笑うか」

「も、申し訳ありません。でもランス様が手配書に載るのを容易に想像出来てしまいまして…」

 ランスと出会ってまだ日は浅いが、彼女なりにランスという男を理解しつつあった。

 短気で粗暴でHだが…それでも人をひきつけるカリスマがあり、その実力と行動力で人を導く事が出来る存在だ。

 それにも関わらず、本人にはその意思は全く無い…だからこそ、メイドとして仕えるのが楽しい人だ。

(何よりも…私を手に入れるという目的のために、あれほどの事を出来る人…)

 亡国の姫としては怒ってもいいのか感謝していいのか迷うが、それでも一緒にいる事で笑う事が出来る人だ。

「幸いにも目撃情報とかも多いみたいだしね。確かに私達なら盗賊団程度は相手にならないわね」

 スラルは今いるメンバーの実力を考えて頷く。

 何よりもスラルは今の状況を非常に楽しんでいる。

 こういった賞金首を探すということもスラルにとっては初めての体験であり、それすらも知識欲を刺激させられる。

(これはこれで楽しくなりそう…)

 スラルは賞金首の紙を見ながら笑みを浮かべる。

 どうすればこいつらを捕まえられるのか、そしてこいつらはどんな強さをしているのか。

 そんな事を考えながらスラルはこの先の展開に心躍らせていた。

「が、そんな事よりも重大な事がある」

 ランスの言葉に皆が注目する。

 そして、その場にいる全員が少し嫌な予感をしながらランスを見る。

「…何となく予想はついてるけど何よ」

「当然セーックス! ガハハハハ! 今夜は4Pだ!」

 その夜、ランスは夜通し3人を抱いた。

 

 

 

 ―――天界―――

 

「なるほど、何か大きな力が動いているようですね」

 クエルプランはようやく見つけたランスの姿を見て安堵のため息をついた。

(…何故私は人間の姿を見つけて安心しているのでしょうか)

 ランス達が消えてから330年…クエルプランも突如として消えたランスには困惑していた。

 しかも動いているのは地上では聖女の子モンスターと言われるセラクロラス…実際にはセラクロラスは神の一端だ。

 次元を跳躍する力を持つ神…それがランス達を移動させたのだ。

「ですが…一体誰がセラクロラスを?」

 まさかセラクロラスが自発的にそのような行動をとるとは思えない。

(もしや…この時代にランスを送り込んだのがセラクロラス…ですが…)

 いくらなんでもセラクロラスにそれ程の力があるとは思えない。

 確かに自分自身は次元を跳躍する力を持っていたとしても、それを人に行使するなどありえるのだろうか?

「考えても無駄ですか…」

 システム神が関わっている以上、自分がこれ以上探るのもお門違いだろう。

 クエルプランは普段の業務に戻る。

 新たな魔王ナイチサは確実に自分の仕事を増やしていた。

 勿論それこそが『魔王』という存在の役割であり、存在意義なので何も文句は無い。

 むしろ先代魔王スラルが大人しすぎるくらいなのだ。

「そして人同士の争い…」

 魔王、魔物の被害も多々あれども人間同士の戦いも非常に大きい。

 領土拡大の元に行われた戦争はどんどん拡大し、確実に人の命は減っていっているが、それでも人の繁殖力は凄まじく時が経てば簡単に数は戻る。

 それだけ人は神の期待に応えているとも言える。

 だからこそ自分も魂管理局としての仕事を全うするのだ。

 そんな時、クエルプランのいる間に何者かが現れる。

 最初はシステム神かと思ったが違う。

「何の用ですか。我侭ALICE」

「そんなに邪険にしなくていいじゃない。堅物クエルプラン」

 クエルプランは望まぬ客にも顔色一つ変えない。

 もちろん女神ALICEもクエルプランが自分の訪問を望んでいないことも知っている。

 クエルプランはALICEと顔も合わせずに目の前に溜まっている仕事を片付けていく。

 ここ最近は妙な生命体による人間、魔物の虐殺のために魂の流れが非常に多くなっている。

 そのための処理に忙しく、ALICEのからかいに乗っている暇は無いのだ。

「あなた下界に降りてるんだって? 魂管理局であるあなたが」

 女神ALICEの言葉にクエルプランの動きが一瞬止まる。

 彼女の言うとおり、今自分は非常にありえない事をしている…何しろ、1級神が下級の神の仕事であるレベル神の仕事をしているのだ。

「ええ、そうですがそれが何か」

 クエルプランは再び作業へ戻る。

 別に自分はやましい事をしている訳ではなく、れっきとした1級神の仕事として下界へ降りているのだ。

「あら、あっさりと認めるのね。私としてはあなたが人間に干渉するのはあまり好ましくない事なんだけど。人類管理局の身としてはね」

 女神ALICEの言葉は勿論自分に対するただの嫌味程度にしか過ぎない。

 だからクエルプランもそんな言葉には眉一つ動かさない。

「ええ、システム神から直接頼まれましたから。400年程前にあなたにも相談したのですがね。ですが私の領分でもあるという事であなたは私に丸投げしましたから」

 この程度のやりとりは何回か行われているし、人間のように一々感情を露にする事も無い。

 これは少し嫌味が入っているのだが、女神ALICEも眉一つ動かさない…はずだった、少なくともクエルプランの予想としては。

「システム神が…?」

 女神ALICEも己の同僚であるシステム神の事は知っているが、クエルプラン等とは違いほとんど顔を合わせることも無い。

 全ての平行世界を管理するとも言われている神…それが魂管理局クエルプランに一体何を頼むというのか。

 しかも人類管理局の自分を飛び越えて。

「…どういうことかしら」

「言葉通りの意味です。私は今はシステム神の依頼で動いています。勿論私の仕事に支障の無い範囲でですが」

「そう…」

「話は終わりですか? 見ての通り少し忙しいですから」

「…悪かったわね」

 女神ALICEは意外にもあっさりと引き下がっていく。

 その様子にクエルプランも少し意外そうに女神ALICEの去っていった所に目を向ける。

「随分とあっさりと引き下がりましたが…さてどうなるでしょうか」

 女神ALICEは人類管理局…その名の通り、人類を神の望む通りにある程度動かす権利を持っている。

「システム神…一体何がしたいのでしょうか」

 クエルプランは1枚の用紙を取り出す。

 それは重要ゆえに自分が肌身離さず持っている書類…全ての生命体で初めて1級神に触れた男であり、全てが空白の存在。

 しかし何故かその書類からは目を離すことが出来なくなってしまっている。

「ランス…ですか」

 クエルプランは書類…ランスの事が記載されている書類を大事そうに懐にしまった。

 

 

 

「システム神か…流石に管轄外か」

 女神ALICEは自分の間で少し考え込んでいた。

 本来であれば人類の事に関しては自分の管轄なのだが、システム神が関与しているとなると自分でも干渉しにくい。

 クエルプランが関わっている以上、何か非常に重要な事が起きているのだろうが、恐らくは自分を関わらせるつもりは無いのだろう。

 人類管理局を飛び越えて魂管理局に話が行っているのがその証拠だ。

「考えても意味は無いか」

 女神ALICEは少々気になったが、それはひとまず置いておく事にする。

「それよりも…どうしようかしらね」

 女神ALICEが悩んでいるのは、大陸から離れてしまった島の事だ。

 大陸から完全に隔離されてしまったが、原因が原因のためどうしたものかと思案していた。

 流石にそこには人を通した干渉は出来ない。

「まあ放置ね」

 大陸から離れた土地には大した興味は無い。

 今の楽しみは、人間が魔王を倒すために生み出した道具が、人間にすら牙を剥いている状況が楽しいのだ。

「さて…人間はどうするのでしょうね」

 魔王ナイチサは先の魔王と違い自分を楽しませてくれている。

 頻繁に虐殺する訳ではないが、一度牙を剥けばあっというまに人類に地獄を見せる。

「フフ…全ては創造神のため…ルドラサウム様を楽しませなさい」

 女神ALICEは今日も酷薄な笑みを浮かべて人類を見ていた。




基本的に大きな流れが無い期間はセラクロラスの出番…になります
オリジナルで話を作り過ぎると絶対に後になって自分の首をしめてしまいますから
力が無いと言われればそれまでですが、お許しください

前回スラルの技能レベルが間違ってました
正しくは 魔法LV2 でした
修正しておきました申し訳ありません
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