ランス再び   作:メケネコ

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新たな問題点

 その盗賊団は今の世の中で中々手広く略奪をしていた。

 時には商団だけではなく、町すらも襲っていた。

 国もその盗賊団には手を焼いており、とうとう賞金がかけられた。

 それでもその盗賊団は依然としてのさばっていた。

 その貯めた金銀財宝、そして女をある国へとせっせと送っていた。

 この盗賊団の首領はただの盗賊団として終わるつもりはなかった。

 ある男が現れるまでは。

 

「がはははは! 雑魚は死ねーっ!」

 ザクーッ!

「ぎゃああああああ!」

 盗賊団の一員があっさりと斬り殺される。

「ザ、ザンダーが殺やれた!」

「つ、強すぎる! 化け物だ」

 これまでは弱者を犯し、殺し、その金品を略奪してきた。

 そしてそれがこれからも続くと思っていた。

 が、それは所詮は幻想でしかない事を強く思い知らされた―――目の前にいるたった5人…いや、4人と1匹(?)の存在によって。

「やはり雑魚は雑魚だな。経験値にもならんわ」

「盗賊団なんてこの程度でしょ」

 ランスの言葉にレダが呆れたように応える。

 ランスは盗賊団を容赦無く斬り殺しているが、レダもまた情け容赦無く男達を斬り殺していた。

 エンジェルナイトが人間に対し情けをかけるという事は決して無いのだ。

 金色の髪をした美しい女性が逃げ惑う盗賊団を無慈悲に殺していくのを、盗賊団達は呆然と眺めていた。

「まーおー!」

 ピンクの謎の存在が鎌を振るうと、斬られた人間は出血も無く倒れ落ちる。

「まお!」

 逃げる人間には容赦なく炎を浴びせ黒焦げにしていた。

「シャロン、無事かね?」

「は、はい。大丈夫です」

 その場にいるには不釣合いなメイド服を着ている女性を人質にしようとしても、隣にいるフードを頭から被った女性がそれを許さない。

 フードの女が手を振るうだけで近づく者達はばたばたと倒れていく。

 魔法とも違う何かに盗賊団は既に統制を保てなくなっていた。

「に、逃げろ! こんな所で死んでたまるか!」

 誰かがそう言うと、後は蜘蛛の子を散らすように誰もが一斉に逃げ始める。

「いいの? ランス」

 剣の中からスラルが聞く。

 彼女にはこういった経験が無いため、どうすればいいのか分からないのだ。

「構わん。いちいち雑魚共を殺すのは面倒くさいからな。ようは頭だけを潰せばいいのだ」

「そうなんだ」

 スラルはランスの剣から体を出すと、シャロンから1枚の書類を受け取る。

 それこそが今回の目的であり、こいつだけは何としても捕らえる必要がある。

 死体でも構わないとランスは言うが、やはり生かして捕らえたほうがいいのだろうとスラルは思う。

 魔法で中に浮かした用紙と今倒れている人間の顔を比較するが、倒れている人間の中にはこの顔は見当たらない。

「もー…まおー! 焼いちゃったら分からないでしょ!」

「ま、まお!」

 スラルの叱責に大まおーが抗議のように大きな声を出す。

「え? きちんと確認した? 今倒れている中にそいつはいない? それならいいんだけど…」

 謎の会話が終わった後、スラルは周囲を見渡す。

 魔法ハウスを手に入れる時にランスは盗賊団の首領となったが、その時に利用した施設とは随分と違う。

 あの時はどこかの国が残した施設を使っていたようだが、ここの盗賊団は大きな洞窟をねぐらとしていた。

 入り組んだ迷宮の形をしており、ここからどこへ行けばいいか少し悩む。

「ランス、ここからどうするの?」

 スラルの言葉に合わせるように全員がランスを見る。

 何しろここにいるメンツは戦闘能力はあるが、こと冒険に関しては素人もいい所、ならば冒険者として経験が多いランスを頼るのが正しい。

 洞窟はそれなりに広いため、賞金首が何処にいるのか見当もつかない。

「俺様についてこい。こういう奴は奥にいるのが定番だ」

 ランスは自信満々に進んでいく。

 経験の上で、ランスはこの手の人間がどこにいるのか大体分かっている。

 逃げ出した盗賊団は我先にと外へと逃げていったが、一部の人間は今ランスが向かっている方向へ逃げていった。

 ならばそこに居るのが首領の可能性は高い。

「がはははは! 邪魔する奴は皆殺しだ!」

「フン、きやがったか」

 ランス達が進んでいくと、洞窟の奥には不釣合いな大きな部屋につく。

 そこにはやはり不釣合いな大きなテーブルが有り、多数の椅子も並んでいた。

 そしてその椅子に座っていたのは、間違いなく手配書に書かれていた男だ。

「だがな、飛んで火にいる夏の虫とはお前達の事だ!」

 男が合図をすると、ランス達の頭上から巨大な岩が落ちてくる。

 男の予想ではその場にいる全員がその岩に潰されるはずだった。

「はいはい、バリアバリア」

 当然のようにそれを予想していたスラルが岩をバリアで弾くと、ケッセルリンクが無造作にその岩を薙ぎ払う。

「な、何だと!?」

 まさかあの岩を弾くなど誰も想像していない。

 しかし盗賊団達には驚いている暇など無かった。

 ランスとレダはすぐさま動くと、取り巻きの盗賊団をあっという間に斬っていく。

 まさに早業…特にランスの剣の腕は盗賊団にはまさに閃光としか思えなかった。

 剣が無造作に振るわれたかと思うと、その度に人があっさりと鎧ごと両断されて死んでいく。

 軍に配備されているような上等な鎧ではないが、それでも鎧の上からだろうがおかまいなしに斬るなど異常だ。

 そしてあっという間に剣が眼前に突きつけられる。

「ま、待ってくれ! そ、そうだあんた、俺達のボスにならないか!」

 男は当然の如く命乞いをする。

 もしそれが平時であればランスも楽しそうだからという理由で受けたかもしれない。

 しかし今の現状ではそんなものは意味が無い…また何時セラクロラスが来るのかが分からないからだ。

「いらん。面倒だ」

 そう言ってランスが剣を振るおうとした時、レダがその手を止める。

「待ちなさいよ、ランス」

「なんだ」

「おお…」

 この女も情け容赦無く仲間を殺していたが、もしや助けてくれるのか…という希望は次の言葉で見事に打ち砕かれる。

「こういう場合は生かしておいたほうがいいんじゃない? とりあえず動けないように手と足をへし折ってさ」

「そうだな。男なんぞ生かしておく価値は無いが金になるならまあいいか」

「じゃあそういう事で…」

 ベキッ!

「ぎゃあああああ!」

 レダは躊躇い無く盗賊団のボスの手足をへし折る。

 そして手早く縛ると、無造作に引きずっていく。

「じゃあ行きましょ」

「うむ」

 あまりと言えばあまりの扱いにシャロンの顔は少し引きつっているが、シャロン以外は顔色一つ変えない。

(お父様、お母様、みんな…私はどんどん引き返せない道を歩いているようです…)

「で、こいつを引き渡せば賞金が貰えるの?」

「そうだ。が、その前にお宝を漁るとするか。おい!」

 

 ゲシッ!

 

「ひぎっ!」

 ランスは引き摺られているボスに蹴りを入れる。

「おい、お前らが溜め込んだ宝はどこだ。隠すとためにならんぞ」

「な、無いです! 全部引き渡しました!」

「なんだと? 嘘を言ってもためにならんぞ」

「ほ、本当なんです! そもそも俺達は雇われただけなんです! そいつらに奪った財宝を渡してたんです!」

 その言葉を聞いてスラルは成るほどと頷く。

「そういう事か。少し妙だとは思ってたのよね。前にランスと盗賊団してた時より随分と装備も豪華だったし。時代の差かなーって思ってたけど、国から援助受けてたなら納得ね」

「どういう事だ、スラルちゃん」

 スラルは腕を組んで胸を張る。

 カリスマ、実力にはランスには及ばないが、こういった知識や政治関連の事ならば長く生きて魔王をやっていた自分の方が上だ。

 それに自分は臆病であり慎重であったため、こういった事も容易に想像がつく。

「水面下で戦争を仕掛けていたって事かしらね。この手配書を出してた国の敵対国がこいつらを雇ってた…いや、むしろこいつらはその国の軍人なのかもしれないわね」

「つまりは?」

「こいつらが集めていた財宝とか人間は既に別の所に移されてるって事よ。だからここには微々たる財宝しかないって事ね」

「そ、そういう事です」

 スラルの言葉を盗賊団のボスが肯定する。

 それを聞いてランスが不機嫌になる。

 その様子を見てスラルがランスを落ち着かせる様に肩を叩くそぶりをする。

「落ち着いて。それでもこいつらが盗賊団の頭には違いないから。だからこいつを突き出せば賞金は手に入るわ。その後で戦争がおきるかもしれないけどね」

「別に戦争が起ころうが俺の知ったことではない。とりあえず金が入ればいい」

「そうね。とりあえず金が入ればそれで十分よね」

 ランスとレダは特に興味も無さそうに応える。

 常識人であるシャロンだけは悲痛な顔をしているが、

「シャロンちゃん。まさかどうにかしたいとか言うんじゃ無いだろうな」

「いえ…ですが、ランス様ならば戦争を止めるのも可能ではないかと思いまして…」

 シャロンは何処か縋るようにランスを見るが、ランスはそれを鼻で笑う。

「ムダだムダ。この手の奴はどこからでも沸いてくるし、それを潰すなど無意味だ無意味」

 ランスはシャロンの言葉をあっさりと切り捨てる。

「ランス…少し言葉を選ぶべきだと思うがな」

 ケッセルリンクの苦言にもランスはくだらないといった感じに応える。

「大体俺様だけでどうにかなる問題でも無いだろう」

 ランスの言葉にシャロンは悲しそうに目を伏せる。

 彼女とて分かっているのだ。

 しかし自分はそのランスによって助けられた…それを思うと、自分だけが助かってしまったことに未だに心を痛めている。

「そんな顔をするな。君は運が良かった、それ以外の奴は運が悪かった。そう思っておけ」

「運…ですか」

 シャロンはまだ不満そうにランスを見るが、ランスはそれを無視するように歩き始める。

 レダとスラルがそれに続き、引き摺られているボスの悲鳴が洞窟に響く。

 一人立っているシャロンの肩をケッセルリンクが叩く。

「ケッセルリンク様…」

「君の言葉も分からなくは無い。私がカラーだったとき、あの男と共にいればカラーの未来を切り開けると思っていたよ」

「カラーだった時からのお知り合いだったのですか」

 魔人ケッセルリンクとランスが古い仲である事は知っているし、体を重ねる仲である事も知っている。

 が、まさかカラーだったころからの知り合いだとは思ってもいなかった。

「ああ…その後私はスラル様に命を救われる形で魔人となった。それは追々話そう…だが、ランスにそれを求めるのはやめたほうがいい」

「…ですがランス様にはその力があると思います」

「そうだな。ランスが人間の中でも逸材なのは確かだ。だが、ランスにはその気は全く無い。興味が無いのだろうな」

 ケッセルリンクの言葉にシャロンは納得がいかない様子だが、そんな彼女を見てケッセルリンクは笑う。

「羨ましいのか?」

「そうかもしれません…あの方と一緒にいると、やってくれるという気になってしまいます」

「そう…だな。ランスならばやれるのだろう。何しろ魔王にも臆せぬ男だからな」

 

 

 

 ―――魔法ハウス―――

 

「一先ずはお金は大丈夫みたいね」

 テーブルの上に詰まれたお金を見てレダは安堵する。

 少しの間食べずとも問題は無いが、やはり下界にいるのが長いせいか食事を取らないと少し落ち着かない。

 そして下界で食事をするためには金が必要…レダも無理に人間の常識を曲げるつもりも無かった。

「食料もこれで安心ですね」

 十分な食料を買い込むことは出来た…が、別の問題点も出てきていた。

「ランスの鎧ね…」

 スラルが飾られているランスの鎧を見ながら難しい顔をする。

 ランスのしていた鎧は上質の物で、あのビスケッタが用意した物であるためにランスにまさにピッタリという代物だった。

 が、その鎧も今は傷だらけであり、鎧としての用途を満たすのが難しくなってきていた。

 修理に出そうとしても、この鎧は修理が出来ないと突っぱねられてきた。

「ランスも色々な敵と渡り合ってきたようだからな…鎧が駄目になるのも仕方の無いことだろう」

 ケッセルリンクが知る限りでも、魔人オウゴンダマ、魔人カミーラ、魔王スラルといった普通に考えれば死んでいてもおかしくない戦いを繰り広げている。

 カミーラから聞いた話では、ドラゴンとも戦ったこともあるらしい。

「でもランス、他の鎧じゃだめなの?」

「体に合わん」

 ランスはこれまでの冒険で色々と鎧を使ってきたが、今使っている鎧が一番自分の体に合っていた。

 それもそのはず、メイド技能LV2を持つビスケッタが用意した代物であり、ランスの体に合わせた一級品だ。

「ランスは剣の時もそうだったが、装備には意外とうるさいな」

「私の魔法も防いでたみたいだけど、こう見ると普通の鎧なのよね…」

 スラルはランスの鎧を上下左右から見る。

 魔王であった自分は当然鎧など使わないが、ランスは手加減していたとはいえ自分の魔法にも耐えた。

 エンジェルナイトであるレダが自分の魔法で倒れないのは分かるが、人間のランスが魔王の魔法に耐えたとなると、装備が優秀だと思っていた。

 しかしこう見ると確かに上質ではあろうが、普通の鎧に過ぎない。

「そういえばランスはスラル様の魔法にも耐えていたな…だがこの鎧の力という訳でも無さそうだが」

 ケッセルリンクもランスの鎧を見るが、どう見ても普通の鎧でだ。

「それはランスがこのアイテム持ってたからでしょ」

 レダが取り出したのは、光り輝くドラゴンの形を模った像だ。

 これこそが昔ランスがカミーラに連れられて翔竜山を登っていた時、襲い掛かってきたドラゴンを倒した時に手に入れたアイテムだ。

 エンジェルナイトのレダから見てもこれはかなりの上物のアイテムである事が分かる。

 そしてそのアイテムに一番目を光らせていたのがスラルだった。

「え…こ、これもしかして『ドラゴンの加護』!? 初めて見た! すっごい調べたい!」

 ランスの知るマリア・カスタードのように目をキラキラさせたスラルが、『ドラゴンの加護』を触れようと手を伸ばすが当然のように触れることは出来ない。

「ううう…私に肉体があれば思う存分調べられるのに…」

 悔しそうに唸るスラルだが、同時に何故ランスが自分の魔法に耐えられたのかも納得がいった。

 この世界最強の存在として君臨していたドラゴン…そのドラゴンが落とすとされている超がつくレアアイテムだ。

「そんなに凄い物なのですか?」

 温室育ちのシャロンにはこれがどのような価値があるのか今一わからない。

 だが、非常に美しい彫像である事だけは分かる。

「そりゃ凄いわよ。何しろあのドラゴンだけが持つとされるアイテムだし…間違いなくバランスブレイカーの一品でしょうね」

「でも本当にどうするの? 流石に鎧はどうしようもないでしょ」

 レダも戦士であり、武具防具の大切さは分かっている。

(この時代の鎧じゃランスの目に適うものは無いでしょうね…)

 本来の時代であるLP期の方が装備は充実しているとはレダも思っている。

 その鎧に慣れたランスでは、今のNC期の鎧は肌に合わないだろう。

「いっその事、戦闘スタイルを変えるというのはどうだ」

「面倒くさい。それに俺はそんな事をしなくても強いから問題無い」

「確かにお前は強い。剣だけで戦えば私でもお前には勝てないだろうな。しかし鎧ありきで戦っていたお前が、鎧無しで今まで通りに戦えるか?」

「ぐぬぬ…」

 ケッセルリンクの言葉にランスは呻く。

 ランスは以前JAPANの兵士は軽装だと言ったが、ランスが友と認めた織田信長から言わせると、大陸の人間が重装備に見えると言っていた。

「ランス、今のお前の技術が体に合っていないのではないか? お前は力任せで剣を振るっているが、それだけではもったいない気もするな」

 ランスは自分でも気付いていないが、剣戦闘LVが2から3へと上がっている。

「俺様は十分強いぞ」

「そう、ランスは確かに強いわ。でもさ、ちょっと窮屈なのは自分でも分かってるんでしょ?」

 レダの言葉にランスは何も答えない。

 確かにランスは自分自身で若干の違和感を感じていた。

 しかし、自分の必殺技であるランスアタックの威力は十分だし、鬼畜アタックの威力も申し分ない。

 だからランスは今までその事を無視していたのだ。

「今だからいいんじゃない? いざという時に鎧があった時と同じような戦いをした時、大怪我をするのはあんたよ」

「ぐぐ…」

「ランス様。でしたら皆様の言うとおりにすべきでは? 私もランス様が無用な怪我をしてしまうのは嫌です」

「皆の言うことも一理あると思うぞ。確かに魔法に関してはこの『ドラゴンの加護』があれば問題無いだろうが、鎧まではどうにもならないからな」

「わかったわかった。考えておく」

 こう強く言われては流石のランスもそう応えるしかなかった。

 そして実際にはランスも自分のレベルが上がった時に何となくからだの違和感を感じてはいるのだ。

 それに今の世界の鎧が気に入らないのも事実だし、鎧の修繕も出来ないというのも事実だ。

 ランス自身も優れた戦士、このままではまずいという事も理解している。

「…修行か」

 ランスは今までした事の無い行為に面倒くさそうにため息をついた。

 

 

 

 ―――翌日―――

 

「うーん、やっぱりランスの剣の腕って凄いわね。私の目は間違っていなかったわ」

「私には高度すぎて分かりません…」

 スラルとシャロンの目の前では非常に高度な戦いが繰り広げられていた。

 ランスが剣を構えたレダとケッセルリンクの二人を相手にして戦っていた。

 戦うと言っても、ランスはあえて防戦一方なのだが、それでもレダとケッセルリンクの剣を見事な動きで捌いていた。

 が、

「ほらランス! 鎧無いんだからその動きじゃ体傷つけるわよ!」

「分かっとるわ!」

「やはり癖というのは中々抜けぬものだな。だが、それを矯正しなければ後悔するのはお前だぞ」

「やかましい!」

 そう言いながらもランスは必要最低限の動きでケッセルリンクの剣を弾く。

 ランスの戦闘スタイルとしてはほとんど防御の事など考えていないが、それはランスがやらないだけであり出来ない訳ではないのだ。

 その証拠に、ランスは剣の才能がある二人を相手にしてもそれを見事に捌き、回避している。

「やっぱり体は出来てるじゃない。ランスが努力をしてないだけなのよ」

「そうだな。やはりお前の剣の腕は素晴らしい」

 休憩のためかレダもケッセルリンクも剣をしまう。

「お疲れ様です」

 シャロンが冷たい水を差し入れると、3人はそれを受け取り飲み干す。

「で、どうなのだ」

「流石としか言えないわよ。やれば出来るとしか言わない」

「そうだな。今まで面倒くさいからやってなかったと言われれば納得がいく。少し続ければ自然と身につくのだろうな」

 二人の言葉はランスも実感はしていた。

 ランスの我流の剣術は誰に教わったわけでもなく、この剣でトーマ・リプトンといった人類最強と呼ばれた男や、魔人とも渡り合ってきたのだ。

 ただ、今までは攻撃一辺倒であり、防御をあまり考えた訳ではなかった。

「ランスならその内身につくでしょ」

「そうだな。お前ならば問題は無いだろう」

(餌もある訳だしな)

 ケッセルリンクは内心ため息をつく。

 その餌とは…

「がはははは! いい気持ちだぞ!」

 ランスは風呂でレダとケッセルリンクの二人に体を洗われていた。

「もう…本当にランスは直ぐにそっちに直結するんだから」

「分かっていた事だろう。それにお前も拒まなかっただろう」

「私はランスを守る義務があるの。これも義務の一環よ」

 そう言いながらもレダの顔は紅い。

「うむうむ、これほどの役得があれば俺様もやる気が出るというものだ」

 面倒くさがりのランスがこの訓練を受ける条件として、一緒に風呂に入るという条件を二人に呑ませたのだ。

(…私はこんな条件が無くとも誘われれば一緒に入るのだがな)

 ケッセルリンクはそんな事を考えるが、それでランスがやる気を出すというのであれば何も問題は無かった。

 レダも口では文句を言っていても、決して拒否することは無い。

 二人はランスの体を洗い終えると、水でランスの体を流す。

「出来たわよ」

「これでいいか?」

「うむ。十分だ」

 ランスはそのまま振り返ると、当然のように二人には臨戦態勢を取っているハイパー兵器が目に入る。

「今度は俺様の番だな。お前達の体を隅々まであらってやるから感謝しろ!」

 そう言いながらランスは二人に飛び掛る。

 勿論、ランスは二人の体を思いっきり堪能した。




ランスってランス9でのステータスを見ると、防御技能も高いんですよね
でもなんかランスが防御しているイメージが沸かない。
過去には盾防御LV1も持ってたのにね

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