ランス再び   作:メケネコ

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暗躍する者

 大陸移動はLP期ほど簡単にはいかない。

 ランスも自由都市からリーザスに向かうのには何の問題も無かった。

 リーザスが自由都市に寛容であり、ヘルマンが攻め入った時に共闘していた事もあり、行き来にも何の支障も無かった。

 ゼスに向かう時は最初は厳しかったが、カミーラダークを経てからはゼスに入るのも難しくなくなった。

 ヘルマンに向かうのは最初は面倒くさかったが、革命が成功した後は移動も簡単になった。

 しかしこの時代はこうもいかない。

 常に現れる魔物、争いあう人間達…それらの要素が絡み合い、移動するのにも時間がかかる有様だ。

 が、それでもNC0001年よりも遥かに改善されたといってもいいだろう。

 人間同士の大きな争いはそれほど多くは無かった。

 金を払えばうし車に乗れるという事でも十分だった。

「うーむ、ここまで来るのにも1月もかかるのか」

「仕方ありませんよランス様。それでも昔よりも移動は楽になっていると思いますよ」

「そんなもんか」

 シャロンの言葉にランスはとりあえず納得はしておく。

 実際に王族であったシャロンが言うのであればそんなものなんだろうという実に単純な割り切り方だが、それがランスという人間だ。

 細かいことにはあまり拘らないのがランスだからだ。

「それよりも…お金がもう少ししか無いですね」

 これまでの移動にはやはりお金がかかり、貯めていたお金もとうとう残り僅かだ。

 ランスにしては珍しく散財していないのは、LP期に比べて碌な施設が無いこともあるし、女にも困っていないからだ。

 貝殻のオークションも無いようで、ランスとしてもお金を使う暇が無かったのだが…それ以上に移動や食費にお金がかかってしまっていた。

「しかしどこの町もそうだが、ギルドとかは本当に無いのだな」

 ランスが知る町にはギルド等の冒険者に仕事を斡旋する施設があるものだが、そのような施設は未だに見つかっていない。

 適当なモンスター退治といった仕事も無いため、定期的にお金が入る事が無いのがランスには大いに不満だった。

 そしてランスの冒険の肝である新たな女性との出会いは多いのだけが救いだ。

「こちらでも賞金がかけられている方がいるのですね」

 シャロンは貼られている紙を見てため息をつく。

 自分の国は戦争前は安定していた―――と思っているが、実際はどうだったのだろうかと思わず憂鬱になってしまう。

 かつて彼女が居た国は最早存在しておらず、その彼女の国を攻め落とした国ももう存在していない。

 300年という時間はそれほどまでに残酷なものだった。

「こういう奴らは何処にでもいる。お前が気にする事じゃないだろ」

「…そうですね」

 いくら優秀な為政者であろうとも犯罪を0にするなど不可能だろうし、このような者がいるからこそ必要とされる者がいる。

「連続誘拐ですか…恐ろしいですね」

 もう一つの貼紙には『子供が行方不明になっている。注意されたし』と書かれている。

 同時に探して欲しいという依頼もある。

「ランス様、この依頼をこなす訳にはいきませんか?」

「連続誘拐…面倒くさそうだな」

 ランスの言葉にシャロンは思わずランスに悲しげな眼差しを向ける。

 その目が少しシィルに似ている事もありランスも、

「分かった分かった。だが見つかる可能性は低いぞ。子供なんてのは大抵そういう所に売られるか奴隷として売られるかだ」

「そういう所…?」

「ああ…シャロンには分からんか。そういうガキが好きなロリコンが居るって事だ」

「…そんな」

 ランスの言わんとしている事が今のシャロンであれば理解できる。

 彼女からはすれば信じられない事だが、かつてランスは同じような組織であるロリータハウスを潰したことがある。

 その手の連中はどこの世界にでもいるのだろう。

 柴田勝家のような手を出さないロリコンが異端なのだ。

「まったく…よーいちろーは世界から根絶やしにせねばならんな」

(…よーいちろーとは誰なのでしょうか)

 最後のランスの言葉は分からないが、ランスもその手の事に憤っているのを見てシャロンは安心する。

「一番金額が高いのはこの案件のようです。ドラゴンが出るとか」

「ドラゴンだと?」

 流石にその言葉はランスも聞き流す事は出来ない。

 一番近いのではカミーラに突き合わされ、翔竜山へ登りドラゴンと戦い、そしてあのノスとも戦った。

 ランスもドラゴンとは翔竜山でしか戦った事は無い…そもそもドラゴンを翔竜山以外で見る事が稀なのだ。

(そういや風邪を引いたドラゴンとかいたな…名前は忘れたが)

 闘神都市で出会ったドラゴンを思い出すが、名前までは思い出す事は出来ない。

「ドラゴンか…今の俺様ならば余裕だな。これからいくか」

 ランスは己の方針を決めると、レダ達が待つ場所へ向けて歩き始めた。

 

 

 

「と、いう訳でドラゴンを狩るぞ」

「それはまた唐突ね。しかもランスが自らそんな事言うなんて」

「ドラゴンか…私もまだ戦った事は無いな」

「無理にドラゴンと争う必要は無いから私も止めてたのよ。無敵結界はあっても流石にドラゴンの王とは争いたくなかったし」

 ここは魔法ハウスではなく、宿の一室。

 ダブルで二部屋を取り、今はランスの部屋で話し合いをしている。

 生憎と4人が全員で泊まれる部屋は無いようだ。

「でもドラゴンが人里で暴れるなんて今まで聞いた事も無いけどね。魔物にも人にも関わらない…それがドラゴンだもの」

 スラルが過去を思い出しながら頷く。

 ドラゴンの王とハニーの王…この2体はこの世界の中でも別格だと聞いている。

 ドラゴンの王とは会った事は無いが、ハニーの王には会った事があり、その力はまさに強大…ふざけて見える分、余計に底が見えない不気味さがある。

(…なんであんなに眼鏡に拘るんだろ)

 ハニーの王…ハニーキングが自分に眼鏡にかけようとして戦ったのは非常に嫌な思い出だ。

 自分の魔法が一切通じないのもあるが、何度割っても簡単に復活してしまう。

 一体どうやったら死ぬのかと本気で悩んだ事もある。

「ランスはドラゴンを倒した事があるみたいだけど、まあケッセルリンクがいれば余裕よ。どれだけ強くても、無敵結界は破れないもの」

 そう、誰が相手だろうがケッセルリンクがいれば何も問題は無い。

 魔人の力、そして無敵結界とはそれほどまでに圧倒的なのだ。

「人、魔物問わず襲うドラゴンか…しかしそれならば魔王側も動いている可能性もあるな」

 ケッセルリンクは少し難しい顔をする。

 何しろ彼女は330年程も魔王の命令を無視してる形となっている。

 下手をすれば魔王に消されてもおかしくは無いのだ。

「ドラゴンもそうですが…行方不明になっている子供達の事も気になります」

 シャロンはドラゴンよりも消えた子供達の方が気になるようだ。

「ランス様…見つけてあげて下さいね」

「あーわかったわかった。だが覚悟だけはしておけよ」

「はい」

 先のランスの言葉は当然頭に残っている。

 浚われた子供がどのような末路を迎えるかを。

「しかしどういう風の吹き回しだ? お前がその手の事をするとはな」

「ついでだついで。それにシャロンの暗い顔が鬱陶しい」

 ランスが態とそのような態度を取る事にケッセルリンクは笑みを浮かべる。

 ランスとの付き合いも長くなってきたが、この男が素直な人間ではない事は分かっている。

 だからこのような態度と言い方しか出来ないのだろう。

「誘拐ね…人質とかとは違う…何の要求も無いみたいだし…ランスの言うとおり、奴隷として売るためなのかしらね」

 スラルは色々考えるが、ランスの想像通りの理由しか思い浮かばない。

(何かの実験…という事も考えられなくはない。でも…この場でそれを言うのもね)

 別の可能性を考えるが、スラルは流石にありえないと考えて頭を振る。

 だいたい何の実験を行うというのだろうか。

「だがなあ…こういった情報収集が出来る奴がいないのがな」

「まあそれはね…」

 レダもランスの言う事が分からない訳では無い。

 そういった情報を収集するのも重要…それは下界に来てから初めて分かった事だ。

 そもそも天使にはそういった情報を集めるとう概念が存在しない。

「かなみが居ればそれだけでも違うんだろうけどね」

 ランスと一緒に居る見当かなみ…実力はともかく、そのレンジャーとしての技能はそれなりだ。

 その彼女がいるといないとではやはり天と地ほどの差がある。

「まお!」

 テーブルの上に座っていた大まおーが勢いよく手を上げる。

「え? 自分に任せろって?」

「まーおー!」

「自分なら上手くやれるって…でも手がかり無しよ?」

「まお! まお! まおー!」

「まああなたがそこまで言うのなら出来るのかもしれないけど…」

 大まおーとスラルが会話をしている。

 ちなみに他の4人には大まおーが何を言っているのかさっぱり分からない。

「うーん…まあ悪魔のあなたなら個人でも問題無いでしょうね。ランス、ここはまおーに任せてみない?」

「…俺には何を言っているのかさっぱりわからんが…おいまおー。やれるのか」

「まお!」

 ランスの言葉に大まおーは胸を張って答える。

 その様子を見て、

「じゃあやってみろ」

「まーおー!」

 大まおーは立ち上がると、窓を開きそこからふよふよと飛んでいく。

「最初に出会った時から思っていたのだが…あいつは一体何者なのだ?」

「悪魔…なんでしょうけど、全く悪意の類を感じないのよね…ランスに凄いなついてるし」

「私は非常にカワイイと思いますけど」

「え? いい子じゃないあの子。私が魔王だったら間違いなく魔人候補にあげてたわね」

「役に立つなら何でもいいだろ。まああんな姿だが役に立つな」

 ランスの評価としては、自分の邪魔を一切しない役に立つ奴といった感じだ。

(それにしても…偉そうなハゲ親父だと思っていたが、意外と役にたってたな)

 ここには無いキースギルドを思い出しランスは唇を歪める。

 気に入らないが、やはりギルドの存在と言うのは非常に大きい。

 自分をキースに引き合わせたあの女戦士の言葉が今になって思い出させる。

「少しの間、まおーを待ちましょ。それくらいのお金はあるでしょ?」

「はい。当分は大丈夫です」

 お金は確かに少なくなっていたが、途中でモンスターを倒したりと色々あったため、案外お金は減らなかったのが嬉しい誤算だ。

 そこに今回の依頼分のお金が入れば、当分路銀は持つ。

「話は終わりだな」

 ランスは立ち上がると、シャロンを抱き上げる。

 奇しくもお姫様だっこの形となったシャロンは思わず目を見開く。

「お前の頼みを聞いてやるのだ。ならお前も当然俺様に尽くすべきだな」

 ランスはそういうとスキップでもしそうな軽やかさで隣の部屋へと向かう。

 残ったのはレダとケッセルリンクとスラルの三人。

「シャロンも大変よね」

「彼女も嫌がってはいない。問題は無い」

 その夜も、シャロンのあえぎ声が一晩中響き渡った。

 

 

 

「で、本当にこの辺なのか」

「まーおー!」

 あれから3日、大まおーが戻ってくると、早速スラルの翻訳の元でランス達は浚われた子供達の探索に向かっていた。

 それは人里から大分離れた場所にあるらしく、ランス達はその場所へと徒歩で向かっていた。

「…本当に何処から情報を仕入れてくるのかしら、この悪魔は」

 レダは胡散臭そうな目で大まおーを見る。

 スラルとは何故か会話が通じているらしいが、自分には何を言っているのかさっぱりだ。

「こうして自らが探しにいく…やっぱりこれが重要よね。私も自分の足でランスとケッセルリンクを見つけたし」

 スラルは今も目を輝かせている。

 こうして旅をするのが自分にはやはり合っていると感じていた。

「本当にこの付近に浚われたならば、一体どのような方法で浚ったのか…私はそれが気になります」

 それはケッセルリンクが感じていた疑問だった。

「ランス、お前は冒険が長いのだろう。その場合、どういった可能性が考えられる」

 だからその疑問をランスに聞いてみる。

 そういう知識は長く生きている自分よりも、経験豊富なランスの方が詳しいだろう。

 その場の全員の視線がランスに集まる。

「ランス様…教えていただけますか?」

「別に構わんが…そういう組織があるのだ」

「組織ぐるみという訳か」

 ランスの言葉にケッセルリンクは納得する。

 一人二人では出来ない芸当だろう。

 人を遥かに超えたケッセルリンクならば一人でも浚うことは出来るだろうが、人間となるとそうはいかない。

 そういった組織が関与しているのは当然の事だろう。

「後は国だな」

「…え?」

 ランスの言葉にシャロンが思わず声を上げる。

「ランス様、今何と…」

「だから国だと言ったんだ。俺様が知る限りでは国のお姫様が黒幕なんて事もあったぞ」

 ランスはリーザスの王女、リア・パラパラ・リーザスの事を思い出す。

 思えば彼女も最初は非常に歪んでいたのだろう。

 今はそんな事は無いとはいえ、過去には女を責め殺していた事もあった。

 なまじ彼女が優秀だっただけに始末に負えなかった。

(マリスの奴がリアを甘やかすからいかんのだ。まあ今は少しはマシになったか)

 過去にはかなみを使ってシィルを殺そうとしたこともあった。

 それでもランスがオシオキした後はそんな事は無くなったのだが。

「そんな…」

「そんなに気にするな。君はそんな事が出来るような奴じゃ無いことは分かってる。俺様が知ってる奴が特殊すぎるんだ」

(流石にリアと比較するのは可愛そうだな)

 何しろリアはランスの前では少し頭が緩いが、国民からの信頼を集めており世界をこの手におさめるという野望を持ち、それだけの頭脳を持つ女性なのだ。

 政治LV2…その手腕は自国には富を、そして敵国には脅威を与える程だ。

「今の話からすると、それは国ぐるみって事でしょ? でも誘拐が起こっているのは国と言うよりも街よ。流石にランスの言う国が関与って話は無いと思うわ」

 スラルは自分で言って、その言葉の違和感に気づく。

「あれ…でもだとすると余計に変な話よね。何しろ情報が全く出てこないのはおかしいわ」

「そうね。目撃者なり何なりもっと詳しい情報があってもいいものよね」

「ふむ…突拍子も無い言葉かもしれないが、別の何かが動いているという可能性もあるという事か」

「そんなのは調べれば分かる事だろ。おいまおー。何か無いのか」

「まお!」

 ランスの言葉に大まおーが指さした先には、森が広がっていた。

 翔竜山から少し離れた場所にあるその森は、ランスにとって少し嫌な事を思い出させた。

(…この辺はキャロリちゃん達が居た辺りか)

 緑の里…それは全国から緑化病という病にかかった少女たちが集められていた場所。

 死病である緑化病は治療することが出来ず、導く者達の謀略も有りキャロリ・メイトを除く全ての少女たちの命が失われた場所だ。

 ランスに抱かれたキャロリ・メイトだけが命は助かり、他の者は皆死亡し…その結果魔人カイトが汚染魔人となって人類に襲い掛かってきた。

 それを退けたランス達であったが、結局は助ける事は出来なかったのだ。

「ランス、どうしたの?」

「何でも無い。とにかく行くぞ」

 緑の里は既に焼き払われ残っていないが、ここはランスの記憶とは違い確かに森が残っている。

 ランス達は森へと足を踏み入れた。

 

 

 

 ―――森の中―――

 ここには一つの村があった。

 小さいながらも自給自足が出来ており、時たま訪れる商人から商品を買ったりと、何の問題も無く暮らせていた。

 それはどこの世界にもある小さな村の一つの光景だった。

 しかしその村には今変化が訪れていた。

 もうこの村にはある家族以外は誰もいない。

 

「何故だ! 何故上手くいかん!」

 一人の男が腹立ちまぎれに何かの肉塊を踏みにじっていた。

 男の目には狂気が宿っており、血と肉の強烈な異臭をも全く意に反さない。

「人はもっと素晴らしい存在になれるのだ! そのためには何が足りないのだ!」

 男は狂気の実験を繰り広げていた。

『人は魔人をも超える存在になる可能性がある』

 いつしかそんな妄執に取りつかれた男は、まずは村の人たちを実験の材料へと変えた。

 その材料がいなくなれば、近隣の村や町から人を調達した。

「中々上手くいかぬものですな」

「おお、ボルト殿!」

 そしてその凄惨な場所にも顔色一つ変えずに男が入ってくる。

 長い金色の髪に黒い服の美形の男だが、その身に纏った空気は氷のように冷たい。

「それよりもボルト殿、そろそろ新しい素体を用意してくれませんか。そろそろストックが切れそうです」

「かなり集めたつもりなのですが…足りませんか」

 ボルトと呼ばれた男はその顔に笑みを浮かべる。

 端正な顔から放たれたのは、まさに悪魔の言葉だった。

「それよりも一番いい実験体がいるではありませんか。それもまだ使ったことの無い実験体がね…」

「使ったことの無い…おお、そうだ! まだアレがいるではないか!」

 そういって男はある部屋に向かっていく。

 その様子を見てボルトと呼ばれた男は下らなそうに地に落ちている肉体を見る。

「ふむ…フィオリ嬢も中々趣味の良いことをする。いや、本当に趣味が良いのはあの男か…」

 あの男の向かった先にいるのは、己の妻子だ。

 そしてここにも聞こえてくるほどに半狂乱の女の声が響くが、それはやがて聞こえなくなる。

 恐らくは男が己の妻を殴り取り上げたのだろう…その男と妻との間に生まれた子供を。

「ククク…精々励みたまえ」

 ボルトは笑いながらその場を立ち去る。

 

 

 

 ―――魔軍のテント―――

 普段から重々しい雰囲気を持つ魔軍の設置したテントであるが、そこは普段よりも重い空気が漂っていた。

 魔物達を束ねる魔物将軍が冷や汗をかきながら、簡易的につくられた豪華な椅子に座る人物を見ていた。

「ほ、報告は以上でございます。カミーラ様」

「………」

 魔物将軍の言葉にもカミーラは何も答えない。

 そのベールの向こうにはどんな表情をしているのか、魔物将軍には想像もつかなかった。

 初めてカミーラの姿を見たが、確かに凄まじい美貌を持っているのがわかるが、それ以上にその圧倒的な力に恐怖していた。

「まだ見つからぬ、という事ですか」

 代わりにカミーラの側にいる七星が魔物将軍へと問いかける。

「も、申し訳ございませぬ!」

 魔物将軍は震えた声で必死に頭を下げる。

 魔人相手にはどのような事をしようが、殺されても文句は言えない。

 それほどまでに魔人は圧倒的な力を持っているのだ。

「……」

「は…魔物将軍よ。カミーラ様は速く見つけよ言っている」

「は、ははあ!」

 魔物将軍は一度頭を下げると、すぐさまテントの外で部下に指示を出している。

 その様子をカミーラは何の表情を変えずに見ていた。

「七星…」

「ハッ」

「お前の子飼の者を動かすことは出来ぬのか」

「申し訳ございませぬ。ナイチサ様の許可が下りませんでした。やはりナイチサ様はカミーラ様にあまり自由を与えたくないようです」

 七星の言葉にカミーラはベールの奥で唇を歪める。

 現魔王ナイチサがあまりカミーラの事を気に入っていないのは知っているが、その事によって自分の行動が阻害されるのはカミーラとしても不愉快だった。

 しかし魔人は魔王の言葉に逆らうことが出来ず、この330年あまりはカミーラにとっても非常に退屈すぎる時間となってしまった。

「いかが致しますか、カミーラ様」

 七星の言葉の意味は勿論カミーラも分かっている。

 このドラゴンを捕らえるという事は、逆に言えばそれまでの間自由が得られるという事だ。

 そしてカミーラとしても、この時間は非常に貴重だ。

 本来であればカミーラ自らが退屈しのぎの為にも、自らランスを探しに行きたい所だ。

「七星…策を考えよ。ランスは今この時代にいる…このカミーラが自由に動けるのがその証だ」

「ハッ!」

 カミーラには何か確信のようなものがあるようだ。

 そして七星はその主の言葉を少しも疑わない。

 ベールの奥にあるカミーラは初めてその顔に笑みを浮かべた。




闘神都市のキャラが出てきますが、例によって名前だけです
本格的にクロスオーバーは正直出来ません…
でも例えばランスが闘神都市3の主人公になってたら絶対色々な意味でぐちゃぐちゃになるんだろうなぁ
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