ランス再び   作:メケネコ

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惨劇の結末

「まーおー!」

 大まおーが先頭に立ってランス達を導く。

 レンジャーとしての力を何故か所有している大まおーは、この先に何かがあると確信しているようだった。

 何よりも、大まおーは悪魔の力を感じ取っていた。

 残り香とでも言うべきだろうか、そのような悪魔の力を感じ取っていたのだ。

 そこにはランス達が求めるものがある…それが分かっていた。

 さらに進んでいくと、とうとう村が見えてくる。

「村ね。こんな所にあるなんてね」

「…そうね。でも何かおかしい」

 レダはこの村に気付いてから、この異様な空気を嫌というほど感じ取っていた。

 それは彼女の本来の任務である悪魔の排除…その時と同じような空気を感じていた。

 この村にはそれ程禍々しい空気が漂っていた。

「…血のにおいだな。それも無数の」

 ケッセルリンクもこの異様な空気に顔を歪める。

 ナイチサが魔王となった時、嫌になるほどかいだ臭い…血と肉の臭いがこの村一帯に漂っていた。

「ランス様…」

 シャロンの縋るような目にランスは顔を歪める。

 誘拐された人間…特に子供の扱いなど最悪のものだという事は知っていはいるが、まさかこんなような状況とは思ってすらいなかった。

「チッ…こういう外道は何処にでもいるな」

 進んでいくともうそこは人間にも感じられる濃厚な死の臭いにあふれていた。

 シャロンは口元を押さえて震えている。

 が、進んでいく内にランスは奇妙な気配を感じた。

「待て、何かいるぞ」

 それは技能レベル3へとなった故の反応であろうか、ランスの感が何か別の存在がいる事を感じ取った。

 ランス達はとりあえず家の陰に隠れて様子を見ると、そこには魔物隊長を含めた魔物兵が複数歩いてきていた。

「隊長、何なんですかねここは。人一人見当たりません」

「ああ。ドラゴンを探すついでに人間共を殺そうと思ったが…もう既に死んでいるようだな」

 魔物隊長を中心とした魔物達はつまらなそうにしている。

 魔物にとってはこの濃厚な死の臭いもまったく気にならない。

 むしろ、自分達が人間を殺せなかった事に対して残念に思うほどだ。

「どうしますか隊長。生きてる人間がいないっぽいですが」

「だったらこんな所にいる理由は無いな。とにかくカミーラ様を怒らせる訳にはいかん。任務に戻るぞ」

 魔物達の会話の中に聞き覚えのある名前が出てくる。

「あいつら、カミーラの部下か」

「そうみたいね…でもどうするのランス」

「私としてはあまり手を出してほしくは無いな…魔人の一人としてもな」

 カミーラはケッセルリンクの古い友人…ともいえる立場の存在だ。

 そのカミーラの部下に自分が手を出す訳にはいかない。

「じゃあ適当にここを燃やすとするか」

「おー! いいですね!」

 笑いながら話す魔物達の言葉にシャロンは口を押える。

 魔物は人類の敵…それは知っているが、こうして魔物兵を見る事も声を聞く事も初めてだが、まさかあのような言葉を笑いながら話すなど思ってもいなかった。

「ランス。まだ生き残りがいる可能性があるわ。ここでこの村を燃やされるのは防ぎたいのだけど」

「そうだな。ケッセルリンク、あいつらをぶち殺すぞ」

 ランスの言葉にケッセルリンクは嘆息する。

 ここで火をつけられれば、どの道ランス達とぶつかるのは避けられない。

 そして、魔物とランスを天秤にかければ―――答えは明白だった。

「わかった。しかし誰か一人は残していてくれ。今の状況は私も知りたい」

「それはケッセルリンクに任せるわ。じゃあどう攻める?」

「人数差もあるし不意打ちが一番でしょ。じゃあまずは私が魔法を打ち込むわ」

 そう言ってスラルは魔法の詠唱を始める。

 その様子にシャロンは不安そうな顔をしている。

「あ、あの…皆様、あの数の魔物と戦うのですか?」

「どっちにしろ戦わないと切り抜けられない。だったら先に仕掛ける方がいいわ」

 レダは剣と盾を構え、大まおーもその手に鎌を出現させる。

 ランスもいつでも動けるように剣を構える。

「じゃあ行くわよ…業火炎破!」

 スラルが魔物の群れに向かって魔法を放つ。

「ぎゃあああああ!」

「な、何だ!?」

「攻撃か!?」

 凄まじい勢いの炎が魔物達を包み込み、数体の魔物が炎に焼かれて倒れる。

 それを合図にランス達も一斉に動く。

「に、人間!?」

「がはははは! 死ねー! ラーンスあたたたーーっく!」

 ランスは何時ものように両の足で跳び上がると、その剣を勢いよく振り下ろす。

 ランスの必殺技は魔物隊長とその周囲にいた魔物兵を纏めて肉塊へと変える。

「とーーーーっ!」

 そしてその勢いのまま、剣を振り上げると先程のランスアタックと同等のエネルギーを持つ衝撃波が魔物達を飲み込み、それに飲み込まれた魔物達はやはり一瞬で肉塊へと変わる。

「た、隊長!?」

「隊長が一発で殺されただと!?」

「ば、化物だ!」

 魔物は己を指揮する魔物隊長、そして魔物将軍がいなければ統率を保つ事は出来ない。

 だからその場で散り散りになって逃げようとしたが、そこにレダと大まおーが襲い掛かる。

 レダの剣が魔物達を斬り裂き、大まおーの炎で焼かれ魔物が消し炭になる。

「スノーレーザー!」

 スラルから放たれた魔法が魔物を貫きその直線状にいた魔物すらも凍りつかせる。

 まさに一瞬、魔物達はランスに武器を向ける間もなく瓦解してた。

「ま、待ってくれ! 降参だ! 降参する!」

 最後に残った緑魔物兵が持っていた斧を投げ捨て、必死に命乞いをする。

「ここを焼き払おうとしたくせに随分とあっさり諦めるのね。少しは気概を見せたらどうかしら」

 レダがその剣を魔物兵に向ける。

 その剣は他の魔物兵の血によって赤く染まり、レダの鎧も返り血によって赤くなっている。

「待ってくれ、レダ。こいつが残ったのであれば生かしておいて欲しい。少なくとも今はな」

 逃げていた魔物達を屠ってきたケッセルリンクが魔物兵の前に立つ。

「カ、カラー?」

 魔物兵は自分の前に立つ女性…額のクリスタルを見てカラーだと理解する。

 しかし彼女の体から感じるのは間違いなく魔の波動…カミーラやザビエル同様の気配、即ち魔人の気配だ。

 そしてカラーの魔人とは一人しかいない。

 ここ300年程行方が分からないとされている、魔人ケッセルリンクだと魔物兵は理解してしまった。

「ま、まさかあなた様がケッセルリンク様ですか!? な、何故人間と!?」

「黙れ。私の問いに応えろ。何故貴様はここに来た」

 ケッセルリンクの目は何処までも冷たい。

 その視線に魔物兵は恐怖を覚える…その目こそ、先に見た魔人カミーラと同種のものだからだ。

「お、俺達はカミーラ様の命令でドラゴンを探しているんです」

「ドラゴンだと」

 魔物は積極的にはドラゴンには関わらない…が、その魔物がドラゴンを探しているというのであれば理由は一つしかない。

 ランス達が探しているドラゴンと同じドラゴンという事だろう。

「そのドラゴンを探してる途中でこの村を見つけて…気晴らしに人間共を皆殺しにしようと隊長が…」

「…そうか。ではカミーラは近くにいるのか」

「は、はい…七星様と共に」

 カミーラが自由に動いていると聞いて、ケッセルリンクは魔王が彼女を動かしたのだと理解する。

 ナイチサがカミーラをあまり好いていないのは彼女も分かった。

 自分も好かれてはいないが、とりあえず行動までは制限されていない。

 しかし彼女は何故かナイチサから行動を制限されているようで、その状況に不満を覚えているのは知っていた。

 最も、330年程前の話であり、今の状況は分からないのだが。

「ケ、ケッセルリンク様! 何故人間共と! お、お願い致します! こいつらを殺して私を助けて下さい!」

「…何だと」

 ケッセルリンクの恐ろしい程冷たい声に魔物兵は思わずスーツの中で漏らす。

 それほどまでにケッセルリンクの声には怒りが含まれているのが分かってしまったのだ。

 そしてランスもその魔物兵の態度に気づく。

「がはははは! 馬鹿かお前は! ケッセルリンクが俺様を殺す訳が無いだろう! ケッセルリンクは俺様の女だぞ!」

「な、何を言っている人間! 魔人であるケッセルリンク様が人間如きと…」

「やかましい」

 ランスキーック!

 魔物兵の顔にランスの蹴りが炸裂し、魔物兵は倒れる。

「に、人間! 貴様!」

「がはははは! お前が何を期待しているかしらんが、証拠を見せてやろう!」

 ランスはそういうと、ケッセルリンクの腰と頭を掴み、そのまま唇を奪う。

 その様子に魔物兵は驚愕と共に『助かった!』という思いも浮かんでいた。

 魔人が人間の無礼を許すはずがない…必ずや怒りからこの人間を殺すだろうと信じて疑っていなかった。

 しかし魔物兵の期待は最悪の形で裏切られることとなる。

 最初こそ少し咎めた視線を向けていたケッセルリンクだが、ランスの意図を正確に理解していた。

(まあ…たまには乗ってやるのもいいか)

 ケッセルリンクは一度ランスと顔を離すと、今度は自分からランスの首に手を回し、そのままランスと唇を重ねる。

「な…」

 魔物兵の動揺は非常に激しい。

 まさか魔人が人間に対し、このような行為に出るとは想像もしていなかったからだ。

 そのままケッセルリンクはランスと舌を絡めあい、やがてその唇も離れる。

「そういう事だ」

 ケッセルリンクの言葉に魔物兵はもう声も出ない。

「まあ聞きたい事は聞けたしね。ここであなたを生かしておくと後々面倒くさそうだから」

 そう言ってレダが魔物兵に剣を突き刺す。

 魔物兵は断末魔の声を上げる間もなく倒れる。

「ランス、趣味悪いわよ。それにケッセルリンクも…まさかあなたが乗るなんて思わなかったわよ」

「…申し訳ありません。私も少し悪乗りしすぎたようです」

 スラルの言葉にケッセルリンクが顔を伏せる。

「でもまさか魔王もそのドラゴンを探してるなんてね…やはり魔人にするためかしら」

「その可能性はあるわね。それよりもどうするの? もしかしたらカミーラと鉢合わせっていう事もありえるわよ」

「会ったら会ったでその時だろ。奴等は別に俺様を探している訳では無いからな。そう出会うもんでもないだろ」

「まあ一匹も逃さなかったからね。でも、部隊で動いている以上は必ずここに辿り着くわよ」

 ケッセルリンクも神妙な顔で頷く。

「ああ…カミーラが動くという事は必ず七星も動く。彼ならば必ず気づくだろう」

 常にカミーラの側にいる使徒である七星…彼はカミーラの代わりに魔軍の指揮を取る。

 元々魔軍を統率する気が無い彼女の代わりに魔軍を統率するのは彼だ。

 彼ならば必ず戻ってこない部隊の確認に動くだろう。

「でもここからどうしますか? 本当にここに浚われた子供が居るのでしょうか?」

 シャロンはハンカチで口元を押さえながら周囲を見渡す。

 これだけの騒ぎが起きているのに誰一人として姿を現さない。

 ハッキリ言ってこれは異常だ。

「人はいない…でも私には分かるわ。悪魔の気配がするわ」

 レダの顔は何時になく厳しい。

「一応聞くけど、まおーの気配じゃ無いわよね」

 スラルの問いにレダは頷く。

 ランス達は改めて周囲を見渡すが、やはり人の気配は全く感じられない。

 辺りには濃厚な死臭と漂っているだけだ。

 その時大まおーが一つの家を指さす。

「どうしたの? まおー」

「まお! まーおー!」

「あの家から何かの気配を感じるって」

 スラルが大まおーの言葉を伝え、皆が一斉にその家を見る。

 それは周囲の家に比べると上等な家ではあるが、やはり外観からは何も分かる事は無い。

「…そうね、あそこが怪しいわね」

「とりあえず行ってみるか。シャロンちゃん、俺様から離れるなよ」

「は、はい…」

 ランス達は大まおーが指さした家の前へと歩を進めると、ランスはそのまま扉を蹴り壊す。

「むっ…」

「うっ…」

 その時に家の中から生暖かい風が吹き、その感触にランスは顔を歪め、シャロンは口元を押させる。

 それ程までに血生臭く、そして死臭に満ちた風だった。

 家の中は当然の事ながら暗いので、スラルが魔法で明かりを灯す。

 そしてその光は、その家の真実を照らし出す。

「げっ!」

 その姿にランスは思わず呻き声をあげ、

「…っ!」

 ケッセルリンクも言葉を無くす。

「…これは」

 スラルも流石に不快な顔を隠しもせず、

「あ…あ…」

 シャロンは自分の体を強く抱きしめる。

「そういう事、か」

 レダだけはその様子を見ても顔色一つ変えない。

 エンジェルナイトである彼女にとってもこの光景は予想を遥かに上回る。

 

 死体、死体、死体―――

 

 そこにあったのは無数の人の死体…それもただの死体では無く、まさに肉塊と呼ぶに相応しいモノがあちこちに散らばっていた。

「そん…な…」

 シャロンの目に涙が溢れる。

 彼女は気づいた…ここにある死体の大きさ…自分よりも遥かに小さな死体が無数にある。

 ランスの言葉である程度は覚悟をしていた。

 しかしその光景はランスの言葉を遥かに上回る凄惨なモノだ。

「これ…まさか全部浚われた子供…」

 シャロンの嗚咽が響き、ケッセルリンクが優しく彼女を抱きしめる。

 ランスもこの光景は流石に予想もしていなかった。

 似たような光景…旧ゼス四天王のパパイヤ・サーバーの塔もこんな感じだったが、それよりも圧倒的に血なまぐさい。

 頭だけになってしまった少女や、無数の女が組み合わさったような壁など思い出したくも無い事が嫌でも思い出させる光景だ。

「とんだキチガイがいるな」

「…そうね。でもこれをした奴はそれを当然だと思っている」

 レダには分かる…こいつらは全員魂を汚染されている。

 汚染された魂は創造主であるルドラサウムに還る事は出来ない…これこそがまさに『世界の冒涜』だ。

「まお!」

 大まおーが地下に通じる階段を見つける。

「そこにこの状況を作り出した奴がいるのね」

 スラルの声も何時もより硬い。

 それだけこの状況を作り出した存在を不快に思っているのだ。

 そしてその地下にこそ異様な空気の要因があるのは明らかだ。

「よし、行くぞ」

 ランス達は地下へと足を踏み入れた。

 

 

「ああ…」

「ハハハハハ! いいぞ! そうだ、何故気付かなかった!? 子供は子供でも己の考えを持たぬモノこそが必要だったのだ!」

 男の狂気の笑い声が響き、その妻―――パレロアは絶望的な声を漏らす。

(あの人は…あの少女と出会い変わってしまった…)

 元々は少々変人ではあれど、人類のためにと考える立派な人だった。

 しかし、いつの日か夫は変わってしまった…それも最悪の方向に。

 最初は動物だった。

 それが人間に代わるのにはそう時間はかからなかった。

 パレロアは必死で止めた。

 しかし夫は『人が魔物の脅威から解放されるためには、魔王を超えなくてはならない』という言葉の元、数々の非道な実験を行うようになった。

 もうこの村には生きている人間は夫と自分しかいない…すべての人間を夫は実験の名の元に殺してしまった。

 そしてそんな夫に協力する謎の男性…最初は良い人だと思った。

 この村を魔物の脅威から救い、助けてくれた人…しかしその人間はまさに悪魔の手先とでも言うべき人間だった。

 そしてとうとう夫は自分の子供すらも実験の材料として使ってしまった。

 夫は狂気の声を上げているが、その目の前にいるのは己の子供だとも気付いているかどうかも怪しい。

「ああ…そんな…」

 涙で視界が歪み、あまりのショックに周囲の光景ももう目に入らない。

 夫が絶賛しているのは変わり果てた姿になってしまった自分の子供だというのに。

「………」

 パレロアは無言で地面に落ちていた包丁を手に取る。

 かつてはその包丁を使って夫と子のために料理を振るっていた。

 そんな小さな幸せは最早存在しない…己の夫が最悪の形で壊してしまったのだ。

 そして自分はそんな夫を止めることは出来なかった。

(あなた…ぼうや…)

 パレロアは何かに引っ張られるように包丁を構える。

 そしてその包丁を夫に突き刺すべく歩き始めた時、

「貴様かー! 死ねー!」

「…え?」

「ぎゃあああああああ!!」

 突如として響いてきた声とともに、夫があっさりと斬り殺された。

「まったく、とんでもない奴だ。野郎はともかくとして、女をこのような目にあわせるとは」

 夫を斬り殺した男は、夫の死体をゲシゲシと踏みにじっている。

「大丈夫か?」

 一人の女性…とてつもなく美しい女性が、パレロアを優しく抱きしめる。

「あな…たは…」

「君だけでも生きていてくれて良かった」

 ケッセルリンクは優しくパレロアの涙をぬぐう。

「酷い有様ね…一体何の実験をしていたのかしら」

 スラルは上の階よりも酷い状況に顔を歪める。

 上の階は大人の大きさの肉塊が多かったが、ここには子供の大きさの肉塊が圧倒的に多い。

 間違いなくここにある死体こそをが周辺からいなくなった子供達だろう。

「全く…酷いものね」

 人間には然程興味も無いレダですらも思わず顔を顰める。

 それほどまでにこの惨状は異常だった。

「ランス、生き残りだ」

「む、そうか」

 ランスと呼ばれた夫を斬り殺した男性を見る。

 まだ二十歳前後の若い男性だ。

「大丈夫か」

「は…はい」

 パレロアはそう答えることしか出来なかった。

 本当はもっと何か言いたいことがあるはずなのに、何も言葉が出てこない。

「私の子供は…」

「…もしやあそこにいるのは君の子供か」

 ケッセルリンクは悲痛な表情を浮かべる。

 よりにもよって、今実験されていたのが、この女性の子供だというのだ。

「ああ…私のぼうや…」

 パレロアは立ち上がると、もの言わぬ肉の塊になってしまった我が子に縋りつく。

 そして彼女の嗚咽だけが周囲に響く。

 流石のランスもこの状況には何も言えない。

 今もランスも人の親…流石に今の状況でパレロアに声をかける事は出来なかった。

「レダ、何とかならんのか」

「…無理よ。一体何の実験をしてたのかは知らないけど、正気じゃ無いわ」

 そう、これをやったのは正気の人間ではない…何しろここにある魂は全て汚染されてしまっているからだ。

(これは普通の人間に思い浮かぶことじゃない…間違いなく悪魔の仕業ね)

 ランス達には言うつもりは無いが、これは悪魔が関与している。

 そしてランスが斬り殺した人間は間違いなく悪魔に魂を売り渡している。

「私が出来るのはこれくらい」

 レダが腕を振るうと、肉の塊であったパレロアの子供から魂が天を昇っていく。

「この魂はまだ汚染されてない…だからまだ神の元へ還れる」

「ああ…」

 その光景をパレロアはただじっと見ていた。

 それでも、それだけでも彼女には十分だった。

「ありがとうございます…」

「気にしなくていいわよ。これは私の役目の一つ。私はそれをしているに過ぎないわ」

 これもレダのエンジェルナイトとしての仕事の一つに過ぎない。

「ランス様…」

「胸糞悪いがこれが結果だ」

 シャロンの言葉にランスも不愉快そうに唇を歪める。

 全ての冒険が上手くいくわけではないが、今回は極め付けだ。

「とっとと帰るぞ」

 ランスが帰ろうとした時、

「やれやれ、随分とあっさりと死んでくれたものだね」

 金髪の眼帯をした男が現れた。

「何だお前」

「ボルト。ボルト・アーレン。その男の協力者だった…といったところかな」

 そう言ってボルトは笑う。

 それはまさしく悪魔の笑みだった。




悪魔はちょっと悩みましたが、魔人と戦っても勝ち目が0な以上は相手はやっぱり悪魔かなって
実際悪魔ってどれくらいの規模で動いているのか不明だし…
でも月餅の時は魔王が動くくらいだし、それくらいしないと駄目なのかな


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