「ランス様!」
シャロンは倒れたランスを見て悲鳴を上げる。
「ランス!」
レダはランスに駆け寄ろうとするが、目の前にいる悪魔がそれをさせてくれない。
「あら、そんなにあの人間が大事? 天使のくせに」
フィオリは笑いながらレダをその爪で切り裂く。
レダの鎧すらも簡単に切り裂くその一撃は、レダの持つ防御技能を駆使しなければとても耐えられるものではない。
「クッ! 光の矢!」
「甘いわよ」
フィオリはスラルの放つ光の矢をバリアで防ぐ。
光は悪魔には非常に有効だが、それも当たらなければ意味は無い。
そして反撃でスラルにも闇の魔法が放たれ、スラルもそれをバリアで防ぐ。
(まずい…そろそろ私の魔力が尽きる)
スラルは確かに魔王に選ばれるだけ有り、それなりの素質は備え持っている。
が、魔王で無くなった今どうしてもその魔力には限界がある。
幽霊になってから、これほどの力を持つ敵とは戦ったことは無い。
それは同時にスラルが始めて戦う格上の相手という事でもある。
(魔王だった時は無尽蔵の魔力があった…という事はこれが『人間』としての自分の実力というわけね)
どうしても魔王であった時の戦い方が抜けきらない。
頭ではもう魔王ではないと分かっていても、500年間染みついてしまった魔力の流れが自分に魔力の無駄遣いをさせてしまう。
(ランスが倒れたのは間違いなく魔法の波動…あのボルトという男の剣から魔法が放たれた。魔法の力を付与しているというの?)
スラルは残り少ない魔力を練りながら必死で考える。
魔王スラルは力だけで全てを従えて来た訳では無い、自分の本質はこの知識への飽く無き探求と考える事なのだ。
そう、ランスは魔法を食らって倒れたのだ。
それを考えた時スラルは自分の頭の中でこれからの行動を考える。
(自分の事だけを考えるな。全てを考えろ…こういう時ランスはどう動く? そしてレダは、ケッセルリンクはどう動く。そして私の残り少ない魔力で何が出来る)
スラルは必死で考える。
そしてスラルの顔には知らず知らずに笑みが浮かび始める。
こうして考えるという事が自分を何処までも高揚させているのに気付いたからだ。
「ランス様!」
シャロンがランスに向かって走るが、その前にジャバラが立ちはだかる。
ジャバラの腕が伸び、シャロンに向かってその拳が放たれるが、シャロンはそれを身を捻って避ける。
「シャロン!」
ケッセルリンクが立ちはだかるジャバラを魔法で消し炭にする。
彼女の行動は無謀に見えた…が、ここでケッセルリンクは目を見開いた。
シャロンの動きが目に見えて良くなっているのだ。
しかしシャロンがランスの側に寄る前に、立ち上がったボルトがランスに止めを刺すべく剣構える。
「ランス!」
ケッセルリンクはランスの名前を叫ぶ。
ランスはボルトの剣から放たれた魔法が直撃し、気絶している。
(気絶? ランスが?)
そこでケッセルリンクは自分がとんでもない思い違いをしている事に気づく。
そう、ランスが魔法を食らって気絶するなどあり得ないのだ。
「ランス様!」
シャロンがランスを庇うべくボルトの前に出ようとするのと、ボルトが剣を振り下ろすのは同時だった。
気絶している―――いや、気絶したフリをしているランスもまた同時に動く。
「何!?」
ランスが目を開くと、止めを刺すべく適当に振り下ろされたボルトの剣を己の剣で弾き飛ばす。
そして勢いよく立ち上がると、ボルトに向かって剣を一閃する。
その一撃はボルトの体を服の上から簡単に切り裂き、ボルトの血で地面が赤く染まる。
「シャロンちゃん!」
ランスの声にシャロンは反応すると、ランスに斬られて体のバランスを崩しているボルトに向けて拳を放つ。
「ぐ…が…!?」
もしボルトの体調が万全ならば、才能があるとはいえレベルが低いシャロンの攻撃など簡単に避けれただろう。
しかし肝心の剣は既にボルトの手には無く、浅くない己の傷を抑えながらシャロンの一撃を避ける事は流石に出来なかった。
「ハッ!」
シャロンはケッセルリンクの指南の通りに傷を負っている場所に追い打ちをかけるように拳を打ち込む。
「ごめんあそばせ」
彼女の一撃はボルトの胸に突き刺さり、流石のボルトもその一撃には耐える事は出来ずに口から血を吐きだす。
「ケッセルリンク!」
ランスの言葉の前に既にケッセルリンクは動いていた。
ランスの目的はボルトでは無い―――ランスが気絶したフリをしていたのは、ボルトでは無くフィオリに対して不意打ちをかけるつもりだったのだ。
ケッセルリンクはシャロンの腰を掴み自分の側に引き寄せる。
そしてシャロンに向けて放たれていたくずの悪魔の魔法を全て無敵結界で弾き飛ばす。
その光景を見てスラルも既に動いてた。
ランスの持つ『ドラゴンの加護』は魔人の魔法ですら軽減するというまさにバランスブレイカーのアイテムだ。
それを持っているランスが、不意打ちとはいえあの程度の魔法で気絶するなどあり得ない事だった。
(…これは賭けなのかもしれない。でも試す価値は十分にある!)
スラルは自分の意識をランスの持つ剣に向ける。
するとスラルの体が掻き消え、何時もの定位置…即ちランスの持つ剣の中に意識が戻る。
(悪魔は幽霊の私を殺すことが出来る…そして魔力が残り少ない私はこれ以上は戦闘では足手纏いになる…でも)
スラルは自分の中の魔力を集中させる。
自分の力は魔法技能だけではない…ほとんど使っていなかったが、付与の技能も有しているのだ。
スラルは意識を集中させる。
先程ランスを襲った魔法はスラルに一つの可能性を与えていた。
(アレは剣に魔法を付与して放った一撃…でもランスの剣ならそれ以上の力を引き出せる!)
スラルは長い間ランスの剣の中に居るため、この剣の力をもしかしたら持ち主のランス以上に知っているかもしれない。
(ぶっつけ本番…でも私ならやれる!)
それは昔の臆病で慎重だった自分からすると考えられない心境の変化だ。
だが、ランスと長い間行動しているとそんな無茶な事でも何とかなるような気がしてくる。
「がはははは! お前もおしおきじゃー!」
ランスが剣を両手に持ち力を溜めているのがスラルにも分かる。
(そう、ランスの技に私の魔力を合わせる!)
自分の魔法では最早相手にダメージを与える事は出来ない。
せいぜい露払いが精一杯だが、自分の考えが正しければ必ずランスの助けになる。
「ボルト!?」
ランスがボルトを斬り、そしてフィオリに向かっていくのはまさに一瞬の出来事。
ボルトの持つ剣はただの剣ではなく、第参階級悪魔の自分が与えたかなりの名品だ。
それに自分が魔法の力を与え、一度だけだが魔法を放てるようにした一品だ。
そしてそれはあの男に確かに命中したが、男は何事も無かったかのように立ち上がりボルトに大ダメージを与えた。
それだけでなく、無謀にも自分に向かって突っ込んでくる。
「クス」
確かに一瞬驚いたが、所詮は人間の一撃…天使や悪魔、魔人に比べれば大した事は無い雑魚…それがフィオリの人間に対する評価だ。
だからフィオリは注意をレダと大まおーに向ける。
この2体の方がフィオリにとっては脅威―――それはある意味正しいのかもしれないが、この男にはそのような常識的な考えは全く通用しないのをフィオリは分かっていなかった。
「ラーンスあたたーーーっく!」
ランスが何時ものように必殺のランスアタックを放つべく跳び上がる。
人間の使う武器では悪魔には致命傷にはならない、それは上級悪魔にとっての常識だ。
なので魔法バリアでその攻撃を防ぎ、カウンターで魔法を打ち込み殺す、そう考えていた。
ガッ!
「なっ…!?」
そこでフィオリはとんでもない思い違いをしていた事に気づかされる。
フィオリのバリアは確かにランスの攻撃を一度は防いだ。
本来はここでランスの体はバリアに弾かれるはずだった。
しかし現実にはランスの一撃はフィオリのバリアを切り裂いたのだ。
「人間…!」
「がはははは! この後はおしおきセックスじゃー!」
今のランスのランスアタックはこの一撃では止まらない。
その両の足で踏ん張ると、再び同じ威力を持つ一撃を与える程の威力へとパワーアップしているのだ。
(今!)
そしてそのランスの一撃に合わせてスラルは魔法をランスの剣に与える。
(グレイトライト!)
ランスの剣が光に包まれる。
その光を見てフィオリは驚愕の表情と共に唇を歪める。
「まさか…光を剣に!?」
悪魔に光の力は効果的だ。
そしてこの男の持つ剣には確かに光の力を感じる。
「クッ…!?」
それは初めて見るフィオリの苦々しい表情だった。
そしてランスの一撃はフィオリの右腕を斬り飛ばす。
「グ…ア…」
フィオリはランスの一撃の威力に負け、弾き飛ばされる。
「まさか…人間が私の腕を…!」
フィオリは斬り飛ばされた腕を押さえながらランスを睨む。
(これは…!)
そしてフィオリは信じられないといった感じに斬り飛ばされた自分の腕を見る。
「再生…しない?」
上級悪魔となるとその再生能力をもってすれば、腕を斬り飛ばされた程度は直ぐに治る。
しかし一向に血が止まる気配は無く、その斬られた部分から力がごっそりと抜けていくのを感じる。
「馬鹿な…!」
「うーむ、俺様の想像よりも威力が大きくなったな。スラルちゃん、何かしたのか」
「説明は後でね、今は目の前の敵に集中して」
ランスの一撃は思いの他大きなダメージを与えたようだが、相手は悪魔だ。
どんな奥の手を有しているか分からない。
倒せる時には倒しておくべき…そうは思っているのだが、
(問題はランスよね…ランスが何もしない訳無いしね)
スラルは剣の中でため息をつくが、流石に片腕を失った相手を犯すような事はしないだろうとも考える。
ランスの性癖は真っ当である事はこの1年以上の付き合いで分かっている。
「がはははは! ここまでだな!」
ランスがフィオリにその剣を向ける。
ケッセルリンクも全ての雑魚悪魔の排除が終わったようで、シャロンとパレロアを守るように二人の前に立つ。
「ランス、ここで悪魔を倒すわよ。相手は第参階級魔神…倒せるときに倒さないと」
レダはランスの横に並ぶ。
第参階級魔神が腕を斬られた程度で死ぬわけが無い。
「うーむ…」
レダの言葉にランスは少し悩む。
ランスはどんな相手でも女性ならば倒した相手におしおきセックスをしてきた。
当然フィオリにもおしおきセックスをしようと考えていたのだが、冷静になって見てみると目の前の悪魔は少しランスの好みからは外れているように見える。
言い換えればランスのストライクゾーンから考えると少し幼く見えるのだ。
(ミルと同じくらいか…確かにミルにはハイパー兵器が反応したが、こいつはどうだろうな)
ランスがそんな事を考えていた時、
「ケケケケケケケ!」
上空から非常に不愉快な笑い声が聞こえてきた。
「あん?」
ランスが宙を見上げた時、そこから巨大な何かが落ちてくるかのように着地する。
「な、ドラゴン!?」
レダがその巨大な物体を見て驚愕の声を上げる。
確かに今目の前にいるのはドラゴン…グリーンドラゴンだ。
「ウケケケケケ! ベリーグッ! グレイトな魔力を見つけたらデーモンね!」
「な、なんだ!?」
その不愉快な声いランスは怪訝な声を出す。
ドラゴンがこんな不快な声を出すなどランスも初めての事だ。
そして何よりも、ドラゴンの首から胸にかけて、まるでネックレスのように赤い何かがぶら下がっていた。
「モア魔力! 邪魔者は全てキル! メイクドラーマ!」
「ドラゴンの声じゃない…まさかアレが例のドラゴン!?」
剣の中からスラルが声を上げる。
そう、このドラゴンこそが人間・魔物問わずに襲い掛かるドラゴンの正体…寄生体のマジックアイテム、レッドアイだ。
「人間には用はナッシング! よって全員キルあなた!」
ドラゴン―――レッドアイはランス達に向かってそのドラゴンの口を開く。
「ウケケケケ!」
「まず…」
流石のランスもこの状況には背筋が凍る。
ドラゴンのブレスは非常に強力であり、まともに食らえば間違いなく致命傷になる。
そしてこの奇妙な存在への驚きから、ランス達の行動が一瞬遅れる。
(まずい…私とランスはともかく、シャロン達が耐えきれない!)
ケッセルリンクが一緒に居るが、無敵結界がどこまでの範囲で守ってくれるかは分からない。
「メイクドラーマ!!」
そしてドラゴンの口から強力なブレスが放たれ、レダはランスを守るべく盾を構える。
(まずい…魔力が足りない!)
レダはこの戦闘でかなりの魔力を使っており、スラルももうバリアを貼るだけの魔力が残されていない。
そしてドラゴンの炎がランス達を包もうとした時、そのランス達の前に大まおーが立ち塞がる。
「まーおー!!」
「まおー!?」
大まおーが膨れ上がると、その炎がランス達に届く前に遮断される。
「ランス!」
「わかっとる! 退くぞ!」
ケッセルリンクの声にランスは躊躇う事無く退却する事を選ぶ。
現在のランス達の状況が良くない事はランスも十分に分かっている。
シャロンはドラゴンと戦うには力不足、パレロアに関しては一般人だ。
ケッセルリンクはシャロンとパレロアを両手で抱えると、そのまま一目散に走り出す。
それに合わせてランスも走り、レダはドラゴンのブレスを防いで小さくなった大まおーを掴むと、
「浄化!」
残りの魔力で光の魔法を放つ。
勿論それには威力など無い…ただの目くらましではあるがそれだけで十分だった。
「オー!」
そしてそれは偶然にもレッドアイの本体である宝石の目に直撃する。
レッドアイはそれで目を閉じると、再びその目が開かれた時にはランス達の姿は存在しない。
「シット! 人間がミーの邪魔をする…絶対にキル!」
そして本来の目的である悪魔の方を向くが、そこにも既に悪魔の姿は存在しない。
「オー…エスケープか」
レッドアイは逃げられたことに非常に怒りを覚えたが、同時にこれ以上離れるのは危険と判断しそのまま飛び去る。
「ミーはベリーストロングだが、ケスチナはベリーウィークね」
ケスチナの血統が途絶えれば、レッドアイもまた死んでしまう。
最近モンスターの動きが活発なため、いつケスチナがモンスターに見つかってもおかしくは無い。
レッドアイも今は迂闊に動くわけにはいかない。
本来であればあの人間達を殺したかったが、自分の命の方が大事だと判断し、その場を飛び去った。
―――魔法ハウス―――
「こんな家があるんですね…」
パレロアは初めて見る魔法ハウスを驚きの目で見ていた。
非常に小さい家の形をした模型が、どんどんと大きくなって家になるなど彼女から見れば信じられない事だった。
「あー疲れた」
「そうね…流石に今回はね」
「ケッセルリンク、あなたは大丈夫?」
「大丈夫です、スラル様。幸いにも私は再生力が高いですので」
ランス達は椅子に腰かけると、ため息をつく。
(うーむ、まさかこんな事に巻き込まれるとは…)
誘拐の件を調べていたら、まさか悪魔と出会う等とはランスでも思っていなかった。
「あ、あの…皆様。ありがとうございます」
パレロアは改めてランス達に頭を下げる。
ランスも改めてパレロアを見る…勿論ランスから見ても十分に美女だ。
それもどことなく儚げな所がランス的にはグッドな所だ。
「うむ、俺様に感謝しろ。で、君の名前は何というのだ」
「も、申し訳ありません。私はパレロアと言います。あなたは…ランスさんとおっしゃられるのですよね。私の夫がご迷惑を」
パレロアは涙を流しながらランスに向かって頭を下げる。
「夫? 君は人妻なのか」
人妻、という言葉にランスは反応する。
勿論下心的な意味で。
「はい…ランスさん。あなたが斬ったのが私の夫…だったモノでした」
「俺様が斬った?」
ランスはこれまでの経緯を思い出す。
確かにランスは今日は色々と相手を斬ったが、その中には人間の姿が居たのかどうかはほとんど覚えていない。
「お前が地下室で真っ先に斬ったのが彼女の夫だ」
「あー…そういやそんなのもいたな。不愉快だったから何も確かめずに斬ったが…って、それがパレロアの夫だったのか」
「はい。あ、ですがランスさんを恨んではいません。むしろ感謝しています…皆様のおかげで私の子供は…救われました」
子供のと言ったところでパレロアの目から涙が零れる。
「子供だと?」
「はい…あの人は…自分の子供すらも実験に使って…」
「うげ…」
流石のランスもその言葉には不愉快な表情を浮かべる。
良く見ていなかったが、あの台に乗せられていた奇妙な物体が彼女の息子だという事だろう。
「ランス様。今日のところは彼女を休ませた方がいいと思います」
「そうだな…シャロン、パレロアを連れて行ってやれ」
「すみません…」
シャロンに手を引かれ、パレロアが客室の一つへと消えていく。
ランスもあれほどの美女にはお礼と称してセックスの一つでもしたかったが、流石に今日声をかけるのは無謀だと思い大人しくする。
そして彼女の子供という言葉を聞いて、娘であるリセットの事が頭に浮かぶ。
ちなみに息子のダークランスの事はちっとも思い浮かばない。
男の扱いはランスにとってはその程度のものである。
「今回の仕事は失敗ね」
スラルが剣から声を出す。
普段は霊体として姿を見せるのだが、今日は魔力を想像以上に使ってしまい姿を現すのも億劫なのだ。
「そうね…誰一人として生存者はいなかったしね…」
レダもため息をつく。
今回の仕事は失敗と言ってもいいだろう…何しろ証拠も無く、生存者もいないのだ。
それでは報奨金を貰うなど不可能だ。
「それに…まおーの事もあるし」
「まおーがどうかしたのか」
ランスの言葉にレダはため息をつきながら抱えていた大まおーをテーブルに乗せる。
「…何だこれは」
「何って…まおーよ」
レダが乗せたのはどう見ても大まおーの形をしたぬいぐるみだった。
触るとつるつるしていた肌触りは無く、もふもふした感触が返ってくるだけだ。
「ランス達を守るのに力を使いすぎたのだろうな」
ケッセルリンクも優しく大まおーを撫でる。
「大幅な戦力ダウンよね」
レダの言葉にはランスも難しい顔をする。
大まおーは確かに優秀で、戦闘に関しても情報収集に関しても大まおーに任せている部分があった。
「…これ、死んでるのか?」
「死んでる…というよりは力を使い切ったって感じね。悪魔だからそのうち復活するとは思うけど」
「ふーん」
スラルの言葉にランスはあまり興味無さげに返事をする。
「それにしても今日は疲れたわ…もう寝るわね」
レダは大きく欠伸をすると、自分の部屋へと戻っていく。
「ランス、お前も休んだほうがいい」
「…そうだな。俺も寝るか」
ケッセルリンクの言葉にランスは少し考えるが、素直に彼女の言葉に従う。
(まあ…パレロアに関してはじっくりいくのがいいか)
パレロアに手を出したかったランスだが、流石に子供を失ったばかりではと自重する。
昔ならばレイプ紛いの事をしていたが、ランスも精神的に成長したのか、和姦思考に目覚めてきている。
(うむ、未亡人を俺に惚れさせるのも新たな試みだ。そうだ、そうしよう)
JAPANに居た時に未亡人を襲いはしたが、そういえば未亡人とやった事はあまり無かったなぁと。
ランスはそれを考えると今日の疲れも抜けたように寝室へ歩いていく。
ランス達が場を離れた後、
「大丈夫、ケッセルリンク」
「はい…どうやら私の再生力は自分の想像以上のようです」
スラルの言葉にケッセルリンクは自分の脇腹を押さえる。
ようやくその脇腹の血が止まった所だ。
「悪魔…初めて戦ったけど、やっぱり恐ろしい相手のようね」
「ええ…ですがこれからあの悪魔がどう動くかはわかりません」
「そうね。それまでに私も今日の事の反省をしないとね」
スラルは今日自分がやった事を思い出す。
(私の付与能力が上手くいった形になるのかな。でもまだまだ精度が甘い…これからね)
それと同時に新たな喜びも見出していた。
このような戦い方もある…スラルは一日の疲れにも拘わらず、新たに得た知識を楽しんでいた。
―――魔軍テント―――
「1部隊が戻ってきませんか…」
「ハイ、七星様。定刻を過ぎてもまだ戻ってきませぬ」
使徒七星が魔物将軍の報告を聞き考え込んでいた。
「その部隊はどこに向かわせましたか」
「ハッ! こちらの方向でございます」
魔物将軍は地図のある場所を指差す。
そこは魔軍のテントからは少し離れた場所にある森の中だ。
近くは無いが遠くも無い…そんな距離だ。
「そうですか…全滅したのであれば何かしらの痕跡があるはずです。部隊を向かわせるように」
「ハッ!」
七星の言葉に魔物将軍は急いでテントの外へ向かうと魔物隊長に指示を出す。
「七星…」
魔物将軍が居なくなったことでカミーラが七星に声をかける。
七星はそのカミーラの声に思わず冷や汗をかいて跪く。
静かな気迫が七星にプレッシャーを与えていた。
「もう少しお待ちください、カミーラ様」
七星にはカミーラがそろそろ我慢の限界だという事に気付いている。
「………」
「申し訳有りません、カミーラ様」
カミーラの無言と共に、プレッシャーが弱まったことに七星は安堵する。
(カミーラ様はこの時にランス殿が居ると確信しておられる…)
それ故にカミーラはこの時間を自分の時間として使いたいのだろう。
幸いにも、トッポスが大暴れしておりザビエルだけでなくガルティアも派遣されたの事だ。
魔王ナイチサもこちらよりもトッポスの方を注視している。
その今こそがカミーラが自由に動けるチャンスなのだ。
(しかしナイチサ様もカミーラ様直属の部下を動かすのを認めてくだされば…いえ、それは言い訳ですか)
七星は急ぎ情報を集める事に心血を注ぐ。
全ては主であるカミーラのため…そして運命はそんなカミーラに味方しつつあるのをまだ誰も知らない。
魔法剣というか魔法と剣を組み合わせてるのってウィチタしかいないんだよね
順当ルートでは使えなくなるとはいえ、ウィチタは本当に使い勝手良かったなぁ…
大まおー、一時退場
JOJ○とかでも原作者に強すぎたキャラは一時退場するから仕方ないね
実際便利キャラにし過ぎた感が有ります…
今回のボルトの魔法に関しては、闘神都市3であった剣に魔ポを付与するような効果と思ってください
パラレルだから正史で出来るかどうかは怪しいですから…
アンケート機能使ってみましたが、皆様ありがとうございます
一段落したら投稿したいと思います