「うむ、何時もの通りだな」
ランスは普段から朝8時には目を覚ます。
それは習慣と言っていいものであり、ランスの体は自然とその時間に目覚めるようになっていた。
最近は夜遅くまでレダ、ケッセルリンク、シャロンと体を重ねる事が多いために少し寝坊をする事もあったが。
ランスが1Fに降りると、そこには既に朝食の匂いが広がっていた。
「おはようございます。ランスさん」
「パレロアか。もう大丈夫なのか」
「はい。体を動かしてないと不安で…」
ランスの問いにパレロアが軽く笑みを浮かべる。
まだ心の傷は癒えていないが、それでもこうして人と触れ合えることに喜びを感じでいた。
「ふーん…まあ無理はするなよ」
ランスは素っ気なく言いながら顔を洗いに行く。
そんなランスを見て、パレロアは昨日の夜にシャロンに言われた事を思い出す。
『ランス様はあれで優しい所がありますよ』
シャロンはそう言って笑っていたが、たしかに彼女の言う通りなのかもしれないと思っていた。
「おはよーってパレロア?」
ランスに続いてレダが起きてくる。
そして朝に調理をしているのがパレロアなのを見て、周囲を見渡す。
「シャロンさんは今掃除をしています」
「朝から元気ね」
レダは笑いながらランスと同様に顔を洗いにく。
幸いにも洗面台は複数あり、大人数でも問題無く使用できる。
この人数で暮らすには大きすぎる魔法ハウスではあるが、大きいなら大きいでそれも良かった。
「では頂くとするか」
「あ、美味しい」
「本当…パレロアさん、私よりも上手ですね」
「そんな…」
レダとシャロンの言葉にパレロアは思わず赤面する。
(…夫も昔は美味しいと言ってくれましたね)
同時に過去の事を思い出し、少し悲しくなってしまう。
「確かにシャロンの作ったものよりも美味いな」
「私はまだ家事歴1年ですよ、ランス様」
ランスとシャロンの言葉にパレロアは思わず笑ってしまう。
こうして軽口を言いながら食事をする日が来るなど、思ってもいなった。
そして食事が終わった後、これからの事を話し合うためにケッセルリンクを除く皆が集まる。
「ああ…眠い。流石に考えすぎたー」
魔力が回復したスラルはまだ眠そうにしながらもプカプカ浮いている。
幽霊なのに眠くなるのかとパレロアは思ったが、誰もスラルの言葉に疑問を抱かないので、自分も気にしない事にする。
「改めて…皆様、ありがとうございます」
パレロアは立ち上がると皆に深く一礼する。
「気にしなくていいわよ。それに…本当の意味であなたを助けられた訳じゃないしね」
「それでもです…私の子供はあなたに救われました。そして私の命も…」
「うむ、それは俺様に感謝しろ。勿論直ぐに礼をしてくれてもいいんだぞ。がはははは!」
ランスの言葉にもパレロアは少し困った顔を浮かべるだけだ。
シャロンから聞いた事はランスが意外と優しいという事だけでは無く、かなりのH好きの人間だという事も聞いている。
「ランス、そこまでよ。ケッセルリンクはいないけど、少し真面目な話をしましょう」
「別に構わんぞ」
ランスの言葉にレダは一度ため息をつくと、立ち上がってホワイトボードを叩く。
「まおーが暫く戦えないのは痛すぎるわね」
レダの言葉にシャロンはぬいぐるみになってしまった大まおーを抱き上げる。
この通り大まおーは完全にぬいぐるみとなってしまっており、当分は戦力になりそうに無い。
それもただの戦力では無く、かなりの力を持った上位悪魔相当の力を持った大戦力だ。
少数精鋭のこの陣営では大まおーの離脱は非常に痛いものとなってしまった。
「…私ではまだ皆様の助けになる事は出来ません」
シャロンは悔しそうに目を閉じる。
昨日の戦いでは自分は完全に足手纏いになっていた。
昨日だけでは無く、自分はランスやレダにとっては足手纏いという事は勿論理解しているが、メイドとしての技能がある分主人の役に立つ事が出来ない自分を不甲斐無く思っていた。
「シャロンも筋は悪くないわよ。単純にレベルが足りないだけね。ランス、今回結構戦ったし、そろそろレベルが上がっててもいいんじゃない?」
「そうだな。呼び出してみるか。カモーン! クエルプラン!」
「お呼びでしょうか、ランス」
ランスの声と共に、神々しい光が辺りを照らし、1級神クエルプランが現れる。
(本当になんでクエルプラン様がレベル神なんて事してるのかしら)
レダは相変わらずこうも簡単に雲の上の存在である1級神クエルプランがレベル神をしている事に疑問を覚える。
「何時ものようにレベルアップだ」
「わかりました」
クエルプランはそういうと、何時ものように指を動かしレベルアップをしようとした時、
「ちょっと待て」
他ならぬランスの声に止められる。
「何でしょうか?」
「レベル神と言えばあの妙な呪文を言うものだろうが。ウィリスもみかんもそうだったぞ。それなのにクエルプランちゃんだけは何も言わんではないか」
レベル神にはレベルアップの際には妙な呪文がある。
それは各レベル神、レベル屋によって異なっており、ランスも自分付きのレベル神ウィリスにレベルを上げてもらう時はいつもそうしていた。
しかしこのレベル神は指を動かすだけでそれを終えてしまう。
ランスにはそれが物足りなかった。
「ラ、ランス! クエルプラン様に何を言っているのよ!」
「…少々お待ちください」
クエルプランは目を閉じると、何者かに問いかけるように言葉を発する。
「ええ…ええ…そうなのですか? そういうシステムだと…分かりました。しかし私にはそんな事を考える事は…えっ? あなたが考える。それは助かります」
クエルプランは暫くそのまま何かを聞いているようだったが、それが終わったのかランスに向き直る。
「それではいきます。ダルク・ちゃいむ・わいどにょ・ばにしゅ・ももんが・しゃーまん・どらぺこ・イブニクル…はい。おめでとうございます、ランスのレベルが52になりました」
「うむ、当然だ」
「レダはレベル56になりました」
「ありがとうございます、クエルプラン様」
「スラルはレベル50になりました」
「ようやく50台ね」
「シャロンはレベル22になりました」
「え? そんなに上がったのですか?」
「皆様のレベルアップが終わりました。それでは…」
「ちょっと待て、クエルプランちゃん」
レベルアップを終えて帰ろうとするクエルプランをランスが呼び止める。
「ちょっとランス!」
1級神を呼び止めるランスを咎めるようにレダが声を出す。
しかしランスはそんな事など知らんと言わんばかりに言葉を続ける。
「君は何レベルからサービスをしてくれるのだ」
「…え?」
「え? では無いだろう。全部脱いでくれるのが100レベルなら、サービスをするのは何レベルからなのだと聞いておるのだ」
「サービス…ですか?」
クエルプランは首を傾げる。
「うむ、レベル神は徐々に脱いでいくものだろう」
ランスの言葉にクエルプランは一瞬言葉を失う。
レベル神の役割はシステム神から聞いてはいたが、まさかそんな決まりが有るとまでは聞いていなかった。
「少々お待ちください…」
クエルプランは目を閉じると、再び何者かと交信を始める。
「ちょっとランス! クエルプラン様に何てこと言うのよ!」
「何を言っておる。レベル神とはそういう仕事だろうが」
「…そうなの?」
あまりにも堂々と言葉を放つランスにレダは『まさか…』という考えが出てくる。
今自分は天使としての力を失っているせいか、レベル屋やレベル神を頼らなければレベルアップする事が出来ない。
そもそもレベル神はレダよりも階級が下なので、レベル神の事を仕事等は全く考えた事が無かった。
(ランスの作り話…じゃないの? もしかしてそういう決まり?)
「わかりました」
レダがあれこれ考えている内にクエルプランの交信が終わったようだ。
「ランス、あなたの言うとおりでした。それがレベル神の職務であれば、私はそれを遂行しましょう。ではまずはあなたのレベルが60になった時という事で」
「60か…まあいいだろう。俺様ならば楽勝だ」
レベル60というのはランスでもそこまで上げた事は稀な気がするが、今のレベルが52ならばそう遠くは無いと考える。
普段レベルが下がっているランスだが、ここ最近はレベルが下がるようなことが無いため、少し戦えばそれくらい上がるだろうと軽く考えていた。
ランスは今自分の体に起きている事を知らないため、それで納得してしまったのだ。
「それでは…」
クエルプランはそれだけ言うと消えていく。
ランスは新たな間近な目標に満足そうだ。
(うむ、俺様は天才だからレベル60など楽勝だ)
今まで真面目にレベル上げなどした事が無いランスだが、あれほどの美女が脱ぐと言うのであればやる気が出るというものだった。
レベル100となればやる気が出ないが、60ならば何とかなる…そんな考えをしていた。
「…クエルプラン様が良いと言うのであればそれで問題無いけど、実際どうするの? そんな簡単に今のランスはレベルが上がらないでしょ」
今現在のランスのレベルが上がりにくくなっている…逆にレベルが下がりにくくもなっているのだが、人間が高いレベルを目指すのであればそれ相応の時間が必要だ。
「がはははは! 何も問題は無い! 世界にはレベルを上げるアイテムや経験値を上げるアイテムもあるのだからな!」
それでもランスが楽観視しているのは、この世界に多数存在するアイテムがあるからだ。
「…ああ、そっか。ランスは人間だから問題無くそれらのアイテムを使えるものね」
その手のアイテムは完全に人間専用であり、天使であるレダには不必要なアイテムだ。
以前ランスのレベルがバグにより上がらなくなった時、カラーから貰った幸福ポックルでレベルを上げることが出来た。
あれから見つかっていないが、経験値パンくらいならば見つけた事もある。
「それよりもランス様…別の問題もあるのですが」
馬鹿笑いを浮かべるランスにシャロンが申し訳なさそうに声をかける。
「何だ」
「あの…そろそろお金の方が…子供の誘拐事件はお金にはならなそうですので…」
「む…」
シャロンの言葉にランスは渋い顔をする。
すっかり忘れていたが、確かに誘拐事件では報奨金を貰う事が出来ないのだ。
主犯は既に消滅し、生き残りも存在せず、遺品なども無いため解決した事を証明する事が出来ないのだ。
「あ、あの…私が証言すれば…」
パレロアがおずおずと手を上げるが、それにレダは首を振る。
「無理よ。あなたが誘拐犯の一味という証拠は無いし、あなたの夫ももうこの世界には存在していない。それに…」
「そうだぞパレロア。そんな事は俺様が許さん」
レダとランスの言葉にパレロアは複雑な顔をするが、
「駄目ですよ。ランス様がこう強くいっているのなら、絶対に許してくれません。あなたはここでゆっくりと傷を癒してください」
シャロンの言葉にパレロアはゆっくりと申し訳なさそうに頷いた。
「しかしシャロンも随分とレベルが上がったではないか。そろそろ普通に戦えるか?」
先程シャロンのレベルが22に上がったと言っていた。
22と言えばロッキーよりも高いレベルであり、そこそこのモンスターとも戦えるレベルだ。
意外にも拳で戦えるという才能も有り、ビスケッタ程では無いが戦力になりえる。
しかもシャロンはまだ才能限界には達していない。
「そうでしょうか…確かに昔よりは遥かに体が軽いのですが…」
「いいんじゃない? 新たな自分の力を試すというのもいい機会よ」
スラルの言葉にシャロンは少し考えていたが、力強く頷く。
「わかりました…まだまだ足を引っ張ると思いますが、私もやらせて頂きます」
ランスに助けられた事を思い出し、そんなランスに必要とされている事が嬉しくなり思わず拳に力がこもる。
「やる気が有るのは言い事よ。でもね…まだ問題はあるのよね」
スラルはシャロンの言葉を喜ぶが、それでも再び渋い顔をする。
「なんだ、スラルちゃん。他に問題でもあるのか」
「大有りよ。まおーが居ないという事は、誰がトラップを解除したり宝箱を開けるのよ」
「む…」
「ああ…そっちの問題も有ったわね」
今までは大まおーが何故かレンジャーのような役割を担っていた。
あんな也だが、まおーはレンジャーとしても結構優秀で、罠の解除も手慣れたものだった。
しかし今のメンバーでは他にレンジャーの役割を出来る者がいない。
(うーむ…常にかなみかあてな2号が居たからあまりそんな事を考えた事が無かったな)
見当かなみはランスから見ればハンデなのだが(それに関しては鈴女が優秀過ぎるのが原因)、それでもレンジャーとしての技能はそこそこ持っている。
あてな2号は精密機械のようなマッピングと、何故かトラップ解除や鍵開けみたいな事も出来る。
シィルもそこそこ出来るが、この二人に比べれば劣る。
そしてランスには残念ながらその手の才能は全く無い。
無論、冒険における全ての基本はランスも備え持っている…いや、その手の技術はランスはこの世界でも群を抜いて高いだろう。
出来るけどやらないだけ、それがランスという人間なのだ。
「だからと言って人を雇う…みたいな事も出来ないしね」
人を雇うのには金がかかる…そしてこの世界にはまだ冒険者のギルドというものが存在せず、その手の斡旋は全く期待できない。
中途半端な腕の奴などランスからすればかえって足手纏いなのだ。
(アイテムが無いのもな…まさかハピネス製薬が無いとは考えてもいなかったぞ)
ランスは知らないが、この世界にはまだハピネス製薬は存在していない。
よってランスが知る世界に流通している全ての薬がまだ存在していないのだ。
ランスは冒険にはその手のアイテムは決して欠かさない…冒険がそれ程甘くないというのを知っているからだ。
(それに帰り木もな…お帰り盆栽もシィルに持たせてたからな)
ランスの手持ちの帰り木も残り僅かだ。
無限…とはいかないが、それでも何回でも使えるお帰り盆栽をシィルに持たせっぱなしだという事もランスには厳しかった。
それらの当たり前に存在していたアイテムが無い…これがランスの冒険魂に待ったを仕掛けている原因でもあった。
「せめてお帰り盆栽が欲しいな」
「そうね…帰り木もいつ尽きるか分からないしね」
スラルは勿論お帰り盆栽を知っている。
かつて宝物庫に収めていたアイテムであり、自分のコレクションの一つだったアイテムだ。
「とは言ってもそんな簡単に見つかるなんてことは無いでしょ。ここは地道にお金を貯めるしかないわね」
金が無ければ食べるものも買う事が出来ない。
「とりあえずあのふざけたドラゴンは殺す。そしてあの金髪の男も殺す。そして金を手に入れる」
ランスはこれからの行動を決める。
「がはははは! あんなドラゴン程度、俺様ならば楽勝だ!」
「普通のドラゴンなら倒せるでしょうけど…アレ、普通のドラゴンじゃないでしょ。あのドラゴンの事はケッセルリンクが起きてからでもいいでしょ」
「あ、ランス。ちょっと話があるんだけど」
「あん?」
「あのね…」
―――外―――
「で、何の話だ」
魔法ハウスの外…まだ人里には遠いため、外には何も存在しない。
「そうなんだけど…って何で皆で?」
「いやまあ気になって」
「私も興味が有りまして…」
「も、申し訳ありません」
レダ、シャロン、パレロアに対して少しため息をつくが、
(まあ何も問題は無いか。むしろ知っていてくれた方がいいかな)
「ランス、最後にあの悪魔に斬りかかった時の事を覚えてる?」
「昨日のことだ、忘れとらんぞ」
「うん、あの時私はランスの剣の中にいた…ランス、ちょっと剣を構えてみて」
「こうか」
ランスは無造作に剣を構える。
レダはそれを見てため息をつく。
(ほんと…構えだけみたらめちゃくちゃなんだけどね…一体どこからあんな剣捌きが出来るのかしら)
「じゃあまずは…よし。ランス、剣を振ってみて」
スラルの言葉に若干首をかしげながら、ランスは剣を振るう。
その鋭い一撃にシャロンとパレロアは思わず見惚れる。
無造作に振られただけなのに、その一撃には確かな力強さがあり、無骨ながらもどこか美しさすら感じさせる…そんな動きだ。
「特に何もおきないじゃない」
レダは何時もと変わらぬランスの剣に首を傾げる。
スラルが何かをしたのは分かってはいるが、それがレダの目には見えない。
「うーん…やっぱりまだ研究不足か」
「何をしたいのだ、スラルちゃん」
ランスの言葉にスラルは目をキラキラと輝かせると、
「じゃあ次はこう!」
そう言い放つとスラルの姿が消える。
ランスの持つ剣の中にスラルが戻ったのだ。
「じゃあランス、ちょっと真面目に剣を構えて。もしかしたらランスにも影響があるかもしれないから」
「あん?」
ランスは若干不審そうな顔をするが、スラルの言葉通りに剣を構える。
「よし…じゃあまずはこれから!」
スラルの言葉と共に、ランスが持っている剣が突如として青白く光り始める。
それと同時に、ランスが持つ剣が冷気が放たれる。
「うおっ!」
「え…」
ランスとレダはその状況に驚きの声を上げる。
「よし! ランス、剣を持つ手は冷たくない?」
その言葉を聞いてランスは何度か剣を振るう。
すると、その剣から冷気が放たれ、その剣の軌跡が青白く光り始める。
「うーむ…少し冷たいな」
「そっかー…それは改善の必要があるわね。じゃあさ、ちょっとランスの必殺技を使ってみてくれない」
「別に構わんが」
ランスが剣を構える。
それがランスの必殺技であるランスアタックに構えを取る。
「ラーンスあたたたーーーっく!!」
ランスが両の足で跳び上があり、全身のバネを使ってその剣を振り下ろす。
そこから広範囲の衝撃波が放たれる…それは今までと何も変わらない。
そこにスラルが付与した魔力が組み合わさり、その衝撃波に凄まじい冷気が組み合わされる。
今まではそれで終わりであったが、今のランスはそこからさらにその威力のまま剣を振り上げる事が可能となっている。
そしてそこからも冷気の衝撃波が放たれ、最初に発生した冷気と組み合わさりなんとそこに氷の竜巻が発生する。
「うお!」
「え…」
それにはランスも驚きの声を上げ、急いでその場を飛びのく。
そのあまりの力の冷気の竜巻は、それを放ったランス自身にも襲い掛かる。
「あだだだだだ!」
「ランス! 大丈夫!?」
レダはランスに近づくと、その手にヒーリングをかける。
「ランス様!」
シャロンはランスの手を握るとその手の冷たさに一瞬顔をしかめるが、それでもその手は決して離さない。
「ラ、ランス! 大丈夫!?」
「大丈夫な訳が無いではないか!」
スラルがランスの剣から出て謝る。
「威力が高すぎてランスまで傷つけてるじゃない!」
レダの言葉にスラルも何も言い返せず、小さくなるしかない。
「………」
「どうしたの、パレロア」
一言も発しないパレロア見てレダが怪訝な顔をしている。
パレロアは口を開けて上を見上げている。
レダもそのパレロアの視線を追うと、そこには先程ランスが放った氷の竜巻が残っていた。
「うわ…どんな威力してるのよ」
「我ながら凄いとは思うけど…制御できないのなら意味は無いわね…」
スラルとしては十分な威力があると思っているが、それがランスにも牙を向くのであれば流石に使用する事が出来ない。
あの時上手くいったのは、自分の魔力がつきかけていたからそこの結果だったと理解する。
今は十分な魔力を持って付与したため、その威力が高すぎたのだ。
「うーん…私の魔法の力とランスの剣技が合わさった結果ね。もうちょっと私が魔力を落とすか…いや、それだとランスの剣だけで十分という事になってしまう…もう少し付与の力を試さないとだめね」
結果、スラルの試みは失敗に終わってしまった。
―――???―――
「ク…まだ治らない…」
悪魔界…自分の領地でフィオリは己の傷を癒しているが、その怪我はそう簡単に治らない。
普通であれば悪魔の再生力を持ってすれば治るはずなのだが、あの人間によってつけられた傷は異常に治りが遅い。
「あの人間…」
甘く見ていたつもりは無かったが、まさかあれほどの一撃を放ってくるとは考えていなかった。
奇妙なドラゴンによって戦闘は終わったが、肝心のラサウムに捧げる魂を回収することは適わなかった。
しかもエンジェルナイトを逃がしてしまったため、これ以上地上で動くのは第参階級魔神といえども難しい。
「おう、大丈夫か」
「え…ボレロ・パタン様!?」
そんな自分の元に、三魔子の一人であるポレロ・パタンが姿を見せる。
「申し訳有りません、このような見苦しい姿を…」
「気にするな。まずは傷を治せ」
ボレロ・パタンの言葉にフィオリは有難いと思いつつも、このような傷を負わせた人間に対する敵意が高まっていく。
だが、それ以上にやはり報告はしなければならない。
本来は真っ先に報告せねばならないのだが、流石にこの傷のままで報告するのは躊躇われていたのだ。
「ボレロ・パタン様…人間界に私をここまで傷つける剣が存在しています」
フィオリは肘から先が無い自分の腕を見せる。
「おう、悪魔…第参階級魔神をここまで傷つける剣…レガシオの奴が人間に貸したのかもしれないな」
「レガシオ様が…」
ボレロ・パタンの言葉にフィオリが苦い顔を浮かべる。
レガシオは自分の試練をクリアした人間に己の武器を貸し与えるという趣味を持つ。
「だがまだ見ぬ武器なら、レガシオが喜びそうだな。どんな奴だった?」
「はい…茶色い髪に、緑の服を着た口の大きい男です。その男が持っている黒い剣で斬られました」
「そうか…茶色い髪に、緑の服を着た口の大きい男か…ん?」
フィオリの報告を聞いてボレロ・パタンは首を傾げる。
「…なんか400年くらい前にそんな奴を見たような」
ボレロ・パタンは手元から映像を浮かび上がらせる。
その映像では茶色い髪に緑の服を着た口の大きい男が、一人のカラーの女性を抱いている姿が映し出されていた。
「あ! こいつです! 茶色い髪に、緑の服を着た口の大きい男! そしてこの女魔人も一緒にいました! …え?」
フィオリは自分の言葉とボレロ・パタンの言葉を合わせて自分かおかしな事を言っていることに気付く。
「400年前…?」
「あーこいつは俺が400年程前に会った奴だな。俺のエロ友と言ってもいい。そういやあいつに俺が見つけた剣を貸してたなー。まだ死んでなかったのか」
「え…」
ボレロ・パタンの言葉にフィオリは口を大きく開ける。
まさかあの男が持っていた剣はボレロ・パタンが貸し与えた剣などとはそれこそ考えてすらいなかった。
「あの…こいつ、人間ですよね」
「契約はあいつが死ぬまでだからなー…なんか忘れてたと思ったが、そうかあの剣か」
ボレロ・パタンは納得したように頷く。
そんなボレロ・パタンをフィオリは大きく口を開けて見ていた。
レベルアップの呪文は巧妙なステマです
皆様、やっていなければ是非やってみましょう
ランスシリーズと闘神都市3の付与は違うと思いますが、こんな感じとなりました。
実際に付与がメインとなったランスシリーズが無いために、どこまでが付与かが今一分からないです
シルキィの付与とミラクルの付与がどう違うのかも分からないしなあ…
何処までが付与の力なのでしょうかね?