やっぱメガラスもフォースとか使えるんだろうか…
モンスターの襲撃の少し前―――
「どう思いますか。ケッセルリンク」
カラーの女王の部屋、ケッセルリンクと女王は突如として現れた人間、ランス達の事について話し合っていた。
時はSS419年…人間とカラーの関係は―――特別悪いというものでは無かった。
共通の敵、モンスターがいるというのが一番大きいだろうが、協力し合う仲で無ければ特に争う会う間柄でもない。
「…少し悩んでいます」
普段通りであれば、森の外に放出して終わりだろう。
だが今回は少々特別…あのように現れた人間は初めてのことだった。
最初は魔人が現れたと思ったが、そうでも無いらしい。
しかし普通の人間かと言われれば少々疑問が残るのも事実。
それ故にケッセルリンクも悩んでいた。
抵抗する素振も見せずに大人しく牢に入ってはくれたが、あの男は長時間大人しくしているような人間でも無いと感じていた。
それに何より気になったのはあの態度…
(まるで我々カラーの事をよく知っているようだった)
馴れ馴れしいとまで感じたあの態度は、まるでカラーの知り合いがいるかのようだった。
それ故にケッセルリンクはランス達の扱いを決めかねていた。
「ムシの問題もありますし…」
女王の言葉にケッセルリンクは頭を切り替える。
今、カラーにとって問題になっているのは、突如として現れた人間でもモンスターでも無い。
この近くに出現したあるムシの方だった。
「集落を移す事もやむを得ないのかもしれません…」
ケッセルリンクも女王の気持ちが痛いほどよく分かる。
それほどまでにあのムシは脅威なのだ。
もしこの集落が襲撃されればそれだけで全滅する可能性もある―――それほどの強さなのだ。
「…最悪の場合はそうでしょう。ですがまだその最悪ではありません」
とはいえ、ケッセルリンクもこの状況の悪さを理解していた。
自分達だけではあのムシに対抗する事は出来ない。
それに集落を移せるだけの森もまだ見つかっていない。
「私が何とか…」
「ケッセルリンク様! モンスターです!」
その時カラーの一人が飛び込んでくる。
ケッセルリンクはその言葉と同時に立ち上がる。
「数は」
「そんなに多くは無いです! イモムシDXがほとんどですが、ナマリダマとオウゴンダマがいます!」
「何!」
「そんな…」
その情報にケッセルリンクは驚き、女王は悲観的な声をだす。
イモムシDXはともかく、ナマリダマとオウゴンダマはこの辺りに生息するモンスターでは無い。
そしてその強さはモンスターでも上位に位置する存在なのだ。
「私が行く。女王…もしもの時は頼みます」
「ケッセルリンク!」
女王の声を背後に、ケッセルリンクは飛び出していった。
そこでケッセルリンクが見た光景は、間違いなく牢に入っている筈の2人―――ランスとレダが魔物と戦っている所だった。
そしてレダがナマリダマに弾き飛ばされ、オウゴンダマがレダに襲い掛かろうとした時、
「ファイヤーレーザー!」
ケッセルリンクはそのオウゴンダマに対し魔法を放つ。
流石にオウゴンダマを倒す威力は無いが、それでも吹き飛ばすことに成功する。
「なぜお前達が牢から出ているかは聞かないでおこう」
そして自分が持っていた剣をランスに渡す。
「フン、誰に言っている」
ランスはその剣で、イモムシDXを一撃で斬り捨てる。
その結果にケッセルリンクは驚いていた。
(これほどとは…)
自分が渡した剣は普通のショートソードでしかないからだ。
それなのにこの男はただの一振りでイモムシDXを斬って捨てたのだ。
恐るべき剣の腕前だ。
「よくもレダとのセックスを邪魔してくれたな! 貴様ら皆殺しだ!」
そう言ってモンスターに突っ込んでいく。
「ケッセルリンク様!」
「アナウサか。あの人間の援護に回れ」
自分同様駆けつけたカラーに指示を出すと自分も魔物の群に突っ込んでいく。
「がはははははは!」
ランスはナマリダマの攻撃を受け流しその返す刃でナマリダマを斬るが、流石に一撃で倒すことは出来ていない。
「炎の矢」
そこにケッセルリンクが魔法を叩き込むと、ランスは畳み掛けるような鋭い一撃でナマリダマを切り裂いた。
「人間」
「あん?」
「力を貸してもらうぞ」
「俺様をあんな所に閉じ込めておいて何を言う」
二人は背中合わせになり、目の前にいるイモムシDXを切り裂き、そして焼き尽くす。
「回復の雨!」
レダは傷ついたカラーのために回復魔法をかけていた。
「ほう…ガードだけでなく神魔法すらも使うか」
「まあレダならあれくらいやるだろ」
ケッセルリンクが魔法で怯ませ、ランスが止めをさすという形でモンスターをどんどん減らしていく。
そして最後の1体に残ったのは、やはりオウゴンダマだった。
「最後、か」
ケッセルリンクもオウゴンダマの前には流石に警戒を強くする。
自分一人ではオウゴンダマに勝てないという事がわかっているからだ。
「誰だろうと俺様の前では雑魚にすぎん。貴様も剣のサビにしてくれるわ!」
ランスが一直線にオウゴンダマに突っ込む。
「無茶しないでよ!」
レダもランスを守るべく盾を構えて飛び出す。
ケッセルリンクは魔力を集中させ、攻撃に備える。
「がははははは!」
ランスは何時もの通りにバカ笑いを上げながらオウゴンダマに斬りかかる。
しかし相手も相手で、ランスの攻撃も中々致命傷にはならない。
(うーむ、やはりこの剣ではいかんな)
戦いの中でランスも気づいていたが、この剣では自分の本来の力が出せない。
ランスは自分の膂力を用いた剣術の使い手故に、ある程度長い剣を使っていた。
雑魚が相手ならば問題は無いが、流石に上級モンスターだと使っている武器がそのまま影響に出ていた。
(だがしかーし!)
ランスには必殺技ある。
これまで数多の敵を打ち破ってきた必殺技を放つため、ランスは集中する。
「ファイヤーレーザー!」
(ここだ!)
そしてケッセルリンクの魔法を喰らい吹き飛んだオウゴンダマに対してランスは構えを取る。
「がはははは! ランスアターーーック!」
何時ものように両足に力を込め、敵を一刀両断にしようとした時、ランスが感じたのは違和感だった。
(あれ? こんな感じだったか?)
その一撃はオウゴンダマを打ち砕いたが、ランスの顔には喜びは無かった。
今の自分の一撃への違和感が拭えなかったのだ。
(うーん…なんかおかしいぞ。俺様の必殺技はこんな感じだったか?)
剣が自分に合わなかったという事もあるが、それでもこんな感じではなかったはずだと。
「助かった。礼を言う」
が、その違和感は目の前の美しいカラーの前には直ぐに消え去った。
「がはははは! この程度の事など俺様には容易い事だ!」
(中々調子に乗りやすい人間のようだな。だが誰にも従わない強い意思も感じられる)
ケッセルリンクはそう思ったが、それを表に出すことは無い。
「ケッセルリンク様! 皆無事です!」
「そうか…!」
部下の報告にケッセルリンクは安堵する。
最悪の場合を覚悟していたが、この二人のおかげで何とか免れたようだ。
「はぁ…もう最悪。思うように体が動かないし」
レダは以前には感じられなかった疲労を感じ、地に膝をついている。
「ケッセルリンク!」
女王の声にケッセルリンクが跪く。
「大丈夫です。辛うじて死者はおりません」
「よかった…」
女王は皆が無事であったことに安堵する。
「人間の皆様…カラーの女王としてお礼を申し上げます」
「おう…」
普段のランスであればその言葉でセックスを迫ったであろうが、カラーの女王が人間に礼を言ったことに驚いたのだ。
(あれ? カラーってこんな感じだったか?)
ランスが思い出しているのは、パステル・カラーの事だった。
あのポンコツも女王だったが人間に対しては敵意が剥き出しだったからだ。
おかげでランスも禁欲モルルンの呪いをかけられ苦労したものだった。
それに比べれば、このカラーは人間に対して本当に感謝しているように見えたのだ。
「ところであなたのお名前は…」
「俺様はランスだ」
「私はレダよ」
「ではランス様、レダ様。今夜は皆も疲れていると思いますので、明日改めてお礼をさせて頂きたく思いますが宜しいでしょうか?」
(うーむ…やはりパステルとは全然違う)
あまりにも差がある二人の女王の態度に頭を捻りつつも、ランスはその言葉に頷いた。
確かにランスも少々疲れていたので、女王の言葉に素直に従うことにする。
「ではアナウサ。あなたは二人を客部屋に案内してください」
「わっかりましたー!」
アナウサと呼ばれたカラーはカラーに似つかわしくない声で返事をする。
「それじゃあランスさん! レダさん! 私、アナウサ・カラーが御案内させて頂きまーす!」
「う、うむ」
「…カラーってこんなんだったっけ?」
(カラーにしては随分うるさい奴だな)
そんな事を考えながらも、二人は疲労もあってか素直についていく。
「こちらがお客様のお部屋になりまーす。それではごゆっくりー」
「うむ」
「あー…疲れた」
レダは鎧を脱ぐと、さっそく用意されたベッドに倒れこむ。
ランスも同じ様にベッドに倒れると、
「おい、レダ」
「んー…何?」
「カラーってペンシルカウ以外にいるのか?」
「そこまでは知らない。私は悪魔を見張るのが仕事だったから。でも、他の場所にカラーの集落があるなんて聞いたこと無いけど」
「だよなー…」
ランスが知っているカラーと、今接触しているカラー像が一致しないのだ。
あのカラーの女王は間違いなく自分達に好意的だった。
カラー達は自分達に不審な目を向けていても、敵意や殺気を向けてはいなかった。
「しかしレダ…お前本当に弱くなったんだな」
「言わないでよ…まあ今の戦いでレベル上がったけどさ」
「そういやお前はレベル神が無くてもレベル上がるんだっけ」
「そうよ。レベル神が必要なのは人間だけよ」
「まあ俺様も十分戦ったからレベルも上がってるだろう。カモーン! ウィリス!」
ランスが何時ものようにレベル神を呼ぶが、かえって来たのは沈黙だった。
「あん?」
普通レベル神は呼べば出てくるのだが、今回はいくら待っても出てくる気配が無い。
「うーむ、ウィリスの奴サボりおって。これは次はオシオキだな」
「まあレベル屋もあるだろうし、そこで上げてもらったら?」
レダは既にベッドの中に入っている。
ランスはチャンスだとも思ったが、予定外の戦闘で少々疲れもある。
(ここは焦る必要は無いな。いや、むしろじっくりいくのもいいかもしれん)
楽しみは後にとっておくのも悪くないと思いつつ、ランスもベッドに横になった。
「ケッセルリンク…」
「はい。私も構わないと思います」
女王の間、そこで二人はこれからについて話し合ってきた。
「最近ナマリダマやオウゴンダマの数が増えてきました。そしてムシの動きもまだわかりません。
あの二人を味方に付けれればそれだけで十分な戦力となります」
今、カラーは危機に瀕していた。
およそ120年ほど前、魔物の動きが活発になった。
ケッセルリンクもルルリナもその時はまだ生まれていなかったが、カラーにはその時から魔人には手を出すなと言われていた。
人間はその住処をモンスターに追われ、徐々にその数を減らしていると聞いていた。
未だカラーの元には魔人が来たことは無いが、ここ2年程から集落に近づくモンスターの数が増えてきた。
その時はまだマグボールやリス等といったモンスターだったが、今日はナマリダマやオウゴンダマが迫ってきた。
そしてそれ以上に問題なのが、ムシと呼ばれる種族であった。
「ムシの事もありますし…少しでも戦力を整える必要が有ります」
そのムシはケッセルリンクでも手も足も出ない程の強さを持っていた。
今、カラーで一番の強さを持つ彼女が倒せないのならば、他の誰でも倒せはしない。
唯一の救いは、そのムシが積極的にカラーを襲わない事だけだが、この先どうなるかはわからない。
だからといって、この森を出ても他の森にたどり着けるとも限らない。
誰もが戦える訳ではないのだ。
「でもあの二人が手を貸してくれるでしょうか…」
「難しいかもしれませんが…話してみましょう」
もしかしたら断られるかもしれない…いや、普通の人間なら断るのが普通だろう。
あくまで彼らは人間であり、カラーを守る義務など無いのだ。
(いざとなればこの体を使ってでも…)
ケッセルリンクはランスの視線には当然気づいていた。
だがまああのくらいの年齢の人間ならば、女性をそういう目で見るのも別におかしくはないだろうとも思っていた。
自分の体でカラーの未来が開けるのならば…ケッセルリンクは決意を固めていた。
翌日、ランスとレダは女王に呼ばれていた。
「おはよう御座います。ランス様、レダ様」
「おう」
「おはよう」
ランスは偉そうに、レダはごく自然に挨拶を返す。
「ところで名前は何なんだ? 聞いてなかったな」
「それは失礼しました。私はルルリナ・カラーといいます。このカラーの里の女王をしております」
「ああ、それだ」
ランスは自分が気になった事を改めて聞く。
「ここはペンシルカウではないのか?」
「いえ…ここには特に名前はありませんが…それとペンシルカウという名にも聞き覚えはありません」
(ペンシルカウに聞き覚えが無い…でもここはどう見てもカラーの村だよな。近くに翔竜山もあったし)
昨日は気づかなかったが、木々の間から翔竜山が見えた。
どう考えてもここはペンシルカウがある場所のはずだった。
「ランス様はこことは違う場所のカラーの里を知っているのですか?」
ルルリナの問にランスは言葉を濁す。
「知っているというか何と言うか…俺様が知ってるカラーの村はペンシルカウだけだ」
「横から口を挟むが、ペンシルカウという名のカラーと里は存在していない」
「うーむ…さっぱりわからん。おいレダ、お前は何か知ってるか?」
ランスの問にレダも首を傾げる。
「私は管轄が違うから分からないとしか言えないわね」
「…ま、いいか」
「いいのか…」
ランスの言葉に思わずケッセルリンクが突っ込む。
「わからんものを考えてもわからんのだ」
「それはそれでどうなのよ…」
「もう一つ聞きたいが、ヘルマンはどっちの方向だ」
ケッセルリンクはその言葉に首を傾げる。
「ヘルマン、とは何だ?」
「はぁ?」
ヘルマンの事を本当に知らないという風に答えられ、今度はランスが首をかしげた。
ヘルマンはついこの間、カラーの大虐殺を行ったのだ。
その国を知らない、というのは流石のランスも見逃せない事だ。
「じゃあリーザスでもゼスでもいいが」
「…悪いがどちらも聞いたことが無いな」
(ヘルマンもリーザスもゼスも知らんだと? いや…ペンシルカウも知らないと言ってたから本当に知らんのか? でも女王も違うしな…)
改めて女王を見ても、威厳があるようでへっぽこだったパステルに比べて、彼女はどちらかといえばその母、モダン・カラー似の雰囲気だ。
(うーむ…やはり何かおかしいぞ。ここは一つ様子を見るか…)
「まあそれより俺様に何か用があるんだろ」
「あ、はい…それなのですが、しばらくここに留まり、力を貸して頂く事は出来ますでしょうか」
女王の言葉はこれまたランスにとっては意外な物だった。
(カラーならばてっきり追い出すのだと思っていたが…)
改めてここのカラーとランスの知っているカラーの違いに驚く。
「構わんぞ」
ランスの言葉に今度は女王とケッセルリンクが驚いた。
てっきり断られると思ったのが、ランスはあっさりと引き受けた。
「いや、いいのか?」
だからケッセルリンクは思わず聞き返した。
「別に構わんぞ。俺様も今迂闊に動くことは出来んしな。だったらここに居る方がいい」
(うむ…今は迂闊に動かんほうがいい気がする。というかウィリスもフェリスも何度呼び出しても出て来んし、カラー達も俺様が知ってるカラーとは違いすぎる。
それに翔竜山があるのにペンシルカウでは無い等どう考えてもおかしいぞ)
ランスはこの状況では動かないほうがいい事も理解していた。
シィル達の事も気になるが、それ以上に状況が不透明すぎた。
こういう時のランスのカンは大体あたるのだ。
呼び出せなくなったウィリスとフェリスの件といい、何かが起きているのを理解していた。
「それはそうとレベル屋はあるか?」
「はーい、こちらレベル屋カラー店でございまーす。レベル屋のメカクレ・カラーでーす」
(…なんかこいつも変わったカラーだな)
「やっほー、メカクレちゃん。相変わらず隠れて見えない顔がプリティーだね!」
「いえー」
ランスの案内役に指名されたアナウサがメカクレとハイタッチする。
「二人ともそこまでにしておけ。メカクレ、お前も自分の仕事をしろ」
「はーい」
「ごめんなさーい」
ケッセルリンクに注意され、二人は大人しくなる。
「それではレベルアップしまーす。うーら、めーた ぱーら ほーら ほら。らーん らん…」
(なんかウィリスの時と似てるな…)
「おめでとうございまーす。ケッセルリンク様とアナウサちゃんレベルアップでーす。ランスさんは…あれ?」
「なんだ、どうした」
「いや…これ何だろう?」
メカクレもカラーのレベル屋として色々な仲間達のレベルを上げてきた。
だがしかし、このような事は初めてだった。
『&'%k1? / ("#|6』
このような妙な経験値をみたことは無かった。
「ごめんなさーい。ランスさんはレベルアップ出来ませーん」
「はぁ?」
ランスは戦艦遺跡からずっと戦っていて、今までレベルアップをしていなかった。
しかも一度幸福きゃんきゃんを倒している。
それなのに自分のレベルが上がっていないのは普通にありえない事だった。
「なんかバグってます。ですのでレベルが上げられませーん」
「何だとー!?」
ここでランスに新たな試練が降りかかる。
その試練とは…レベルが上がらないという人間にとって致命的な事だった。
一人の人間の前に1体のリスが跪く…いや、土下座していた。
そのリスは体を目の前の人間―――少女に心底恐れを抱いていた。
「…ケイブリス、我は言ったはずだ」
「ごごご、ごめんなさい。で、でも俺じゃ無理ですぅ…」
リス―――ケイブリスが目の前の少女に命じられたことは、魔血塊の捜索だった。
かつての魔王ククルククルとドラゴンの戦い、その魔王側の生き残りがケイブリスだった。
それ以外の魔人は全て死に絶え、新たな魔王アベルが登場し、そのアベルもすでに存在しない。
そして目の前の魔王―――スラルが現れ、ケイブリスは一番に忠誠を誓った。
その魔王からの使命をケイブリスは果たすことが出来なかった。
「その魔血塊を飲み込んだ新しい魔人が俺じゃ倒せないです…」
ケイブリスは自分でも認めるほど弱い。
魔王スラルが神との謁見を果たし、無敵結界の恩恵には肖っているが、同じ魔人同士では意味が無い。
「そう…」
スラルはケイブリスの報告に考え込んだ。
ケイブリスは一番の古参の魔人であり、他の魔人がどこで消えたかを有る程度は知ってはいたが、その魔血塊から新たな魔人が生まれていればケイブリスでは対抗出来ない。
「ならいいわ。その魔人にはメガラスを向かわせる。お前は引き続き他の魔血塊を探しなさい」
「は、はい…」
ケイブリスはその言葉を聞き、一目散にその場を立ち去った。
「ううう…いつもいつも俺様を好きに扱いやがって!」
ケイブリスは憤っていった。
今思えば魔王アベルもそうだった。
自分にドラゴンの追っ手から逃れされるための穴を掘らされたり、いいように使われていた。
スラルもそうだ。
確かに無敵結界はありがたいが、いいように使われるのは気に入らなかった。
「だがなぁ…」
今の自分の実力では本当に何も出来ない。
魔人最弱の称号は伊達ではないのだ。
「今はまだ耐えるんだ…焦る必要は無い…」
ケイブリスは焦らず、しかし確実に成長をする方法を取った。
ひたすら臆病に、しかし慎重に、これがケイブリスがかつての魔王から学んだ経験だった。
「はぁ…」
魔王スラルは人知れずため息をついていた。
未だに集まらない魔血塊に少々苛立ちを感じていた。
自分は魔王、この世界最強の存在だ。
さらには自分が神と謁見したときに得られた無敵結界、その効果はスラルを喜ばせた。
だが自分に従う魔人の数が絶対的に少ない。
ほとんどの魔人が先のドラゴンとの戦いで死に、残っているのは少ない。
ケイブリス以外にも魔血塊の捜索に出しているが、良い報告はあがってこない。
「カミーラもメガラスも強さはあるんだけどね…」
この二人は強いが扱いにくい。
カミーラは怠惰な面があるし、メガラスは無口で会話にならない。
ケイブリスは強さはともかく、自分に対しては恐怖が先にきてしまっている。
自分が魔人にしたのはまだ一人だけだ。
「早く我に相応しい魔人を探さなければ…」
そのためには散らばった魔血塊を初期化しなければならない。
だがそういい続けて419年…魔王スラルは結局1人しか魔人を作っていなかった。
その理由は魔王スラルしか知らない…今の所は。
イブニクル2やっててやっぱり遅れました
カラーですがかなり独自解釈です
カラーのクリスタルが人間に狙われ始めたのがNC期なのでそこまで険悪じゃなかったんじゃないかと
イブニクル世界のカラーは別の意味で強すぎるよ…ルド世界と違いすぎだろ
メガラス…お前魔血塊にすらなってなかったのかよ
やっぱフォースの力なのかねえ…