ランス再び   作:メケネコ

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使徒の誕生

「まだ見つからぬか、七星」

「申し訳ありません。相手が行動を起こしていない以上、これ以上情報を集めるのは難しいのです」

 魔軍のテント内、カミーラは自分用に誂えられた椅子の上から七星に声をかける。

 七星はそんなカミーラにも臆する事無く意見を出す。

 その様子に魔物将軍セロリは冷や汗をかきながらも、使徒である七星の言葉を聞いている。

 自分達を庇ってくれている発言ともとれるが、それでも相手は魔人…どのような言葉が発せられるかは分から無い。

 直接魔人の下で働いた事の無いセロリには尚更だ。

 しかしそんな魔物将軍の葛藤等考えていないようにカミーラはため息をつく。

「人間の所に移動した可能性はあるか」

「ただ今部隊を派遣しておりますが、恐らくは人間の町へ逃げ込んだと思われます。遠目で確認しただけですが、特に今のところ騒ぎは起こっておりません」

「そうか…」

 七星の報告を聞いてカミーラは目を閉じる。

 その様子を見て七星は魔物将軍に顔を向けると、

「人間達の町を監視せよ。そこに逃げ込んだのであれば必ず動きがある」

「ハッ!」

 魔物将軍セロリはもう何度目かの部隊編成を行うべく配下の魔物隊長を呼び寄せる。

「…最早これだけか」

「も、申し訳ございませぬ」

「いや、気にするな。私が言いすぎた」

 集まった魔物隊長は、最初に集められた魔物隊長の半分にも満たない。

 それだけの数の魔物隊長がこの任務で失われたのだ。

 しかも失われた魔物隊長は補充されてこず、現地で散り散りになってしまった魔物兵の数も多い。

(これではナイチサ様に何といわれるか…いや、トッポスに回されるよりも格段にマシか)

 トッポスの場所では相変わらずのようであり、毎日のように死者が出ているようだ。

(そもそも何故この任務に派遣された魔物将軍が私だけなのだ。カミーラ様がいるといっても、まったく指揮をとってくださらんし…まあ七星様がいらっしゃるから十分といえば十分か)

 今更言っても仕方が無いので、残りの数で何とかするしかない。

「よし、第1部隊はこの町に、第2部隊はこっちに、第7部隊はこっちだ。残りの部隊は各隊のバックアップに回す。各隊は動きがあれば必ず私に報告せよ。そして勝手な侵略は絶対に許さん。その時はカミーラ様の前に私が必ず殺す。覚えておけ!」

「ハッ!」

 残った魔物隊長が一斉に返事をする。

 彼らとしてもこれ以上カミーラを怒らせるのは絶対に避けなければならない。

 その為にはまず第一に自分達の任務を優先しなければならないのだ。

 魔物隊長が動き出した後、魔物将軍セロリは一人ため息をつく。

「ああ…カミーラ様がやる気になっているのは有難いが、同時に恐ろしくもある…このまま何事も無ければいいのだが」

 魔物将軍セロリの願いは当然の如く叶えられない。

 この世界には、まさにルドラサウム大陸における『世界のバグ』が存在しているのだから。

 

 

「おう、どうだ?」

「何の動きもねえよ」

 人間達の町を見張り続けて三日、特に何の動きも無かった。

「人間達の所にいるなら、人間ごとぶっ壊せばいいのにな」

「バーカ、それだと捕獲にならないだろ。それにカミーラ様の命令に背けば本当に殺されるぞ」

 その魔物兵の言葉に全員が体を震わせる。

 壊滅した第5部隊が人間の村を襲おうとして何者かに壊滅させられたことは知っているが、その時のカミーラの反応には魔物将軍を始めとして全ての者が震え上がった。

 それからはどの部隊も好き勝手はしていない…いや、出来ない。

 それだけの恐怖がやはり魔人にはあった。

「しかしドラゴンを捕らえるだけだと思ったけど、とんでもないことになったな」

「ああ…でもカミーラ様が動いているというだけで十分だろ。でも正直意外だった…俺、カミーラ様ってあんまりこういう事に積極的に動くって思ってなかったから」

「そうだよな。最初はやる気が無さそうだったけど、第5部隊が壊滅してから急にやる気が出たみたいだよな」

 魔物兵達は暫く談笑していたが、

「お、おい! 見ろ!」

 一人の魔物兵が慌てた様子で町の方向を指差す。

「なんだよ、って…」

 全ての魔物兵が呆然とそうの光景を見る

 なんと、人間達の町から炎が上がり、全てを焼き尽くさんばかりの勢いで町を蹂躙しているのがこの場所からでも分かる。

「な、なんだありゃ…まさかザビエル様でもいるのか?」

「いや、そんな訳無いだろ。ザビエル様は今トッポスの所に向かってるはずだろ」

 炎ガッパ出身の魔人ザビエルならばあの炎を出せるかもしれないが、そのザビエルは今はトッポス対策に動いているため、反対の方向であるここに居る訳が無い。

「と、とにかく報告だ! 急げ!」

 魔物兵の一人が慌てて走り出す。

「畜生…どうなっていやがる」

「どうなってやがるも何もチャンスだろう?」

 冷や汗を拭う魔物兵に対し、魔物隊長がニヤニヤと笑いながらやってくる。

「た、隊長?」

「俺達の任務はその寄生体とやらを探すことだろう? だったらあそこにいる可能性が高い。そうだろう?」

 魔物兵は魔物隊長が言っている事を理解する。

 この任務は不本意なものであり、本当は全ての魔物兵は人間狩りに参加したいのだ。

 それがモンスターとしての本能なのだから。

「そうですね…」

 魔物兵もまた鎧の中で笑い、魔物隊長の言葉を待つ!

「よし! 我々はあの中にいる寄生体を探すぞ! ついてこい!」

「「「「おおーーーーーー!」」」」

 魔物隊長の言葉に魔物兵達が一斉に声を上げる。

 今ここで、この部隊の命運はきまったようなものだった。

 魔物兵達は知らない…今ここに、誰がいるのかを。

 

 

 

 炎が上がる少し前―――

 

「ウケケケケ! オー…ヒューマン共」

 一人の長身かつかなりの体躯を持つローブを着た人間が不気味な笑みを浮かべていた。

 その目は紅く血走っており、その焦点は合っていない。

 そしてそのローブの下には不気味な宝石がぶら下がっている。

 それこそレッドアイの本体であり、この体は何かのために残しておいたスペアの肉体だ。

 中々の魔法使いであり、その体はレッドアイも人間の中でも気に入っていた。

 それに魔法使いとは思えぬほどの見事な肉体も持っており、その点でもレッドアイに不満は無い。

 ただ、今まで使っていたドラゴンのボディが万能すぎたため、そこだけはやはり不満が有る。

「モンスター共…随分としつこかったけど、もうノープロブレムね! 後はヒューマンをキルするだけね!」

 レッドアイにとっては全ての生きるものは敵であり、自分の魔力を上げるための餌でしかない。

 魔王を打倒するために作られたアイテムは狂気に染まり、何時の間にか人間も殺すべきオモチャでしかないと認識していた。

「ケケケケ! モンスター共はもういない…思う存分キルできるね!」

 レッドアイは醜悪な笑みを浮かべると、その手に魔力を集める。

「アンナ! お前もミーの力を見ておくね! そして逃げればお前も同じ目にあうね!」

 ボロを纏った少女は感情のこもらぬ目でレッドアイを見る。

 生まれた時からレッドアイに捕らわれている彼女にはレッドアイに逆らうという感情は無い。

 いや、人間としての感情が有るかどうかも怪しい。

「ケケケケケ! 火炎流石弾!」

 そしてレッドアイの放った炎の魔法が全てを飲み込む。

「ケケケケケ! 今日も絶好調ね! キルあなた! ケケケケケ!」

 

 

 ドォォォォォォン!!

 

 轟音と共にランス達に向かって崩れた瓦礫が襲い掛かる。

「な、なんだ!?」

 流石のランスもそれには反応出来ない―――訳は無かった。

「ラーンスあたたたーーーーっく!」

 ランスは腰に下げていた剣を抜くと、崩れてくる瓦礫を己の必殺技で跳ね飛ばす。

「な、何なの!? レダ! ケッセルリンク!」

 スラルは剣の中から周囲を見渡す。

「こっちは大丈夫!」

 ランスの側にいたレダは、ランスのおかげで幸いにも傷は無いが、ケッセルリンクが居た部屋は完全に瓦礫に埋まってしまっている。

「お、おいケッセルリンク!」

 流石のランスも慌てた声をだし、ケッセルリンクが居た部屋に向かうが、その入り口すらも既に埋まっている。

「大丈夫だ。少しどいていてくれ。吹き飛ばすからな」

 ケッセルリンクの声が聞こえると、ランス達は言われたとおりにその場から離れる。

 すると、彼女の言葉通りに彼女を押しつぶしていた瓦礫が全て吹き飛ばされる。

「どうやら無敵結界も瓦礫は防いでくれないらしい。まあダメージは無いのだがな」

 ケッセルリンクの言葉通り、あれほどの瓦礫に押しつぶされたのにもかかわらず、彼女には傷一つない。

 自分についた瓦礫の欠片を手で振り払うと、神妙な様子でランスを見る。

「何が起きた。それにシャロンとパレロアはどこにいる」

「そうだ! シャロンとパレロア! 急ぐぞ!」

 この場に居ないシャロンとパレロアの事を思い出し、ランスは真っ先に瓦礫の間から外に出る。

 そして今起きている光景を見て、思わず口を開ける。

「な、なんだこりゃ」

「これは…凄いわね」

 まさに炎に包まれている、という言葉が適切であり、その熱気はランスの肌に嫌というほど現実を伝える。

 ランスも何度か戦争…それも人間、魔軍と共に経験はあるが、この状況はあの時のゼスの時とよく似ている。

「ランス、急いで二人を探さないと!」

「わかっとる! 急ぐぞ!」

 ランスはレダとケッセルリンクの二人を伴って走る。

 2人は日用品の買い出しに向かっていたはずであり、巻き込まれた可能性は非常に高い。

 ランスが周囲を見渡すとそこは正に火の海であり、辺りには焼け焦げた死体がいくつも転がっている。

「む!」

 そこに倒れているメイド服を来てうつ伏せに倒れている二人を見つける。

「シャロン! パレロア!」

 ランスがその二人を仰向けにすると、そこに居たのはシャロンとパレロアの二人では無い。

「なんだ、紛らわしい」

 既に息絶えているその二つの死体を乱暴に投げ出すと、ランスは急いで二人を探す。

「ケッセルリンク! 分からんのか!?」

「…すまない、流石にこの状況ではな」

 ケッセルリンクも二人を探すが、あたりには悲鳴、怒号が重なりパニック状態になっている。

 民衆は逃げ惑ったり、暴徒になったりと大変な状態になっているのだ。

「邪魔だ!」

 そこに暴徒と化した男達がランスに向かって突っ込んでくるが、

「やかましい! 邪魔なのはお前だ!」

 ズシャ――!

「ぎゃあああああ!!」

 その突っ込んできた男達をランスは躊躇いなく斬り殺す。

「ランス! 落ち着いて!」

 流石にレダがランスを諌める。

 ランスが男には容赦が無い事は知っているが、まさかいきなり斬り殺すとは思ってもいなかった。

「フン、どんな時でもこういう馬鹿は出てくるものだ」

 見ると暴徒と化した民衆は好き勝手なことをしている。

 金品を奪って逃げるもの、女を奪っていくものなど数えてもきりが無い。

 中には兵士らしき男達も暴徒に混じっている。

「この国はもう駄目だな。シャロンとパレロアを探してとっとと逃げるぞ」

 兵士すらも略奪に参加しているのを見て、ランスはもうこの国が駄目になっている事に気付く。

 もし上の人間が生き残っていれば、軍とはそう簡単に揺らぐものではないと分かっているからだ。

 逆に言えば上に何か重大な事があったからこそ、こうして末端の兵士も暴走しているのだ。

 もうそうなってしまえば最後、どんな人間だろうとこの状況を収集できる人間は存在しない。

「ランス、こっちだ。パレロアの声が聞こえる」

 ケッセルリンクを先頭にランス達は走り出す。

 そして見知った二人を見つける…が、それはパレロアが涙を流しながら必死にシャロンの名を呼ぶという光景だった。

「シャロンさん! シャロンさん!」

「どうした!」

 ランスが駆けつけると、その涙に塗れた顔をランスに向ける。

「シャロンさんが私を庇って…」

 倒れているシャロンを見ると、酷い状態だった。

「これは…」

 レダは急いで回復魔法をかけるが、何処まで持つか正直わからなかった。

 それほどシャロンの傷は酷い…右半身が焼けており、かろうじて息が有る状態だ。

「レダさん! シャロンさんを…シャロンさんを助けてください!」

「分かってる!」

 レダは懸命に回復魔法を掛けるが、傷が大きすぎる。

 流石にこれではエンジェルナイトの神魔法を持ってしても助かるものではなかった。

「おいレダ!」

 ランスの声にレダが首を振る。

 痛みを和らげる程度しかもう出来ないのだ。

「…レダ、どいてくれ」

「ケッセルリンク?」

 ケッセルリンクの言葉に従いレダがシャロンから離れると、ケッセルリンクが己の手を少し傷つけ、その血をシャロンへと与える。

「ケッセルリンク! あなた!」

「いいのです。スラル様もこうして私を助けてくれたのですから」

 スラルの言葉にケッセルリンクは微笑む。

 それはケッセルリンクが魔人になった時と同じ。

「え…」

 見る見るうちにシャロンの傷が癒えていくのを見て、パレロアは驚きの声を上げる。

 そしてシャロンはハッキリと目を開ける。

「ランス様…皆様…私はいったい」

「…すまないシャロン。私は君の了解も得ずに、私の使徒としてしまった」

「使徒…私が…?」

 シャロンの意識がしっかりと覚醒する。

 そして覚醒すると共に、信じられない程己の力が増しているのを感じる。

 シャロンは立ち上がると、改めて己の手足を見る。

 確かに自分は死にかけていたはずだが、こうして何の問題も無く生きている。

「ランス。すまないな」

「生きてるなら別に構わん。シャロンが使徒だろうが俺様の女である事は変わらないからな」

 ランスはシャロンを抱き寄せると、シャロンは困った顔をする。

「あの…ランス様。私はケッセルリンク様の使徒になってしまったのですが…」

「がははは! そんな事くらいで俺様から逃げられると思うなよ!」

 ランスが自分の体を弄るのをシャロンは困った顔で見る。

 だが決して嫌な気分はしない…やはり自分はランスの笑っている顔が好きなのだと改めて感じた。

「とりあえず二人は無事のようだし、今は早くここから逃げましょ」

「うむ、とっとと逃げるぞ」

 レダの言葉に同意し、ランスもその場を離れようと思った時、

「魔軍だー! 魔軍が攻めてきたぞ!」

「あん?」

 突如として響き渡る声にランスも思わずその方向を見る。

「魔軍だ! 魔軍が…あべっ!」

 魔軍が来たと大声で発していた男が、斧を頭に受けて倒れる。

「ギャハハハハハ! やっぱ人間をぶっ殺すのは最高だぜ!」

「男はみな殺せ! 女は皆捕えろ!」

 魔物兵は周囲の男を殺し、女は捕えるという行動をとる。

「なんだあいつらは」

「あいつらって…どう見ても魔物兵でしょ」

「じゃああいつらがこれをやったのか?」

「いや、それは無いでしょ」

 ランスとレダの会話にスラルが口をはさむ。

「どういうことだ。スラルちゃん」

「今回の炎は明らかに内部からだし、強力な魔法の力を感じるわ。魔人の可能性もあるけど、魔人なら先頭に立ってくるものだしね」

「あの時に会った魔物兵と同じ部隊の魔物兵ではないか? あの奇妙なドラゴンを探しているという」

 ケッセルリンクもスラルの言葉に同意する。

「おっ! 上物の人間を見つけたぞ~」

 ランスたち…性格にはレダ、ケッセルリンク、シャロン、パレロアを見た魔物兵達が歓喜の声を上げる。

 魔物兵の目から見てもこの4人は非常に美しい容姿をしており、それらを犯し、壊す事こそ魔物の生き様だと信じて疑わない。

 事実そのようにモンスターは作られているのだ。

「おう兄ちゃん、そのカワイイ娘達を俺達にくれよ。大人しく渡せば苦しまないように殺してやるからよ」

 緑魔物兵がニヤニヤと笑いながらランスへと近づく。

 勿論言葉通りにするつもりは無い…むしろどれだけ苦しめてから殺してやろうかという下卑た笑みを全く隠そうとしない。

「アホか」

 そして帰ってきたのは言葉と剣だった。

「へ?」

 人間が剣を振るったのは分かる。

 が、分かったのはそれだけで、その魔物兵は腕と胴体を同時に斬られて後ろへと倒れる。

「な、なんだ!?」

「こ、殺せ!」

 驚く魔物兵だが、魔物隊長の言葉で魔物兵がはじかれた様にランス達へと襲い掛かる。

「フン、雑魚共が!」

 ランスもこれまでの軟禁でストレスが溜まっていたのか、魔物兵達を迎え撃つ。

「ラーンスあたたたーーーーっく!!」

 いきなりのランスの必殺技に手前にいた全ての魔物兵が巻き込まれ、一瞬で体が爆発したかのように弾ける。

「へ?」

 いきなり降ってきた仲間達の肉塊に魔物兵達は呆然とする。

 そして次いで放たれるランスの一撃に、動きを止めた魔物兵が巻き込まれて同じく肉塊となる。

「ば、化物だ!」

 その威力は正に魔人並、魔物兵には逆立ちしても出来ない芸当に一気に弱腰になる。

「スノーレーザー!」

 そこにスラルの放った魔法が突き刺さり、数体の魔物が貫かれて即死する。

「全く、この忙しいのに出てくるんじゃないわよ」

 レダが近づいてくる魔物兵をその剣で切り伏せる。

「な、なんだこいつら!?」

「つ、強すぎるぞ!」

 魔物兵達はここにはただ暴虐を働きに来たに過ぎない。

 そこでまさかこれ程の強さを持つ人間がいるなど予想外過ぎた。

「あ、あの女達を人質に取れ!」

 魔物隊長の言葉に魔物兵達はシャロンとパレロアに狙いをつける。

 剣と持った男と女、そして体が透き通っている魔法使いの女は強すぎると判断し、メイド服を着た女性二人を捕らえようとする。

 しかし意外にもそれを阻止したのは、メイド服を着た女性の一人であるシャロンだった。

 シャロンの拳が魔物兵の鎧を凹まし、そこに鋭い蹴りが放たれ魔物兵は血反吐を撒き散らしながら倒れる。

「え…まさか死んだのか?」

「ば、馬鹿な! どう見てもただの人間の女だぞ!?」

 魔物兵の言葉に、シャロンは改めて自分の体に宿る力の大きさに驚く

(これが…使徒の力)

 シャロンは落ち着いて一つ深呼吸をすると、

「パレロアに手出しはさせません」

 パレロアを守るように前に立つ。

 が、そのシャロンをさらに守るようにケッセルリンクが前に立つ。

「シャロン、君は使徒になったばかりだ…無理はいけない。それに君を守るのは私の役目だ」

 そう言ってケッセルリンクに手から魔法が放たれ、それはスラルが放ったよりも遥かに高い威力で魔物兵を吹き飛ばす。

「あ、あのカラーの女も異常に強いぞ!」

「クソ! 炎の矢!」

 魔法魔物兵が破れかぶれに放った炎の矢はケッセルリンクに当たる前に、何かの壁にぶつかったかのように霧散する。

「な…なんだ!?」

「ま、まさか無敵結界!? そんな…馬鹿な! まさか魔人!?」

「そうだ。と言っても誰も私を知らないだろうがな」

 魔物隊長を始めとした全ての魔物兵が一斉に後ずさる。

「ま、魔人様…何故人間を助けるのですか」

「それを貴様に教える必要はあるのか? どうせお前達はここで死ぬ」

「じょ、冗談じゃねえ! こんな所で死ねるか!」

 どこまでも冷酷なケッセルリンクの言葉に魔物達は一斉に踵を返し逃げ始める。

「お、お前ら! 待て! 逃げるな!」

 魔物隊長の言葉等最早聞こえておらず、総崩れになる。

 その時、逃げている魔物兵達を炎が包み、一瞬でその姿が消える。

「ケケケケケ! モア魔力! 邪魔者は全てキル! メイクドラーマ!」

 そして現れる一人の人間。

 その目は完全に正気を失っており、ゲラゲラ笑いながら魔物兵だけでなく、逃げ惑う人々も消し炭に変える。

「さあ皆さんご一緒に。キルあなた!」

 




本気で熱い
眠れなくて寝不足になりそれが続く悪循環と言い訳してみます
それを考えると本当にプロって凄いと思います
何よりモチベーションの維持が大変すぎる…

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