ランス再び   作:メケネコ

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レッドアイの狂気 後編

「おい、どうする?」

「どうするも何も…俺達だけで勝てる訳が無いだろ。ここはセロリ様の言葉通り、奴らの監視に止めるぞ」

 魔物兵達は目的の人間達をすぐさま発見していた。

 この燃え盛る状況の中で割と平気で動いているため、発見するのは容易ではあった。

「ランス、どうする? 止めも必要かと思うが、この状況は少々まずい。特にパレロアが危険だ」

「も、申し訳ありません」

 ケッセルリンクに抱きかかえられているパレロアの顔色は悪い。

 彼女自身のレベルも低く、そして戦闘にも無縁だったためにこの状況は彼女にはきついものがあった。

「むむむ…」

 ランスとしてはあれほど厄介な魔法の使い手はさっさと消してしまいたい。

 あのキチガ○は間違いなくこれからも人を襲うだろうし、今のうちに殺しておくのが未来のためだ。

(だがなぁ…)

 ランスは周囲を見渡して、苛立ちを隠さずに地面に落ちている魔物の死体を蹴り飛ばす。

 周囲の火は消えておらず、また魔軍すらも来ている状況となってはこれ以上動くのは非常に難しい。

 いつ周囲の建物が倒壊するかも分からないし、パレロアにも無理をさせる訳にもいかない。

「ランス。取り敢えず外に出ましょう」

「…それしかないな」

 レダの言葉にランスは素直に頷く。

「次に会った時には確実にぶっ殺すか。スラルちゃんもそれでいいな」

「…そうね。今無理をする必要は無いものね。まずは脱出しましょう。と、言ってもこの状況はどうしたものかしらね」

 スラルもランスの言葉に頷き、そして周囲を見渡してため息をつく。

 もうこの国は終わり…スラルもそう感じ取っていた。

 ほぼ全ての建物は今も燃えさかり、軍も最早崩壊し、そして魔軍まで現れた。

 今も民衆は一部は暴徒と化し、大半の者は必死に逃げている。

「とりあえずここを出ましょうか。話はそれからね」

「うむ、行くぞ」

 ランス達は出口を求めて歩き始めた。

「おい、どうする?」

「俺はあいつらを追う。お前はセロリ様に報告に行け」

「おう」

 魔物兵達がそう言って動こうとした時、突如として目の前にカラーの女性が立っている事に驚く。

「うわっ! うわわわ!」

 魔物兵の一人が転んで尻餅をつき、他の魔物兵もまた驚愕に目を見開く。

 確かにこの女性はあの人間達と一緒に話していたはずなのだ。

「お前達…カミーラの手の者か」

「え…な、なんでカミーラ様を…いや、お前はまさか…いや、あなたは!」

 そこで魔物兵達は気づく…目の前のカラーがカミーラと同じ空気を纏っている事に。

「そんな…魔人様!?」

「そうか…やはりカミーラの部下か。あの時の奴等と同じ部隊か…ならば仕方ないな。ここでカミーラに会うのも面倒だ、悪いが消えてもらうぞ」

 そしてまさに一瞬、その一瞬で全ての魔物兵達が一斉に薙ぎ払われる。

「…カミーラも来るか。これは急がなければならないな」

 

 

「見つかったか!?」

「いや、見つからない!」

 そして一方こちらは寄生体を探している魔物兵だが、やはり成果は上がっていなかった。

 そう簡単に見つかれば苦労は無いのだが、やはりこの状況で探すのは無理がある、と魔物兵は感じていた。

 自分達を包み込むほどの炎、逃げ惑う人間、これらの混乱の中では成果など上がるはずも無かった。

「とりあえず報告に戻るか?」

「そうだな…もしかしたらここには居ないかもしれないしな」

 魔物兵達は頷きあうと魔物将軍セロリに報告すべく元の場所に戻る。

 他の者達も同じような事を考えていたようで、多数の魔物兵達が一度魔物将軍の元へと戻っている途中だった。

「そっちはどうだ?」

「全然駄目だ。人間共に手を出せないのが本当にもどかしいよな」

「そう言うな。ここで下手に手を出してセロリ様やカミーラ様に殺されるのも嫌だろ」

 魔物兵達はセロリの所に向かうと、ちょうどセロリもこちらへ向かっている所だった。

「セロリ様!」

 魔物将軍セロリは少しフラフラと歩いているため、もしや何かあったのかと思ったが、あのセロリに限ってそんな事はありえないと魔物兵達はセロリの元へ向かう。

 この任務を任されるだけ有り優秀なのだ。

「…オー! モンスターソルジャー! わざわざミーにキルされに来たか」

「え?」

 あのセロリから放たれたとは思えない声に魔物兵達は思わず間の抜けた声を上げる。

「けけけけけ! モンスターもヒューマンも纏めてキルあなた!」

 魔物将軍セロリの首に一つ目の宝石のような物が絡み付いており、声はそこから発せられていた。

 そして一体の魔物兵が驚愕の声を上げる。

「こ、こいつ! あのドラゴンについてた奴だ! 間違いない!」

 その魔物兵はドラゴンに取り付いていたレッドアイを追撃した事がある魔物兵だった。

 そしてその時にそのドラゴンに取り付いていた存在であることに気付く。

 それが魔物将軍セロリの体を乗っ取ったという事にも。

「う、うわああああああ!?」

 その事実に気付いた魔物兵達は全員パニックに陥る。

 それも当然、自分達の上に立つ魔物将軍が突如として敵として現れたのだから。

「オー! スローリィ! けけけけけ! キルあなた! ゼットン!」

 レッドアイから魔法が放たれ、魔物兵達を凄まじい炎が包み込む。

 全ての魔物兵がレッドアイの放った魔法に飲み込まれ消滅する。

「ファンタスティック! このモンスタージェネラル、中々グッドな魔力! これであのヒューマンを心置きなくキルできるね!」

 レッドアイは狂気の笑い声を上げながら歩いていく。

 そして逃げ惑う人間達をいたぶる様に魔法を放ち殺していく。

「やっぱりヒューマンはドッグの餌が一番お似合い! これからアンナの餌は全てヒューマンのオーブンね!」

 レッドアイが歩いていくと、ついに人間達が殺到している門へと到達する。

「けけけけけ! ヒューマンは全員キルあなた! ヒューマン共! 今からお前達は皆ドッグの餌ね!」

 耳障りな笑い声に出口へと殺到していた人間達がレッドアイを見る。

 その姿はどう見ても魔物将軍そのものだ。

「ま、魔物将軍だ! 魔物将軍がいるぞ!」

 鎧を着込んだ兵士らしき人間が大声で叫ぶ。

 その叫びに触発されたように人間達はパニックとなり、それはさらなるパニックを起こし人間達は倒れている人間を踏みつけるようにして我先にと逃げ出そうとする。

「オー! 無駄なエンデバー! ミーはジーニアスだからエンデバーなどナッシング! 全員キルあなた! ゼットン!」

 レッドアイはそんな人間達をあざ笑うかのように高位魔法であるゼットンを放つ。

 轟音が鳴り響き、門へと殺到していた人間が門ごと消滅する。

 その様子を見てレッドアイはより声高らかに狂った笑い声をあげる。

「けけけけけ! ヒューマンは全てキル! モンスターも全てキル!」

 レッドアイの笑い声は何処までも燃え上がる炎の中で響き渡った。

 

 

 

「…危ない所だったわね」

「そうね」

 ランス達はその門の所にはいなかった。

 正確にはいたのだが、あまりにも人が殺到しているようなので別の所から脱出しようとしていた所に、凄まじい魔力の炎が襲い掛かり門が消滅してしまった所を見ていたのだ。

「ランス、アレが本体よ」

「フン、今度こそぶっ殺してやる」

 ランス達は門の近くにあった焼かれていない軍の詰め所らしき所で水分の補給をしていたのだ。

「しかし凄まじい魔法の力だ。私でもアレほどの魔力は到底出せないな」

 ケッセルリンクは消滅した門を見て苦々しい顔をする。

 彼女も魔力に優れているが、それでもあの威力は出す事は出来ない。

 ゼットンは彼女も使えるが、言葉通り威力が違いすぎる。

「どうするの、ランス」

「ケッセルリンク、お前魔人だろ。無敵結界があるからダメージを受けんだろ。ささっと殺してくる事は出来んのか」

 ランスの言葉にケッセルリンクは少し考えるが、首を振る。

「倒す事は出来るだろう。だが、一瞬で倒せるという保障は出来ない。あれほどの広範囲の威力の魔法が放たれれば、間違いなくパレロアが死ぬ」

「そうか、なら駄目だな。別の手を考えるか」

 ケッセルリンクの言葉を聞きランスは次の手を考える。

「あの…私の事はお気になさらないで下さい。私を助けるために皆様が危険にさらされるのは私も嫌です」

「何を言っておる。まだ俺はパレロアを抱いてないではないか。そんな勿体無い事が出来るか」

 ランスの言葉にパレロアは思わず目を丸くする。

 まさかそんな言葉が放たれるとは思ってもいなかった。

「ランス、この状況でそんな冗談…じゃあ無いのよね」

 レダはランスが本気で言っている事に思わず苦笑する。

 長い付き合いでランスの事は分かってきたが、この男は自分のいった言葉は曲げない。

 この男がやると言えば必ずやるのだろう。

 スラルもランスが自分を抱くという行為をしたのを思い出す、思わず苦笑する。

 この男は相手が魔王だろうが決して自分を曲げない。

 だからこそ、自分はランスをどうしても魔人に欲しかったのだ。

(そしてカミーラも…)

 少し遠い過去を思い出し、スラルは改めて気を引き締める。

 相手の魔法防御力はかなりのもので、しかも今は魔物将軍へ取り付いている。

 魔物将軍はそれこそ普通の魔物とは違い、力も魔力も一級品だ。

 魔物達を纏めて指揮するだけではなく、その実力もあってこそ魔物将軍という種族として確立しているのだ。

「不意打ちだな。それが一番だ」

「それは賛成だが、どうやって不意打ちをする? あの魔法の威力ではいくらお前でも近づくのは容易ではないだろう。魔物将軍の体ならば尚更だ」

「そうよ。それに広範囲魔法を打たれればそれで終わりよ。詠唱も早いし威力も凄い。流石に私でもゼットン級の魔法は防げないわよ」

 レダもエンジェルナイト本来の力を発揮できればあの魔法を防ぐ事も出来るだろうが、今はそれが出来ない。

「それに関しては私に考えがあるわ」

 スラルの言葉に全員がスラルの方を振り向く。

「大丈夫、確かにあいつの魔力は凄いけど、あいつには致命的な弱点がある。だってあいつは馬鹿だもの」

 スラルの顔には確かに笑みが浮かんでいた。

 

 

 

「けけけけけ! あのヒューマンはどこにいるね! もしかしてミーの魔法に巻き込まれてダイしたか!?」

 レッドアイは自分を追い詰めた人間を探す。

 狂気のアイテムは天才である自分が追い詰められるなどあってはならないと考えていた。

 だからこそ、あの生意気なヒューマンは絶対に殺すといきまいていた。

 しかし未だに見つからない所を見ると、先程の魔法で死んでいるのかもしれないと思い、自分が焼いた門の跡を見る。

「ファンタスティック! やはりミーのパワーベリーグッ! これならあのヒューマンも一発でダイ! けけけけけけ!」

 レッドアイは自分の魔法の威力に誇らしげに笑うと、その狂気に染まった目で周囲を見渡す。

「バーッド! まだ生きてるヒューマンはたくさんいる! そのヒューマン共にヘルをルックさせねばならない! ヒューマンは全員キルあなた!」

 レッドアイの狂気は最大限まで達し、とうとうこの国そのものを焼き尽くそうと、レベル3の力を使った魔法の詠唱を始める。

 それこそが最初にこの国を機能不能まで追い込んだ、火炎流石弾だ。

 もう一度…いや、全てが燃え尽きるまでこの魔法を使って、全ての生ある者を殺しつくす。

 それがレッドアイの目的へと変わっていた。

「キャー! 助けてー!」

 その時、女性の悲鳴が響き渡る。

「ホワッツ?」

 レッドアイは思わず魔法を中断し、悲鳴が聞こえてきた辺りに目を向ける。

 そこには当然の事ながら何も見えないが、そこに人間が居る事だけは確実に分かる。

 そしてレッドアイはその感情の見えぬその宝石に確かな醜悪な笑みを浮かべる。

「オー、まだヒューマンの生き残りが居たね。全てのヒューマンにヘルをルックさせる!」

 レッドアイの目的は既に全ての生命体を殺しつくすという行動に変化している。

 こうして悲鳴が聞こえたからには、自らの手で人間を殺さなければ気が済まなかった。

「ヒューマン…どこにいるか?」

 レッドアイは悲鳴の方向へ向かって歩き始めた。

 

 そしてそのレッドアイの行動を密かに監視している存在がいた。

「ね、言ったとおりでしょ。あいつは馬鹿なのよ」

「うーん…力は凄いけど、それを活かすだけの頭が無いのね」

 スラルの言葉にレダが頷く。

 スラルはレッドアイの思考をある程度理解していた。

 そして確信する…もし人間の悲鳴が聞こえれば、必ず自ら動いていたぶり殺すと。

 一気に魔法で全てを吹き飛ばすような事はしない…何故ならもったいないからだ。

 最初に大きな魔法を使ったのは己の力を誇示し、全てを焼き尽くすため。

 そしてその後の行動は全て自分の手で直接殺すため…完全に頭が向こう側に逝ってしまっている奴の言動と行動だった。

「しかし本当に気づいていないのですね…」

 シャロンは少し呆れたようにウキウキしながら歩くレッドアイを見る。

 ランス達は建物の屋上におり、そこから密かにレッドアイの行動を監視していたのだ。

「しかしスラルちゃん。よくあんなアイテムを見つけたな」

「伊達に長く生きてはいないわよ。ああいうしょうもないアイテムだって使いようだと思ってたし」

 ランスは今も『キャー! 助けてー!』とオウム返しのように繰り返し続けるアイテムを思い出す。

 そのアイテムは過去にランスも見た事があった…と、言ってもあまり良い思い出では無いのだが。

 ゼスでの動乱の時、α要塞において使徒アベルトがランスをおびき寄せる時に使ったアイテムだからだ。

「それにしても中々迫真の演技よね…パレロア」

「…私は普通の人間ですから」

 パレロアの悲鳴を記録させ、それを延々と流し続けているのだ。

 そしてレッドアイはそれに気づかずにまるでスキップをするかのようにその声へと向かっていく。

「よし、お前達。準備はいいな」

 ランスは剣を構える。

 それに応えるようにレダ、スラル、シャロンが頷く。

「ケッセルリンク、絶対パレロアを守れよ」

「ああ、大丈夫だ。傷一つつけさせんさ。だからお前も必ず奴を倒せ」

 ケッセルリンクはパレロアを引き寄せ、ランスの目を見る。

「誰にモノを言っている。俺様が失敗する訳が無いだろう」

 ランスは上からレッドアイの行動を慎重に監視している。

 こうして何時でも動けるように、ランスは全身に力を溜めていた。

「きゃー! 助けてー!」

「オー! ヒューマン! ミーがユーをヘルプするね! だからゴートゥーヘルよ!」

 レッドアイは蹲っている一人の女性を見つけると、ゆっくりと近づいてく。

 そしてどのように殺してやろうかと考えているのだ。

(決めたね! モンスタージェネラルのパワーで踏み潰すね!)

 そしてその人間の殺し方を決める。

 ただ殺すだけではつまらない…そう、その絶望した顔を見ながら足を、手を、内臓を、そして最後に頭を踏み潰してやろうと決める。

「けけけけけ! キルあなた!」

 レッドアイは乱暴に倒れている女性を足で蹴って転がす。

 そしてその人間の顔を見る…もう既に事切れている女性の顔を。

 更にはその胸のあたりから今でも聞こえる「きゃー! 助けてー!」という悲鳴を放っているアイテムを。

「ホワーッツ!? このヒューマンは既にダイ! これではヘルをルック出来ない!」

 レッドアイは腹いせにこの人間の死体を踏み潰そうとした時だった。

「がははははは! スキアリじゃー!!」

「ホワッツ!?」

 突如として上空から聞こえた声にレッドアイは慌てて上を見る。

 レッドアイが見たのは、紛れも無く先程自分を追い詰めた人間…それが剣を構えて振ってくる場面だった。

「ヒュ、ヒューマン!?」

 レッドアイは慌ててバリアを張ろうとするが、時すでに遅い。

 

 ズシャ────!!!

 

 それでも魔物将軍の優れた肉体を使ってその行動を反射的に避けようとする。

 が、それでも当然の如く完全に避ける事など出来ず、その魔物将軍の腕を実にあっさりと斬り落とされる。

 ランスの剣の威力はそれだけでは留まらず、魔物将軍の体の腹の部分にすら傷をつける。

「ノ────! ヒュ、ヒューマン! ユーはどこから…」

「がはははは! まんまと罠にかかりおって! 恨むなら貴様の底無しの馬鹿さ加減を恨め!」

「ミーがフール!? ノー! ミーはジーニアス! ヒューマンこそがフールね!」

 腕を斬られるというアクシデントはあったが、幸いにもレッドアイの本体である宝石には傷一つついていない。

 そして魔物将軍の肉体があればこんな人間程度、あっさりと殺すことが出来る…レッドアイはそう思っていた。

 実際に魔物将軍セロリの肉体は素晴らしく、ドラゴン程ではないが十分な力と魔力を兼ね備えている。

 そして何よりもその強固な装甲。

 今のランスの一撃も、人間のボディならばあっさりと砕けていただろうが、こうして腕一本と腹に僅かに傷を負っただけだ。

 だからもう人間程度に不覚を取る事は無い、と。

 だからこそレッドアイは気づく事が出来なかった。

 ランスと時間差に降って来た二人の女性に。

「ごめんあそばせ!」

 それは唐突に背後から聞こえてきた声。

 レッドアイがその方向を向くと、メイド服を着た女性──―シャロンが凄まじい一撃をレッドアイに叩き込んできた所だった。

「ファ、ファイヤーレーザー!」

 レッドアイは慌てて振り返り、魔法を放ちシャロンを消し炭にしようとするが、それはシャロンと共に降ってきたもう一人の女性であるレダに防がれる。

「がはははは! どっちを見ている!」

「ノ──────!」

 そしてランスに背を向けた事で、ランスの剣をもろに食らってしまう。

 その一撃は強烈で、強固なはずの魔物将軍の肉体をあっさりと斬り裂き、魔物将軍の血が地面に飛び散る。

「ホワーイ!? このモンスタージェネラルのボディはベリーハード! ヒューマン如きではノンダメージのはず!」

「フン、俺様をその程度の雑魚と一緒にするな! それに貴様の装甲など最早役立たずよ!」

 ランスが剣を向けると、猛然とレッドアイに突っ込んでくる。

 そのランスの剣に嫌な予感がし、レッドアイは慌ててランスの剣を魔物将軍の硬い鎧の部分で受け止めようとする。

 

 ザクー!

 

「ノ────! モンスタージェネラルのボディがペーパー!?」

 しかしその硬い鎧の部分ごと魔物将軍のボディがあっさりと切り裂かれる。

 まるで鎧など無いかのような一撃に流石のレッドアイも悲鳴を上げる。

「やるじゃない! シャロン!」

「意外と上手く出来るものですわね!」

 魔物将軍の装甲が薄くなったのも、シャロンの放った装甲破壊パンチが決まったからだ。

 シャロンは格闘技能が有り、そして使徒となった事でその技能を開花させていた。

 そしてその一撃が魔物将軍の強固な装甲を破壊したのだ。

「何が起きてる!? 何故ミーがヒューマン達に追い詰められている!?」

 レッドアイは混乱の極みにあった。

「がはははは! それはお前が弱いからに決まっているだろうが!」

「ミーがウィーク!? ノー! ミーはベリーストロング! ジーニアス! ヒューマン如きが…」

「やかましい!」

 ランスの一撃がさらにレッドアイが寄生している魔物将軍のボディを切り裂く。

「ホワーイ!? なぜパワーが抜ける!? モンスタージェネラルのパワーはこの程度ではナッシング!」

 レッドアイは必死に体勢を整えようとするが、もう既にその体に力が入らない。

「どれだけ魔力が強かろうが、あんたにそれを活かすだけの頭が無いだけよ。簡単に言えばあんたは馬鹿だから負けただけよ」

「ミーがフール!? ノー! ミーはジーニアス! ヒューマンは…」

「いい加減とっととくたばれ」

 ランスの一撃がとうとう魔物将軍の腹を完全に切り裂く。

 すると魔物将軍の中に捕らえられていた人間が出てくるが、ランスの目から見ても明らかにハズレだったため、ランスはそちらを完全に無視する。

「な…パ、パワーが…」

 レッドアイが寄生している魔物将軍の肉体がとうとう崩れ落ちる。

 いくらレッドアイが体を動かそうとしても、寄生している魔物将軍の肉体の方がもう限界なのだ。

「全く持って下らん奴だった。とっとと殺すか」

「ランス、気をつけてよ。本体はこの宝石だから、乗っ取られないようにね」

「当然だ」

 ランスが歩いてくるのがレッドアイには非常にスローモーションに感じられる。

 どうにか相手を乗っ取ろうと考えるが、相手の剣の腕を考えるとそれも非常に難しい。

「じゃあくたばれ」

 ランスが剣を構え、それがレッドアイに突き刺さろうとした時、突如として何者かが降って来る。

「な、なんだ!?」

 流石のランスもそれには驚いて一度相手と距離を取る。

 そしてその存在を見て、ランスにしては珍しく驚愕に顔を歪める。

「カ、カミーラ!?」

 ランスの前に、ドラゴンの魔人であるカミーラが立っていた。




レッドアイに関しては色々とあるとは思いますが、やはり自身の解釈が大きく出てしまいました。
実際どこまでやれるかは明記されてませんから…
ただレッドアイはやっぱりかなり頭が足りないと思います

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