ランス再び   作:メケネコ

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カミーラとの戦い 前編

「ほげ…」

「………」

 ランスが目を覚ました時、目の前にあるのは大きな女性の胸だった。

(むぅ…誰だ。シィルにしてはでかすぎるぞ。戦姫あたりか)

 夢うつつでランスは目の前の胸へと手を伸ばす。

「うー…やわらかー…うげっ!」

 手に感じた柔らかくもハリのある胸の感触を楽しんでいると、突如として頭に大きな衝撃を感じて跳び上がる。

「何をする! ってカミーラではないか」

「…お前は誰かも確認せずに触れていたのか」

 カミーラは若干呆れたようにランスを見る。

 そこでランスの昨日の事を思い出す。

(あーそうだ。久々にカミーラとしたんだった)

 昨日夜を思い出すとランスも思わず顔がにやけそうになるが、無表情のカミーラが怖いのでそれを押さえる。

 そこでランスは自分が寝ていた時の感触を思い出す。

(そういえば…)

 この部屋のベッドは中々大きいが、ランスが寝ていた場所には枕は無い。

 そしてランスの頭がちょうど収まる位置にあるのは…

「あれ? お前もしかして俺様に膝枕をしてた?」

「…その膝枕とやらが何なのかは分からぬが、貴様は確かに私の足を枕として寝ていた」

「うーむ…」

 カミーラの言葉にランスは少し複雑な顔をする。

(あのカミーラがな…これまでの事を考えればありえんと思うのだがまあそんな事はどうでもいいか)

 ゼスでの事を思い出すとやはり違和感は拭えないが、それでも今が良ければそれでいいとランスは早々に頭を切り替える。

「ランス…貴様のせいで私は汚れた。よって貴様が私の汚れを落とせ」

「あん?」

 

 

 

「で、俺が何故お前を洗わねばならんのだ」

「お前が私を汚したのだから、お前が洗うのは当然だ」

 そして二人は当然のように共に風呂へと入る。

 珍しく長い髪をアップにしているカミーラを見て、ランスは思わず感心してしまう。

 ケッセルリンクもそうだったが、やはり魔人という存在は恐ろしい程に美しい存在だ。

 こうして見ると、シミひとつ存在しない非常に綺麗な肌をしている。

「どうした。早く洗うがいい」

「わかったわかった」

 女王様気質のカミーラが言い出したら絶対に引かないのは分かっているため、ランスは大人しくカミーラの体を洗い始める。

(ぐふふ…)

 ただし―――己の手を使ってだが。

 ランスの泡立った手がカミーラの体を弄る。

 当然カミーラはそれに気づいてはいるが、特に文句は言わない。

 一緒に風呂へと入れば、ランスがそれくらいの事をしてくるのは当然わかっていた。

 そしてカミーラからすれば、それは自分の未来の使徒がするにしては当然の事だとも思っていた。

「そういやカミーラ」

「…なんだ」

「お前は魔人に無理矢理させられたんだろ。その時ドラゴンにやり返したりとかはしなかったのか?」

「…考えた事も無かったな」

 ランスに己の生い立ちは話していたが、まさかこの男がそんな事を言って来るとは思ってもいなかった。

 いや、ランスらしい言葉と言えばランスらしいのだろう。

「ドラゴンに対しては最早そんな感情は無い…と言えば嘘になるのだろうな。特にノスは私に殺意を抱いているな」

 ノス…それはランスも昔戦った事がある相手だ。

 確かにあの戦闘狂であればカミーラに敵意を向けてもおかしくは無いだろう。

「あれからあの化物ジジイと戦ったのか?」

「いや…ナイチサは私が自由に動く事を好まぬ。それ故にあれからは会ってもいない。ドラゴンはあそこから決して出てこぬからな…んっ」

 それまでは普通に話ていたカミーラの声が途中で乱れる。

 それはカミーラにしては非常に珍しい声。

 ランスはカミーラが話している最中でも絶えずカミーラの体を弄っていたが、その指がとうとうカミーラの下半身へと触れたのだ。

(むっ、やりすぎたか?)

 ランスは少し調子に乗ってしまったかと思ったが、意外にもカミーラは特に何も言わないし、咎める事も無かった。

 それどころか、ランスの手に自分の手を重ねてさえ来ていた。

「だがこうして…このカミーラが与えられた束の間の自由の中でお前は現れた。やはりお前はこのカミーラの使徒となる運命なのだ…ん」

 カミーラはとうとう遠慮無く自分の中に入ってきたランスの指を抜くと、そのままランスの方へと向き直りその唇を奪う。

 そしてそのまま柔らかなマットの上へとランスを押し倒す。

「ランス…我が使徒となればお前に寵愛を与えてやろう…それでもか?」

 カミーラは笑う。

 この言葉でランスが何を言うかは分かっていはいるのだ。

「俺様は一人の女で満足するような男ではないのだ。お前が俺様の女になるのならばいいぞ」

「ククク…本来であれば魔人相手に無礼な言葉を放ったという事で殺すのだがな。だが貴様はそれでいい」

 カミーラはそのまま起立したランスのハイパー兵器をそのまま飲み込んでいく。

「ならば…お前を手に入れるため、私もあらゆる手段を試してみるとしよう」

 

 

 

「あーえがったー」

 風呂上がりのランスは非常に満足していた。

 あのカミーラの体を思う存分堪能し、カミーラも満足させることが出来た。

(しかしあのカミーラを組み敷く事が出来るとは…うむ、これも俺様の魅力のなせる技だな)

 以前までは全てカミーラが主導権を握っていたが、今回は多少なりともランスが主導権を握る事が出来た。

 ゼスでの時は、カミーラが封印状態にあり動けない所を無理矢理犯した。

 スラルが魔王だった時はほぼカミーラがペースを握っていた。

 しかし今回はようやく、本当に最後の方ではあるが、ランスが一方的にカミーラを絶頂させる事が出来た。

 これはランスにとって非常に大きな自信となり、そして新たな目標をランスに与えていた。

(うむ、このままカミーラを俺様の女にしよう。あの志津香だってヘルマンの時には素直に俺様に抱かれていた。だからカミーラもいけるはずだ)

 目標は高い程やりがいがある、ランスは新たな決意を胸に秘め、声高らかに笑う。

「相変わらずねーランスは」

 それを呆れた顔で見ているスラルは、ランスの考えが手に取るように分かる。

 どうせランスの事だから、カミーラも自分の女にしようと考えているのだろうなと思っていた。

 そしてそれは見事に当たっていた。

「ランス、あんまり調子に乗ってると痛い目にあうわよ」

「何だスラルちゃん、嫉妬か? がはははは! スラルちゃんも可愛い所があるではないか!」

「な、何言ってるのよ! 私はランスの事を心配して言ってるのよ!」

 スラルはランスに向かってそう言い放つと、ランスの剣の中へと消えていく。

「おーいスラルちゃん」

「好きにしなさい! まったくもう…人の気も知らないで」

 どうやらスラルは本格的に拗ねてしまったらしく、ランスが声をかけても応える事は無かった。

「がははは! もてる男は辛いな!」

 ランスは何時ものように笑っていた。

 

 

 

 リビングではカミーラとケッセルリンクの二人の魔人が向い合せになって座っていた。

 その二人の顔からは特に表情を伺うことは出来ない。

「…カミーラ。随分とランスを可愛がっているようだな」

「…将来の使徒に寵愛を与えていただけだ」

 二人の魔人の間の空気はどこか独特の物が漂っていた。

「貴様もランスといる間は十分にする事をしていたのだろう」

「…それはお前には関係の無い事だ」

 カミーラの何処か嘲るかのような問いに、ケッセルリンクの言葉も固くなる。

 事実、自分はランスに求められるがまま、何度も夜を共にしていたのだから。

「私は魔人となる前からランスと共にいた。別に私がランスと居てもおかしくは無いだろう」

「…一つ言っておいてやる。お前はランスに近すぎる。だが、何れはランスと戦う日が来るだろう」

 何を…と言おうとして、ケッセルリンクは言葉を飲み込む。

 カミーラの顔は先程のような空気は無く、本気で言っているという事に気づいたからだ。

「見つけた以上は一度戻る事だな。だがナイチサはお前にはほぼ興味を持つまい。何も言われることは無いだろう」

 その言葉を聞いてケッセルリンクは安堵する。

 ランス達と一緒に居た時に不安だった事は、やはり自分の王である魔王ナイチサの事だった。

 ケッセルリンクの感覚からすれば大した時間では無いが、他の者にとっては非常に長い時間なのだ。

「セラクロラスに巻き込まれた…そう言えば何も問題は無いだろう」

「…分かった。だがランスはどうする。魔王ナイチサの前に人間を連れて行くのは私は反対だ」

「ふむ…」

 カミーラもそこが気になっていた。

 魔王ナイチサは残虐・残忍であり、人間を好んで殺す魔王だ。

 しかし一度人間をある程度殺すと、突如として己の城へと戻り何もしなくなる。

 その間は全く人間に関わらないという変わった一面も持っている。

 今は人間に対しては関わる気は無い時期かもしれないが、もし自分がランスを連れて行けば間違いなく何か言って来るだろう。

 ランスが使徒であれば何も問題は無いが、流石に人間のままランスを己の城へと連れ帰る気は無かった。

 それに多くの部下達がランスの事を見ているため、隠して連れ帰るという事も難しい。

「そろそろ…か」

 カミーラは何かを決意したかのように言葉を放つ。

 その空気にケッセルリンクは『とうとうこの時が来たか』という思いもあった。

 

 

 

 翌日―――

「なんだカミーラ。こんな所で」

 ランスが周りを見渡すと、そこにはカミーラの他に複数の魔物兵が居た。

 魔物兵はランス達を囲むように配置されており、レダとパレロアはケッセルリンクとシャロンの側に居る。

 ただし、ケッセルリンクは魔軍側の方に居る。

 レダとパレロアはほぼ人質と言っても間違いなかった。

 ランスを取り囲む魔物兵達はニヤニヤと笑っている。

 普段のランスならば真っ先に斬りかかってもおかしくは無いが、目の前にはただならぬ雰囲気の魔人カミーラが居るため、流石に迂闊には動く事は出来ない。

「オイオイオイ」

「死ぬわアイツ」

 魔物兵達はこれからこの人間が魔人様によって殺される所を今か今かと楽しみにしていた。

 この人間が魔物隊長を初めとした、多数の魔物兵を殺している事は知っているため、こうして魔人による公開処刑が行われる…魔物兵はそう信じて疑わなかった。

 仲間の女は魔人ケッセルリンクが保護しており、流石にそこには手を出すつもりは毛頭無い。

 これほどの美貌を持つ人間を嬲り、色々な実験に使いたい魔物兵からすれば不満だが、少なくともこの人間が魔人様に殺されるのだけは非常に楽しみだ。

 しばらくの間ざわざわと騒いでいた魔物兵だが、七星が合図をした事で一斉に静かになる。

 そしてそれを見計らったかのようにカミーラが口を開く。

「ランス…最後に聞こう。このカミーラに跪き、使徒へとなる気は無いのだな」

「当たり前だ。何度も何度も同じ事を聞くな」

 カミーラとランスの言葉に魔物兵達が大きくどよめく。

「お、おい聞いたか!?」

「ま、まさかカミーラ様があの人間を使徒に!?」

 それは非常に大きな衝撃だった。

 まさかあのカミーラが、という思いと、人間如きが使徒へと誘われる事、そしてそれを断る人間が居るなどとは考えてもいなかったからだ。

「黙れ」

 カミーラの言葉に魔物兵達が静かになる。

 それほどまでにカミーラの声には威圧感が感じられた

「ランス。これは私にとっての好機だ。そしてお前の最後の機会だ。選べ、己の運命を」

 これまでとは違うカミーラの言葉に流石のランスも気圧される。

(うーむ、これはカミーラもマジだぞ。だがここで使徒となる訳にもいかんぞ)

 ランスの目的は何だかんだ言ってもシィル達と合流する事にある。

 しかしだからといってこんな所で死ぬのは論外だし、だからといって使徒となる事も嫌だ。

 サテラもランスを使徒へと誘っていたが、ランスとしてはまさかカミーラがそこまで本気だとは思ってもいなかった。

「だからと言ってはいそうですか等と俺様が言う訳が無いだろ」

「そうか…やはりコレが一番早いか」

 カミーラはランスの答えが分かっていたかのように、戦闘態勢を取る。

 それに合わせてランスもまた剣を抜く。

「スラルちゃん。こうなったら本気でいくぞ」

「それしか無いわね」

 朝に不機嫌だったスラルも、この状況ではもう何も言う事は無かった。

「スラル、貴様がランスに手を貸すのは構わぬ。ランス、貴様も全力で来るのだな」

 その言葉と共にランスは動いた。

 相手の動きを待ってから行動するのはランスの性に合わないからだ。

「…は?」

 そしてそのランスの動きに思わず魔物兵達は間の抜けた声を出す。

 それは魔物兵から見ればあまりにも速い動きだった。

 

 ガンッ!!

 

 ランスの剣とカミーラの爪がぶつかり合い、鍔迫り合いの形になる。

「カ、カミーラ様!?」

 魔物兵達はカミーラが人間の攻撃を己の爪で受け止めた事に驚きの声を上げる。

 それもそのはず、魔人には無敵結界があるため、魔人同士で争わない限りは傷一つ負う事は無い。

 その攻撃が魔人に届く前に、無敵結界に阻まれるからだ。

 しかしカミーラは己の体で人間の一撃を受け止めたのだ。

 つまりはカミーラは無敵結界を使用していないのだ。

「無敵結界は使わんのか」

「お前相手に使うつもりは無い…お前は魔人としてのカミーラではなく、私自身に跪くからだ」

 カミーラはそのまま己の腕力を行使してランスの剣を弾くと、そのままその爪でランスに斬りかかる。

 その行動にも魔物達は驚く。

 カミーラが直接戦っている所を見るのは初めてだが、彼女はドラゴンの魔人。

 ドラゴンといえば、強靭な肉体もそうだが、何よりもその強力なブレスで相手を圧倒するものだ。

 それにカミーラは己の翼があるため、空を飛んで攻撃する事も出来るはずなのだが、あえてその翼を使わずに人間と戦っているのだ。

「チッ!」

 ランスは舌打ちをしてカミーラの爪を避ける。

 明らかに昔戦った時よりもその精度が上がっている。

 ゼスの時では無く、魔王スラルの時代にカミーラと一度戦ったが、その時よりも明らかに動きが上だ。

 ランスはカミーラの爪を弾き、その剣で対応出来ない一撃は身を捩って避ける。

 鎧が壊れているため、カミーラの一撃を受ければ間違いなくランスは負ける。

 そのためにランスはカミーラの攻撃が当たらぬように動くしかなかった。

(レダとケッセルリンクと行った特訓の成果が出てるわね…でもこのままではまずい)

 スラルは冷静に二人の戦いを剣の中から見る。

 何とかランスを援護したい所だが、迂闊に魔法を使ってもカミーラにはダメージを与えられないだろう。

(まさかカミーラが無敵結界に頼らない戦いをしてくるなんてね…いや、勿論ランスにはチャンスなんだけど)

 もし無敵結界を張ったままの戦闘となれば必ずランスは負ける。

(カミーラはランスに己の力を見せつけるために戦っている…でもそれならランスにもまだ勝機はある…のかなぁ)

 魔人と人間の基礎能力の差は相当にあるのだが、ランスが戦えているのはランスもまた並大抵の人間ではないからだ。

 その剣の使い方はまさに神業という他には無い。

 恐らくは剣戦闘LV3はあるとスラルは睨んでいた。

 だが、そのランスの力を持ってしても魔人が相手ではやはり正面から勝つのは難しい。

(…私がやるしかないか)

 だが今は自分しかランスを助ける事は出来ない。

 そして自分が今出来る事は…まだ手探りの状態だが、やはり付与の力に賭ける他は無い。

「どうしたランス。その程度か?」

「フン! まだまだ小手調べだ!」

 カミーラの揶揄するかのような声にランスは勢いよく言い返すと、今度は一転ランスが攻めに転じる。

 ランスの剣がカミーラの爪の防御を掻い潜り、カミーラの衣服にその剣が到達する。

「カミーラ様!」

 その様子に魔物兵が声をあげるが、

「黙って見ていなさい」

 七星の声で皆が押し黙る。

 使徒の七星にそう言われては魔物兵達も何も言う事が出来なかった。

 だが、その後魔物兵達は黙らざるを得なくなる。

「お、おいあの人間…」

「ああ…魔人様相手に…化物か」

 ランスとカミーラの攻防は今も続いている。

 無敵結界を使用していない、魔法もブレスも使っていないという状況にありながらも、人間が魔人と渡り合っている事に魔物兵達は驚きを隠せない。

 もし自分があの立場に居れば、間違いなく一瞬で殺されているだろう。

 それほどまでに男の剣技はずば抜けていた。

 しかしそんなランス達に向けて厳しい視線を向けている者もいる。

(…まずいな)

 それは魔人ケッセルリンクだ。

 魔物兵達はランスが想像以上の戦いをしている事でどよめいているが、ランスの事をよく知っているケッセルリンクは苦い顔をする。

 確かに今の状態ではほぼ互角と言ってもいいだろう。

 カミーラが魔法とブレスを使用していないとはいえ、そのカミーラと渡り合うランスの実力は流石だと思う。

 自分達と協力したとはいえ、魔人オウゴンダマを倒したのは間違いなくランスの実力だ。

 だが、そのランスを持ってしても今現在のカミーラと良くて互角なのだ。

 そしてそれはそのままランスとカミーラの実力差を意味する。

(まさかカミーラがここまで己を鍛えていたとは…)

 ケッセルリンクが知っているのは、魔王スラルの時代にランスがセラクロラスの力で消えた時のカミーラだった。

 その時のカミーラは怠惰、無気力…そんな感じがしていた。

 確かに自分とは良く話していたが、そこには覇気が全く感じられなかった。

 新たな魔王ナイチサが現れた時、自分はランスと共にセラクロラスに巻き込まれてしまった。

 その間の300年余り…恐らくはカミーラは己を鍛えていたのだろう。

 勿論それを表に出すような存在ではないが、カミーラの事を知っているケッセルリンクには分かる。

 そうでなければ、態々人間相手に正面からぶつかり合うという選択肢をカミーラが選ぶ訳が無いのだ。

 実際にカミーラの技術はケッセルリンクから見ても昔よりも上がっている。

(これがドラゴンの力か…)

 改めてケッセルリンクはドラゴンの魔人であるカミーラの強さに戦慄する。

 そしてそれはランスも同様だった。

(イカン。やっぱりまともにやると強いぞ)

 ランスは何度も魔人と戦い勝利している…それは嘘ではない。

 魔人アイゼル、魔人ノス、魔人サイゼル、魔人ジーク、魔人ザビエル、魔人カイト…そして魔人カミーラ。

 それらの魔人もランス一人が倒してきた訳ではないのだ。

 いくらランスが以前よりも強くなろうとも、一人では魔人には勝てないのだ。

 しかしそれでもランスは諦める訳にはいかない。

 サテラ辺りなら口八丁で誤魔化して逃げることが出来るだろうが、カミーラが相手ではそうはいかない。

 もしランスが本当にカミーラを拒めば、カミーラはランスを殺す…そんな事になってもおかしくは無いのだ。

 と、なると最早ランスに出来ることは、己の力でこの状況を打破する意外に方法は無い。

 

 ガンッ!

 

 何度目かのランスの剣とカミーラの爪が交差する音が響く。

 ランスの剣は確かに上質の剣だが、カオスのように魔人相手に効果がてき面と言う事は無い。

 ランスの攻撃は確かにカミーラに傷をつけてはいる…薄皮一枚とはいえ、カミーラにダメージを与えることは出来ている。

 しかし、魔人の治癒力の前にはそんな傷は無いのも同然、結局はランスの一撃はダメージらしいダメージを与えられていないのだ。

 これがカオスならば、斬られた傷が癒えずにそれが積み重なっていく事が出来るだろうが、この剣ではそれも出来ない。

 今になってあの口煩い下品な剣が無いのがランスには腹立たしかった。

 そしてそんな雑念がランスの動きを雑にしたようで、カミーラの爪がランスの首を捉える―――前にランスは剣の柄でカミーラの爪を防ぎ、その衝撃に逆らわずに後ろへ跳ぶ。

 そのまま追撃に来るカミーラだが、今度はランスがそのカミーラの動きを見切り、ついにカミーラの腕にまともにランスの剣が当たる。

「カミーラ様!?」

 魔物兵が驚愕の声を出す。

 今度の一撃はカミーラの薄皮一枚ではなく、その右腕を大きく切り裂いたのだ。

 カミーラの腕からは血が流れるが、カミーラはその腕を見て尚も笑ってみせる。

「ククク…まさかこのカミーラが後れを取るとはな」

 ようやくカミーラに一撃を与えたが、カミーラには大したダメージにはなっていない。

「ならば私もそろそろ本気で行こう」

 そういうカミーラから恐るべき力が放たれる。

 カミーラがとうとう本気になったのだ。

(ぐぐぐ…まずいぞ)

 カミーラの本気…即ちドラゴンの力に他ならない。

 ドラゴンのブレスによる攻撃はランスも散々に苦労させられてきた。

 そのブレスが、再びランスへと放たれようとしていた。

 ランスが本気で命の危機を感じていたとき、

「ランス! 構えて!」

 剣の中からスラルの声が響く。

 それと同時にカミーラの破壊力のあるブレスが放たれるのはほぼ同時。

「斬って! ランス!」

 スラルの声が響く前にランスは既に剣を動かしてた。

 ランスの剣がカミーラのブレスとぶつかり、ランスが吹き飛ばされる。

 が、それはあくまでも衝撃によって飛ばされたのであり、ランスには傷一つ無い。

「…ほう。それもお前の力か。スラル」

「そうよ。まさか文句は無いでしょうね、カミーラ」

 ランスの剣からスラルの声が響き渡る。

 そしてそのランスの剣から青白い光が放たれ、そこからはパチパチと確かな雷の力が集まっていた。




実際問題技能レベルってどれくらいのアドバンテージなんでしょうか
例えばレベル120のランスとレベル100の藤原石丸が戦ったらどっちが勝つんでしょうね?
魔法技能や執事技能等と比べると、直接戦闘技能の持ち主が藤原石丸とフレッチャーしかいない上に、戦闘描写が原作で無いですし
何か技能レベル3が神聖視されてる気がしまして…凄いことが出来るというのはわかるのですが、魔法技能レベル3に比べると「これが出来る」というのが今一見えないんですよね
というよりも魔法技能レベル3というかミラクルとアニスがチート過ぎるんだよなぁ…

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