ランス再び   作:メケネコ

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終わった後で

「むぐ…」

「起きた? ランス」

 ランスが目を覚ますと、そこにはランスの顔を覗き込んでいるレダの姿があった。

「む…俺様はカミーラと戦っていたはずだが」

「それだけどね…カミーラはもう帰ったわよ」

「何がどうなっておるのだ」

 ランスの記憶では、ランスの放った一撃が凄まじい雷撃の嵐となった事は記憶有る。

「確かその後はカミーラのブレスを斬ろうとして…」

「お前は後ろから魔物兵の魔法を受けた。それで体勢を崩したお前はカミーラのブレスをまともに受けて気絶したのだ」

「ケッセルリンクか」

 今はまだ日が高い事もあり、少し顔色が悪いが、ケッセルリンクは問題無く起きているようだった。

「カミーラからの伝言だ。『今回は見逃す』との事だ」

「見逃すだと。あのままなら俺様が…」

「負けていた。カミーラにはまだまだ余力があった。確かにお前の一撃はカミーラにダメージを与えていたが、決定的な一撃には程遠い」

 ケッセルリンクに冷静に言われて、ランスも言葉を止める。

 カミーラとの実力差に関してはランスも分かっていた。

 確かにカミーラのブレスを切り裂いたのは事実だが、ただそれだけだ。

 事実カミーラにはそれほど大きなダメージを与えられてはいない。

 ゼスの時のカオスの一撃の方が、カミーラに大きなダメージを与えている感覚はランスにもハッキリと分かった。

「…ふん、次に勝てばいいだけだ」

「それでいいわよ。カミーラが見逃してくれただけでも十分に運がいいわよ」

 ランスの剣からスラルが出てくる。

 その顔は非常に満足気であり、カミーラとの戦いでの結果は負けてしまったが、自分とランスを新たなステージへと進ませたという確信があった。

(ランスは電撃魔法と相性がいい…それが分かっただけでも十分な収穫ね)

 ランスは魔法は使えないが、どうやら電撃系の魔法との相性がいいらしい。

 あの時に放ったランスの一撃は、電撃系の上位魔法である雷神雷光を遥かに上回る一撃だった。

 しかもその一撃は魔法ではないので、ハニーにも十分に通用する攻撃だ。

「ランスの言うとおり次よ次。次に勝てば何も問題は無いのよ」

「うむ、スラルちゃんの言うとおりだ。今回は負けたかもしれんが、最終的に勝てばいいのだ!」

 ランスの笑いを見て、レダとケッセルリンクは安堵する。

 もしかしたら負けを引きずるのでは無いかとも思ったが、どうやらランスにとっては勝ち負けなど些細なことのようだ。

「ランス様、どうぞ」

 扉を開けて、シャロンがお盆を持ってくる。

 そこには熱々のこかとりすのステーキが乗せられていた。

「うむ」

 ランスはそれを一心不乱に食べ始める。

 流石にこの連戦はランスにとってもかなり無茶をさせていたようで、体が休息を求めていた。

 シャロンはそんなランスを微笑みながら見ている。

(でも…これで最後なんですね…)

 そう思うとどうしても暗い表情になってしまう。

「どうした、シャロン」

「え…」

「何でそんな暗い表情をしておるのだ」

 意外とランスは鋭い部分がある。

 女性の純粋な行為には怯む事はあっても、女性の悲しみや葛藤といった表情を決して見逃さない鋭さもある。

 ちなみに男にその洞察力が働く事は無い。

「いえ…それなのですが…」

「そこから先は私が話そう。ランス、私とシャロンは魔王の元へ戻る」

「なんだと」

 ランスの視線を真正面から見返し、ケッセルリンクは言葉を続ける。

「カミーラにも見つかってしまったからな…一度魔王の元へ戻らねば、私の立場も危うくなる。魔人は魔王の命令には逆らえんからな」

 そう言われればランスもこれ以上何も言えなくなってしまう。

 魔王問題はランスも体験しているし、サテラからも魔王の話は聞かされていた。

「大丈夫だ。ナイチサは私に興味を持ってはいない」

「うーむ…」

 ランスは難しい顔をするが、ケッセルリンクがそう決めたのであれば、仕方ないとも思う。

 彼女がカラーだったころからの付き合いのため、彼女を見れば分かってしまう。

 ケッセルリンクはランスが知るカラーの中では、圧倒的に強い―――その意思すらも。

 だからランスも何も言う事は無い。

「で、いつ頃行くのだ」

「お前とカミーラの戦闘の余波に巻き込まれた魔物兵が動けるようになったらだな。まったく…あの一撃には私も肝を冷やしたぞ。お前の事だから何とかするだろうとは思ったが、まさかアレほどの威力だとは予想もしていなかった」

 ケッセルリンクは咎める様にランスを見る。

「お前は気づいていなかったかもしれないが、あの一撃はパレロアをも巻き込むところだったぞ。もし私がいなければ、彼女は死んでいたぞ」

「むぐ…」

 ランスもそれを言われると弱い。

 あの時はランスも状況が不利ということも有り、周囲にまで気を配る余裕は無かった。

 更にはあの予想外までに広範囲に及んだランスの一撃…それがまさか周囲にいた魔物兵の殆どを葬る事になるとは流石に予想もしていない。

「いいんです、ケッセルリンク様。あの時はランスさんも必死だったのですから」

 パレロアは気遣うようにランスを見る。

「それよりもランス、これからどうするの?」

「む…」

 これからの事を聞かれてランスも考える。

 ある程度纏まった資金を得る―――そう考えて行動していたが、どういう訳か悪魔と戦い、レッドアイと戦い、仕舞いにはカミーラと戦う事になっていた。

 今思えば何故そうなったのか全く分からないが、それでもランスは全てを切り抜けることが出来た。

「スラルちゃんの体を捜すのが一番だからな…そうだな、リーザス方面にでも行ってみるか」

 ランスは自由都市出身で有り、隣国のリーザス地方にはよく足を運ぶが、それでも全ての地域を回ってはいない。

 リーザスが広いということもあるし、新たな出会いを求めて遠くへ行くことも多いので、あまりリーザス地方は回っていなかったような気がした。

 広いこの世界、ランスといえども全ての迷宮を周っている訳ではない。

 それにこれまでの冒険で、色々なアイテムを集めてきたという実績もあるため、まだ見ぬアイテムがあるだろうとも考えていた。

「そうか…見つかるといいな」

 ケッセルリンクは勿論本心から言っている。

 魔王の枷から逃れたスラルが、新たな道を歩んでいるのがただただ嬉しかった。

 80年という時間…スラルはずっと苦しんできたのだ。

 ならば新たな人生を、頼りになるパートナーと共に過ごしてもいいだろうとも。

(…ただそのパートナーが極度の女好きというのがな)

 そこだけは少し不安だが、ランスと一緒ならば絶対に後悔はしないだろう。

 それ以上の刺激を与えてくれる男だ。

「しかしケッセルリンクはもう行くのか…うむ」

 ランスは神妙な顔をしていたが、その顔がどんどんといやらしい笑みに変わっていく。

 そのランスの表情を見て、レダ、スラル、ケッセルリンクがため息をつく。

 

 

 

 その夜―――

「がはははは! 今夜のお楽しみタイムだ!」

「今夜も、だろう」

 その夜、ケッセルリンクはランスの部屋のベッドの上で何度目かの呆れた声を出していた。

「それに…何故私だけでなくシャロンまでいる」

 ケッセルリンクが横を見ると、そこには自分の体を両の手で隠し、頬を紅く染め上げたシャロンが座っている。

「うむ、偉大な俺様は過去には魔王とやった。魔人ともやった。使徒ともやった」

「…確かにそれだけ聞くと偉大と言えば偉大なのだろうな」

 ケッセルリンクは半眼でランスを睨む。

 使徒は知らないが、確かに魔王であるスラル、魔人である自分とカミーラをランスは抱いている。

「そして魔王と魔人と3Pも成し遂げた…しかーし! 魔人と使徒との3Pはまだしておらーん!」

「なんだその下らん理由は」

 あんまりと言えばあんまりな理由にケッセルリンクは律儀に突っ込まざるを得ない。

「下らん理由とは何だ。俺様にとっては重大な事だぞ」

 ランスのあまりにもまっすぐな視線にケッセルリンクは何も言えなくなる。

 長い付き合いだが、確かにランスはそういう奴だったと。

「と、いう訳で早速やるぞー!」

 

 ジャキーン!

 

 ランスのハイパー兵器が直ぐに臨戦態勢へと変わる。

 シャロンはその様子に目を手で覆いながらも、指の間からチラチラ見ているのがランスにも分かる。

「とーーーーーーっ!」

 ランスはベッドの上の二人に飛び掛る。

 そして当たり前のように夜が過ぎていく。

 

 

 

 翌日の夕方―――

「それではな…スラル様、ランス、レダ、パレロア」

「ランス様、スラル様、レダ様…お世話になりました。パレロアさん、ランス様の事をお願いしますね」

 ランスが思いっきり二人の体を堪能した翌日の夕方―――シャロンの体力が回復するまでそれほどまでの時間がかかってしまった。

 魔軍は既に移動を始めており、ケッセルリンクとシャロンはランス達へ別れの挨拶をしていた。

「まあお前達もしっかりやれよ。俺様が恋しくなったらいつでも訪ねていいんだぞ」

「…気が向けばな」

 これがランス達とは3度目の別れ…なのだが、ケッセルリンクの顔には笑みさえ浮かんでいる。

 前のように唐突な別れでも、急な別れでもない。

「スラル様。ランスをお願い致します。レダも頼む」

「ケッセルリンクも気をつけて。くれぐれも魔王には注意しなさい」

「大丈夫よ。ランスとの付き合いはあなたよりも長いんだから」

 ケッセルリンクはレダと握手をする。

(まさか私が魔人と握手するなんてね…本当にありえない光景よね)

 エンジェルナイトが下界の存在とこうして手を握り合う…これからも起こりえない光景ではないかと思う。

 しかしランスと一緒にいることで、こうしたありえない事も起こりえている。

(でも…何でかしら…全然不快じゃない)

 こうした感情を持つのは、自分がエンジェルナイトの力を失ってしまったからなのでは無いかとも思ったが、その事に関しては不思議と悲壮感は無い。

「パレロアさん…ランスさんの事をお願いしますね」

「はい。私も皆様に助けられました。その恩返しという訳でもありませんが…ランスさんの面倒はしっかりと見させて頂きます」

「おい、それはどういう意味だ」

 シャロンとパレロアの会話には流石にランスも聞き捨てならなかった。

 そんなランスをシャロンとパレロアの二人が揃って見る。

「な、なんだ」

「「いえ…自分では気付けないものなのだと…」」

「どういう意味だ…」

 彼女達の視線が何となくシィル達が向ける視線に似ているような気がして、ランスも少し憮然とした態度を取る。

「それでは…また会おう」

 ケッセルリンクはそう言って歩き出す。

 シャロンもケッセルリンクの後に続いて歩いていく。

 その姿をランス達はじっと見ていた。

「…行ったわね」

「別にもう二度と会えない訳でも無いだろ」

「魔人を相手にそんな事言えるランスがやっぱりおかしいわよ」

 普通に考えれば、これが今生の別れになってもおかしくないと考えるものだろうが、やはりランスの考え方は普通とは大分違っている。

 だが、それくらいの考え方の方がこの世界を生きるには相応しいのかもしれない。

「よし、行くぞ」

「そうね…そろそろ行きましょうか」

 既に魔法ハウスも仕舞ってある。

 後はただ目的の場所に向かって移動するだけ。

「そう緊張しなくていいわよ。私達がいれば大丈夫」

 レダはパレロアの緊張を解す様にその肩を叩く。

「あ…その、こうして遠出をするのは初めてなので…」

 今からランス達が向かおうとしている所は、地図とはまるで反対方向だ。

 そしてその距離はパレロアにしてみればかなりの大移動となる。

 これまで主婦として過ごしてきた彼女にとっては、これはまさに大冒険だ。

「がはははは! 俺様についてこれば大丈夫だ!」

 ランスの馬鹿笑いが辺りに響き渡った。

 

 

 

 魔王城―――

 魔王ナイチサの居城…その魔王の間には魔物大将軍が一人、そして無数の魔物将軍が跪いていた。

 そして魔王の前には魔人カミーラと使徒七星が立っていた。

「ナイチサ様。こちらがご所望のモノであります」

 使徒七星が恭しくナイチサの前に一つの箱を差し出す。

「…これは何だ」

「これこそが、ナイチサ様が捕獲せよと言われた存在です。かの存在はドラゴンではありませんでした。ドラゴンに寄生した生命体でした」

 七星の言葉に魔王の間に居た魔物兵達がどよめく。

 魔人カミーラが戻ってきたとの知らせを受け、ようやく魔軍に被害を及ぼしていたドラゴンを倒せたと安堵したのだ。

 しかし実際にはそれはドラゴンでは無いとなると、何だったのかという話になる。

「これを捕えるため、ナイチサ様からお預かりした魔物将軍、魔物隊長、魔物兵の殆どが失われました」

 七星の報告にも魔王ナイチサは顔色一つ変えない。

「カミーラ」

 魔王の短い言葉に全ての魔物兵が体を震わせる。

 それだけ魔王の言葉は魔物兵には頼もしくも、恐ろしいモノなのだ。

「…間違いない。ドラゴンでは無かった」

 カミーラはただ短くそう答えただけだった。

 そこには恐れも媚びも無い、簡潔な事実だけが存在した。

 それを理解したのかどうかはわからないが、魔王ナイチサはそれ以上何も言葉を発しなかった。

 ただ無言で、厳重に封じられている箱を開く。

 そこに居たのは、無数の触手が生えた宝石だった。

「ノーーーーー! モンスターがミーを閉じ込めるとは…」

 宝石…レッドアイが怒りの声をあげるが、目の前にる巨大な存在にそれ以上口を開け無くる。

「…オー魔王」

 そして理解してしまった。

 今自分の目の前に居る存在こそが、ガウガウ・ケスチナが倒そうとした存在、魔王である事に。

 同時に自分では逆立ちしても魔王に勝つ事が出来ないという事に。

 魔王ナイチサはしばらくレッドアイを見ていたが、徐に自分の指をレッドアイへと向ける。

(ま、まさかミーがダイするか!?)

 それだけでレッドアイは根本的から来る恐怖に身を震わせる。

 しかしレッドアイに待っていたのは死では無く、魔王ナイチサの血だった。

「ぐげ…ぐげげげげげげ」

 レッドアイはその血を浴びてしばらく悶えていたが、その声がどんどん更なる狂気を孕んだ声へと変わっていく。

「ミーは魔人…そう! ミーは魔人ね! ヒューマンは全てキル! けけけけけけけ!」

「そうだ…人間を殺せ。それがお前の役割だ」

 レッドアイの狂気の声など聞こえていないように、魔王ナイチサは事務的な声を出す。

 魔王ナイチサは残忍で凶悪…他の生き物など遊び道具くらいにしか思っていない。

 が、時にはこうして完全に事務的に配下に接する事もある。

 そこもまた配下の魔物達には恐ろしかった。

「カミーラ…よくやった。褒美を取らそう」

 ナイチサの言葉にカミーラは眉を動かす。

 まさか魔王ナイチサがそのような言葉を放つとは、カミーラも思っていなかった。

 カミーラはしばし悩んだが、

「…今は無い。が、次の望む時に私の好きに動きたい…というのは」

 その言葉に魔王ナイチサは答えない。

 魔物将軍達はカミーラの言葉に唾を飲み込む。

 魔人カミーラが自由を望んでいるらしいというのは魔軍の噂だ。

 そして魔王ナイチサはそんなカミーラに『動くな』と命令していた。

 今回カミーラが動いたのは、魔人ザビエルがトッポス相手に派遣されたこと、そして手近な魔人が居なかったからだ。

 ナイチサはカミーラが自由に動くのを望んでいないのは、誰の目から見ても明らかであった。

「…良かろう。お前が望む時、一度自由に動く事を許そう」

 ナイチサの言葉にカミーラは優雅に一礼する。

(…まあこんな所か)

 内心では舌打ちをしてたが、魔王からここまでの譲歩を引き出せれば十分だとも感じていた。

 いきなり自由を望んでもナイチサは許可はしないだろう。

 だが、一度という制限があれば許すとも思っていた。

(魔王の制限を受けずに動けるのであれば、それはそれで十分か)

 今回も魔物隊長の中には、魔王ナイチサの命令でカミーラを監視していた者がいた。

 その魔物隊長には戦死して貰ったが、やはり鬱陶しかった事には変わりなかった。

 ナイチサもその戦死した魔物将軍や魔物隊長の事はそこまで関心は無いようで、何も言ってはこない。

「では…」

 カミーラは用件は終わったとばかりに颯爽と立ち去っていく。

 それを追って七星も消えていく。

 それと入れ替わるように一体の魔物将軍が入ってくる。

「ナイチサ様! ケッセルリンク様が戻られました!」

 その報告には魔物将軍達もどよめく。

「ケ、ケッセルリンク様だと?」

「ああ…300年ほど前に行方が分からなくなった魔人のはずだ」

 そんなどよめきの中、魔人ケッセルリンクが魔王の間に入ってくる。

 すると先程とは違ったどよめきが魔物達に走る。

「おお…あれがカラーの魔人ケッセルリンク様…」

「ああ…カミーラ様に並ぶ美しさを持っているとの噂だったが…それは真実だったか」

 魔人ケッセルリンクはそんな魔物達の言葉など聞いていないかのように、魔王の前に跪く。

「ナイチサ様。魔人ケッセルリンク、帰還いたしました」

 そんなケッセルリンクにナイチサは何も言わない。

 その奇妙な間に魔物達は先程と同様に息を呑む。

「ケッセルリンク…今まで何をしていた」

 それは何の気の無い声だったのかもしれない。

 しかしそれを聞く魔物達にはそれが非常に重くのしかかった。

(こ、これは…)

(ま、まさか魔人様も…)

 もしかしたら魔人でも魔王に消されるかもしれない…そう思うと、魔物達も生きた心地がしなかった。

 しかしケッセルリンクはそんな魔王の言葉等意にも返さぬように応える。

「申し訳ありません。聖女の子モンスター、セラクロラスの次元跳躍に巻き込まれました」

 その言葉に魔王ナイチサの眉が動く。

 聖女の子モンスター…それはこの世に4体しかいない、新種のモンスターを生み出すことが出来る唯一の存在。

 その中でもセラクロラスは時のセラクロラスと呼ばれ、魔物達でも探そうとして探せる存在ではない。

 時を歪め、若返らせる事が出来るという存在だ。

 そして魔王ナイチサは知っている。

 聖女の子モンスターと呼ばれてはいるが、その正体は神なのだ。

「…そうか。許す」

 なので魔王ナイチサはあっさりとそれを認める。

 神には決して逆らう事は出来ない…ナイチサは魔王でありながら、その事を知ってしまっていた。

 神が動いたのであれば、魔王であっても自分が出来ることなど無い…それがこの世界の摂理なのだから。

「はっ…」

 ケッセルリンクは優雅に立ち上がると、そのままその場を立ち去っていく。

 そしてその場には魔王ナイチサと、魔物達が残るのみ。

 魔王ナイチサはもう口を開くことは無かった。

 

 

 

 カミーラの城―――

「ケッセルリンクか。問題は無かったようだな」

「私としても拍子抜けだ。だが、セラクロラスの事を言ったら何も言われなかった」

 カミーラとケッセルリンクは実に久々に向かい合ってワインを飲んでいた。

「こうしてお前と飲むのは大よそ300年ぶりか…」

「私にとってはつい最近だ。お前と別れてから1年ほどしかたっていないのだからな」

 ケッセルリンクの言葉にカミーラはつい最近になって現れた事を知る。

 そしてランスもまた同時に現れたとなると、やはり自分とランスには何か強い縁があるのだろうとも確信する。

 あの時感じた自分の確信は間違っていなかったと。

「しかしお前があのような望みをするとはな…」

「ナイチサは私を好いてはおらぬ…お前のように無関心であれば良かったものを…」

 ナイチサはケッセルリンクに対しては無関心と言ってもいい。

 今回の事も、恐らくはケッセルリンクに対しては何もする気は無かっただろうとも感じていた。

「ランスはどうした」

「ランスはまた別の地に向かうようだ。行き先は私も知らない…暫くは私も動くつもりは無いからな」

「…そうか」

 カミーラは一度ワインを飲み干す。

 それを見てケッセルリンクは空になったカミーラのグラスにワインを注ぐ。

「お前があそこで退いたのは驚いた」

「…あの状況でランスを使徒にした所であの男は納得しないだろう。私はあの男の全てが欲しい…それだけだ」

 カミーラの言葉にケッセルリンクは苦笑いする。

 かつて魔王だったスラルも同じ事を言っていたからだ。

「フッ…あの男がそう間単に手に入るとは思えないがな。捕らえようとすればするほどその隙間から抜け出しかねない男だ」

「ならば何度でも捕らえればいい…魔人の生は長い。そしてあの男もセラクロラスの力でまた別の場所に現れる…そしてその時には必ずこのカミーラが自由に動ける時だ」

 確信があるかのようなカミーラの言葉にケッセルリンクは再び苦笑する。

 普通に聞けば凄い言葉なのだが、不思議とランスならばありえそうだという思いがある。

「さて…今度はいつあいつに会えるか…」

「必ず会えるさ…あいつは必ず騒動を巻き起こす男なのだから」




少し遅いお盆休みが有りました…
長い間PCに座れなかったので続きが書けない状態に
でもそれって言い訳なんですよね
どこかで見たけど
毎日更新が隔日になって週一になって月一になって最後にはエタる
この言葉の意味が理解できました
本当にペースを守る事、そしてモチベを保つ事が本当に難しいです

次は予定通りにちょっとした小話を
ランスがもしスラルの魔人になってしまっていたら…の話の予定です
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