「がはははは! 爽快だぞ!」
「ら、ランスさん! ちょ、ちょっと…早いです!」
「ランス! 少しスピード落として!」
ランスは荒野をバイクで走る。
その速度はかつてランスが悪くないと評価した浮遊要塞よりもずっと早く、うし車よりもさらに早い。
それをランスは手足のように扱っていく。
それこそ本来はこの世界で発現しないであろうランスの技能…バイク操縦技能にあった。
「む」
レダはともかく、パレロアが悲鳴を上げているのを聞いてランスは一度バイクを止める。
「はぁ…こ、怖かったです…」
バイクが止まった事で、パレロアは安堵のため息をつく。
「これはミスね。私が一番後ろなのがいいわね」
パレロアは一度バイクから下りると、一度地に足を下ろして深呼吸をする。
レダも一度バイクから下りると、今まで自分が乗っていたバイクを興味深そうに見る。
(うーん…私も体があったら乗ってみたいなあ…)
スラルは純粋にバイクに乗る事が出来ない自分にため息をつく。
折角面白そうな乗り物があるのに、自分はそれを味わう事が出来ないのが非常にもどかしかった。
「ランス、一体どこに向かってるの? ランスに任せてたからここがどの辺かわからないんだけど」
「がはははは! 適当だ!」
「適当って…歩きよりも断然早いけどさ…場所くらいは考えてもいいんじゃない?」
「そうよ、ランス。目的も無しに漠然と移動するなんて勿体無いでしょ」
レダとスラルに言われてランスは少し考える。
バイクの爽快感からただただ飛ばしていただけだが、確かに二人の言うように目的も無しに行動するのはランスとしても本意では無かった。
「ランスさん、日も暮れてきましたし、今日はもう休みませんか? 幸いここなら魔法ハウスを使っても誰も来ないでしょうし」
「まあそうだな。今日はもう休むとするか」
その夜、ランス達は何時ものように魔法ハウスにて食事をとっていた。
「本当に便利ですね…こうするだけで水が出てくるんですから」
新たなキッチンで、パレロアは料理の後の片づけをしていた。
あの少年の技術はやはり凄まじく、これまでとそれほど変わらない操作でより手早く作業を行えるのだ。
「そうね…ああいうのを天才と言うのでしょうね。私が魔王だったら間違いなく魔人にスカウトしてたわね」
スラルも本を片手に魔法でページを開きながら頷く。
使い勝手は変わらずに、ただ便利になっているというだけだ。
レダだけは難しい顔をしているが、それでも今の魔法ハウスの使い勝手の良さは分かっている。
(私としては、女神ALICE様がどう考えるかが不安なのよね…ランスの持ち物だから、そこまで深く干渉する事は無いとは思うけど…)
ご丁寧にバイクの収納スペースまで用意されており、ただでさえ便利だった魔法ハウスが更なる進化を遂げていた。
(バランスブレイカー…よね、間違いなく。普通ならAL教が回収してくるだろうけど…でも今の時代ならそんな事は無いかな?)
レダも人類管理局女神ALICEの役割は良く知っている。
今の時代はどうかは分からないが、本来のランスの時代…LP期ではAL教は活発に動いており、バランスブレイカーの収集も大事な仕事の一つだ。
だが、今はNC期…人類が魔物の脅威に脅える時代であり、レダもこの時代の女神ALICEは知らないため、どのような判断を下すかは分からなかった。
(でもクエルプラン様がランスのレベル神をしてるから…そこまで考え無くてもいいかな? 一エンジェルナイトの自分が判断する事じゃ無いわね)
レダはそう判断すると、パレロアが作ってくれたデザートを口に入れ、顔を綻ばせる。
「やっぱりパレロアの料理は美味しいわね。シャロンも上手だったけど、純粋な腕だけならパレロアの方が上かしら」
「ありがとうございます、レダさん」
レダの言葉にパレロアは微笑む。
ランスはと言うと、珍しく何かを考えているようで、何時ものような馬鹿笑いが聞こえてこない。
「ランス、珍しく考え事をしてるわね」
「珍しいとは何だ珍しいとは」
ランスは憮然としているが、レダはニヤリと笑う。
「珍しいから珍しいと言ってるの。何時もならこれからの事を考えて笑ってるでしょ」
レダの言うこれからの事とは、当然ランスの夜の事だ。
ランスが一人で寝る方が珍しく、常に女性達と夜を共にしていた。
今はケッセルリンクとシャロンが居ないため、レダとパレロアがランスと夜を共にしている。
「これからの事を考えていたのだ」
ランスは今もホルスの戦艦に行けない事に少し苛立っていた。
確かに冒険は楽しいが、やはりシィルやかなみの顔が見えないのはランスとしても少し考える事があった。
シィルが魔王の氷に閉じ込められていた期間も長かったが、今はもうシィルが復活した期間よりも長い時間が経っている。
何時何処でセラクロラスと出会うか分からないため、ランスとしても長期的な計画を立てるのが少し難しかった。
そして何度も戦う事となっている魔軍、そして魔人。
特にカミーラが自分にそこまで執着しているのは、ランスとしても複雑な感情を持っている。
「これから…ね。移動手段は確保できたし、魔法ハウスもあるから何処にでも行けそうだけどね。それこそランスの言ってたJAPANとかはどうなの?」
スラルは何の気なしにランスへと提案する。
以前、ランスと共にJAPANという場所に向かったが、そこには何も無かった。
だが、ランスがそんな下らない嘘を言う訳が無いし、実際にJAPANという国は存在しているのだろうとスラルは思っている。
「うーむ…JAPANには珍しいアイテムも多かったから、スラルちゃんの体を何とかするアイテムもあるかもしれんがな」
ホルスの戦艦に行きたいが、現状ではそれは非常に難しい。
何しろ、ヘルマン地方は魔王の領域なのだから。
「やはりJAPANか…」
もしかしたらJAPANにランスの知り合いがいるかもしれない、ランスはそう考えて決断する。
「うむ、JAPANに行くぞ!」
ランスは決意を新たにし、JAPANへ向かう事を決めた。
「うーん、爽快ね!」
スラルは今日もバイクの上で目を輝かせている。
その風を味わうことは出来ないし、触れることも出来ないのだが、こうして目に見える光景があっというまに過ぎ去っていくのは今までに無い爽快感だ。
「パレロアも慣れたみたいね!」
「何日も乗っていますから!」
最初はおっかなびっくりで、必死でランスにしがみ付いていたが、今はもう彼女も慣れたものだ。
「がはははは!」
ランスは何時ものように笑いながらバイクを走らせる。
JAPANへ向けて数日立つが、JAPANとは反対の方向に居たにも拘らず、既にLP期における自由都市へと入っていた。
流石にLP期に比べて道が整備されておらず、国と国の緊張の中で中々移動がままならぬ状態でも、このバイクならば何も問題無く通過できる。
時にはそのバイクを奪おうとする輩もいるが、そんなものはランスとレダとスラルの敵ではなく、全ての障害は排除されて進んできた。
「ランス、そろそろ時間ね」
「む、もうそんな時間か」
しかしそんなバイクにも欠点があり、明かりの類がついていないため、夜道を走るのはランスと言えども危険だった。
それにこのバイクを隠すためにも魔法ハウスに収納する必要があり、魔法ハウスを出すのに相応しい場所等も考えると、あまり長時間の移動は出来なかった。
時には町により、生活に必要な物を仕入れる時間、またそれを買うための資金集めも考えればそこまで劇的に進めるという事でも無かった。
それでもうし車よりも遥かに早しい、金もかからないというのはやはり有りがたかった。
「今日はこの辺がいいかしらね。人間からも魔物からも見つからない場所でしょうし」
「フン、俺様の所に来るならば蹴散らすだけだ」
今までも何回か盗賊に狙われはしたが、その全てはランス達によって蹴散らされている。
最も、パイアールが魔法ハウスに結構な改装を施したようで、今の魔法ハウスはそんな攻撃では揺るぎもしない。
「よし、この辺で今日は休むぞ」
「いやー、順調よね」
スラルはボードに貼られた地図を見ながら頷く。
大よその位置しかわからないが、それでもランスの言うJAPANには近づきつつあった。
何よりもそのスピードは徒歩やうし車とは大違いだ。
歩くのより早いのは当然とはいえ、やはりうし車は国と国の関係によっては国交が無いために出ていない。
個人でうし車を有しているような商人ならば問題は無いが、生憎と今現在では手に入れるのはやはり難しい。
「こうやって自由に移動できるのも、やっぱりバイクのおかげよね」
スラルは自分がバイクを触れないのを本当に残念そうにしている。
「スラルちゃんの体が戻れば問題無いだろうが」
「そうだけどさ。でもランスのその自信がどこから来るのか本当に謎ね」
ランスはスラルの体を取り戻せるようなアイテムが有ると信じて疑っていないようだ。
確かにランスと旅をしていると、色々な発見、出会いが有りスラルとしても全く飽きない。
だが、それでも失われた肉体に魂を戻す…そんな事が可能なのだろうかという疑問は残る。
「期待しないで待ってるわよ」
スラルがそう言って苦笑いを浮かべていた時、
コン コン
「あん?」
誰かが魔法ハウスのドアをノックする音が聞こえてくる。
「…この魔法ハウスを前に悠長にノック?」
レダも綻ばせていた顔を元の戦士の顔へと戻し、盾を取り出す。
今までも襲撃もあったが、それらは全ていきなり襲い掛かってきた。
しかしこの魔法ハウスは思いのほか頑丈で、これまでの襲撃も全て防いできていたのだ。
「ランス、パレロアをお願いね」
「うむ」
ランスもまた己の剣を手元に寄せ、パレロアを庇うように彼女の前に立つ。
そんな緊張感の中、スラルだけが呑気な声を出す。
「そんな警戒しなくても大丈夫よ」
レダは盾を片手に入り口を開ける。
「…そんな警戒しなくてもいいだろう」
「なんだ、ケッセルリンクじゃない」
そこに立っていたのはランスと最も親しい魔人…ケッセルリンクだった。
「まったく…追いつくのに苦労したぞ。また奇妙なアイテムを手に入れたようだな」
ケッセルリンクは苦笑いをしながら、100年程前に自分が使っていた椅子に座る。
「約100年ぶりか…尤も、お前にとってはそれ程間が空いていないのだろうがな」
「私達からすれば2ヶ月ぶりね」
スラルの言葉にケッセルリンクは微笑む。
「どうぞ」
「すまないな」
パレロアから渡された水をケッセルリンクは飲み干す。
「味が変わったな…何やら中身も変わっているが、色々あったようだな」
ケッセルリンクは自分も長い間使用していた魔法ハウスが大分変わったことに苦笑する。
「お前達が魔物将軍を倒した事と何か関係が有るのか?」
「なんだ、お前も居たのか」
ランス達はつい最近魔物将軍を倒しているが、それを知っているという事は、あの時にあの場に居たのだろう。
「ああ…尤も、私は本来はその周辺に出没するはぐれ魔人を探しに来たのだがな…お前の事だ、関わっているのだろう?」
「あの象の魔人か。やっかいな奴だったが、俺様の敵ではないわ」
「私達の時と同じように…無敵結界を解除させて倒したのか?」
ケッセルリンクは昔にランスと協力し、カラーの力の総出でオウゴンダマの魔人と戦ったことを思い出す。
(あの頃が…一番私が充実していた時期かもしれないな)
ただの一カラーとして、人間と協力として魔人を討ち取った…それこそがケッセルリンクの一番の誇りだ。
そしてその後に凶悪なムシと戦い、命を落としそうになった時、魔王スラルと出会い魔人となり…そして一度はランス達と別れ、スラルは魔王の血に飲み込まれ消滅した。
「変なガキが作ったアイテムで捕まえただけだ」
ランスは若干不満そうに答える。
実際、ランスとしても結局は無敵結界を破ることは出来なかったのは少し不満があった。
「…アイテムで捕獲、か。まあ世界は広い…お前が持っている剣と同じように、この世には不思議な事が多いものだ」
「違うのよ、ケッセルリンク。その子供が作ったアイテムなのよ」
「なんと…」
スラルの言葉にケッセルリンクは目を丸くする。
「魔人を捕らえるアイテムを作る…それは凄まじい事だ」
自分達でもそんな事は考えもしなかった。
その言葉が本当なら、ただの人間が魔人を捕らえる程のアイテムを作成出来るという事になる。
「しかしランスのように魔人とも渡り合え、あのような災害級の攻撃が出来るのであれば別におかしくは無いのかもしれないな」
確かにその人間の力は凄まじいが、ケッセルリンクも元人間の魔人であるガルティアの事も知っているし、何よりもカミーラとも渡り合っている人間…ランスを知っている。
そして新しく魔人となったレッドアイ…それを作ったのも元は人間だったと聞いている。
それを考えれば、人間にそれくらいの力を持つ者がいてもまったくおかしくは無い。
「その捕らえられた魔人はどうなった?」
「知らん。そいつのねーちゃんを治すために魔人を捕らえる必要があったんだと」
「姉を助けるため? 奇妙な話だな…が、お前がそんな嘘を理由も無いか。しかしそれを抜きにしても、お前が魔人を行動不能にしたのだろう?」
「当然だ。俺様以外にそんな事を出来る奴が居る訳がないだろう」
ランスの堂々とした言葉にケッセルリンクは笑う。
「当然と言い切るか…まあ私もお前と共に魔人…そして魔王スラル様と戦っていなければ信じぬだろうな」
「その事は言わないでよ…私自身としても不本意だったんだから」
ケッセルリンクの言葉にスラルが唇を尖らせる。
かつて一度魔王スラルは魔王の血に呑まれ、その破壊衝動を押さえる事が出来なかった。
そしてランスを無理矢理自分の魔人にしようとし…そして聖女の子モンスターであるセラクロラスによって阻まれた。
「で、ケッセルリンク。あなたは何しに来たのよ」
レダの言葉にケッセルリンクは苦笑する。
「いや…懐かしい友に会いに来たのだがな…そうか、お前達にとっては2ヶ月ぶりなのだったな」
「あー…そうね。私達の感覚と一緒にしちゃだめよね」
自分達にはたったの2ヶ月だったが、ケッセルリンクにとっては100年なのだ。
「それでだ…こういうものを用意したのだが、お前達もどうだ? 思えばお前達とは共に飲んだことは無かったからな」
ケッセルリンクが取り出したのは、一本のワインだ。
「カミーラから貰ってな…彼女が集めているだけあり、味は保障する」
「カミーラがか」
そういえば…とランスは思い出す。
確かにカミーラは赤ワインを好んで飲んでいたのを思い出す。
「カミーラのワイン…私も飲んだこと無いわね。今飲めないのが非常にもどかしい…」
カミーラの趣味の一つとして赤ワインの収集が有り、そのワインは魔王であるスラルですら飲んだことが無かった。
彼女に嫌われていたのも原因の一つではあるが、カミーラ自身己の好物であるワインを他の者に与えるなどありえない事だ。
何しろ気に入ったものすべてを手に入れる事が彼女の楽しみだからだ。
「まあカミーラとも付き合いが長いからな…恐らく私が一番カミーラに近しい魔人だろうからな」
「そう言われるとなんか興味が湧くわね…」
レダもあの魔人カミーラが収集していたワインとなると、興味が湧いてくる。
下界にいて長いため、大分人間達に影響されてきたなと思ったが今ではそれを疑問に思う事はなくなっていた。
「うむ、では飲むとするか」
「うーん…流石に美味しいわね。やっぱり下界に来て一番の楽しみはこうしたものよね」
エンジェルナイトも食事をするが、殆ど事務的に行われる。
自分のように下界に長く居ると、こういう俗物的な考えが起こるらしいが、それも無理は無いとは思う。
「ご飯も美味しいしお酒も美味しい…ああ…堕天しちゃいそう…」
あの魔人カミーラの赤ワインだけあり、その味は今までの酒とは全く違う。
「本当に美味しい…こんなに美味しいワインがあるなんて…」
パレロアもため息をつきながらそのワインに舌鼓を打つ。
「そうだろう。私も何度か味わったが、この味は格別だな。ランス、お前はどうだ」
「悪くない」
ランスは酒にはあまり強くは無いが、この赤ワインの味わいはまさに別格だった。
「ふむ…ランスは以外に酒は強く無いようだな。これは新しい発見だな」
新たなランスの一面を見て、ケッセルリンクは楽しそうに笑う。
昔のランスならばこれに激昂して無理に酒を飲んでいる所だが、過去にもランスは酒で痛い目にあっているため、自重するだけの理性を持ち合わせていた。
その理由はただ一つ、ランスとしても2ヶ月ぶりのケッセルリンクの体を味わうためだ。
それに、あのカミーラのワインは本当に美味で、ランスもそれをじっくりと味わっていた。
「で、お前は実際には何をしに来た」
「…分かるか」
ランスの視線にケッセルリンクは苦笑いをする。
付き合いが長いのはお互い様であり、自分がランスを分かっているように、ランスも自分の事を分かっている…それが彼女には嬉しかった。
「以前からお前に頼みたいとは思っていたのだがな…やはりセラクロラスの事も有るし、お前の負担になると思ったから言えなかったが…これだけの移動手段を手に入れたのだから、問題無いと思ってな」
ケッセルリンクはワインを飲み干すと、真剣な目でランスを見る。
「今のカラーがどうなっているか…お前の目で調べて欲しくてな」
「あん?」
彼女の言葉にランスは首を傾げる。
「なんで俺様に頼む。お前が行けばいいだろ。お前はカラーだろうが」
「確かにそうなのだがな…しかし、私やお前と面識のあるカラーは既にこの世には存在していないだろう。それに魔人である私がカラーに関わっては、カラーと人間の間に無用な緊張を与えてしまうかもしれない。それを考えると、カラーの事を知っているお前に頼むしか無くてな」
「うーむ…」
「それにお前もあれからカラーには関わっていないだろう。気にならないか?」
ケッセルリンクの言葉にランスは考える。
確かにあの時はランスは魔王によって魔王城へと拉致され、それからはカラーには関わる事がなかった。
「幸いにも魔王ナイチサはカラーには何の反応も示さないからな。今の内に少し調べておきたいんだ」
「俺様はこれからJAPANに行こうとしていたのだがな」
「構わんよ。今すぐにという訳でもないからな。お前がまたセラクロラスの力で消える可能性も高いからな」
「まあいいだろう。俺様も少し気になっていたからな。引き受けてやろう」
実際にランスの頭のなかにあるのはカラーの時期女王…自分の娘であるリセット・カラーの事だ。
未だにリセットは見つかっていない…ランスにはそれが気がかりだった。
「そうか…助かる」
ケッセルリンクは笑ってから再びワインを飲み始めた。
「がはははは! 早速依頼料を貰うとするぞ!」
「ふむ…別に構わんが。しかしこの部屋も変わったものだな…」
夜のランスの部屋…ケッセルリンクは久々に入るランスの部屋を見てため息をついていた。
天井にはリビングにあったような大きな明かりがついており、それは魔法の力以外のもので動いている。
ベッドも少し大きくなっており、殺風景だった部屋にも色々な装飾品が用意されている。
「これは…貝か。あれから増えたようだな」
「うむ、俺様もまだ知らない貝がたくさんあったからな」
ランスは本当に嬉しそうに答える。
ケッセルリンクもランスの趣味を知っているため、こうしてランスが己の趣味にかける情熱も知っている。
あのランスが持っているエロ以外の趣味なのだから。
「ぐふふふふ…それではとーっ!」
「まあ待て」
自分を押し倒そうとしてきたランスをケッセルリンクは力で押さえる。
流石のランスも魔人の腕力には敵わず、その動きを止められる。
「前から私はお前にいいようにされてきたからな…魔人としてそれはどうかと思ってな。だから今日は私がお前を満足させてやろう」
ケッセルリンクはランスを自らベッドに押し倒すと、その服を脱ぎ捨てる。
「おお」
ランスは服を脱ぎ捨てたケッセルリンクを見て思わず歓声を上げる。
「…変か?」
煌々と光る明かりの下、ランスはケッセルリンクが恥じらいから顔を赤くしているのがよく分かる。
何時もの服の下には、あのケッセルリンクが着ていると思えないほど過激な下着を身に着けていた。
大事な所が隠れていない、俗に言うエロ下着の類だ。
「がはははは! グッドだ!」
ランスはそんなケッセルリンクを見て上機嫌になる。
「まあお前が言うのであれば、お前に任せるとするか」
自分で好きなように動いて、女性を善がらせるのがランスのいつものセックスだが、こうしてケッセルリンクが上になるのであればそれはそれで十分楽しめる。
「うむ、任せるがいい」
そしてケッセルリンクは既に準備が出来ている自分の中にランスのハイパー兵器を迎え入れる。
「ん…ああっ」
「お、おお」
ケッセルリンクはそれだけで絶頂を迎えたようで、ランスもそれには驚く。
ランスの胸に手を置いて何とか倒れないようにしているケッセルリンクに、ランスはニヤリと笑いながら手を伸ばす。
そしてその大きな胸を鷲掴みにすると、ランスが下から勢いよく腰を動かし始める。
「ラ、ランス…」
その刺激にケッセルリンクは目を白黒させて、自分の胸を掴んでいるランスの手を掴むが、それでもランスの勢いは全く止まらない。
「がはははは! 全然ではないか!」
「わ、私は100年ぶりなんだ!」
「100年も俺様の事を考えていたのだろう! やっぱり今夜は俺様が好きにさせてもらーう!」
ランスはそのままケッセルリンクの腰を掴むと、先程よりも勢いよく腰を打ち付ける。
その刺激にケッセルリンクは己の体を支えるのも辛くなったのか、ランスの体の上に倒れこむ。
ランスはそのままケッセルリンクの背中に腕を回し、そのまま絶頂に向けて動き続ける。
ケッセルリンクもその刺激に少しは慣れてきたのか、ランスの首に手を回すと、そのままの体勢でランスと唇を重ねる。
上と下で濃厚な口付けをしながら、とうとうランスも限界を向かえる。
「行くぞケッセルリンク!」
「ああ…いつでも来るといい」
ケッセルリンクもそれを迎え入れ、そのまま2人は絶頂を迎える。
まだまだ余裕があるランスとは対照的に、ケッセルリンクは荒い息を必死に整えている。
「…情けないな。偉そうに言いながら、結局はお前にいいようにされてしまう。カラーだった時から変わらないな…」
思えば最初にランスと結ばれてから、ランスには良い様に弄ばれている。
それは決して不快ではないが、魔人となった今でもこうしてベッドではランスに良い様にされてしまう事に、ケッセルリンクは苦笑する。
ランスはケッセルリンクを抱き起こすと、今度はそのままケッセルリンクを下にする。
仰向けになっても型崩れしない見事な体にランスは手を回す。
「相変わらず良い体だな。100年経っても全く変わらんな」
「魔人だからな…だがお前も変わらない。昔のままだ…んっ…」
そのままランスの愛撫に身を任せ、ケッセルリンクは小さく声を上げる。
しばらくの間ランスの指と唇が自分の体を這い回ると、そのまま脚を大きく広げさせられる。
「がはははは! 今日はぶっ倒れるまでやるぞー!」
「私は朝には弱いが…まあ付き合うさ。存分にすればいい」
「言われなくてもそのつもりじゃー! とーっ!」
そしてランスは本当に次の日の朝までケッセルリンクの体を味わい続けた。
ムラムラしてやった
後悔も反省もしていない
カラーの歴史の中であるカラーの王国って実際何時ぐらいの時期なんでしょうね
詳しくは書いていませんから、ここは完全にオリジナルになります
でもまだまだ先の話になります
少し更新が遅くなります…今週と来週は本当に忙しいです