ランス再び   作:メケネコ

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地獄にて

 ランス達は走る。

 ただひたすらに走っていた。

 体力の無いエルシールを黒部が担ぎ、今ランス達は走って逃げている。

「うーむ、流石にしつこいぞ」

「そうね。無駄に数が多いわね」

 ランス達は今無数の鬼の群れから逃げている。

 理由は単純、これまで多数の鬼を倒しては来たが、そのあまりの数の前には流石のランス達も逃げる他無かったのだ。

 鬼は個としては魔物兵スーツを着た魔物の正規兵を完全に上回っている。

 そんな奴等が死を恐れず…いや、自らの死を望むように襲い掛かってくるとあっては流石のランスでもどうしようもなかった。

「頭が居ればそいつを殺せばいいのだが…」

「アレに頭が居るようには思えないわね」

 これが魔物兵ならば魔物隊長なり魔物将軍なりを倒せば瓦解するのだが、鬼にはその頭が存在するようには見えない。

 確かに纏め役のような鬼が居る事は居るのだが、それを倒しても戦意を喪失するどころか嬉々として向かってくる。

 そうなるとランス得意の一転突破の奇襲作戦も意味を成さないので、こうして鬼に見つからないように逃げているのだ。

「ランス! お前のあの技でどうにかできねえのか!?」

 エルシールの重さ等微塵も感じないように走っている黒部がランスに声をかける。

 最初に鬼と戦った時、ランスの放つあの圧倒的な威力を持つ必殺技ならば切り抜けるのは容易いとは言わないが、随分と楽になるだろう。

 確かに自分も巻き込まれて黒焦げになったが、それの文句を言う暇は流石に無かった。

「アレは私の方が持たないのよね。アレを使うと私の魔力が尽きちゃうのよ。まさに切り札だったんだけど…」

 ランスとスラルの合体技とも言うべきあの技は連発するのは現状では不可能だ。

 ランスの方は問題は無いだろうが、アレほどの威力を持つ魔力を制御するのは今のスラルでも難しい。

 何とかコツは掴んできているのだが、それでも魔力の消耗は段違いに高い。

「中々不便なもんだな!」

「問題は私なのよね。その内何とかしてみせるけど」

「そんな事言ってないで今は逃げるわよ! ランス! 前!」

 黒部とスラルの会話を遮りレダが声を上げる。

 レダの言葉通り、今ランス達の前には赤鬼と青鬼がまさに迫ってきていた。

「いい加減にしろ! ラーンスあたたたたーーーーっく!」

「「ぐぎゃーーーー!」」

 ランスは走っている勢いのまま己の必殺技で鬼をバラバラにする。

 鬼はただ首を刎ねただけでは死なない。

 だからランスは己の必殺技で鬼を粉砕することを選んだ。

 その目論見は見事に当たり、流石の鬼も体がバラバラになっては行動できない。

「あそこだ! あそこにいるぞ!」

「オウ! コンドハオレノバンダ!」

 しかしその音で鬼達が気づいたのか、鬼達が向かってくるのが分かる。

「数が多すぎるぞ!」

 流石のランスもこれほどの数の鬼が相手では疲れてきている。

 魔人ほど強い訳ではないが、それでも並みの魔物を遥かに上回る強さに加え、何よりもその耐久力が段違いだ。

 しかもここには体を休められそうな空間も無い。

「どうするの、ランス。一回退く?」

「むむむ…」

 レダの言葉にランスも悩む。

 ここまで辿り着くのに結構な時間がかかっているが、何よりも大切なのはやはり自分の命だ。

 ここで無理をするよりも、一度出直してもう一度挑戦しようかとランスが考えていた時、

「ここにいるぞ!」

 その声と共に一体の鬼が降って来る。

 緑鬼がその目でギラリとランスを睨むと、そのままその爪をランスに向けて振るう。

「雑魚が!」

 ランスはその爪を剣を使って受け流すと、返す刃で鬼の体を両断する。

「火爆破!」

 両断された鬼の体をスラルが間髪いれずに燃やしつくす。

 こうでもしなければ鬼は行動を止めることが無い。

「こっちだ! こっちから聞こえるぞ!」

「ギャハハハハ! ツギコソオレダ!」

 鬼の声と足音がドンドン近づいてくるのが分かる。

「ランス!」

「チッ! 仕方ないか」

 今の状況で鬼の相手は難しいと考え、ランスも帰り木を使って一度戻るべく手を伸ばした時、

「ランスさん! ここ!」

「何だ!?」

 エルシールの言葉に、ランスがその方向を見る。

「ここです!」

 エルシールの指差す方向に皆が視線を向けると、そこには一見分かりにくいが確かに道のようなものがあった。

 隠し通路とでも言えばいいのだろうか、そこには確かに道が存在している。

「ランス!」

「行くぞ!」

 レダの言葉に迷う事無くランスはその通路に飛び込む。

 その後に続いてレダと黒部も飛び込む。

「いないぞ!?」

「サガセ!」

 そして聞こえてくる鬼の怒鳴り声と、その鬼達がどこか別の場所に走り去っていく音が聞こえる。

 そこでようやくランス達は一息つくことが出来る。

「あーしんど…」

「大丈夫かよ」

「あなたはピンピンしてるわね、黒部」

「まあな」

 一番体力の無いエルシールは既にぐったりしており、その次に疲れているのがランスという有様だ。

 妖怪である黒部と、エンジェルナイトであるレダはまだ余裕が有りそうだった。

「しかし此処は何処なのかしらね」

 ランスの剣からスラルが体を出すと、そのまま離れられる限界の範囲までで周囲を見渡す。

「んー…これまでとは全く違う空気ね」

 ここまでは薄暗く、そしてまさに洞窟…と言わんばかりに岩が転がったりしていたが、ここは違う。

 整頓された道に、ここにはあり得ないはずの樹木がある。

 どのようにしてココに移したかは分からないが、この樹木はカラーの森にある木のようだった。

 大陸の西には独自に進化した樹木が、そしてこのJAPANにも独自に進化した樹木があるが、ここにあるのは大陸にある樹木だ。

「一体誰がこんな場所を…?」

 自分達がこの隠し通路的な所に入れたのもそうだが、どこが魔術的な要素が感じられる。

 今までで戦ってきた鬼は完全に肉弾戦オンリーだったため、鬼がこれをしたとは少し考え辛かった。

「どうしたスラルちゃん」

「ランス。ホラ、これ」

「む…何でこんな所に木が生えとるんだ」

 ランス達は全員が木を見上げる。

 この地獄には似つかわしくない物の登場には、全員が首を傾げている。

「…何故人間がここに居る」

 突如として聞こえてきたのは、これまでの鬼とは違った毛色の声だった。

 ランス達が声の方を振り向くと、そこには一体の鬼が立っていた。

「ヘッ…」

 その鬼を見て黒部が思わず口元に笑みを浮かべる。

 目の前に居る鬼は、これまで見た鬼とは違った容姿をしている。

 これまでの鬼は体が大きく、筋骨隆々の者が多かったが、目の前の鬼はそれに比べれば細身の体をしている。

 肌色に近い肌の左肩は白いプロテクターのようなもので覆われている。

 その頭部はまるでヘルメットのような物に覆われ、その隙間から鬼の証である角が生えている。

 そして最大の特徴は、まるで魔人カミーラのような翼が生えていることだ。

「何だコイツ」

「何だって…どう見ても鬼でしょ。ほら、角生えてるし」

 ランスとレダは何も慌てる事無く鬼を見る。

 こんな所にまで鬼が居るのは少し驚いたが、今まで散々鬼の相手をして来たのだ、何も慌てる様な事は無い。

「まあいい…人間! 俺の女房に手は出させんぞ!」

 鬼からとてつもないプレッシャーが放たれる。

「上等じゃねえか…」

 それを受けて黒部が一歩前へ出る。

 これまで何体もの鬼を倒してきたが、ここに来てこれまでの鬼とは一味違う鬼が出て来たことに、黒部は内心で喜んでいる。

 こうして何も気にせず思う存分暴れられる…久々の感覚に心が躍る。

「待て、黒部」

 それを止めたのは意外にもランスだった。

「ランス!?」

「フッフッフ…女房と言ったか。どんな奴かは知らんが、美女なんだろう」

「ああそうだ。俺の女房は世界で一番綺麗だ」

「がはははは! だったらお前を殺してその女房をいただきじゃー!」

 ランスは笑うとそのまま剣を構えて鬼に向かって突っ込んでいく。

「やってみろ! 人間! この天降鬼を易々と倒せると思うな!」

 鬼―――天降鬼は真っ直ぐにランスへと向かっていく。

「と――――ッ!」

 ランスも跳び上がると、そのままランスの剣と天降鬼の翼がぶつかり合い凄まじい衝撃波を生む。

「むむむ…」

「チッ!」

 互いに吹き飛ばされ、二人はそのまま睨みあう。

 この一撃だけで相手の強さをお互いに理解したのだ。

 ランスは見た目以上の相手の強さを、天降鬼は目の前にいる人間の強さを。

「あーあ、始まった」

「いいの、レダ?」

 それを少し距離を取った所でレダ達は見ていた。

 ランスがやる気を出した時からこうなるのではないかと思っていたが、まさに想像に違わぬ結果が今目の前で起こっている。

「いいのよ。ランスの事だから、その相手の妻に自分の強さをアピールするつもりなんでしょ。相手の妻がどんな人物かも考えないで」

「…そうよね。鬼の妻だものね。一体どんなのが出てくるか」

 ランスは『妻』という言葉から、既に相手の女性が美しい女性であるという事を信じて疑っていない。

 まあランスらしいと言えるが、傍から見ていたらやっぱり馬鹿だ。

「大丈夫なのか? あの鬼、結構やりそうだぞ」

 黒部も既に腰を落ち着けて二人の戦いを見ている。

 彼としては自分があの鬼と戦ってみたいと思っていたが、その前にランスが前に出てしまった。

 まあこうしてランスの強さをじっくりと観察出来るのなら、それはそれで十分だった。

「まあ大丈夫じゃない?」

(本当に危ないなら私が出るし)

 レダはランスならばあの鬼に勝てるだろうと思っている。

 ランスの剣の腕前は本物であり、仮にも自分ともう一人の同僚であるエンジェルナイトを倒す程の強さなのだ。

 そして理由は不明だが、この過去の世界に来てからランスの剣の腕が明らかに大きく上がっている。

 さらには順調に上がっているランスのレベルを考えれば、あの鬼にも十分に勝てるだろう。

「でも鬼も色々な種類がいるのね。プラムズゴーストを養殖しようとしていた鬼といい、これまで戦った鬼といい、この鬼といい…私が魔王だったら1体くらいスカウトしてたかもね」

 スラルは己の魔人を作るのに慎重に慎重を重ねて魔物と人を見てきた。

 それでも作ったのはガルティアとケッセルリンクであり、候補として見ていたランスとレダには断られてしまった。

「だからこそ知りたいのよね…何で鬼という存在が生まれたのか、そしてどんな役割を持っているのか」

 スラルは己の強い探究心を自覚している。

(だからこそ私は…私は何をしたんだっけ。どうしてもそこが思い出せない)

 スラルが再び己の頭にかかった霧を振り払おうとしている間に、ランスと天降鬼の戦いに変化が訪れる。

 睨みあっていた二人だが、まるで示し合せた様に互いに突っ込んでいったいのだ。

 ランスは意外と細身だが、その腕力は見た目からは想像できない程高いし、そして何よりもその迷いのない剣から放たれる一撃はまさに必殺。

 完全に我流の剣術ではあるが、その腕前は恐ろしい程鋭い。

 

 ガッ!

 

 ランスの剣と天降鬼の翼がぶつかりあうが、そこには先程のような衝撃波は発生しない。

 今度は二人は距離を取る事はせずに、真正面からぶつかり合う。

 天降鬼は鬼という種族にしては細身の体だが、その力はまさに他の鬼と何ら変わらない。

 その腕は恐ろしい程高い力を持ち、その拳を受けたランスが思わず後ろに下がらざるを得ない程だ。

 それを好機と捉え、天降鬼が己の武器である翼でランスの首を狙うが、ランスはそれを最小限の動きで捌いて見せる。

 そして返す刃で天降鬼の腹部を狙うが、天降鬼もそれを己の翼でやり過ごす。

「…どっちもやるじゃねえか」

 黒部はそれを見て少し面白くない顔をする。

「どうしたんですか? 黒部さん」

 エルシールがそれを見て黒部を見上げる。

「いや…やっぱり俺がやりたかったなってな。ランスの奴も俺とやった時も本気じゃ無かったかみたいだしな」

 黒部にとってはそれが一番不満だ。

 勿論ランスが手を抜いていた訳では無いのは分かっているのだが、それでも今更ながら不満が出てくる。

「そう言わないで。ランスはアレよ。何か目標となるものがあって初めて本気を出すタイプよ。黒部の時は明確な目的…身も蓋も無い言い方をすると、ご褒美が無いから黒部との戦いもある意味本気じゃ無かったんでしょうね」

「まあランスの行動の一番は女だしね」

 スラルとレダがうんうんと頷き、エルシールもそれを見て大きくため息をつく。

 ランスが女好き…というよりも女しか好きじゃないのは事実だが、この中で自分よりも遥かに付き合いの長いレダとスラルの二人に言われるのだから筋金入りなのだろう。

(それでも…あの人なら何とかしてくれる…そんな気にさせられるのも事実ですけど)

 魔人との出会い、神らしき存在との出会い、そして妖怪、鬼との出会い…全てがエルシールのこれまでの人生ではありえない事が立て続けに起きている。

 だが、それはそれで退屈とは無縁の世界だ。

 最も、命がいくつあっても足りる気はしないのだが。

「全くよ…俺相手にもアレくらいしやがれってんだ…」

「あら、黒部。嫉妬かしら?」

「バ、馬鹿言うな! そんな訳ねえだろ!」

 レダのからかう様な言葉に黒部は犬歯を剥き出しにして唸る。

 それを見てもレダは笑みを消さずに黒部の横に座る。

「私もさ。最初ランスと敵だったのよね。まあ色々あって今は一緒に居るけど」

「お前がか?]

 レダの言葉に黒部は少し意外そうに目を見開く。

「そうよ。だからランスが負ける訳無いでしょ」

(私を殺さないで捕らえるくらいだしね)

 今でも忘れられない、自分がただの人間に真正面から敗れたという事実。

 エンジェルナイトである自分がランスに負け、さらにその場で犯された。

 あまつさえ自分はもっとして欲しいとさえ思ってしまった。

(ランスはその時よりも大幅に強くなっている…)

 自分の目から見ても、今のランスの強さは人というカテゴリーの中でも異常と言ってもいい。

 長い歴史の中ではランスよりも強い人間は居ただろうが、自分が知る限りではランスは間違いなく最強の人類の一人だろう。

 まるいものの中でも最強種であるオウゴンダマを断ち切り、ドラゴンをも倒し、そして魔人カミーラのブレスすらも切裂く。

 だからこそ、ランスはあの鬼には負けないという確証がある。

 その証拠に、徐々にではあるがランスが天降鬼を押し始める場面が多くなってきた。

「がはははは! いい加減に死ねーーーっ!」

 ランスの剣を天降鬼は何とか避ける。

 ランスはその避ける先を予想するかのように天降鬼へと肉薄する。

 そして腹部を狙って剣を突き刺そうとするが、天降鬼はその翼を使って何とかランスとの距離を取る。

「チッ! やるじゃねえか…」

「フン、もうお前など敵ではないわ!」

 ランスはそのまま天降鬼へと向かって突っ込んでいく。

 普通に考えればただ無鉄砲に突っ込むだけに見えるが、天降鬼にはそうは感じられない。

(この人間…本気でつえぇ…)

 天降鬼も腕には覚えのある鬼ではあるが、まさか人間がここまで強いとは考えてもいなかった。

(この前地獄に来たっていう人間並かもしれねえな…)

 地獄に人間が現れるのは何も今日が始めてではない。

 つい最近地獄に来た人間が、ある秘宝をこの地獄の管理者より授けられたという話は天降鬼も聞いている。

 天降鬼はその時は地獄にいなかったため、その人間には会っていはいないが同僚に聞いた話と全く同じだ。

(だがよ…こいつが女房を狙うってんなら退けねえな!)

 この男は危険すぎる人間だと天降鬼の本能が告げている。

 実際に自分の女房を狙うなど、断じて許されることではない。

 だからこそ…

「倒す!」

 天降鬼は決して退くわけにはいかない。

 全ては自分の最も大切な人のために。

「がはははは! 死ねーーーーー!」

 ランスは飛び上がると、そのままの勢いで剣を振り下ろす。

 天降鬼はそれを寸前で避けるが、その衝撃波は確実に天降鬼の体力を削っていく。

 その衝撃波だけで天降鬼の体が悲鳴を上げるが、今がまさに好機だった。

(ここで倒す!)

 体が悲鳴を上げているため、自身の腕力では相手を完全に倒すことは出来ないかもしれない。

 だが、鬼である自分にはより自慢の武器がある。

 それが自分の頭頂部にある鬼の証である自慢の角であり、己の切り札だ。

 勢いよく剣を振り下ろしているランスの姿は隙だらけで有り、今ならば倒せるとその角をランスに突き刺すべく、その頭部を振り下ろす。

 

 ガッ!

 

「な、何だと…!?」

 その時非常に堅い何かが天降鬼の頭部に当たる。

 それが何なのかに気づいたのは直ぐ後だ。

(まさかあのタイミングで俺の頭に剣の柄を合わせるだと…!?)

 天降鬼の角を防いだのはランスの剣の柄だ。

 恐るべき勢いで振り下ろされた天降鬼の一撃に合わせて、ランスはその柄でその頭を防いだのだ。

 天降鬼は思わずよろめくが、体勢を立て直してランスとの距離を取る。

 そして直ぐに来るであろうランスの一撃に備える。

 その一撃に対抗するために、己の翼に力を込める。

 改めてみても相手の強さはまさに異常だ。

 だからこそ、自分が相手に勝つには一撃必殺のカウンターに賭けるしか最早手段は無かった。

「………」

 しかし予想に反して相手からの一撃は来ない。

 男は確かに自分を睨み、そしてその顔には笑みさえも浮かんでいる。

 そして男は自分の前で剣を横に構える。

(来るか!)

 相手の一撃が来るのを察し、天降鬼は構えを取る。

「がはははは! こいつで終わりだ!」

 ランスは剣を構えると、そのままその場を動かずにランスアタックの要領で剣を抜き放つ。

 以前に象バンバラの魔人であるコーク・スノーとの戦いの最中に、相手に近づけぬ時のために新たな技を開発しようとした。

 ランスの性格上、やっぱり面倒になって一度その技の開発を放り出したのだが、それがラ・バスワルドとの戦いで再燃したのだ。

 確かにスラルとの連携の技は強力であり、その範囲も非常に広いのだが連発する事が出来ない。

 だからこそ、相手に近づかなくとも攻撃を出来る手段があってもいいとランスは改めて考えた。

「ラーンスアターック!」

 普段のランスアタックとは違い、横に薙いで放たれたランスの一撃は普段のランスアタックのような広い範囲ではなく、鋭い一撃となって天降鬼に襲い掛かる。

「うお!?」

 その一撃を天降鬼は己の羽で何とか防ぐ。

 が、その一撃で天降鬼の羽が傷つきボロボロになる。

「へぇ…ランス、何だかんだ言っても必殺技の開発をしてたって訳ね」

 レダはランスが放った一撃を見て意外そうに目を見開く。

「スラルは知ってたでしょ?」

「まあね。ランスは不満そうだったけどね」

 ランスが求めているのは相手を一撃で倒せる力だ。

 自分の必殺技であるランスアタックの一撃で相手を倒せないのが不満で、さらなる必殺技を開発する男だ。

 なので今回の事はランス自身でも不満に思っているだろうが、それでもあっさりと実用化させるのはやはり才能なのだろう。

「ランスの野郎…やっぱり俺の時は全力じゃ無かったんじゃねえか」

「抑えて下さい、黒部さん」

 黒部はランスが自分相手に本気ではなかったと知り、さらに不満そうな顔になる。

 それをエルシールが宥めるが、黒部は唸り声を上げるだけだ。

「がはははは! こいつで止めだ!」

 ランスが天降鬼に止めを刺すべく走り出す。

「あー…そろそろ止めるか」

「そうね。流石にこれ以上はね。エルシール」

「は、はい! 粘着地面!」

 エルシールがスラルの合図に合わせて魔法を放つ。

 するとランスの足元がぬかるみ、ランスはそれに足をとられてその場に倒れる。

「こらーーー! お前ら何のつもりだ!」

「まあ…流石にいきなり相手の女房を襲うつもりなのはなあ…」

 黒部はランスをぬかるんだ地面から引っ張ると、そのままランスが動けないように押さえる。

「おい黒部!」

「あのね、ランス。私達は別にこの鬼に何か恨みがある訳じゃないでしょ」

「まさか私達の目の前でこの鬼を殺して、その妻をレイプするとかそんな事考えてないわよね」

「むぐ…」

 スラルの視線に流石のランスもたじろぐ。

 シィルやかなみや志津香やマリアといったランスに近しい者の視線に近いものを感じたのかもしれない。

「あなた!」

 その時女性の声が響く。

「来るな!」

 その声を聞いて天降鬼が全身に力を込めて立ち上がる。

「止めて下さい! これ以上主人には手を出さないで」

 満身創痍といった天降鬼を守るように、その女性はランス達の前に立ちふさがる。

 その小さな体を精一杯に広げ、必死の形相でランス達を涙目で睨む。

 そんな女性を見て、ランスは驚いたように目を見開く。

 その女性は確かに美しい女性だ。

 ランスからすれば間違いなく手を出すレベルの美女ではある。

 その女性の一番の特徴は、その額にある赤く輝くクリスタルだ。

 今ランス達の目の前で天降鬼を守るべく立ちふさがっているのは、間違いなくカラーだった。




今更ですが新年あけましておめでとうございます
今年の一話なのですが、大分遅れてしまいました
忙しかったという事もありますが、病気にかかって少し間寝込んだりと個人的に大変でした
何とかペースを上げていきたいと思いますので、どうか宜しくお願い致します
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