「小町ほんとにココに居なきゃ駄目~?」
「そりゃ四人じゃなきゃ麻雀にならんしな」
俺たちはこたつの板を裏返して麻雀牌を並べていた。年末年始だけは家族で麻雀を打つので、俺も小町も一応は打つことが出来る。まぁ、俺はゲームでもやるけど。
「小町ちゃんが居ないと困るんですよぉ~」
そう言うのはこの麻雀大会の企画者である神野めぐみ。俺は彼女の要望で妹と、東京都足立区にある住宅にやって来ていた。めぐみは正面、小町は俺の右に座っている。
「そう! そうだよ! 小町ちゃん可愛いよ!」
小町が可愛いのは当然だが、この少女もなかなかの美少女だった。俺の左に座っている。
「いや、この娘の方が可愛いでしょ……誰なの」
「この御方は……いやこの少女はな、いろいろな理由があって家の外に出るのが苦手なんだ」
「へ~。お兄ちゃんみたいだね」
「そういう次元じゃないの。学校も行ってないの」
「あー、そうなんだ」
「それでな、めぐみは彼女が学校に行けるように努力してるんだ。今回のもその一環というわけだ。どうだ、協力してあげたいだろ?」
「くぁ~。お兄ちゃんは依頼となれば全部全力なんだから。まぁそういうところ嫌いじゃないけど。今の小町的にポイント高いなぁ~」
「おう。だから負けないようにな」
そう言って、俺はめぐみと目配せをする。当然だが、小町には本当のルールを教えるわけにはいかない。
めぐみは彼女を、和泉紗霧と仲良くしたい、学校に連れていきたいというのは本当だ。ではなぜ麻雀なのか。
簡単だ。麻雀といえば脱衣麻雀だろ。
この和泉紗霧は、なんとあのエロマンガ先生なのだという。あの転生の銀狼のイラストレーターの。
そして彼女はイラストを描くために美少女を生で見たいのだという。もちろん我が妹はめちゃくちゃ可愛いので、ぜひ生で見たいと。できれば下着姿を。
そんなの無理に決まってると思ったので拒否するつもりだったのだが、イラスト付きサイン色紙が貰えるということであっさり俺はめぐみに協力することを決めた。
脱いでくれとはとても言えないので、脱衣麻雀をする流れに持ち込んだというわけだ。
それが愛する妹が脱衣することになるかもしれないとしてもだ……。いや、正直問題ないだろ。だって見るのが男だったら話は別だよ? めぐみとそのお友達の少女が見るだけでしょ。
「まーじゃん、がんばる」
紗霧ちゃんは両手に握りこぶしを作っていた。しかしまぁこの子が麻雀が上手いとはとても思えない。余裕だろうね。大体俺とめぐみは共闘関係だ。通しサインだって出来る。
「つも。ろくせんおーる」
……つえ~。
はっきり言って紗霧ちゃんはめちゃくちゃ強かった。
こうなったら、バレバレでもいいからめぐみに振り込もう。脱ぐのは最下位だけだ。俺が最下位になれば問題ない。
「小町ちゃん、うへへ……どんな下着なんだろ……」
「ひいいっ!? お兄ちゃん、なんかこの子、小町を見る目が怖いよっ?」
「すまん、小町。この子はお前の下着姿の絵を描きたいんだそうだ」
「ええー!? 小町聞いてないよ!?」
悪いな小町。お前は麻雀で負けたら脱ぐんだよ。ってどんなクソ兄貴だと思うけど、さっきも言ったとおり見るのは女子だから別によくね?
「逆に言わせてもらうが、麻雀をする際にどんなルールなのかちゃんと聞かなかった小町、お前が悪いんだ」
「え、ええー!? お兄ちゃんは小町の下着姿を見たいの!?」
ははは。そういうアホなことを言い出すのも想定通り。
「安心しろ、小町。兄貴は妹の下着で興奮したりしない。えっちな気持ちになんかならない」
「ぐふーっ!」
突然に紗霧ちゃんは突っ伏した。どしたのわさわさ。俺は小町に言ったんだけど?
「ちょ、ちょっと今のセリフで、だ、だめ~じが」
なぜか紗霧ちゃんは薄い胸を抑えていた。
今のセリフでなぜダメージを? 兄貴にエロい目で見られたい妹なんかいるか?
「いや、そういうことじゃなく小町は下着姿をお兄ちゃんになんて普通に見られたくないんだけど……めぐみちゃんもヤダよね?」
「えっ!? あ、あたしは~、おにーさんが見たいんだったら、見せてもいいかもです♡」
めぐみのやつ……他の友達がいても俺をからかおうとしとるな。現状では紗霧ちゃんをエロい目で見ているなんてことになったら俺はおしまいなので、ここはきっぱりと言っておこう。
「大丈夫だ。男子高校生が中学一年のお子様をエロい目で見ることもない」
「ぐはーっ!」「ぐふーっ!」
めぐみだけではなく、紗霧ちゃんもダメージを受けていた。なんで? 俺にエロい目で見られたいの? そんなわけねえよな……。
「め、めぐみちゃんくらい可愛くてえっちでもお子様扱いなんて……」
「そんなことないよっ!? 和泉ちゃんだって可愛くてえっちだよっ!?」
「ちょっと、お兄ちゃんのせいで美少女たちがお互いを変に励ましあってるよー? どうすんの」
え? 俺が悪いの?
三人共が俺をジト目で睨んでいた。セクハラをしたならわかるが、それを回避してこうなったのは理不尽だろ……。
「はっ、勝てば良いんだ勝てば」
「うわー、みんなを裸にしてやろうとかゲスいよー、やだよこんなお兄ちゃん」
「じゃあ、負けてやろうか。お前らみんな俺の裸を見ろ」
「うわー、気持ち悪いよー、最悪だよお兄ちゃん」
絶望した! どうあがいても絶望した!
「小町ちゃん、脱がす」
紗霧ちゃんは戦意を回復したようだった。
「小町ももう本気で行くよ」
小町もなぜかやる気になったようだ。
「脱いで、おにーさんを興奮させます!」
めぐみだけは負けようとしていた。なんだこいつ。ここで興奮したら俺の人生終わりだよ? 絶対に負けられない戦いがここにある。
――二時間後。半荘を四回終了。
俺と小町とめぐみが上着を脱いで、めぐみが二度目の負けとなった。
「負けちゃいましたねっ」
「なんで嬉しそうなんだよ」
「わくわく」
名誉のために言っておくと、わくわくしたのは俺ではなく紗霧ちゃんだ。
彼女はもうサンタクロースからのプレゼントを開ける間際のように両手の握りこぶしをぶんぶん振って目をキラキラとさせている。
「じゃあ、よいしょっと」
「おい、なんでもうスカートに手をかけるんだ」
上着しか脱いでない状態でもうスカートを脱ぐというのはおかしい。まぁシャツを脱いだらブラが見えてしまうだろうが。普通は靴下を脱ぐだろ。
「だって、おにーさんは靴下を最後まで脱がさないって言ってたじゃないですか」
「ぶふーっ!」
妹がいるのになんてこと言っちゃってくれてるのこいつ!
「ごみいちゃん……」
「見るな。俺を見るな」
「わかる! 靴下はじゅうよう」
紗霧ちゃんからは同意を得たが、嬉しくはない。
「でも、さきにぱんつを脱ぐのはどう?」
紗霧ちゃんは謎のアドバイスをした。まぁでも脱いだぱんつを俺に見せる必要はないから、賢い選択なのかもしれない。ぱんつを脱いでもスカートを脱いでいなければ実質何の意味もない。確かにそうだ。
「でも、おにーさんはぱんつもずらしたり、ひざに引っ掛けるタイプだって」
「おおおお……おおお……」
人をからかえば穴二つ。まさかそれを実妹の前で暴露されるとはね。
小町はもはや何も言わなくなってしまった。くっころ。
「小町ちゃんのおにーさん、その話詳しくおしえて」
「勘弁してください……」
セクハラをされているのは俺なんじゃないかと思えてくるね。
結局めぐみはスカートを脱いだ。シャツでぱんつは隠れているから見えない。べ、べつに見たってお子様のぱんつなんて興奮しないんだからねっ。
「おにーさん、そんなにあたしの脚、気になりますぅ?」
そうだね、正面だから見えづらいよね。
「めぐみちゃん、せくしー」
紗霧ちゃんからはよく見えるようですね。そこまで羨ましくはないけどね。
「ごみいちゃん……いや、クソゴミ。それ、チー」
「待って、それはやめてくれないかなー。ただの中傷はお兄ちゃんつらいなー」
捨て牌ですら出しにくいな―。チーすらしたくないと言わんばかりに嫌われてるなー。それにしても対面に座ってる人の太ももは見えにくいなー。
「あ、それポンです」
俺の捨て牌を取ろうとめぐみが腰を上げる。シャツの下の部分からちらっと脚が見えた。
「うわ~、ラッキーチャンスでしたね、おにーさん。食い入るように見ちゃってまぁ♡」
「そ、そこまで見てないし?」
「おい、クソゴミ、さっさと捨てろ」
「ちょっと!? 今のセリフは本当に小町なの? 俺が悪かったの? 百万回死んで生まれ変わるから許して小町?」
いまだかつて見たことがない表情の妹は、なんだかんだでその後振り込んでしまい、点棒がマイナスとなって飛んだ。
「小町……」
「わくわく。小町ちゃん、楽しみ」
「いや、小町は普通に靴下を脱ぐんで」
普通に靴下を脱ぐだけなのに、なんで俺を睨むの?
次の半荘はめぐみが負けたが、シャツを脱ごうとした矢先に小町が「靴下が先」とだけ言って全員が無言で従うという結果に。
いよいよ夕方になり、そろそろ帰りたい雰囲気を醸し出した頃。
「小町ちゃんの、下着みたい」
「ん~、別にモデルならいいですよ?」
「え?」
俺たちの存在理由が速攻で消し飛び、小町は紗霧ちゃんの部屋で小一時間ほどモデルをこなして解散となった。俺たちの苦労は何だったの?
「おにーさん、ほんとに中学一年のカラダには興味無いんですか~?」
「ねえよ」
「っていうことは、こうしたり、こうしても?」
「ね、ねえって」
「こーんな風にしたりこーんな風にしてもですかー?」
エロマンガ先生、うちの妹なんかよりこいつのほうが絶対、えっちなイラストの参考になると思うのですけど……?
妹が戻ってきたとき、俺は救世主だと思ったがそれは勘違いだった。俺を罵るならともかく、両親に謝るのはやめて欲しいですね? 俺は被害者なんですよ? とりあえず撮影をやめて?
いつもとちょっと違うかもしれない、紗霧をゲストに迎えてみたお話です。
どうかな~、ちょっとニーズと違いますかね?
正直なところ、このシリーズは要望が無ければヤメちゃう感じなので、忌憚のないご意見を募集いたしまーす。