からかい上手になりたい神野めぐみ   作:暮影司

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※からかい上手の高木さん2最終回のネタバレを含みます。


夏祭り

「夏祭り、誰か誘ってくれないかな♡」

「おお、行くか?」

 

うちわを仰ぐ手を止めないままに即答したところ、非常に不機嫌そうな表情になったのは神野めぐみ。俺は千葉市で彼女は足立区なので、今はビデオ通話中だ。

 

「なんでさらっと誘ってくれちゃってるんですかっ。ぼっちでコミュ障のくせにこういうときだけ」

「いや、だって誘ってくれって言ってるようなもんだろそれ」

 

そう言いつつも、こいつのやりたかったことはもうわかっていた。

からかい上手の高木さん2でやってた告白の回を見て真似をしたいと思ったのだろう。西片はよく頑張って夏祭りに誘ったと思うが、俺がめぐみを誘うのになぜ勇気を振り絞る必要があるんだ。戸塚ならまだしも。

 

「もぉ行く気なくなっちゃいましたよっ」

「じゃ、やめるか」

「嘘ですっ! 行きます! 連れてってくださいっ」

 

まったく素直ないい子だな。俺と違って。こういうところは可愛いんだよなあ……。

 

ここまでがアポイントの話で、今は夏祭り当日、夕方5時。

とは言ってもクソ暑いし全然日なんか傾いてない。セミもうるさいし帰りたい。なんで誘ってしまったんだ……。ちなみに携帯を忘れてくるなんてドジは当然しない。

 

駅の改札を抜けるとすでにめぐみは待っていた。ま、向こうは電車に乗る必要もない地元民だ。先に着いているのは当然の礼儀と言えよう。

それはいいが、おっさんから「可愛いね」などと話しかけられて手を振りながら「ありがとー」などと返してるあたりカルチャーショックを覚える。なんなの、あいつはアイドルかなんかなの?

確かに彼女の浴衣姿はとびっきり似合っていて、イタリア人なら声をかけるのが当然という感じだが、日本人でも言っちゃうレベルなのかしらん。

白い浴衣に朝顔の柄、赤い帯にポニーテール。どっからどうみても偽ビッチとは思えない清楚可憐なお嬢様だ。こいつの隣に俺がいたら通報されないかな……。

 

「あ、おに~さん!」

「よお」

 

下駄をからころさせて近づいてくるめぐみ。こりゃ浴衣を褒めないわけにもいかないが、俺が女の子をうまく褒めるとか超無理なんだよなあ。

 

「すごい! 浴衣すっごく似合ってるじゃないですかっ!? 黒くて大人っぽくてめちゃくちゃカッコイイですよっ!?」

 

褒められなくて困っていたら褒められてしまった。俺なんかにこの美辞麗句がスラスラでてくるとは、これが本物の陽キャなのか……コミュ力があるなんてもんじゃない、化け物だよ。化物語だよ。やれやれ。

 

「いや、大したことないだろ」

「大したことありますよっ! もともとカッコイイとは思ってましたけど、今までで一番カッコイイですよっ!? 夏祭りに誘ってよかった~。あ、違った、誘われてよかった~」

 

思わず手で顔を覆う。こいつはからかおうとしてくるときはド下手くそだが、普通に素直に話してるときはこちらが恥ずかしくて仕方がない状況に陥る。またこれが本心だって丸わかりなところがより照れくさい。まごうことなき本音なんだよなあ。

後頭部を掻きつつ、歩きだすとめぐみはとててっと前に行って案内を開始した。

 

ぺちゃくちゃと延々と喋っているめぐみの話を適当に聞きつつ、神社へ向かう。

神社で行われる夏祭りにしてはかなり大規模であるようだ。マジで人が多すぎるだろ……。

 

「んっふふ~。ほら」

 

手を差し出すめぐみ。ま、手をつないでおいた方がいいだろう。暗くなってきているし、この混雑では確実にはぐれる。携帯は持ってるけどな。

 

「あいよ」

「ちょっと!? 少しは恥ずかしがってくださいよぉ~っ」

「はぐれると面倒くさいからな」

「ん~っ、も~っ」

 

ぶんむくれながら握ってる手をにぎにぎしてくるさまは大層可愛いのだが、それは言わない。さすがにそれを言うのは恥ずかしいからな。

 

「で、どのお面買うの? プリキュア? オヨルンの? 買ってやろうか?」

「なんで疑問形と思わせつつほとんど決まってるんですかっ!? いりませんよっ、子供じゃないんだからそんなのもう見てませんっ」

「ええ……むしろ大人になってから見始めたと言ってもいいんだけど」

「どっちにしろお面なんかいりませんよっ」

 

お面を欲しがると長門っぽくていいのに……ってこいつと長門は似ても似つかないが。真逆と言っても過言じゃないから欲しがらないのが正解なのか。

 

「や~っぱりぃ~、りんご飴ですかね~♪ あ、でもでもおにーさんはチョコバナナの方が嬉しかったり~? もう、このえっち!」

 

おいおい絶好調だな。別にチョコバナナ程度でエロいことなんか考えねえよ。

むしろりんご飴の方がエロいような気もするがな。俺はりんご飴はほとんどりんごなので評価しない。飴というならもっと甘くあるべきなんだよ。コーヒーもな。

あんず飴と看板に書かれた店には、りんご飴とあんず飴の他にみかん飴とすもも飴が売られていた。

 

「まぁ、俺はすもも飴買うけどな」

「えっ、えっ、じゃああたしも」

「おじさん、すもも飴を2つくれ」

「毎度! 可愛い彼女だね~」

「そっすね」

 

受け取ったすもも飴をめぐみに渡そうとすると、わかりやすく照れていた。なんでだよ、さっき駅ではアイドル並みの返ししてたのに。

 

「可愛い彼女っていうの、思っててくれてたんですねっ」

 

すもも飴を顔の近くに見せながら、すももより頬が赤くなる。つまりあれか、こいつはおっちゃんの可愛い彼女だねっていうセリフではなく俺のそっすねという肯定に対して照れているわけか。どんだけ純情なんだよ。

思わずがぶりと大きめにすもも飴をかじる。甘酸っぱいなあ、まったく。

 

「おにーさん、そろそろ手を離しませんかっ」

「やだよ」

「えっ、えっ、それって」

「お前わざとはぐれようとしてんだろ。面倒くさいからね?」

「ちえ~~~~っ」

 

にこにこ笑ってるときより不貞腐れてるときの方が魅力的な人間もいるんだな。雪ノ下が不機嫌だと最悪なのにね?

 

「あ~っ、あそこ! 金魚すくいで勝負しますよっ」

「いや、金魚貰っても困るし。やらね」

「そしたら一匹しか捕れなかった小さな子どもにあげればいいじゃないですかっ」

「お前、どんだけ高木さん好きなの? たこ焼きをあーんしてやれば満足なの?」

「結局あーん出来ないのがいいんですよっ」

「いや、それくらい普通に出来るし……」

 

ここまで熱烈に再現したいならしてやってもいいかなと思い始めてきたよ。むしろ、おもむろに将棋を始めて勝ったら告白するまでやってもいい。

 

「じゃあ輪投げするのか」

「そうですね~、かんざし欲しいですし」

「それは言っちゃ駄目なんじゃね?」

 

輪投げなんて本当にあるのかと思ったが、存在していた。まぁろくなものが貰えなさそうだが。

 

「じゃあ勝負ですよっ」

「ああ」

 

まぁ、見回りの先生が来ないから俺の勝ちだな。

 

一つ目はハズレ。

二つ目が五点か。

三つ目は……。

 

「比企谷。随分と若い彼女だな」

「うわーっ!? 平塚先生!?」

 

なんでここに先生が!? とはいえ残念ながら平塚先生にサービスショットは発生しません。

それにしても輪投げ勝負の途中で先生がやってくるとかいうレアイベントなのになんでここだけ再現されるんだよ! 強面の男教師よりはるかに怖いんだけど!?

大体、千葉ならまだしもなんで足立区に?

 

「淫行じゃないだろうな」

「とととと、とんでもない」

「しかし、若いなぁ~」

「ははは」

「なんだ比企谷。そんなに若くない私が滑稽か」

「滅相も有りません」

「ふん……」

「平塚先生こそ、なんでこんなところに」

「甥っ子がこっちでな。なんせ結婚してないし子供がいないから甥っ子が可愛くて可愛くて仕方ないんだ」

 

それでか。平塚先生は焼きそばやたこ焼きではなく、ベビーカステラだの水風船のヨーヨーだの似つかわしくないお子様向けのアイテムで手が埋まっていた。誰か、誰か早く貰ってあげて!

 

「え~っ、誰ですか~? この綺麗な女の人~? 先生なんですか?」

 

突然やってきた美人教師に対しても余裕で話しかけるコミュ力おばけ。

 

「平塚だ。比企谷の高校の教師をやっている」

「神野めぐみで~っす♪ わ~、高校にこんな美人教師がいたら男子がほっとかないでしょぉ~?」

「ぐふうっ」

「同僚の教師とか生徒のお父さんからもモテちゃいそうですよねっ」

「ぐはあっ」

「あ、でももうとっくに彼氏さんがいますよね。美人さんですもんねっ」

「……比企谷」

 

平塚先生はライフがゼロになったらしい。褒めちぎってる相手に怒ることも出来ないし、相手は子供だし、否定するのも悲しいし、と完全に打つ手なしだ。なんかごめんね?

 

「めぐみ、お前の番だぞ」

「あ、そうですねっ」

 

めぐみには輪投げをさせておくことにした。平塚先生の心のケアをしないとこのままではあまりに不憫だからな。

 

「あー、美人の平塚先生」

「なんだ。見え透いた慰めなど通用しないぞ。ぐすっ」

 

メンタル弱ぇ~。よくぞここまでやってくれたな、神野さんめぇ~。

 

「えーっと、ところで先生は浴衣じゃないんですね」

「なんだ、見たかったのか比企谷」

「ま、まあそうですね。目の保養はいくらでもしたいですよ、目つき悪いんで」

「ふん、おべっかなんか使いやがって。……まぁ嫌な気持ちはしない。せいぜい若い彼女とよろしくやれよ、じゃあな」

 

本当に彼女だと思ってるのか、そうじゃないと思って冷やかしているのかわかりずらいな……。ま、どっちでもいいか。平塚先生は綿あめやらかき氷やらを甥に渡す義務を果たしに行った。幸あれ。

 

「あ、おにーさん! 輪投げ、あたしの勝ちですよっ」

「ああ。そう。おめっとさん」

「ちょっとぉ!? 負けたんだから悔しがってくださいよっ?」

「神野さんめー。これでいいか?」

「くゎ~っ、全然面白くない」

「はいはい。景品は?」

 

おっちゃんが用意していたおもちゃは三種類だった。対して選べないし、本当に安っちいものばかりだ。

当然かんざしなんか無し。ま、そんなもんだよな。そんなもんだよ。

 

この中で選ぶとしたら、これしかないか。嫌だなぁ。

 

「おに~さんっ、ちょっと手を出してください」

 

この先も想像がつくんだけど。

 

「ちょっとっ!? 入んないんじゃないですかっ!?」

「こんな子供向けのおもちゃの指輪が男子高校生の薬指に入るわけないだろ……っていうかなんで結婚しようとしてんの?」

「けっ、けっ、結婚っ!?」

「なんで面食らってるんだよ。そういうことだろ、これ」

 

指輪の交換の真似事なんかしやがって。それこそ平塚先生に見られたらどうするの? 命が危険だよ?

 

「小指にも入らないー」

「泣きそうな顔をするな」

「だってぇ~」

 

こういうガキっぽいところには弱いんだよなあ……お兄ちゃんスキルが発動しちゃう、悲しい性。

 

「ほら、お前の小指にはぴったりだ」

「えっ、えっ? くれるんですか?」

「そりゃ俺がおもちゃの指輪持ってても意味ないしな……」

「恋のおまじないのピンキーリング……」

 

なにそれ。そういうのわかんないんだけど。サイズ的に他の指には入らないから小指に入れただけなんだけど。

 

「お前のくれた指輪は、財布にでも入れておくわ」

「……」

 

普段クソやかましい女がこういうとき黙るのズルいよな……。

 

「線香花火買いに行くか?」

「……はいっ♡」

 

 





密かにいるという噂の、から神ファンの皆様お待たせいたしました!

このシリーズについてはもうファンサービスに徹していきたい所存なので、感想次第で何でも書きますよ~。たぶん、きっと、おそらく。

いや、正直山田エルフちゃん登場させてとかは書くの超むずいと思うから避けたいけど。

しかしうっかり平塚先生を登場させてしまいました。作者はロリコン小説書いてるけど、平塚先生とか京香さんは好きですね。「エロマンガフラーッシュ!」

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