「おにーさん、今度学校で二人羽織をするから練習相手になってください♡」
「嘘だな」
「なっ!? なんですぐに嘘だっていうんですかーっ!?」
「いや、そりゃ二人羽織をするのに本番と違う奴と練習してどうすんだよ」
二人で行うものを別の人間とおこなって練習になるものかよ。ちょっと考えればわかるだろ。二人羽織ってなんとなく体が密着するからからかえるなとか思っただけだろ。
「相手は紗霧ちゃんなんです」
「む」
そう言われると弱い。彼女は一緒に遊んでいたときは元気に見えたが、基本的に家から出ることすら出来ないという。じゃあ本番を行うこともないだろう、と切って捨てるのはいささか胸が痛む。
「わかったよ、断ると夢見が悪いからな」
「そう言ってくれると思いましたよっ、優しいおにーさん」
手玉に取られている感があるが、やむを得ない。
そもそも休みの日にわざわざ足立区から千葉までやって来ている相手にさっさと帰れとはさすがの俺も言えない。
「さて、おにーさんは前からしたいですか? それとも後ろから?」
まーたそういう言い方をして俺をからかおうとしているのか。やれやれ。
「俺は上に乗って欲しいけどな」
「う、うえっ!?」
「騎乗位……ごほんごほん、えっと騎乗位っていうんだが」
「咳払いの後で言い直すのかと思ったら、そのまま言った!?」
俺のカウンターアタックはかなりの攻撃力だったらしく、神野めぐみは目を
「ま、冗談はともかく。どっちでもいいぞ」
「むー」
むくれた。そっちは仕掛けてくるくせにこっちがするとそれだもんな。でも、別に俺の心は痛まない。どっちかというとほっこりするね。だってほっぺたを膨らませてるだけだし。
「じゃ、じゃあ最初は後ろから包み込んであげますよっ」
大きめの羽織に袖を通し、カーペットの上に正座する。
めぐみは俺の後ろへ。で、腕を前に……
ぽいん
うん。わかってた。当ててくることはわかってた。むしろしてくれなかったらふざけるなと思うくらい。でも、実際にしてもらうとありがたすぎて困るな。
「あ、当たってるぞ」
「当ててるんですよっ♡」
わかってるけどな。やっておかないといけないお約束ってやつだな。
「あれ、箸は?」
「箸はアブナイってことで使わないんです。大福が載っているお盆を持ってください」
「ほーん」
これか。大福が三つほど置いてある。
「これを俺が持って待つのか」
「そです」
普通に両手で持つとへそのあたりにお盆がくる。
「じゃ、行きますよぉ~」
首筋に息がかかって、ぞくりとする。
背中に当たってる膨らみももぞもぞと動く。
そしてめぐみは俺のへその辺りの方へ手を動かし……
「あ、やわらかい。これかな、ふにふに」
大福よりもやわらかいものを軽く揉まれる。ズボン越しなんだから手触りでわからないものかね。なんというか気持ちいいと言うより不安。強く握られたらどうしようという生殺与奪権を握られたことによる恐怖。
「……違う、もっと上だ」
「もうちょっと上? え、でもこれ凄く硬いですケド」
「ううっ!? そ、それじゃ、ない」
「なんですかコレ」
「い、いいから握るな」
この世には知らないほうが幸せなことも多い。言う必要はあるまい。
どうやら背中の感触によって硬くなっていたようですね。
「も、もっと上だ」
「うーん、あ、これがお盆か」
「そうそう」
「さっきのお盆より硬いものは一体……」
「それはもういい、忘れろ」
お盆より硬いは言いすぎだろ。わざと言ってるんじゃないだろうな……
疑問に思ってる間にようやくめぐみの手が大福を掴んだ。
「あ、これですね」
「そうそう」
「えいやっ」
「……お前わざとだろ」
めぐみは勢いよく俺の頬に大福を押し付けた。
「んふふっ」
心底愉快そうに笑った。くそ、怒れないじゃねーか。
「もうちょっと下だ」
「えいやー」
「目はやめろ、目は!」
大福の粉が目に入るのだけは絶対に許さん。っていうか位置が上がってるから。あと背中に当たってたものが肩に当たってるから。それはいいけど。全然いいけど。もう粉が目に入っても許しそうだけど。
「この辺かな~」
「そうだよ。……食ったぞ」
「どーでした?」
「けっこう美味い」
「いや、そーじゃなくて! 二人羽織の感想ですよっ」
「あー、そっちか。気持ちよかったぞ」
背中と肩もそうだが、やわらかいものと硬いものを触ってもらったのが特に。なんて絶対に言わないけどね!?
「……気持ちよかった?」
当然の疑問だった。そもそも気持ちよかったことを言ってはいけなかった。でも他に感想なんかないだろ。
「あー、なんつーかあれだ。あんまり人に食わせてもらうことってないからな」
我ながらナイスなごまかしだ。
「あはは、おにーさんが言ってくれれば、いつでもあーんしてあげますよっ?」
「お、おう」
あぶねー。俺の硬いものをあーんしてくれるかと思ってしまった。いかんいかん。
「じゃあ、交代ですねっ」
「あいよ」
デカ目の半纏みたいなものを羽織って、後ろから抱きつく。うっわー、小さい体だなぁ……。
「……俺じゃ駄目か?」
「は?」
「いや、ちょっと言いたくなって言っちゃだけだから忘れてくれ……」
若い女の子にオヤジギャグ言っちゃうおっさんって悪気がないんだろうな……。なんか言わずにはいられないというか……。
「で、大福はどこにあるんだよ」
「おへそのあたりです」
うーん。これか? 豆大福かな? ふにょふにょしてるけど、柔らかすぎる気もする。なんか触ってるうちに豆が大きくなってない?
「そ、それはっ、ち、違いますっ。だ、だめ、もう触らないでくださいっ、ひうん♡」
……なんだったのかはわからないほうが良さそうだ。この世には知らないほうが幸せなことも多い。(二度目)わざとじゃないからね?
手を下に落とすと、普通に腕に触れたので、そこからつたって大福にたどり着いた。粉にまみれているので間違いようなどない。間違いようないじゃん!?
大福を掴むと、俺は手をそのまま上に。顔にポニーテールが当たる。否が応でもいい匂いが鼻から流れ込んでくる。シトラスやらミルクやらフローラルやらが混ぜこぜになった、女の子の匂い。くらくらする。
「あのー、口の前で止まってるんですけど~」
「は?」
それでよくね? 何言ってるの?
「それじゃウケないじゃないですかっ!?」
「そういうやつなのかよ……」
なんだ、勝ちに行くやつじゃなくて笑いを取るやつかよ。っていうかじゃあ尚更俺と練習しても意味ないだろ。
「ぱふぱふ」
「ちょっと!? 大福はファンデーションじゃないんですけどっ!?」
大福でほっぺたをポンポンしたら、なかなかの好リアクションだった。
「こういうことか?」
「そですっ! もう勝ったも同然ですねっ!」
いや俺は出場しないけどな。エロマンガ先生はこんなことしないと思いますよ?
ま、なんにせよ練習は終わりだ。こんなときくらい甘いコーヒーより緑茶が飲みたくなる。
「じゃ、お茶淹れるわ」
「あ、ありがとーございますっ」
「こちらこそ、ごちそうさまでした」
「? 大福のことですか?」
豆大福のことだよ……とは言えないな……。
あー、やっちゃったね。
もう、ライトないちゃいちゃというよりエロくなっちゃったもんね。
こいつは読者離れ不可避です。
よって最終回とさせていただく所存(ほんとに続き書いてって言われるとやめられないのよ。なんかR-18のエロマンガ先生のSSも一年前に書いたのに続き書いてって今更言われたのに書いちゃいそうなのよ、ほんとマジで)