からかい上手になりたい神野めぐみ   作:暮影司

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お花見

夜中にいきなりさ、今何してるかも気にせず着信。

君とは、つい最近も話したばかりなのにどうしたの。

 

「おにーさん、お花見行きましょうよ♡」

「あー、無理。花粉症だから。桜の」

 

どうも、初音島に行ったら憤死する属性の俺です。

俺の最大の敵は桜なんだよ。戦争といってもいい。これが本当のサクラ大戦なんですよ。

たとえそれが、くしゃみと目のかゆみとの戦いであっても、俺は一歩も引きません! それが比企谷八幡なんです!

 

「ええー!? 桜の花粉症なんてあるんですか? スギならわかりますケド」

「あー、スギもなんだわ」

 

スギもダメなんて、ワイルドだろ~?

ワイルドな俺は家から一歩も出たくない。

 

「そんなこと言って、家から出たくないだけなんじゃ」

 

勘のいいガキは嫌いだよ……?

だいたい、花見なんて何が面白いんだよ。

海やプールなら水着。初詣なら晴れ着など、衣服チェンジがあるイベントなら需要はあるだろうが。

大人はわかるよ?

ありゃ宴会するための言い訳だから。なにか理由がないと一緒に遊びにも誘えない大人たちが、桜が咲いてるから花見だ、一緒に酒のんで騒ごうやと。

つまりは口実なんだよ。ただの。

そういうイベントなわけで、酒も飲めない俺たちにメリットはない。

それでも神野のようなリア充であれば、一緒に盛り上がるパーリーピーポーの知り合いも多いだろう。

 

「俺なんかより、もっとウェーイなやつらと行けばいいだろう」

「もう行きましたよ! 楽しかったです」

「ああ、そう……じゃあもういいだろう」

 

初詣も花見も年に一回行けば十分だろ。

なんで俺なんか誘うんだか。

 

「おにーさんをどこかデートに誘うのに、いい口実だと思いまして」

「ぐぬ……」

 

なんでそういうこと平気で言っちゃうの?

口実っていうのは口にしないものなんだよ?

 

「あたしは理由なんていらないんですけどぉ~。先輩が欲しいんじゃないかなって」

「俺は理由なく断れるんだけど?」

「桜の花粉症とかいうすぐバレる嘘までついてたのに?」

 

はいはい、負け負け。

どうせこいつにゃ勝てないよ。

神野めぐみなら、どんな引きこもりが相手でも、いつか外に連れ出せる気がするね。

 

――次の週末。

俺はわざわざ都内の荒川河川敷までやってきていた。

 

「いやー、わざわざありがとうございますっ!」

「まあな。桜が散る前にいかなきゃならんしな」

「そうですねっ!」

 

いつもより神野めぐみはガーリーだった。

ガーリーというのはガーリー・エアフォースとは特に関係なく、なんか女の子っぽいという意味だ。女の子なんだから女の子っぽいって意味わからんが。

デニムのジャケットに、白いブラウス。花がらのスカート。まさに春のコーデという感じ。

 

「え? そんなにカワイイですか?」

「何も言ってないんだけど?」

「ふふ。おにーさん、目がハートになってますよ?」

 

え?

ハート様に?

俺の目が「いてえよ~」とか「ひでぶっ」とか言ってるの?

 

「おにーさん、またいつもの腐った目に戻ってますよ?」

 

そう言いながら、自然に腕を取るのやめてくれる?

こいつ最近、ぐぐっと色っぽさが増しているんだよなあ……。俺以外の誰かも、きっとそう思っている自信があるんだよなあ……。

 

「んふふ~。またハートに戻った。おもしろ~い」

 

パチスロかな? 俺の目はCRやはり俺の青春ラブコメはまちがっているじゃないのよ?

ポニーテールをまとめるリボンはいつも柄が違っているが、今日の桜柄は非常に愛らしく、本物の桜よりもこの揺れる髪とうなじを見ていたいと思わせる。いっそヘブンズ・フィールの間桐桜を思わせるまである。いや、いくらなんでもそこまで色っぽくはないだろ。あれは異常。

てくてくと歩いていると、めぐみは俺から腕を離してとててっと前に出て、こちらをむいて両手を広げた。

なに? 空が広がるの? ヒーローガールなの?

 

「ほら、ここから桜がよく見えますよっ?」

 

ほーん。

確かに、木ノ下までいかずとも、ここから川沿いに多くの桜が眺められる。

広がるスカイな神野めぐみの後方にな。

 

「ま! 桜はあたしに夢中になりすぎて見えないかもですけどッ!?」

 

べ、べつにそんなことないんだからねっ!?

春の女の子っぽい格好の女の子から、春っぽい女の子の香りがして花より女子(おんなご)とか思ってるわけじゃないんだからねっ?

この思考、実況の遠藤くんと解説の小林さんが見てたら恥ずかしさで死ぬな……。

 

「ほら、こうして河川敷の上から、ず~っと見える桜を見るだけでも、ステキじゃないですかっ?」

「そうだな……」

 

本当に花を見ているだけ。

騒ぐわけでもなく、歌うわけでもなく。酒も飲まず、メシも食わず。

大人数ではなく、たった二人で、遠くから桜を眺めるだけ。

本物の花見っていうのは、こういうことなのかもな。

土手に座ると、きらきらした川の水面と、桜の花びらを運んでくる風が心地よかった。

確かに、日本に生まれて桜が咲いているというのに、一人で家に引きこもってるのは勿体ないかもしれないな。

穏やかな気持ちになっていたら、突然めぐみがくねくねしながら、頭をぐりぐりし始めた。

 

「でもおにーさんが一人だったら、ただの不審者ですけどねッ。お花見じゃなくてお花覗き見です。お花ストーカー。きもきもきも~」

 

なにこいつ? イジってるの? 何瀞めぐみなの?

 

「まー、おにーさんはあたしが一緒にお花見してあげるっすよー!」

 

なにこいつ? ウザい後輩なの? 何崎めぐみなの? 胸は{SUGOI USUI」けど?

なんか参考にしようとしてるキャラを増やしすぎて迷走してないか?

今さら、二人でデートしてるのが恥ずかしくてごまかすためにキャラを演じてるわけでもないだろうしな……。

 

「なんですか?」

「いや……」

 

なんというか、俺が求めているのは、こういうめぐみじゃないというか。

からかい上手でも、イジってくる後輩でも、ウザい後輩でもない。

もちろん、コミュ障のめぐみでもない。

そんなものは、神野めぐみではない。

 

「普段のおまえってどんな感じだっけ」

「え? ん~っと。隣にいるのがサイッコーにカワイイあたしでよかったですねっ。おにーさん♡」

「ああ。いいな。うん。それがいい」

「え? えっ?」

「いつもの神野めぐみが、俺はいいと思う」

「いや! いやいや! いつもそんな自分カワイイキャラじゃないですけどっ!?」

「そうか?」

「そうですよぉ~ッ」

 

このやかましさがちょうどいい。

一人だけで花見としても十二分に賑やかだ。

二人も三人もいたら、やかましくって仕方がないだろう。

 

「花見は、めぐみと二人でするのがいい」

「~~~~ッ!?」

 

顔を真っ赤にしてから手で覆う彼女を見て、俺は何を言っていたのかに気づいた。

 

……たまには、静かに桜を眺める花見もいいかもな。

 

 




久しぶりすぎてよくわからね―ッ!?
せめて新しい俺ガイルのゲームをプレイしてからにすればよかったか!?
これでいいのか?
これで大丈夫ですかーッ!
また★1評価が増えてしまうのかーッ!?
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