「始まりました~、神野めぐみの、スーパーめぐみんちゃんねる~♪」
おいおい、なんか始まっちゃったんだけど?
「ぱちぱちぱちぱち~」
お前も手をたたけ、みたいな感じでウインクしてきてるけど?
もちろん意味わからないんですけど?
「待て待て。いきなり何を始めちゃってるの?」
「え? もちろんYouTubeですけど、なにか問題でも?」
「なにそのおぎやはぎみたいな反応。問題しか無いだろ」
「はぁ~」
露骨なため息を吐いて、ピカピカのiPhoneを触る。一旦録画を停止してくれたようですね。
「こういうのはノリでヤっちゃえばいいんだからさ~。ここまで来て興ざめするようなこと言わないでほしいんですよね~」
なにそのセリフ。普通のビデオ撮影かと思ったらだんだんエスカレートしてきたことに文句言ったみたいな感じ。
え? 俺、今からセクシービデオデビューするの?
「まさかとは思うが、そういう動画に出てないだろうな……」
「なんですかそういう動画って」
「いや……というかなんでYouTubeやってんの。今やるならTikTokじゃねーの。知らんけど」
「やってますけど」
「やってるんだ……」
「当たり前じゃないですかっ」
「当たり前なんだ……」
まあ確かに。やってないわけない気もするな。
「で、YouTubeもやってるんだな」
「やってますよ! っていうか、見てないんですか? あたしのYouTubeを?」
見てねえよ……っていうか知らねえよ。
「おにーさんってキモオタすぎてVTuberしか見てなさそうですもんね」
「ちょっと? 息を吐くように問題発言するのやめてもらえる?」
センシティブなテーマについてアップデートできてないんじゃない? 繊細な話題を迂闊に言えない時代なんだよなあ……。
「まー。あたしもパンチラ目当ての視聴者しかいませんケド」
「お、おま、パンチラしてんの!?」
「どうでしょうね~? 見たかったら、チャンネル登録よろしくお願いしまーす」
……チャンネル登録数すごそうだなこいつ……。
「それはそうと、一体何をしようとしてたんだ?」
この神野めぐみという女の子は、基本的にウェーイなアレなので、こちらの都合とか考えずにやってくる。
人の部屋に入ってきていきなり撮影を始めるとか非常識すぎるだろ。
ちゃんと説明してほしいところですね。
「なんだと思いますぅ~?」
UZEEEEEEEEEEEEEEE!
両手を後ろに組んでお尻フリフリ煽り顔ウゼえええええええええええ。
高木さんはそこまで煽った顔しねーから。
しかしながら、こういう態度が似合ってしまうのがコイツなんだよなあ……なんでコレでかわいく思えるのか……。
「当てたらパンチラ見れるかもですよぉ~↑↑」
しょうがないちゃんと考えるか……。べ、別にパンチラとかはどうでもいいけどねッ!?
しかし普通のユーチューバーって何やってんだっけ? VTuberしか見てないからよくわからないな。
「あれか? 今流行の回転寿司屋で迷惑行為か?」
ユーチューバーといえば迷惑行為だよな。うんうん。コレに違いない。
「いや、違いますし……おにーさんの部屋ですし」
「あっ……ですよね……」
本気で呆れた顔するのやめてもらえる?
真面目に答えた結果なんですけど?
しかしそうか、俺の部屋でやれることね……。
「あー。男子高校生の部屋でえっちな本を探してみたー。みたいな」
「あっ、いいですねソレ! やりましょうっ!」
「待って、俺のアイデアで俺を苦しめるのやめて?」
「自分で言っておいて……」
むーっとむくれるめぐみ。
持ってる本の女の子が、年下ポニーテイルばっかりだとバレたらヤバいんだよなあ……。
「えっとだな……なんだ、お前のことだし、年上男子をからかってみた。とか?」
「んふふー。ほとんど正解ですっ」
両手で丸をつくるめぐみ。カワイイつもりなんだろうが、それだと紙パック式のでかくて安い日本酒のCMなんだよなあ……。
「しかし、なんだ。いいのか俺なんかが一緒に映って」
好きなユーチューバーの女子を見てたら男が出てくるとか、軽くトラウマもんだろ……。彼氏いないはずのVTuberがクリスマスイブとバレンタインの配信しないのと同じじゃない? ショックなんだよなあ……。
「男の子もいっぱい出てますよ。あたし友達いっぱいいるんで」
「あ、そう……」
「おっ。じぇらしー」
「ちげーよ」
「そうですか? ふふっ」
俺はプライド高いぼっちなので、友達が多いことに嫉妬などしない。ぼっちちゃんにも感情移入しない。
「まあ、いままでのは友達ですけどねー。今回はカレシかもしれない雰囲気を出してアピールしていきますよっ」
「ねえ、それ俺の安全大丈夫そ? 夜道で刺されたりしない?」
「引きこもりのくせにそんな心配するんですねー」
こりゃ一本取られたぜ。
俺だって夜道くらい歩く。妹にアイス買ってこいって言われるとか、妹からポテチ買ってきてって言われるとか、妹に肉まん食べたいって言われたときとかな。
「じゃ、撮影再開しますねっ?」
なにがじゃあなのかわからないが。
iPhoneが録画を始めちゃってる。了承してないのに進行されるんだよなあ……。
「さて、今回の企画は自分のことを好きかもしれないと勘違いした非モテ男子を観察して遊ぼう、でーす」
うん、ほとんどあってたけど、俺より辛辣なんだよなあ……。まあ、ユーチューバーなんてみんなそんなもんか。
目薬と間違えてラー油を渡してみたとか、どの指を折るのが一番痛いか悲鳴の大きさ測ってみたとかよりマシだと思っておこう。
「おにーさん、どうですかー。今日の服装は」
めぐみの今日の服装は、白いブラウスにピンクのベスト。そして白い短いスカートだ。はっきりいって一色が着てそうだなと思った。あざとかわいいファッションだな……。
「そうだな……トゥースって感じかな」
そのあと鬼瓦して、さらにカスカスダンスしちゃうまである。
「なんですかそれー!? 恥ずかしがってヘンなこというのやめてほしーです!」
ぷん、ぷん。
グーにした手をひとつずつ、頭にのっけて、おこのアピールだ。
一色が裸足で逃げ出すあざとさだな、こいつ……。
「目がとっくにハートになっててメロメロなのはわかってるんですからね!」
なにそれ、催眠アプリ?
俺、そんなことになってんの? インターネットの海に放流しちゃまずくないですかね。
まぁ、細くて活動的な脚が眩しいとは思いますけどね……。
「おにーさん♡」
「お、おう……」
自分のベッドに二人で座ってるときに、左手をぎゅっと両手で握られる。
あのさあ……俺だから平気なものの、普通の男だったらもう好きになってるからな?
世の中の男は本当にチョロいんだから。
「これ、テロップとか入るの?」
「完全に好きになってる、本当にチョロい男……みたいな感じですかねっ?」
「ほーん」
根も葉もないテロップ。なるほどねー。こうやってユーチューブ動画が作られていくわけか……。
「それにしても顔、赤すぎるんですけど? それだとテロップつけるまでもないんですよね」
「あまりにも撫ですぎなんだよなあ……」
「おにーさん、運動部でもないのに結構がっしりした手ですね? 男っぽーい♡」
「よし、このドン・ペリニヨンってやつを頼もうかな」
「ドンペリはいりまーす!」
べー。うっかりドンペリ注文しちゃったよ、べー。めぐみキャバクラは危険すぎる。
「今度はこのポッキーを食べさせてあげます。はい、あーん」
「あーん」
マジでキャバクラなんじゃないか……?
好きかもしれないというより、ここはキャバクラなんじゃないかと思わせてるんだよなあ……。
「と思わせておいて、ちょっと食べちゃう~」
「あっ」
俺がポリポリ食ってるポッキーの、逆サイドをパクっと食べた。
うっかりキスしちゃう可能性のない、瞬間ポッキーゲーム状態。
「……」
「おにーさん? どうしちゃったんですかぁ~? 目が泳いでますよ~?」
くっ……。
「いや、あのさ。これ、自分のことを好きかもしれないと勘違いした男って企画だよな」
「非モテ男子です」
「そこはいいでしょ……」
「あははっ。ですよね? おにーさんはちょっとモテますもんね?」
「……」
「冗談ですよ、冗談!」
「失礼なんだよなあ……」
「それで、企画がどーしたんですかっ?」
「いや、好きかもしれないっていうか、キャバ嬢にしか思えなくないか」
「えー? キャバ嬢って好きかもしれないって勘違いさせるのが仕事じゃないですかっ」
「……なんかすまん」
こえーよ。この女子中学生こえーよ。天性のキャバ嬢だよ。
「でも~? 企画がちょっと違うっていうのはそうかもですね」
「え? そうなの?」
「はい。勘違いっていうところが違うかもです」
「え? それって……」
「あははっ。おにーさん、いい表情してるぅ~! 100万再生されるかもですね!」
「え、いや、え? え?」
普段のユーチューバー神野めぐみ、どんだけ再生されてるの……?
こえーよ。神野めぐみ、こえーよ―!
みなさんやってますか、俺ガイル完のゲーム。
八幡プレイしてると、八幡を書きたくなる。あると思います。