ISてぃーちゃあ〜   作:BlueRider

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第壱零時限目~ボーイ・ミーツ・ガール・アンド・てぃ~ちゃぁー

海開きが始まり、海の家等が開店しだすこの時期のビーチに海水浴客に混じり一人の赤い人が海から上がる。

 

背中には『最強』のロゴが書かれ、大量の魚を入れた網を担ぎ砂辺をトボトボと歩く。

 

何故彼がこのような事をしているかは、一時間前のバスの中まで遡る。

 

―――――――

――――――

―――――

 

「え、一人分足りない?」

 

2組のバス内で通話しながら、生徒達に混じりトランプをする

 

「ああ、どうやら旅館の手違いらしい、寝床は何とかしてくれるみたいだが料理は無理みたいだ」

 

「それは……一大事ですね」

 

綾瀬の手札からカードを引き、物の見事にババを引き当てる。

 

―ここに来て、またババかよ

 

次の綾瀬の番で厳島からカードを抜き二番手で抜ける。

 

「そこでだ、赤城……着いたら海で軽く漁をして来い」

 

「はい?」

 

厳島との差しでの勝負、手札二枚を良くシャッフルし厳島の前に差し出す。

 

「聞こえなかったか?自分の飯は自分で確保しろと言ったんだ」

 

「………」

 

厳島はババを引くことなく、この戦いに幕を降ろした。絶望のあまり口が開かない、そんな彼に追い討ちを掛けるように千冬の一言が突き刺さる

 

「返事はどうした?」

 

「サー!イエッサー!」

 

ほぼ聞いてはいなかったが、半ばやけくそで答えた

 

―――――

――――――

―――――――

 

「これくらいあれば明日まで大丈夫だろ」

 

―素手で魚を捕るのがコレほど難しいとは……俺もまだまだ、鍛え足りないと言うことか?

 

軽く構えジャブを打ち、自らの拳をしばらく見据え作業へと戻る

 

借りた七輪でお湯を沸かしながら、粗末なテーブルに置いたまな板で魚を下処理する

 

「まぁ魚はいいとして」

 

うねうねと動くそいつ等に目を向け、空を仰ぎ見る

 

「タコどうすっかな………」

 

青年よ、タコは油へ投げ入れるものじゃ

 

ふと、誰かの声が聞こえた気がした。

 

「油……ねぇ」

 

さよう、人それを油鍋と言う…ウラーラーラー

 

もう一つの七輪に鍋をセットし並々とサラダ油を投入、両手にタコを握り締め油が暖まるのを待つ

 

「あちぃ…… 真夏に俺は何をしてんだか、油へトュウ!」

 

沸々と油が煮えたぎる鍋へ投げ入れられるタコ二匹、飛び散った油に七輪の火が引火し、豪快に火柱を上げ燃え上がる鍋

 

「さて、湯が湧いたようだから魚を鍋に入れて煮込むか…」

 

―誰かは知らないが俺、ちゃんと教えは守ったぜ

 

「あっかぎ~ん」

 

「ん?綾瀬か、どうした?」

 

「いや~何となく来てみた」

 

青と赤のストライプ、比較的健康体、胸は鈴音よりはあるか

 

「赤城先生」

 

「何だ厳島も来たのか」

 

ほむ、布の面積が無い、つかヒモ?ヒモじゃないか?日焼けした体に、箒、セシリア並の豊満な胸、できる限り綾瀬を見ながら会話をしよう

 

「あっかぎ~ん災難だったね」

 

「まぁ、運無いのは元から知ってたからな」

 

「分かっていれば、私の方で用意出来たのですが」

 

「いいんだよ、最近あんま運動してなかったんだ、丁度いい」

 

燃え上がる鍋から素揚げのタコを救出し煮えている鍋へ投入

 

「さて、飯の準備は終わったし俺も合流するか、それでは乗り込め~^^」

 

「「わぁい^^」」

 

先ほど来た道を戻ると

 

「あ、赤城先生」

 

こちらに気づき手を振る一夏がいた。

 

そんな彼に肩をもみながら歩み寄る。

 

「遅いぞ馬鹿者」

 

「仕方ないでしょ?軽く漁行ってきた「赤城様」

 

「く、クラリッサさん来てたんですか」

 

背後からの声に思わず驚く

 

―あぁ、だから1人足りないのか

 

「赤城先生~」

 

「おお、どうしたデュノア」

 

唐突に投げられるボールをキャッチし、指先でクルクルと回す

 

「バレーか……いいセンスだ」

 

「それでチーム分けなんですが……」

 

数分後コートにて

 

「何故こうなった…アンドリバース」

 

チーム分けは、一夏、鈴音、セシリア、ラウラ、デュノア、仮にチーム名をつけるなら

 

「一夏ラバーズ」

 

「?赤城何か言ったか?」

 

「いえ、何も」

 

対するこちらは、俺、千冬さん、クラリッサさん

 

「数が圧倒的に足りない気がするんだが?」

 

「何を言う、貴様は1人で3人分の力だろう」

 

そんな俺の問いに、ラウラがそう答えた

 

「んなに力ねぇよ!」

 

俺の全力否定空しく、皆一様に心の中で、『確かに……』と頷き首を縦に振る

 

「納得してんじゃねぇよ」

 

「まぁ、いいではないか」

 

「そうですね、多すぎるのもどうかと思います」

 

「んじゃ始めますか、先行は?」

 

バレーボールを指先で回しながら確認する

 

「赤城先生からで」

 

「了解」

 

頷くや否や、バレーボールを高く放り投げサーブを放つ

 

「「ジャ…ジャンピングサーブ!?」」

 

バシン!と放たれたビーチボールは弾丸のような速さで一夏達のコートに打ち付けられる

 

「うっし!まずは一点」

 

この時一夏ラバーズは思った……『なぶり殺される』と

 

「赤城様!」

 

クラリッサから絶妙なタイミングでトスが上がる

 

「おっしゃ!ふぅぅ、もっふ!」

 

強烈なバックアタックが一夏ラバーズのコートに突き刺さる。赤城に打たせてはならないと悟り、赤城以外の注意を少しでも疎かにすると

 

「千冬さん!」

 

「ふん!!」

 

高いトスが赤城から上がり、それに合わせ千冬の正確なスパイクが決まる。

 

「さらに得点は加速した」

 

こんな三人相手に点など取れる訳なく惨敗。勝負うんぬんの前にチーム分けの時点で勝敗は決していたのだ

 

「なんつうか……すまん…」

 

「いえ、お構いなしに」

 

「では、二戦目は赤城1人で我々2人が一夏達のチームに入る事にするか」

 

「ヴェ∑(OwO)!」

 

「そうですね、それで丁度同じくらいかと」

 

「いやいや!俺どんな基準ですか!」

 

「何せ背中に『最強』と書かれてるくらいだからな」

 

キラリと光る背中の『最強』の2文字

 

―俺が入れたんじゃないっす

 

「はぁ……わかりましたよ、じゃ、二戦目開始しますか」

 

「「おー!」」

 

楽しい時間はあっという間に流れ、夕焼けを眺めながら皆旅館へと戻り始める。教師陣達は生徒確認を終え、しばし、部屋でつかの間の休息

 

「あいたた……」

 

そして、俺は遊びに遊びまくった反動が完璧に腰に来ていた

 

「赤城先生大丈夫ですか?」

 

浴衣姿の一夏が部屋に戻ってくる

 

「大丈夫じゃ…ぬぇ」

 

畳にうつ伏せになりながら腰をさすっていた

 

「だらしないな馬鹿者め」

 

「誰でもこうなりますよ」

 

―10試合もすれば…

 

「赤城様、湿布を貼りますか?」

 

「いや、塗るタイプ塗ったからしばらくはいいか………な!」

 

ズブシ…と一夏が良かれと思って背中を押すと

 

「おいぃ!馬鹿!止めろ!」

 

俺の過剰な反応にニヤリと笑う千冬、そしていいことを思い付いたかのように俺に歩み寄る。それを察したクラリッサも同様にこちらへとくる

 

「一夏私達が体を抑えるから、思う存分日頃の怨…感謝、誠意を込めてマッサージしてやれ」

 

「今、怨みって言おうとしましたよね!」

 

「さぁ?何の事かな?」

 

ガッチリと手足をクラリッサと千冬に拘束される

 

「んじゃ、遠慮なく」

 

満面の笑みを浮かべながらこちらに歩みよる一夏

 

「く、くるな……ゐぎゃぁあ!」

 

こうして無事臨海学校一日目が終了したのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

臨海学校二日目早朝、予想通り早く叩き起こされ、専用機持ち達と一緒に近場の渓流へと移動

 

「こんな場所でやるんですか?」

 

眠い目を擦りながら千冬さんに聞く

 

「ああ、いろいろとあってな」

 

「あ!君が噂のあーくんだね!!」

 

―誰だ?こんな朝っぱらからハイテンションなお馬鹿さんは

 

振り向くとウサ耳をつけた痛い人がぴょんぴょん跳ねていた

 

「千冬さんあれは?」

 

とりあえず痛い人を指差しながら聞いてみる

 

「ああ、あいつはな」

 

冷や汗を少しかきながらも説明しようと千冬が動くと

 

「ハロハロー、天才科学者篠ノ之束さんだよ!自己紹介終わり」

 

と彼女はそう名乗った。

 

―まさに事故紹介だ

 

関わらないように、そっと視線を外し周りを見ると

 

「………」

 

やたらとおっかない表情の箒がいた

 

―当然そうなるわな

 

「箒ちゃん!スマイルスマイル」

 

そんな事お構いなしに話し掛ける束

 

さすがにイラッと来たのだろう手に持っていた木刀でゴスッ!!と一突き

 

「殴りますよ」

 

「うぇぇん、いーくん箒ちゃんがいじめるよ~」

 

「うぇぇ……」

 

どうやら一夏も彼女の事が苦手なようだ

 

「束、お前こんな事の為に来たのではなかろう」

 

「ふっふん!!よく聞いてくれたね!ちーちゃん、今日束さんがここに来た理由はね……」

 

唐突に頭上を指差すと

 

―何か人参が降ってきてるんですけど?

 

爆音と共に地面に突き刺さる形で着地する巨大人参

 

「箒ちゃんの専用ISを持ってきたからなのだ!」

 

巨大人参が破裂すると中から一機の赤いISが現れる

 

「コレが私の…」

 

「名前は『紅椿』、天才科学者篠ノ之束さんが作った第四世代型IS」

 

「第四世代だと……」

 

「世界がまだ第三世代に手を出したところなのに」

 

唖然とするラウラとデュノア

 

「あと、もう一機持ってきたんだよね~」

 

再び手を上げると空から降ってくる巨大人参、そして中から現れる金色の光沢を放つ派手な機体

 

「名前はね……『破月―はづき―』この子も第四世代型だよ」

 

「千冬さんの専用機ですか?あれ」

 

「馬鹿者、お前用だそうだ」

 

「あーくんみたいなスタイルは、なかなかいないから束さん張り切っちゃった、でね「結構です」

 

「「え!!」」

 

「いりません、俺にはコイツ(打鉄)がありますから」

 

と言いながら、打鉄をコンと叩く

 

「あ、赤城先生!第四世代型だよ!」

 

慌てふためく鈴音

 

「第四世代だろうと何だろうと俺はいらん、つか、見返りなしでこんなの送るとは思えないしな」

 

腕を組み睨みつけるように束を見る

 

「あやや~束さん何か悪いことした?」

 

ヒョコヒョコしながらこちらに歩んでくる

 

「ああ…したな」

 

軽く踏み込み、束のこめかみに当たるか当たらないかくらいの範囲に高速で右ジャブを放つ

 

「まだ『決心がついていない奴に専用機を送る』って言う事をな」

 

束にしか聞こえないであろうドスを効かした声で話す

 

「にゃはは!そうかな?」

 

「そうなんだよ!今の時期は特に大切な時期だ、それなのにあんたは…「でもぅ、この子のデータ早めに取りたいし…それにぃ楽しいじゃん」

 

その一言を聞き自分の何かが切れた。左手で彼女の襟を掴み、岩山に強引に押し付ける。

 

岩山に押し付けられ宙に浮いた状態になった束、それでも彼女の笑みは消えることはなかった

 

「楽しい?……だと……早めにデータが取りたい?…………てめぇ!肉親を何だと思ってやがる!!」

 

荒ぶる感情を抑えきれずに右手を振りかざす

 

「「赤城(先生)!!」」

 

箒を残した全員で赤城を止めにかかる

 

「HA☆NA☆SE!こいつをぶん殴らせろ!!こいつは!こいつだけは!」

 

「赤城!落ち着け!コイツは少し逝かれてるんだ!いちいちこんな事で拳を上げていては話が……「きゃ~助けて、束さん殴らて、薄い本みたいにピーされちゃう、うぇぇん」

 

「地獄に叩き落としてやる!」

 

「だぁ!束さんも火に油注ぐような事をしないで下さい」

 

「離せゴラァァァァァァ!」

 

暴れる赤城を押さえながら、箒の専用IS紅椿のセッティングが無事終了する。

 

「はぁ~い箒ちゃんの専用機のセッティング終わったよ~」

 

「これが私の専用機」

 

そんな2人を後目にゼ ーハーゼーハーと息が上がる一夏、セシリア、デュノア、ラウラ、鈴音

 

暴れた彼はと言うと………

 

千冬に襟首をつかまれ引きずられていた

 

「お前はしばらくそこで頭を冷やしてろ」

 

滝の中に放り込まれ力なく滝にうたれる

 

「お前が言わんとしてる事はよくわかるが…手を上げてどうこうなるものでは無いだろう」

 

それだけ言い残しその場を離れようと歩み始めると

 

「織斑先生~」

 

息を切らしながら大急ぎでこちらに走ってくる山田先生が見えた

 

「どうした?山田君」

 

「これを…」

 

そう言うと1つの端末を千冬へ渡す

 

「これは……急いで旅館へ戻るぞ」

 

専用機持ちに招集をかけ旅館へ急ぐ

 

「赤城様」

 

「……………」

 

クラリッサの呼び掛けに応答は無い

 

「行くぞクラリッサ!……アイツにも考える時間は必要だ」

 

「はい…」

 

名残惜しいように赤城を見ながら旅館へと急ぐ千冬の後を追うクラリッサ

 

―手を上げてどうこうなるものでも無いだろう……か

 

皆が走り去ったのを確認し、目をうっすらと開け、体を少し前に動かす

 

「あ~冷てぇ、沢の水って夏でも冷たいのは何でかね」

 

濡れた髪をぐしゃぐしゃとかき、雲一つない空を見上げる

 

―ようやく頭が冴えてきた

 

ズドォォォォン!!

 

「何だ?」

 

ずぶ濡れの体を起こし、目を細めて空を見るが…何かが動いている程度にしか見えない

 

「まさか、こんな場所で戦闘?」

 

―だとしたら、急いだ方がいいな

 

岸に上がり先ほど一悶着あった渓流へ向かう

 

「?誰もいない?……て、ことはだ、戦闘してるのはあいつ等か?」

 

待機中の打鉄に乗り込み起動させる

 

「さて、頭も冷えた所で体も冷えちまった……体を温めに行きますか…ね!」

 

両足の推進機で加速し、海面に出ている岩場をリズミカルに蹴りながら戦闘が行われている場所へ

 

《データ照合…………白式と未確認二機を確認》

 

「おそらく紅椿と白式か……ハイスペコンビで出てきたのか」

 

―無茶な作戦だ、俺がその場にいたら間違いなく反論する

 

そんな事を考えながら、再び戦闘が行われている場所を見上げると、けたたましい爆音と共に飛来する2つの機影

 

「予想通りじゃねぇか」

 

海面にまっ逆さまに落ちる2人の落下地点で待ち受け止め、敵の追撃を交わしながら2人を岸へ下ろす

 

「一夏!一夏!うぅぅぅ「箒…至急救援を呼べ、一夏と一緒に退避するんだ、いいな」

 

泣きじゃくる箒にそう告げ、いまだに索敵している白いISの元へ向かって海面を移動する

 

「HQこちら、赤城…座標1200に救援を頼みます」

 

「まて赤城!お前どうする…ブツ!」

 

回線を切り、白いISを見上げる

 

「悪いが倒させてもらう」

 

白いISはこちらを見下げ、バイザーに光が走る

 

「お前には水底がお似合いだ!」

 

跳躍と同時にIBをかけ突っ込み左ジャブを放つが、いとも容易く交わし、こちらとの距離を取りながらエネルギー弾の全方位(オールレンジ)攻撃で攻める。

 

その攻撃に対しこちらはSEを前面へ回し擬似フィールドを展開、左右上下に落下移動し攻撃を捌き海面へ着水、再び海面上をホバー移動

 

「こりゃまた、えらい奴と戦う事になったな」

 

―気を抜いたら……落とされる

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「HQこちら、赤城…座標1200に救援を頼みます」

 

「待て赤城!お前どうする…ブツ!」

 

唐突に切られる回線、それ以降こちらが幾ら回線を何度繋いでも応答なし

 

「あの馬鹿者め…山田君救援の手配を…後専用機持ち達には待機命令だ」

 

「はい!」

 

―あの馬鹿者、1人で片を付ける気か

 

端末の未確認機のデータを眺める

 

銀の福音―シルバリオゴスペル―、アメリカの半自立型IS、主に広範囲への射撃攻撃による殲滅を目的としたIS

 

…そして、お前が一番苦手としているタイプだ

 

赤城のスタイルは、基本的に避けるか、受け流しからのカウンター攻撃へ転じ、態勢が崩れ次第追撃をかけると言った具合だ。

 

避ける、もしくは受け流せない広範囲攻撃となれば、どの道防御へ徹っするしかない。

 

アイツ自身それが一番嫌な事くらい分かってるはずだ……となれば……アイツの取る手段は……

 

「不意を突いての一撃必殺」

 

「お、織斑先生?」

 

そんな小細工で落とせる程あれは甘くはない……そう、私の直感が告げている

 

「山田君……このISに隠し玉があると思うか?」

 

「隠し玉ですか?そうですね……現時点の情報では確実とは言い切れませんが……恐らくあると思います」

 

「そうか…」

 

顎に手を当て目を閉じ考える。

 

どんな形にしろ、回線に出ないか馬鹿者…お前まで落とされたら私は……

 

「正気じゃいられなくなる」

 

誰にも聞こえぬように小声で嘆く

 

――――――――――――――――――――――――――

 

隊長の嫁が落とされたと聞いた私はすぐさま隊長の元を訪れていた

 

「隊長!」

 

「クラリッサか……」

 

「彼の御加減の程は?」

 

「意識不明だそうだ…」

 

「そう……ですか」

 

柱に拳を打ちつけ嘆く隊長を見て私は、どんな言葉をかければ良いかわからなかった。

 

もし、自分の好きな人が、撃墜され大怪我を追ったとしたなら……

 

私は隊長のように嘆いているだろうか?それとも……現場で指揮をとっている彼女(織斑千冬)のように平然としているだろうか?

 

「私は………」

 

ピロリン!と端末の受信音が鳴り、ポケットから端末を取り出す。どうやら、ドイツ軍からのようだ。端末のキーロックを解除し、メールを読む

 

「な…」

 

思わず目を見開いて驚いてしまった。

 

―どうしてあなたが……どうして……

 

信じられない気持ちのまま、メールの最後に同封されていた一枚の衛星写真を見て私は驚愕した

 

嘘であってほしいと、嘘でなくても夢、幻の類であってほしいと、幾度も思った……

 

しかし、これはそんな私の願望を易々と打ち砕いた

 

「どうしたクラリッサ……これは」

 

隊長は私の端末に映し出された衛星写真を見て青ざめる

 

「赤城……先生」

 

そう、衛星写真に写っていたのは紛れもなく、たった1人で孤軍奮闘に戦う赤城の姿だった

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「く!」

 

降り続くエネルギー弾の雨をかいくぐりながら戦闘をする事、数時間いまだに援軍がくる気配はない

 

―下手に出てきて総崩れになったら洒落にならんしな

 

打鉄のSEは半分を切り、未確認ISに有効打を与えること無くジリ貧になっていた

 

「やべぇな」

 

元々性能で負けている以上、こちらが勝つためには己の技量でカバーするしかないのだが

 

「距離が詰めないと話にならないのが現実か」

 

―俺の攻撃は全て両腕が延びる範囲のリーチしかない

 

両手を見つめ握りしめる

 

「賭けてみるか」

 

先ほど逃げながら見つけた小高い丘のような岩壁に向かう。

 

「そうだ、俺を追いかけてこい!」

 

残り少ないSEの中でIBを使用し、未確認ISに追いつかれるか追いつかれないかの瀬戸際で飛び続ける

 

―見えた

 

両手足にSEを注ぎ込み、岩壁にぶつかる寸前で態勢を変え岩壁を蹴り、宙返りをしながら未確認ISの丁度背中の位置にまずは両足で蹴りをぶちかまし、激しく地面へ叩きつける。

 

敵が態勢を立て直すより早く両足で翼を押さえ追撃、敵の翼がもげ弾け飛ぶが、完全に機能を停止 するまで殴るのを止めない

 

「ウゥゥオォォォリヤァァァァァァ!」

 

トドメと言わんばかりに未確認ISの後頭部に全体重を乗せ、右ストレートをぶち当て、バックステップする

 

「我ながら偉く派手にやったな」

 

土煙が晴れるのしばし待つが、動きは無い

 

「完・全・撃……」

 

キュイィィィィィン!

 

決め台詞を言う前にけたたましい音と共に、土煙が一瞬で晴れ、その中から四枚の純白の翼が生えた未確認ISが現れる

 

「馬鹿な!再起動だと!いや、これはセカンドシフトか」

SEはレッドゾーンに入りほぼ無いに近い、こんな状態でのコイツとの戦闘はまず無理だろう

 

その場から飛翔しこちらを見下ろす未確認IS

 

―先手必勝!

 

敵が動くより早く推進機を吹かしサイドステップ、予想通り自分が居た場所に今まで以上のエネルギー弾の雨が降り注ぐ

 

完全に戦闘続行は不可能と判断、逃げる事だけに専念する

 

「たく!」

 

切っていた回線を繋ぎ現状を報告する

 

「HQ!こちら赤城、未確認ISを追い詰めたが逆にパンドラの箱を開けちまった、後は荷が重いが専用機持ち達の出番らしい」

 

「ようやく出たと思ったら、そんな状態とはな赤城」

 

「あはは…面倒かけます」

 

廊下を走る音と、襖を開ける音が画面外から聞こえる

 

「「赤城先生が戦ってるってのは本当ですか!」」

 

恐らく、箒を覗く4人がどこからか仕入れた情報を耳にして急いで来たのだろう

 

「お前たち、待機命令だと言ったはずだ!出てい「まぁいいじゃないですか、どうせ最初の作戦会議には出席したんでしょうし」

 

「む、だが…」

 

千冬さんを諭しながら話を進める

 

「お前たちに言っとく、コイツは生半可な武器じゃまず致命打を与えられないだろう」

 

全員が静かに赤城の話を聞く

 

「敵はセカンドシフトに移行してから飛躍的に性能が上がってる、気を抜けば落とされる…………俺みたいにな」

 

「なん……だと…………」

 

「あ、赤城様今なんと!」

 

「さっき、回避時にやらかしたみたいで、完全に回避したと思ったんですが、推進機に何発か掠って現在進行形で浸水中です」

 

両足の推進機からブスブスと黒煙が上がり、徐々に海面に吸い込まれていく

 

「ふ……鈴音…箒の件頼んでいいか?ホントは俺が言わなきゃならねぇけど……言いに行ける状態じゃないしな」

 

「…………」

 

「大丈夫、んなに難しい事はない、なぁにやることはシンプルだ…」

 

ノイズがヒドくなっていく

 

「………一…………おも……ぶん…れ……ブツン!」

 

回線が途絶え、ザーと言う雑音だけが室内にただただ流れる

 

「赤城……赤城!応答しろ!!馬鹿者がぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

着けていたインカムを乱雑に壁へ投げつける千冬

 

「赤城様…………」

 

その場へと崩れるように座り込むクラリッサ

 

皆が静まり返る中、鈴音は動き出した

 

―――――――――――――――――

 

あたしは赤城先生から託された事をするべく、すぐにアイツを捜しに出た

 

あのヒドいノイズの中ではっきりとは聞こえはしなかった、けど赤城先生が何を言おうとしている意味は分かった

 

「一発思いっきりぶん殴れ」

 

―赤城先生らしい言葉だ

 

それだけの言葉であたしはアイツを立ち直らせる事が出来そうな気がした。そんな荷が重い事、あたしには出来ないと思っていたのにだ……

 

もし、この現象に名前をつけるとしたら『赤城マジック』とでも……つけておこう

 

医務室代わりの部屋の襖を乱雑に開けるが、中には未だに目を覚まさない一夏しかいなかった

 

「アイツどこほっつき歩いてるのよ!」

 

「あ、鈴音ちゃん」

 

旅館内を走っていると廊下でばったりと綾瀬と厳島に出会う

 

「どうしたんですか?そんなにお急ぎになられて」

 

「アイ……箒を探してんのよ」

 

「あ~篠ノ之さんね、さっき会ったよ」

 

「え?」

 

「すごい暗い顔をしておられましたわ」

 

「どうしたんだろうね?」

 

「どこに行ったの?」

 

「う~ん、外に向かっただけだからね、居場所までは流石に」

 

「恐らく海を見に行ったのですわ」

 

「委員長、何で海?」

 

「暗い気分の時は一人で海と相場が決まってるのよ」

 

海………そう言えば昨日は居なかったし、確かにあり得るかも

 

「ありがとう2人とも!後で何か美味しいものおごってあげるから」

 

「え!ホント?」

 

「楽しみに待っていますわ」

 

向かうは海…待ってなさい篠ノ之箒…あたしが専用機持ちの何たるかを『拳』で教えてあげるから

 

案の定海に着くと他の3人が箒を慰めていた

 

「うるさい!私に構うな!お前らに……お前らに何が分かるんだ!!」

 

想定通り、こちらの話を聞く気はゼロのようだ

 

「そこの3人どいて!」

 

鈴音の声に反応して箒から距離を取る3人

 

――――――

―――――

―――

 

「いいか、殴るときはな、拳を軽く握り、脇を締め、やや内角を抉るようにして打つべし!そして当たる瞬間に拳を握り締めろ!」

 

―――

―――――

――――――

 

以前、授業の合間に言われた赤城流拳術を思い出しながら箒の左頬を思いっきりぶん殴ってやった。

 

盛大に砂浜を転がり、殴られた箇所を抑えのたうちまわる箒を見て、少しやり過ぎたかもしれないと思いつつも箒に近寄り襟を掴み手繰り寄せる

 

「一回失敗したからっていじけてんじゃ無いわよ!専用機持ちってつうのわね!そんな、わがままが許される立場じゃ無いのよ!」

 

「……」

 

「それともあんたは戦えるときに戦えない臆病者な訳!」

 

「……私だって…」

 

「なら立ちなさいよ…私ら今から2人の弔い合戦に行くけど…あんたはどうすんの」

 

襟を離し、箒へ手を差し伸べる

 

「もう………迷わない…私も行くぞ」

 

差し伸べられた手をガッチリと掴み起き上がる

 

「そうこなくっちゃね」

 

「では、作戦会議を始める」

 

ラウラが部分展開した右腕に様々な情報が開示される

 

「メインは篠ノ之、鈴音、サブ はデュノア、バックは私とセシリアで受け持つ」

 

「敵は成層圏内でフィールドを展開し待機中、赤城先生が与えたダメージを回復してると思う」

 

「それに敵はセカンドシフトに入っていますから油断大敵ですわね」

 

「初撃は私のシュヴァルツェアレーゲンでフィールドを割る」

 

「そこからがあたしたちの出番よ箒」

 

「分かった」

 

「では作戦開始だ」

 

「ちゃんと回線切っときなさいよ」

 

「そうだな」

 

夕日の中飛んでいく5人、すべては勝利を掴むために

 

 

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