ISてぃーちゃあ〜   作:BlueRider

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第壱壱時限目~コード・ユア・name

―――――――――――――――――

 

体を動かそうとするが、痛みと訳の分からない重みで動く気配はなく、残り僅かなSEの残量値が刻一刻と減っていく

 

―これが無くなれば、いよいよ俺も終わりか

 

光が僅かにしか届かない水の底

 

―あぁ、情けねぇあんなのも落とせねぇなんて……

 

「俺の方がお似合いだったか……水底…」

 

このまま目を瞑っていれば、死んだ両親に会えるだろうか?

 

「そうなったら……謝ろう……」

 

《君は諦めるの?そうやって何もかも》

 

不意に何かの声が聞こえた気がした。

 

―やばいな

 

ついに幻聴まで聞こえ始め、自身の死期を悟り、開き直ってその声に返答してみる

 

「さすがに今回は分が悪い」

 

《嘘》

 

「嘘じゃない、本当の事さ」

 

《嘘つき、君、まだ諦めちゃいないでしょ?》

 

「……かもな」

 

口でこう言っているが、頭の中じゃずっと上に這い上がる事を考えてる、それを言い当ててくるこの声は何なのだろうか?

 

「矛盾だな」

 

《君らしいよ》

 

「確かに俺らしいかもな」

 

周囲を見渡すと未確認ISの翼をもしたような推進機が散乱していた

 

「なぁ……賭け事は好きか?」

 

《分が悪い程大好き》

 

「お前とは気が合うかもしれないな」

 

痛む体が動く範囲内で海中を移動し始める

 

―神様ってのは俺を両親に会わせたくないらしい

 

《ファイト》

 

「へいへい」

 

―――――――――――――――――

 

「……はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……はぁ……」

 

怒りに身を任せて投げつけたインカムを見ながら肩で息をし、柱に手をつき最善の策を考えようとするが、何も思いつかず、イライラだけが募っていく

 

―何故だ!何故、何も思い浮かばない!

 

「ちーちゃん、ちーちゃん」

 

ひょこっと、屋根裏から現れる束

 

「束か……後にしてくれるか、今それどころじゃ……」

 

束?…そうだ、確か新型のISがまだあったな、第四世代型IS、名は破月…赤城用の機体だ……それにIS用ブレードを装備

 

「束、新型のIS今すぐに使えるか?」

 

「大丈Vだよ、後はセッティングだけだから」

 

「なら……私が出撃する」

 

拳を硬く握り締め宣言する

 

「お、織斑先生!ここはどうするんですか?」

 

「山田君に任せる」

 

「そんな、私だけでは 「私も出撃します」

 

静かに立ち上がるクラリッサ

 

「クラリッサさんまで」

 

「主がやられて、立ち上がらないメイドはおりませんから(キリ」

 

「も~お二方は……………わかりました、ここは私が仕切りますからどうぞいってきてください」

 

ぷいとそっぽを向く山田先生

 

「すまんな」

 

「すみません」

 

急いでその場から出て行く2人

 

「も~たまには私の気持ちを……ん?この反応は」

 

気になった場所をディスプレイに映し出し拡大してみる

 

「何であの子達まで」

 

そこにはフォーメーションとは言い難い形で、セカンドシフトした銀の福音と対峙する5人の乙女の姿が鮮明に映し出されていた。

 

「束……」

 

「なぁに、ちーちゃん」

 

「なにじゃない、何だこのISは」

 

渡された資料を見る限り、とてもじゃないが普通とは言い難い。

 

通常時の出力計算で、ほぼ軍艦が動く位の値、仮にIBをかけた場合の速度計算をした場合、音速を軽く超えるだろう。

 

速度抑制の為、各部随所に設けられた推進機の類、それと腰にある円柱状の大容量SE貯蔵タンク

 

空きのスロットはIS用ブレードが一本収納出来るのみ

 

―一体どこでこんなにスロットを使っているのだ?

 

「あーくんにはそれぐらいが丁度いいんだよ」

 

カタカタとキーボードを叩きながらセッティングをしていく

 

「お前は赤城を何だと思ってるんだ」

 

スーツから専用のスーツへ着替え、軽く準備運動をし破月に乗り込む

 

「不思議な子かな?あーくんが動かせるのは打鉄だけだし、ラファールは動かせないしねぇ」

 

「まぁ不思議ではあるがな」

 

「だから束さん考えたのだ、打鉄をベースにした専用機ならどうなのかな~て」

 

―確かに打鉄をベースにすれば動くかもしれんな

 

「そう思って束さん一生懸命ワクワクしながら作って来て、あーくんと楽しくお喋りしようと思ったら……しょぼーん」

 

「物の見事に赤城の逆鱗に触れたわけだ」

 

「セッティング終っわりー!」

 

軽く手を閉じたり開いたりする

 

―かなり感度が高いようだ

 

「IS用ブレードはこちらでよろしいですか?」

 

軍用ヘリが運んできた荷のワイヤーを外しゴツいコンテナのスイッチを押すクラリッサ

 

白いスモークがコンテナ内から勢い良く噴出される

 

「ああ」

 

どこにでもあるような平凡なIS用ブレードが姿を表す

 

「よっと」

 

IS用ブレードを鎖骨辺りのマウントに固定し、馬鹿者達が戦った空を見上げる

 

「こちらも全力でお供いたします」

 

「着いてくるのは構わないがあまり前には出るなよ?」

 

「承知しました」

 

「では参るとするか」

 

破月のけたたましい推進機音と共に一機の軍用ヘリが続いていく

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「くそ!」

 

何度推進機の点火を試みても、うんともすんとも言わない

 

「配線は完璧な筈だ」

 

では何故点かない?

 

「俺はこんな所で油売ってる暇ねぇぇんだよ!動け!動け!動けよ!動けってんだよ!」

 

何度も何度も点火を試みるが一向につく気配がない

 

―もう、誰かに頼らないのは止める…そう決意した直後で、終わりたくない……いや

 

「終われねぇ!」

 

残りの僅かなSEを代用し再度推進機に回す、恐らくコレがラストチャンス

 

「動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

推進機が点火し、水底から一気に海面に浮上する打鉄、その脚には未確認ISの白い翼を模したような推進機が着けられていた

 

「後は救援の手配「その必要はない」

 

不意に背後からガッチリと掴まれる

 

「え!」

 

「何が、え!だ、心配ばかりかけさせる馬鹿者が」

 

掴まれた方向を見ると破月に乗る千冬さんがいた

 

「す、すいません」

 

「無事ならそれでいい……馬鹿者」

 

近場の岸に降りる2人

 

「怪我はないか?」

 

「あちこち、打ち身、青あざだらけくらいですかね?」

 

打鉄から降り体中をくまなく見てみる

 

「ならば、お前はここで待機だ、直にクラリッサがヘリでここにくる、後は私が…」

 

「その破月でですか?」

 

「ああ、そうだ?」

 

「見た感じ随分ピーキーなISみたいですね、千冬さんがIBかけられないくらいの」

 

「かけなくともあれくらい」

 

「お忘れですか?一番の機体で落とされたんじゃ無いんですか?」

 

「あ、あれは篠ノ之が………いや、その通りだな」

 

「お二人ともーご無事ですかー」

 

上空から拡声器を使い叫ぶクラリッサに両手を振り合図する

 

「作戦を練りませんか?急ぐ理由もありませんし」

 

「そうだな」

 

降下する軍用ヘリに向け歩み出す2人

 

「しかし、随分遅れた到着だなクラリッサ」

 

破月を待機状態にし軍用ヘリの中でコーヒー片手に地図を見ながら話す千冬

 

「篠ノ之束氏から預かり物を土壇場で渡されまして」

 

赤城に湿布と包帯を巻いていくクラリッサ

 

「預かり物っ…てぇ!」

 

余りの痛さに声が裏返る

 

「動かないでください赤城様」

 

「はい……」

 

―あまり、包帯をキツく締めないでくれませんか

 

「それでその預かり物は何だ?」

 

「はい、手当ては終わりましたよ、預かり物につきましてはアタッシュケースの中に入っています」

 

「ありがとございます……さてと」

 

席から立ち上がり上着を羽織る

 

「どうせ、あのウサギの事だ中身はIS関係の何かだろ?さっさと開けて合流しないとな」

 

「合流?隊長達戦っているのですか?」

 

「旅館に居ない事から考えて、恐らく弔い合戦にでも行っただろう」

 

千冬の言葉を聞き、急いで端末を取り出し確認するクラリッサ

 

「それに今頃、はやく来てーはやく来てーと泣きわめいている頃だろうし」

 

アタッシュケースのロックを外し、アタッシュケースを開くと中には端末が入っていた

 

「なんだ?これ」

 

「打鉄用追加パッケージのようだな」

 

コーヒーを飲み干し、赤城の横に並びアタッシュケースの端末を手に取る千冬

 

「パッケージ?」

 

「ここに来て打鉄強化イベントとは……ナイスな展開ですね!」

 

赤城の横へ並び、目を輝かせるクラリッサ

 

「それでは、さっそくインストールに取りかかるか」

 

「了解」

 

打鉄を一度、仮待機状態にし、追加パッケージが入った端末へ繋ぐ

 

「後は我々の仕事だ、お前は今後に備えて少し休んでいろ」

 

「了~解」

 

コーヒーを作りながらそう答え、椅子に腰掛ける

 

「なかなか束氏みたいにはいきませんね」

 

「当たり前だ、あいつは普通じゃないからな」

 

2人係りでインストールを開始する

 

―待ってろよ、今行くからな

 

数十分の休憩をしつつ、目を閉じ勝利へのイメージをしていると

 

「よし!これでインストール完了だ」

 

「長らくお待たせいたしました赤城様」

 

「いえいえ」

 

立ち上がり仮待機状態の打鉄を、ヘリの外で展開そして着装する。

 

準備運動がてら軽くジャブを打つ、感度良好、何故だか何時の打鉄よりもしっくりとくる

 

「データによると推進機出力、SE伝達スピード、両手脚装甲厚、各部間接強度が上がっていますね、後はスカーフ状の放熱布でしょうか」

 

端末のチェックリストにチェックをするクラリッサ

 

「恐らく、外見とコアは打鉄、後は新型の物を移設したのだろう、束らしい」

 

生まれ変わった打鉄を目を閉じ肌で感じる。

 

『まだ戦える……私はまだ戦える』と訴えかけてくるのが、ひしひしと伝わってくる

 

「リベンジだ……銀の福音(シルバリオ ゴスペル)」

 

目を見開き空へ拳突き上げ、己の意思を固める

 

「お前という奴は」

 

「赤城様らしいですけどね」

 

おもむろに、待機状態の破月を起動させる千冬

 

「あーあー、3人とも聞こえてるかな?」

 

オープン回線で入ってくる聞こえなれた声、俺にとっては感に触る声だ

 

「なんだ?束、今忙「いや~破月の唯一仕様、話すの忘れちゃってたから、今話すね」

 

―唯一仕様?そんなもの積んでんのかコイツ

 

「その名も『一・子・相・伝』」

 

「一子相伝…」

 

自然と声が揃う3人

 

「そう、この子はねぇ、元々性能が低い打鉄を強化するために作った言わばサポートISなのだ!」

 

「なん……だと…」

 

「赤城様そこまで驚く内容の物でもないかと」

 

「一子相伝…それで使うとどうなる」

 

「打鉄に破月を追加パーツとして装着、ただし発動後、破月の乗者、つまりちーちゃんはISが無い状態になっちゃうんだな~コレが」

 

「出力とSEが桁違いだったのは二機分のISを動かすためだったのか」

 

―それならピーキーなセッティングだった理由にも納得がいく

 

「つまりまとめますと

1:破月の所有者に主導権がある

2:一子相伝中は所有者はISが無い状態

という事ですか」

 

「すげーわかりやすい」

 

「世界の命運は君達に任せたよ、あ、後サンプルもよろしくね!じゃびー」

 

―まさにハヤテのごとく!てか、世界の命運ってそんなに軽く俺らに任せちゃっていいの?安くなったな世界……つか結局データ集めかよ!ツッコミが追いつかん!

 

「ではさっそく使ってみるか…」

 

ISブレードをこちらに向け、一呼吸置き

 

「一・子・相・伝!」

 

破月が青く閃光、各パーツに分離しながらISブレードの切っ先にいる赤城に飛んでいき、眩いSEの粒子が打鉄を包み弾け飛ぶと同時になびく赤い放熱布、そして金色の鎧を纏ったゴツくも凛々しい鋼鉄のフォルムが静かにそびえ立っていた

 

「コレは………」

 

「凄まじいな…」

 

全身を覆い隠すように破月は装着され、両腕にはボクシンググローブを思わせるような手甲が装備されており、背中には例のSE貯蔵タンクが刺さる形で備わっていた

 

「まさに……赤城スペシャル!」

 

「この場合、打鉄カスタムもしくは打鉄MkーⅡとかでは?」

 

「いや、打鉄、破月の名を取って……」

 

ISブレードを地面に刺す

 

「『破鉄(はがね)』だ」

 

「破鉄…悪くないです」

 

「それでは参りましょうか」

 

「ああ」

 

「了解!それじゃ先に行ってます」

 

急上昇から急加速し皆が待つ空へ急ぐ

 

「私達も追うぞ」

 

「了解です」

 

ISブレードを肩に担ぎヘリに乗り込む千冬の後を追うクラリッサ

 

―目標まで後数分か

 

「赤城様、少々いいでしょうか?」

 

「ん?何か用かな?」

 

「コレを…」

 

こちらに1つの画像を転送するクラリッサ

 

「はぁ……なんつうか…今年の生徒はバカばっかみたいですよ千冬さん」

 

「ふ、らしいな」

 

「もう少しで戦闘空域です、赤城様、御武運を」

 

「了解した」

 

―復活が早いな……なぁ達公

 

画像に写っていたのはセカンドシフトした白式に乗る織斑一夏の姿だった

 

「おお、やってるやってる…」

 

海面を飛びながら上空で戦う二機を補足する

 

《データ照合……雪羅及び銀の福音と断定》

 

「雪羅って言うのかあのIS」

 

ISの性能等を見ながら二機の戦闘に介入するタイミングを見計らい、海面から急浮上し二機の間に割って入ると、福音はすぐさま距離を取りこちらの出方を見る

 

「よう、一夏体の調子どうよ?」

 

「赤城さん!?えぇ、まぁ、本調子ですよそれよりそのISは?」

 

「コイツか?コイツは破鉄だ…説明は後でする、それよりお前のハイスラはどうした?」

 

「ハイスラ?」

 

「雪片だよ雪片」

 

「……落としちゃいました」

 

「…………は?」

 

―今コイツなんと?

 

「福音に初撃を当てた瞬間に落としました、そしたら皆探しに行っちゃって…………」

 

「馬鹿なの?死ぬの?今回の作戦の切り札なくすとか…」

 

「あははは」

 

「あはははじゃぬぇんだよ!どうすんだよ!コレじゃ死亡フラグだらけじゃないか!」

 

バイザーが光、動き出す福音に気づき、すぐに散開し福音を挟むように移動する2人

 

「赤城さん!」

 

「何か用か…な!」

 

福音の攻撃を弾き返しながら答える

 

「俺も雪片探しに行ってくるんで時間稼ぎお願いできますか?」

 

―たく、姉弟揃って人使いが荒い……

 

「わぁったよ!」

 

「お願いします」

 

「時に一夏よ、1つだけ質問していいか?」

 

「はい?」

 

「別に時間を稼ぐのは構わないが…別にあれを倒してしまっても構わんのだろ?」

 

「全然構わないです」

 

「了解した、さっさと探してこい」

 

「はい!!」

 

海面に急降下していく一夏を、撃ち落とそうとする福音に、横からタックルを食らわせ弾き飛ばす

 

「お前の相手は俺だぜ」

 

すぐに態勢を整えこちらに向かって銀の鐘を自らの背後に展開する

 

「行くぞ銀の福音……射撃の準備は万全か」

 

―今更だがこのIS…じゃじゃ馬過ぎるだろ!!

 

いつも通りに惰性を利用して流れるように回避したいのだが…このISはそれをさせてはくれない

 

原因としては身体中のあちこちに付いた、バーニア、スラスターがそれを阻害しており、機体が流れる前にバーニア、スラスターが瞬時に働き、その場に止まろうとする

 

言うなれば、急ブレーキを掛けたような感覚に近い

 

「動きにくい」

 

―原因がわかってても体がそれに対応して動いてくれない、癖ってホントに厄介極まりない…

 

距離を詰めながら福音の攻撃を弾いていく

 

「早く見つけてこい一夏、お前のハイスラが無きゃ始まらない」

 

―調子こいて、ああは言ったものの…相手と接触出来るのは数コンマ程度、元々拳ってのは引いてから踏み込み放つ、その間に相手が逃げちまう

 

「打ててノーモーションパンチ…威力なんて知れてる」

 

だからこそ、一夏のハイスラが必要だ、あれがあれば掠らせるくらいでもダメージが通る。

 

―あの守りを簡単に突破できる武装でもあれば別格なんだがな…破鉄よ

 

「ねぇもんねだっても仕方ないか」

 

上空の雲に入り福音の攻撃をやり過ごす

 

「さてどうしたもんか」

 

福音は周囲を警戒し仕掛けててくる様子はないとなれば……

 

思考するよりも速く体が本能的に動いた。

 

IBし雲を掻き分け敵の懐へ踏み込む、それに気づき回避行動を取る福音

 

―遅い!

 

自身の勢いを殺さず左のノーモーションを当て再び雲の中へ逃げ込む

 

「ズルいと思うなよコレも一種の戦法だ」

 

今度は福音の背後から、右のノーモーションを当て再び雲の中へ、するとその攻撃に対し学習したのかその場で回り始める福音、そして高純度のエネルギー弾が次々形成されていく

 

「おいおい…まさか、この雲ごと俺を吹き飛ばす気か!」

 

すぐさま急降下し雲を抜けると、雲をかき消すように撃ち出されるエネルギーの弾丸

 

「おいぃぃ……マジでコイツ規格外すぐるでしょ」

 

こちらを見つけるや否や射撃をしながら接近する福音

 

「まさか今度は近接戦闘する気か?」

 

バックステップしながら福音の右手の手刀をギリギリでかわす

 

「く!」

 

ガリガリと削られるSE

 

―コイツ…真似してきやがったな…

 

福音の右手にはSEが集められた高純度のエネルギーの刃が形成されていた

 

「ちぃ」

 

こちらも応戦するため右手にSEを回し、再び振り下ろされるエネルギーの刃へ向け、迎撃するようにSEをまとったアッパーが放つ

 

バッチン!バチバチ!

 

エネルギーの刃とエネルギーの拳が激しくぶつかり合い閃光と共にスパーク

 

「野郎!」

 

質量と出力ではこちらが有利だが均衡は破れずに鍔迫り合いになっていく

 

「赤城!左に避けろ!!」

 

唐突に響く千冬の声

 

すぐさま左フックを福音の右わき腹に当て左へサイドステップした瞬間、態勢を崩した福音へ立て続けに被弾する2発の弾丸……エネルギー弾でも、ましてやレールガンで撃たれた弾丸でもない、コレは本物の弾丸

 

「今の狙撃はいったい…」

 

「私です赤城様」

 

射線上をたどり空を見上げると、軍用ヘリの扉を開け対物ライフルを構え、敬礼したクラリッサが見えた。

 

「クラリッサさん、助かりました」

 

福音はふらふらと動くがまだ仕掛けてくる気配は無い。2発の弾丸はバイザーへ1発、左腕へ1発と着弾し爪痕を残している。

 

―今が好機だ、恐らくこのタイミングを逃したら次は…………無い

 

追撃へ移ろうと構えた時だった

 

「無事ですか!赤城さん」

 

聞き慣れた声がし思わずニヤケてしまった

 

「ようやく来たか、危うく倒しちまうとこだったぜ」

 

「すまない一夏の雪片に手間取った」

 

「ごめん、すぐに駆けつけられると思ったんだけど」

 

こちらの背後に降り立つように降下してくる雪羅の両横へラファールとレーゲンが降り立つ

 

「あたしたちもいるよ赤城先生」

 

「わたくしもおりますわ」

 

こちらに向かってくる鈴音と鈴音に付き添うようにしてくるセシリア

 

「………」

 

そして無言で最後に到着する箒、そんな彼女の顔を見る

 

―いい顔つきになってんじゃねぇか、何も言わなくてヨシだな

 

「あ、赤城先生…それと一夏」

 

「ん?何か用かな?」

 

「何だ箒」

 

2人の手を握る箒

 

「コレを…」

 

雪羅と破鉄のSEがフル回復していく

 

「へぇ、コレが紅椿の唯一仕様」

 

「す、すげぇ」

 

「はい絢爛舞踏です」

 

「おっしゃぁ!セシリア、ラウラはバックサポートに回れ、デュノア、鈴音はトップのサポート、トップは俺、箒、一夏で行く!くれぐれも無理はするな、いいな!」

 

「「はい!」」

 

「全員散開!」

 

散開し、福音へと迫るトップ3人

 

「はぁぁ!」

 

一夏の雪片の一撃をエネルギーの刃で受け止める福音を見越し、両横から一気に詰め寄る、箒、赤城。

 

しかしそれを察知し、エネルギー弾を左右の海面に放ち水飛沫でこちらの視界を奪う福音

 

「くぅ!」

 

「コイツ!」

 

2人が水飛沫で目潰しを食らってる間に、一夏との鍔迫り合いを腹部に蹴りを入れ一夏の態勢を崩し切り抜け、トップ3人から逃げる福音

 

「「ラウラ(セシリア)!」」

 

一夏と赤城の声が重なる

 

「任せろ(お任せを)!」

 

2人の声に反応しバックサポートの2人が一斉に福音の退路を塞ぐように撃つ

 

何発か被弾しながらも逃げ回る福音、それを猛追するトップ3人

 

「この距離なら!」

 

IBを使い福音一直線に迫る一夏

 

「馬鹿野郎!んな突っ込みかたしたら」

 

福音の高出力エネルギー弾が、馬鹿正直に一直線に突っ込んで行った一夏目掛け放たれる

 

「え…………回避は間に合わない、なら防御は?無理だ!このスピードじゃ…………」

 

「一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

盾を構えたデュノアが、間一髪で一夏と高出力エネルギー弾の間に入り防ぐ

 

「鈴音フォローへ回れ!」

 

「言われなくても!」

 

追撃をかけようとする福音目掛け、龍砲を放つが、縦ロールで簡単に交わしターゲットを鈴音の甲龍へと切り換える

 

「タゲ取り成功!」

 

「了解したデュノア!一夏!無事か!」

 

「俺は何ともありません、でもシャルが………」

 

「大丈夫、盾が2枚破損して使え無いだけで身体は何とも無いから」

 

半壊した2枚の盾がその一撃を物語っていた

 

「了解、直ぐに態勢を立て直すぞ!鈴音!」

 

鈴音の場所を空域マップから割り出す

 

―離れすぎだ、これじゃバックサポートが受けられない

 

「くそったれ!フォーメーションはさっきの通りだ!俺がここまで鈴音を引き連れて戻る!それまで待機だ!「赤城先……」

 

一夏の声を遮るかのようにIBをかけ、海上に盛大に水柱をあげる。

 

後はフットペダルを踏み込み、フルブーストで加速、破鉄が通り過ぎる後には豪快に水飛沫が上がり、景色がどんどん流れ線になっていく。

 

速度表示が偉い数字になっているが、そんなことお構い無しに飛ばしていく今は数秒でも惜しい状態だ。

 

ハイパーセンサーが前方にいる鈴音と福音をとらえる

 

「見えた!」

 

鈴音の後方に福音が引っ付き、

ドッグファイトの真っ只中、下手に攻撃すれば鈴音に当たる

 

 

「鈴音」

 

福音の後方を取りながら鈴音に戻るように促す

 

「り、了解!」

 

右へ旋回を開始すると福音がグングンと鈴音目掛け加速

 

―鈴音を落とす気か、だが!

 

「俺の教え子に!」

 

福音が加速するのに合わせこちらも加速、残り数メートルの所で右手にSEを纏わせ構える

 

「手を出すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

福音の後部に右ストレートをぶち当てる。メギィ!グシャ!と破壊音と共に右拳がめり込み吹き飛んでいく

 

「行ったぞ!一夏!」

 

「了解!」

 

高速で飛んでいく福音を尻目に、一夏へ通信、通信を受けた一夏はセシリアのハイパーセンサーとラウラの計算、箒の絢爛舞踏を受け福音を待つ

 

「来ましたわ!一夏さん」

 

「距離2000!速度180!目標到達まで11!」

 

セシリアとラウラの声が通信内に響く

 

「一夏………」

 

そっと一夏の背中に右手を触れる

 

「お前なら行ける………私はそう信じている」

 

唯一仕様、絢爛舞踏を発動し背中を押す

 

「あぁ任せとけ!」

 

「「一夏(さん)」」

 

こちら目掛け飛んでくる福音目掛け前進、加速そして……………………左手の荷電粒子砲を至近距離で放つ

 

頭部を損壊され機能停止する福音、力なく自由落下を開始し海中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

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