「お、終わったのか?」
「ああ…やっとな」
「やったんだよね…」
「えぇやりましたわ」
「長い戦いだった」
「そうだね」
皆ポツリポツリと言葉を言う
「総員帰投準備!帰るまでが重要だ」
「「了解」」
静かな波の音を聞き、きれいな朝日が地平線から上がるのを見ながら帰投する7人達
それを出迎えるように千冬達が浜辺で待っていた
「皆ご苦労だった、だが、おまえ等がしたことは重大な命令違反だ、IS学園に戻ったら反省文の提出と懲罰トレーニングを行ってもらうからな」
口を紡ぐ7人
「でもまぁ、よく戻ってきた、今日はゆっくり休め以上だ」
その言葉を聞き皆安心した表情を浮かべる、約一名を除いて
「赤城お前にも懲罰トレーニングがあるから………な」
ギィィィ……ドシャン…
千冬の手がふれる前にうつぶせに倒れる破鉄
「あ、赤城?」
倒れたままピクリとも動かない
「あ、赤城様!!」
すぐに駆け寄るクラリッサと、あまりの出来事に動けずにいる千冬
「「赤城先生!!」」
「赤城様!!赤城様!!お気を確かに!」
クラリッサの呼びかけに対しても彼からの返答は無い
「………担架だ…担架を持って来い!」
凍りついた思考を直ぐに解凍させ迅速な行動をし始める千冬
それと同時に旅館に大急ぎで飛んでいく一夏
「打鉄を強制パージさせる、クラリッサ赤城を」
「わかりました」
一子相伝を解き破鉄から打鉄へ戻し、赤城を仰向へ、端末入力で打鉄を強制パージする
あとはF1ドライバーを助ける要領で打鉄から引き抜く
「千冬ねぇ!担架持ってきたよ、後山田先生に話をつけてきた」
「分かった、クラリッサ」
「はい」
千冬が赤城の足を持ちクラリッサが赤城の上半身を抱き抱えるようにして持つ
「「1・2・3ッ!」」
掛け声と共に担架に赤城を乗せる
「旅館まで戻るぞ」
「はい」
全員急ぎ足で旅館へと急行する
一夏が寝ていた部屋に担ぎ込まれる赤城、部屋では連絡を受けた山田先生が待機していた
「こちらに」
「わかった」
担架を静かに下ろし赤城を布団に寝かせる
「おまえたちは外に出ていろ」
「で、でも」
「皆さんには後でちゃんと説明しますから今は廊下で待っていてください」
「「はい」」
山田先生に諭される形で渋々廊下に出る6人
数十分経過した時だっただろうか、ふすまが開き中から山田先生が現れる
「山田先生!!赤城先生の具合は……」
すぐさま山田先生に赤城の状態を聞く一夏、それと同時に皆くってかかる勢いで山田先生の近くに集まる
「大丈夫ですよ、今までの疲労が積み重なっただけみたいですから」
「よかったぁ」
ホッとひと安心する一夏+一夏ラバーズ
「でも、しばらくは目を覚まさないかもしれないから皆さんは各自部屋で休む事いいですね」
「「はい」」
山田先生の指示を素直に聞き確実部屋に戻り始める
「赤城先生…」
少し歩き赤城が眠る部屋のふすまを見つめる一夏
「一夏行くぞ」
「あ、あぁ…」
皆部屋に戻るのを見送り赤城が眠る部屋へ戻る山田先生
「戻ったか」
部屋ではクラリッサと千冬が赤城の枕元に座っていた
「はい、皆さん戻りました」
「全く心配ばかりかけさせるなこの男は…」
軽く赤城の額を小突く千冬
「ですが、大事に至らなくて良かったです」
素直に安心しホッとするクラリッサ
「私的には3人とも心配しましたよ」
膝を降り正座しながら2人+α(過労で寝ている赤何とかさん)に言う山田先生
「Zzzz」
「それはすまなかった」
「すみません」
それを胡座をして聞く千冬、女座りをして聞くクラリッサ
「今度からしないようにお願いしますよ」
「「善処する(します)」」
あらかた山田先生の説教が終わったところで、話題は彼のISについて話が進み始める
「織斑先生…今回の件を気に無理にでも赤城先生に専用機を持たせるべきです」
いつも、のほほんとしている山田先生がいつになく真剣な眼差しで千冬を見つめる。
見つめられた千冬は腕組みをし、しばし瞑想し始める
「私もその意見に賛成です、赤城様の技量に打鉄が完全についてきていません、一子相伝した打鉄でようやく五分五分くらいです赤城様の未来を考えた場合やはり専用機を持った方が今後どんな困難でも乗り越えられるかと」
「確かにIS学園の今後を担う男だ専用機の一つや二つ持った方がこちらとしても動きやすい」
「でしたら…「だが、それはコイツがノーマルだった場合の話だ、赤城はな…特異体質持ちなんだ、それも『打鉄にしか乗れない』という特異体質だ」
彼の頭を撫でながら過去の出来事を思い出し始める千冬
「「え?」」
驚く2人
「ちょうど私が着任した時だったか……赤城の話題になってな、試しにラファールで運用テストを兼ねた試験をしてみたんだが………結果はヒドい有り様だった………赤城がラファールにファーストコンタクトしようと左手で触れた瞬間、見えない何かによって10メートル近く弾き飛ばされ、触れた左掌を10針縫う怪我をした」
その時の出来事を思い出すかのように遠くを見る
「完全な拒絶反応ですね」
「あぁそうだ、それ以来赤城は、打鉄一筋で今までやってきた、そして今回、打鉄ベースの破月を使用してみたんが……ごらんの有様だ」
「拒絶反応が大きく無いだけで拒絶反応は出ていたと考えているのですね?千冬氏は」
「私はそう見ている、今こうして赤城は倒れたのだからな」
「そうなりますと…やはり打鉄を強化、発展させていくのが今の現状でしょうか」
「そうなってしまいますね、今の話を聞きますと専用機うんぬんの前に赤城様の特異体質をどうにかしない事には始まりませんから、現状維持が妥当ですね」
「その内また束が何か持ってくるだろう…」
それだけ言うとその場から唐突に立ち上がり、入り口に歩み寄り勢い良くふすまを開ける
「なぁ悪ガキども」
ニヤリと不適な笑みを浮かべる
ふすまを開けるとそこには聞き耳を立てていた一夏+一夏ラバーズが一気に部屋になだれ込む
「ち、千冬ねぇ……いつから…」
5人に押しつぶされながら喋る一夏
「最初からだ馬鹿者」
それを苦笑いしながら傍観する山田先生とクラリッサ
物音に気が付き目をゆっくりと開ける
―見慣れない天井だな
キョロキョロと視線だけを動かし周りの様子をうかがう。
すると何故だろうかコブラツイストを一夏に食らわす千冬さんと目があった
「お、目が覚めたか?赤城」
「……」
―現状が把握出来ないんですか……
「お目覚めになられたのですね赤城様……」
「ああ……」
体に力を入れて起き上がる
―疲労がぱないな
「つか、何で俺ここで寝てんだ?」
「覚えてないのか赤城」
「えぇ…まぁ」
「赤城様は福音を撃破した後倒れられまして我々が手厚く看病させていただきました」
「赤城先生あんまり無理に起きない方が…」
「大丈夫だっての……無理してねぇし、っても流石に今回の福音戦は身に応えたがなぁ」
「あれくらいで参ったと言っていたらIS学園の今後が不安になるな」
一夏をコブラツイストから解放しその場にあった椅子に腰掛ける千冬
「勘弁してくださいよ俺はスイーパー(掃除屋)じゃないんですよ」
肩と首を回すとゴキゴキと言う鈍い骨の音が部屋中に響き渡る
「やっぱりダメですよ、まだ寝ていませんと」
「大丈夫ですって、俺の場合寝てると悪化するだけですから」
山田先生の静止を振り切り銭湯道具を手に取る
「赤城先生お風呂に行くんですか?」
「おう、汗でベタベタして気持ち悪いからな」
その発言を聞くや否や皆思い当たる節があるらしく銭湯道具を用意し始める。部屋が違うものはパタパタと大急ぎで取りに行く始末
―眼中になかったのか?風呂
「あ、赤城様、お、お背中を…」
「残念だがクラリッサ、ここに混浴は無い」
「な…んですと」
その時稲妻が走った……かのようなナレーションが入るであろう、それくらいショックを受けるクラリッサ
「クラリッサ、良いことを教えてやろう」
子供が悪いことを考えたような笑みを浮かべる千冬
「何でしょうか?千冬様」
「無いのならば作ればいいんだ」
「んな!」
場が一瞬で凍りつく
「グットアイディアです千冬様」
―おいおい、そりゃねぇでしょう。せっかくのんびりしようと思ったのにこの始末……はぁ……俺はまだいいさ、俺は恐らく2人(クラリッサと千冬さん)だけだからな、だが一夏はどうだ?確定しているのが五人、しかし下手をすれば………
顔から血の気が引いていく男子2人
「赤城先生…」
「一夏よどうやら風呂で疲れを癒やすことはできなさそうだ」
―肩身が狭いな俺ら
カポーン
「うぃ~生き返る~」
「そうですね~」
女性陣がくるよりはやく湯船に浸かる男性陣
「朝風呂も捨てたもんじゃないなぁ」
「そうですね~いつもは起きてすぐに登校準備ですから」
体を伸ばしながら後に来るであろう嵐に備える2人
「しかし、よく旅館もオケーサインだしたよな」
「まぁ千冬ねぇなら顔パスだけでみんな快くやってくれると思いますよ」
「………だな」
―天と地の差だよな…これって…俺だった場合、間違いなく皆NOと言うだろう、冷たい視線でこちらに一言も言わせないくらいの拒絶をするだろう
目を閉じ自分が歩いてきた道のりを少し振り返る
夢に向かってまっしぐらに輝いていた自分、すさみ荒れ果て絶望していた自分、様々な自分があって今の俺…つまりは赤城優が出来ているわけだ
「………いつか言ってたな」
「?何がです?」
「両親達がな、おもしろおかしく俺の名前の由来をさ」
―――――――
――――――
―――――
「この子の名前どうしましょうか」
大きなお腹をさするロングツインテールの赤髪の女性
「ベンで」
即答する黒髪の剣山頭の男性
「殴りますよ」
拳をわなわな震わせながら眉間にシワを寄せ、満面の笑みで剣山頭の男性を見る赤髪の女性
「ま!待て待て!ジョークだってアメリカンジョークだって……ちゃんと考えてっから」
「そうですか、ならいいんですけど」
「コイツの名前はな……勇ましいと書いて『ゆう』だ、どうだ俺たちの子らしい名前だろ?」
「確かにそうですね……でも勇ましいじゃなくて優しいにしましょう」
「優しいか……なんでまた?」
「誰よりも優しく強い人間になってほしいですから」
「そうだな、優しさを武器に何でもいいから天辺目指してほしいな」
「クスクス、アナタみたいにはならないで欲しいわね」
「何だと!」
「だって、とても世話がかかるんですもの」
「それじゃ俺的にはお前みたいにはなって欲しくないね!」
「あら~どうして?」
「暴力プギャ!」
妊娠中とは思えないような鋭いアッパーが剣山頭の男性の顎を的確に捉える
「誰が暴力女よ!失礼しちゃうわ!」
ドサッ!
宙を2、3度回りながら顔面から地面に激突する剣山頭の男性
「死…ガフ…」
――――――
―――――――
――――――――
「て言う話」
「あははは、すごく仲良かったんですね赤城さんの両親」
「ああ…」
過去の記憶がずらずらと蘇り、両目からツーと一粒の涙が湯船に落ちる
「幸せだったな」
「赤城さん、話は変わりますが子供の夢っていうのは親にとっては宝物みたいな存在なんだそうです」
黙々と語る一夏
「ならきっと、赤城さんのご両親は赤城さんのこと恨んでいないはずです、だって赤城さん………その宝物を守るために必死になって戦っていたんですから」
その言葉を聞き終える頃には、湯船に落ちる雫の数が倍以上に増えていた
「泣いてるんですか赤城さん」
「うるせ!ただの汗だ」
頭に乗せていたタオルを目に乗せ答える
ガラガラ
「2人ともちゃんといるな?」
千冬さんの声と共に女性陣達が次々ひっきりなしに入ってくる
「クラス全員きちゃったパターンかい」
涙もすっかり引き本調子状態へと戻る
「みたいですね」
「「一夏!」」
一夏ラバーズ以外にも呼ばれる一夏
「ほら、指名が入ったぞ」
「はいはい」
湯船から上がる一夏
「赤城、お前もさっさと湯船から上がってこっちに来ないか」
「へーい」
「さぁ!赤城様どこから洗いましょうか!」
「先に頭洗うから後で…「頭ですねわかりました!」
―おーい…
ザバー!
豪快に頭からお湯をかけられる
「クラリッサ、シャンプー」
「シャンプーですね、どうぞ」
千冬にシャンプーを献上するクラリッサ
「え、ちょっ…「目と口を塞がないとシャンプーが入るぞ」
―俺の話を
グシャグシャ
「では私はお体の方を」
―待て待て!
ボディソープ豪快にぶっかけられる赤城
ゴシゴシ!
―痛い!そんな強くこすっ
ズブシ!
―ギャー!耳に耳に指がぁぁぁぁぁぁ!
「すまん赤城手が滑った」
―わざとだ!絶対にわざとだ!
「クラリッサ、洗顔はどれだ」
「こちらになります」
洗顔フォームを手に取るやいなや…
ツー……
頬に直接付けられ…
―泡立ててお願いだから泡立てて……
勢い良く洗顔されていく
―痛い!痛いよ~洗顔フォームが目に……鼻に……口に……
「赤城様前も洗いますね」
―え!やめ…お願いだから前だけは…やめ
そんな3人のやり取りを鏡越しに見る一夏+一夏ラバーズ
そしてこう思ったに違いない……
あんな大人気ない大人には、ならないように気をつけようと
ザブァー!ザブァー!ザブァー!ザブァー!ザブァー!
クラリッサと千冬に、勢い良く左右からお湯をぶっかけられる事数分…お湯のぶっかけ嵐は止んだ
「終わりましたか?」
「あぁ、完璧だ」
「ですね」
清々しい顔の2人が鏡に映る
―このやり場の無い怒りをどこへぶつければいいのだろか
「あ、赤城さんシャンプー取ってくれますか?」
なんだいるじゃないか……すぐ近くにぶつける相手
ニヤリ…………
「一夏……洗ってやるよ…………」
シャンプーを手に取り満面の笑みで答え、背景にゴゴゴゴと浮かびそうな威圧感を漂わせゆっくりゆっくりと一夏の背後に確実に歩み寄ると、それを察したのか逃げようとする一夏
「一夏ラバーズ!一夏を逃がすな!逃がさなかった奴には後で一夏の秘密を1つ教えるぞ!!」
その声を聞いた途端、5方向から一夏目掛けタックルが飛んでいき一夏をひっとらえる
「頼む!みんな俺を逃がしてくれ」
じたばたと無駄に足掻く一夏
「いいぞ…………そのまま、そのまま押さえ込んどけよ…くくくく」
シャンプーのキャップを外し一夏の頭目掛けぶっかける
「一夏ラバーズ!一夏を丸洗いしてよし!」
号令と共に一夏を丸洗いにしていく一夏ラバーズ
「良きかな良きかな」
―何て清々しい気分何だろうか…
泡だらけの一夏をよそに再び湯船へと浸かる
「ようやくきたか」
湯船にはお酒を嗜む千冬とお酌するクラリッサが浸かっていた
「午前中からお酒ですか」
「たまにはいいだろ?たまには…なぁ?」
「私もたまにはいいと思います」
―この2人恋敵にしては仲良いよな
「で、どうだお前も一杯」
「やめときます」
「そうか…」
グイグイと酒を煽る千冬
「ち、千冬さん」
「何だ赤城?」
「後でちょっとお時間頂けますか?」
「今言え」
「ここじゃちょっと……」
「言え」
「はい…以前、千冬さんが居酒屋に誘ってくれた時の事を覚えてますか」
「ああ」
「あの時お前はもう少し甘えてもいいって言ってくれましたよね」
「言ったな」
「……お、俺!「安心しろ、ちゃんと用意している」
―え?
スーと千冬さんの横からこちらの横に移動するクラリッサ
「赤城目を閉じろ」
「え!あ、はい」
―まさか…
言われた通りに目を閉じる
そしてアイコンタクトする千冬とクラリッサ
―まさか…ねぇ
チュ…………
両頬に伝わる温もり
―マジかよ!!やべ…俺のテンションハイボルテージ!
「目を開けてもいいぞ」
目を開け、恐る恐る2人を見ると2人とも背を向けていた
「あ、ありがとうございます、そ、それじゃ俺先に上がってますね」
少し動揺しながらも 湯船から上がり脱衣所に向かう
―……まさか褒美が貰えるなんて…俺は『もう一度夢を追い掛けたい』と言うことを伝えたかっただけなんだけどな…まぁ結果オーライって事で
浴衣に着替え脱衣所から部屋へ戻る手前のマッサージチェアに座り疲れを癒す事にした。
「それにしても、あの時の声は何だったんだろうな……声質的に女の子の声だったけど」
今にして思えばそれはとても不思議な事だった……レッドゾーン内であったSEを節約するため自分の生命維持だけにSEを回していたはずだ。
つまりは回線を繋ぐ事も拾う事も出来なかったはずなのに、はっきりと聞こえた幼い女の子の声
年齢的に五歳から十歳の間であろう。もしその子を絵にするなら半袖短パンが似合いそうな、わんぱくなイメージの女の子だと俺は思う
―ん~でも、そんな子がギャンブル的な発言するかね?………さすがに某百合の花が咲くような麻雀本、もしくはアニメじゃないと、そんな会話はしないな普通は
―ではあれは何だったんだろうか?単なる幻聴?ではないな、普通に会話してたし
「いったい誰何だろう……でも、また会うような気はするな…」
《そうだね》
「!」
ふと声がし、マッサージチェアから起き上がるが誰もいない
「何かパッとしないが……なるようにしかならんか」
再びマッサージチェアに座り疲れを癒し始める
―あ~ぎもぢぃぃ
――――――――――――――――――――――――――
―赤城はそうそうに出て行ったか全くこういう気配りだけは一人前だな…あいつは
向けていた背中を戻すとちょうど同じくこちらに体を向けていたクラリッサと目があった
「まさか……本当に褒美を欲してくるとはな…」
クラリッサが言ったような展開になったことに私は内心驚いていた
「ふふ、長年の(ギャルゲー+女子ゲー)賜物です」
キランと言う効果音が入りそうなくらいのドヤ顔で答えるクラリッサ
―しかし、ファーストがアイツとはな…
「安心してください私もファーストでしたから、あぁでも、マウストゥマウスじゃ無かったのでノーカウントとでも良いかと」
心を読まれた事に多少動揺しながらも答える
「そ、それは何だか、あの男に負けたようになるから却下だ!」
―何を意地になっているんだ私は………
「そうですか、でしたら改めて宣言させていただきますね千冬氏……私は赤城様…いえ、優様の事が好きです、LikeではなくLoveなんです」
クラリッサの瞳は私をしっかりととらえていた。
「私とて赤城に惚れた女だ!いいだろ……私も全力でいかせてもらう!」
「望むところです」
ここに赤城と言う男と2人の女性との三角関係が成立したのだった
そしてこの日を境に赤城の仕事デスクにはお弁当が2つ置かれるようになったとさ
――――――――――――――――――――――――――
「うぃー気持ちよか…………」
自室へ戻ると俺は…………一度開けたふすまを閉めて何事もなかったかのように立ち去ろうとした
バタン!とふすまを蹴破り血相を変えて出てくる千冬
「待て赤城、待ってくれ」
「え、なかなかいい感じだったじゃないですかやだーってな訳で俺一夏たちのところに行ってきますね」
こちらの右手をキツく握り締める千冬
「弁明させてくれ赤城」
「わかりました、わかりましたからそのキレキレの顔と背景のゴゴゴはやめてください」
「ゴホン!あれは事故だ」
「事故?まさかそこまで進んで…う!」
鳩尾に的確に入る千冬の肘
「違う!そう言う意味ではない!」
「千冬様ったら強引で」
自室の畳の上でぽっと頬を赤くするクラリッサ
「余計に誤解を招く事を言うな!そもそもあれはお前の責任だろ」
そう、俺がふすまを開けた瞬間に見た光景はクラリッサを押し倒している千冬の姿だった。
「して、どちらが受…」
風切り音と共に俺の髪がなびき、真横の柱に刀が刺さる。
しかもただの刀ではない、IS用のブレードがザックリと柱に深々と刺さっていた。
後数センチズレていたかと思うと…
―マジでくたばる五秒前
「い、いやだなー千冬さん!千冬さんがそんな事するはずないじゃないですかやだー」
「そうです!あれは私が粗相を犯したがばかりに出た事故です」
冷や汗ダラダラで必死に宥めるクラリッサと俺
「わかればいい」
―寿命がかなり縮まったぞリアルで
「それより赤城、お前こんな時間までどこに居たんだ?」
「いやちょっとマッサージチェアでうたた寝を…………」
「優様、寝るのなら…」
正座をし両手を広げるクラリッサ
「えぇーと、これは?」
「見てわかりませんか?膝枕です、眠るのなら女性の膝枕と相場が決まっています」
―すまん、事情が飲み込めなくなってきている……て、今俺の事下の名前で呼ばなかったか?
「あれ今俺の名…」
右手の拘束を解くや否やすぐさま腰をガッチリとホールドする千冬
そして……ミチミチミチミチと締め付けていく
「あだだだだだだだだだ!内臓がはれ!破裂する!!」
唐突に視界が180度回転する
―あぁ…これは
「お久しぶりです!ジャーマン先輩!」
完璧に決まったそれは両隣の部屋にまで響き揺れる程の破壊力だった
「千冬ねぇ俺ちょっと散歩してく…………」
間が悪いことに丁度千冬がジャーマンを解いた瞬間に入ってくる一夏、そして真っ青な顔と共に静かにふすまを閉め走り去る
それもそうだ、何せ部屋の中で自分よりデカい体の赤城優が大の字に倒れ白眼を向き失神しているのだ。
そしてそれを立ったまま見下す千冬……以下の事を踏まえ一夏は、とばっちりを食らいたくない。
赤城が失神ですんでいるのに対し、もし自分が食らった場合確実に半日以上ベッドの上だろう。よし、逃げよう。あの関羽から逃げよう。呂布を倒した関羽から逃げよう。そして現在疾走に至ったわけである
―あれから何時間たったのだろうか
ハッと我に返った瞬間、視線に入ってきたのは千冬の顔だった、しかも腕組みをし目を閉じている
―寝てるのか?って!待て待て!この態勢で、この視界……間違いぬぇ
「…膝枕…」
思わず口にしてしまい慌てて目と口を閉じる
―お、起きてないよな……
うっすらと右目を開け顔色を伺う
「スー……スー…」
―良かった起きてない
ホッと胸をなで下ろし静かに寝返りするとニヤニヤしたクラリッサがいた
―野郎……
しかも何やら紙にスラスラと尋常じゃないスピードで書いている。そのせいかこちらには全く気づいていないようだ
―何を書いてるんだ…いったい
そんな事を思いながらも、偉く幸せそうな顔をしているクラリッサを見ると何故だか先程まで抱いていた腹立たしさが消えていった
―はぁ……
ヒュー…………ドーン!
ヒュー…………ドーン!
ヒュー…………ドーン!
外では盛大に花火が上がり夜空を染め始めていた
「は!何事ですか!」
「ん……何だ?」
トランスモードから帰宅するクラリッサと眠りから目覚める千冬
「花火ですか、どうやら今日花火大会らしいですね」
「そうなのか」
「夏、海とくれば花火は外せませんからね」
目をキランと光らせ花火を眺めるクラリッサ
廊下の方ではパタパタと慌ただしい足音が聞こえ始める
「ねぇねぇ花火の向こうに何か見えない?」
「あれは、一夏さん達じゃ?」
「あはは!いっち~みんなに追われてる」
―……………己!ディケ…じゃない!己!一夏!
「死ぬ!マジで死ぬ!」
夜空に咲く大輪の花の下を箒を担ぎながら必死の形相で走る一夏
「我が嫁でありながら……」
「一夏~なにしてたのかな?」
「よし、ぶっ殺そう」
「ふふ…ふふふ………」
それをISで情け容赦なく追う箒を除く一夏ラバーズ
「夏の日の 夜空を飾る 血の花火…………」
そんな俳句を読みながら逃げ回る一夏に合掌
翌朝
「全員乗ってるか?」
「はい、赤城先生全員います」
「了解っと…」
点呼確認しバスから降り、外で井戸端会議している教師達に合流する
「二組は全員います」
「わかった……すまないが優、一組の方に乗ってくれるか?」
「え、一組ですか?」
「何だ?嫌か?」
「いえ、イヤでは無いですけど…二組は?」
「私が乗りますから大丈夫ですよ、赤城先生」
えらく上機嫌の山田先生
「え、じゃ、お願いします」
「はい!!赤城先生も頑張って下さいね」
―頑張るって何を?
「そう言えばクラリッサさんの姿がまだ見えませんが?」
「クラリッサなら、締め切りがどうとか言ってパンパンの封筒を持ってポストに向かったな」
―まさか…あの紙って
「そ、そうですか、そしたら、先にバスに乗ってますね俺」
「ああ、わかった」
一組のバスに乗り込む
―あいつ等の様子でも見る……か
「ああ、疲れた……喉も渇いたな……みんな何か飲み物持ってないか?」
ほぼグロッキー状態の一夏
「持ってるけどあげない」
「私も同じく」
「僕も」
「私もだ」
「…………」
―何だこの…ドロドロ感は…箒にいたっては顔真っ赤だぞ
「大変そうだな一夏」
「大変ですよ、赤城さん」
「あなたが織斑一夏君と赤城優君?」
話しかけられた方向へ振り向くと、そこには1人の女性が立っていた
「「えぇ、そうですけど」」
声を揃えて答える男子2人
―教師では無いよな?見たことないし
「私ナターシャと言います、この度は大変お騒がせいたしました」
「お騒がせ?」
「はい、私のIS、銀の福音(シルバリオゴスペル)が暴走した挙げ句に多大なる損害を与えまして」
話をマジマジと聞く一夏に対し、俺はナターシャさんの顔さえ見る事ができなかった
―そうだよな…例え自立型とは言え、彼女にとってはパートナーそのもの、それなのに俺は何の躊躇いもなく破壊してしまった
「アナタ達には重ね重ね、お礼を申し上げます」
「頭を下げないでください……理由はどうあれ、我々はアナタのパートナーであるISを破壊してしまった事に変わりは在りません、あなたが頭を下げてしまってはこちらも頭を下げ無ければなりません」
頭を下げようとするナターシャを制止する
「あなたは優しいのね、でも、その優しさは時にあなたを『危険にさらす事』になりますよ」
「それでも構いませんよ、そん時は周りを頼りますから…な」
「喜んで手を貸しますよ赤城さん」
「ふふ、仲のいいナイトさんですこと」
ナターシャさんはそれだけ言うと唐突に一夏に近づき頬に軽くキスをした
そしてそれが引き金となり一夏ラバーズが立ち上がり
「「はい!飲み物!」」
ドカドカと一夏目掛け凍ったペットボトルを投げつける
「うわ……痛そう」
「あなたにも……」
ゆっくりと首に両手を回されキスされる頬ではなく唇に…………
―しまっ!何か一夏の時より長いような
「今度良かったら、私のラボにも遊びに来てね」
両手をほどき上目づかいに言うナターシャ
―ヤバい、この展開はマジでヤバい
「じゃあね、自由で謙虚な拳闘士(ナイト)さん」
そう言い残しバスから降りるナターシャ、それと同時にバスに乗り込んでくる、クラリッサと千冬
「2人とも落ち着いて話し合いましょう!暴力では何も解決しな…」
こちらの言葉は2人には届かず右手を千冬、左手をクラリッサに固定され
「痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛」
ミギィ!と腕の軋む音がバス内に響き、キレイに両腕をアームロックされる。
容赦なんかない確実にへし折る勢い良いで……
「ゐぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!折れる折れる折れる折れる折れる折れる折れる折れる折れる折れてしまいますぅぅぅぅぅぅ!俺のゴールデンアームがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
こうして、ハプニングはあったが臨海学校は無事幕を降ろしたのだった。