災難とは…いきなりやってくる物である
久方ぶりに定時(一夏達の特訓は今日はお流れと言うこと)で、上がれた俺は我が相棒(PC)に電源入れチャットをし始めるのであった
「おいす〜(^^)」
「ミスブルーおいす一(^■)」
「おお、ブララビさん来ていたんですか」
「ええ、まぁところで、ミスブルーさん、リ●イ●についてどう思います?」
「斬新」
「一刀両断ですねw」
「まぁ、シナリオライターが違うからな…やっぱしウミネコよりになってるし、でもちゃんとキーっぽい話もあった」
「そうですね……私適には月√で終わった方が良かったきもしますね」
「wそれ言ったらシャレにならんでしょう(笑)」
「少しマジレスしてもいいですか?ミスブルーさん」
「いいですとも」
「ミスブルーさん、小耳に挟んだのですがIS学園で教師をしているとは本当ですか?」
「いきなり藪からステッキだな誰から聞いたかは聞かないが、確かに事実だ」
「そうですか……明日友人がそちらに転入するそうなので何卒面倒みていただければ幸いですm(_ _)m」
「まぁ、心掛けはするよ」
「さすが、蒼穹の塊でできた拳闘士」
「照れるではないか///」
「では、そろそろおいとましますね(^。■)ゞ」
「おう、またな我が同士よ(^^)ゞ」
チャットを終了した俺はシャワーを浴び寝床に付くのであった
「友人が転入………確か一組だったな…はぁ…」
―参ったな…またあの人に弱みを握られかねない。只でさえ買い物の約束があるし……
「はぁ〜不幸だ…こういう日はちゃっちゃと寝るに限りる…」
ジリリリ…ピ!
「………よく寝た」
目覚ましを止め、カーテンを開けると、雲一つない青空が視界いっぱいに広がる
「よきかな、よきかな」
のろのろと身支度を始め、Yシャツに青ジーと言うクールビズファッションで我が家を後にする
「いや〜今日は見事な快晴だな…こういう日は飛ばしたくなる」
アクセルを目一杯捻り、次々と車を縫うように抜いていく
スーパーカブのメーターは振り切る寸前まで跳ね上がり、まさに
「振り切るぜ!!」
テールランプの残像を残し、マフラーからバックファイアしながら一陣の風となる
IS学園到着と同時に時刻を確認すると
「余りにも早く着きすぎた……てか、俺はいったい、なにから振り切ったんだろうか」
何時もより30分近く早く着いたため、自販機から缶コーヒーを買い空きっ腹に流し込み、一息つく
「あぁ〜五臓六腑に染み渡る」
「おい」
「ん?」
「職員室と言うのはどこだ?」
左目に眼帯をした少女が話しかけてきた
―ウチの制服着てる、と言うことは
「転入生か?」
「そうだが?」
―おいおい。どこの国境なき軍隊の傭兵だ?
「案内するよ、一様俺教師だし」
「そうか」
―口数すくなねぇ。こんなぶっきらぼうな奴そうそう………いたな眼帯はしてないが『問題ない』が口癖の軍曹が……
職員室まで案内し、後は中にいた織斑先生にバトンタッチ、俺は俺で仕事をちゃっちゃと済ませる事にした
「恐らく、今日は定時に上がれないんだろうな」
何故かこういう時だけ、長年の直感が冴え渡る気がする
ざわ…ざわ…
ざわざわ……ざわざわ
「すまんすまん、思ったより教頭と話が弾んで…………な?」
急いで教室に行くと、二組全員で鈴音を説得…もといゾンビアタックで廊下に出ないように止めていた
「あ、あっかぎ〜ん!早く加勢してよ!!」
「そうですわ!出ないと死人がでますわ赤城先生」
「ウガァァァァァ!HA☆NA☆SE☆」
「………」
―恨むなら、己を恨めよ……
「アタァァァァ!」
「ごはぁ!……ふきゅ〜」
男女平等アッパーが鳩尾に鋭く入り、バーサーカーと化していた鈴音が静かに床に倒れ込み気絶する
「安心しろ峰打ちだ」
「あっかぎ〜ん、拳に峰は無いかと」
「とにかく全員席に着け、話はそれから聞こうではないか」
ぶっ倒れた鈴音の両手を組ませ、腹の上に置き、白い布を顔に被せ教壇に戻る
―南無三…
「はいはーい、あっかぎ〜んあたしが説明するね」
「よし聞こう」
「今日転入してきたラウラさんがイッチーを……こうパシンと…」
身振り手振りで話す綾瀬
「………は?」
「理由は分かりませんが、貴様など認めてなるものかと、言ったそうですわ」
「???」
―事態が飲み込めんのだが………もし事態がわかる人がいたら俺のところに来て分かるように説明してくれ
「ちょっと先生、一組に行ってくるわ」
頭を抱えながら廊下に出る
「お気をつけて赤城先生」
ノックをして一組の扉を開ける
「失礼…」
「ん?お前は……」
「えぇーと」
盛大にやらかした転校生と運悪く目があった
「ちょうどいいところにきたな赤城、ラウラを連れて校内の案内を頼む」
「え!俺二組………」
―何だ、この一組の空気の冷たさは
「わ、わかりましたよ」
「ラウラ、赤城先生について行け」
「はっ!了解です教官」
―教官?………あぁ、そういやブララビさん言ってたな…ドイツで一年間、織斑先生が指導してたって
「んじゃ、二組も頼みますよ」
「わかっている二組には、山田君を向かわせる」
―はぁ………
適当に校内の主要箇所を案内する事30分、やたら重い空気が俺の両肩にのしかかってくる
―転入初日から問題起こすとは………ブララビさんあんたって人は……
頭を抱えながら、小休憩がてらベンチに腰掛ける
「とりま、主要箇所はそんな感じかねぇ」
「は!では私は一組に戻ります」
「ちょい待ち」
「何でしょうか?」
自販機に小銭を入れコーヒーを二本買い一本をポイッと投げ渡す
「!」
「俺の奢りだ、まだ時間あっから話に付き合え」
「それは命令ですか?」
「ああ、教師命令だ」
「わかりました」
大人しくベンチに座るラウラ
「ま、詳しく詮索しないが転入初日から織斑先生を困らせんなよ…」
缶コーヒーを開け飲みながら、とりあえず今回の件について軽く聞く
「教官はこんな……こんな場所にいる器の人ではない!」
そう言葉を言い放ち、立ち上がる
「………」
―いきなり地雷踏んじまったな……どうすっかな………
コーヒーをズズーとすすりながら考えていると、彼女は再び口を開いた
「ここの生徒達はISをファッションや何かと勘違いしている!」
グシャ!!
「あんま、調子ぶっこくなよ?青二才…」
今の一言に思わずスチール缶を片手で潰してしまった
「なんだと!」
―ファッションや何かだと?対そうな言い方だなコイツ
「少しISがうまく乗れ、専用機持ちってくらいで、ここにいる全生徒を見下すとはな………」
「貴様に何が分かる!所詮『金』でしか勝ちを拾えない素人風情が!!」
ギリッ!!っと思わず歯が鳴るほど噛みしめる
「お前どこでそれを……いや軍隊なら造作もないか」
―冷静になれ、クールになれ、俺は教師だぞ…
「あぁ当然だ、貴様が教官に惨敗したことも、両親が恥のあまり死んだこともな!」
「そこまで知っているのか…なら、ラウラ・ボーデヴィッヒ……今日の深夜0時に第3アリーナへ来い」
「何故?」
「簡単だ、その伸びに伸びた天狗の鼻をへし折ってやる、素人に軍人が負けたとなったら流石にお前もタダでは立ち上がれないだろ?」
「わかった、貴様に素人と軍人の違いを見せつけてやる」
彼女は歯を噛み締めながら、こちらに挑発を続ける、それは売り言葉に買い言葉となり2人のボルテージを上げていく
「偉い自信だな、楽しみにしてるぜ、せいぜいボディアーマーくらい仕込んどくんだな」
2人とも背中を向け違う方向へ歩いていく
―たく……俺もまだまだ子供だよな…………
職員室に戻るや否や、後悔しながら、次の授業の準備を始める
「……素人……か」
―あぁ…また嫌なもん思い出しちまったな……
いつもの仕事をしながらも心の中では……ラウラに言われた事がまだ心に刺さったままであった
「素人………か…」
無音な職員室の中で俺のため息混じりの声は良く響いた。
「やっぱ誰も信じちゃくれねぇよな、俺1人がやってないって言っても」
―八百長……俺はその一言で全てを潰された
「笑えてくるな…両親はあの世逝っちまうし…俺は俺で夢が夢で終わっちまった………会長に拾ってくれなきゃ俺は」
―間違い無くISになんて関わらなかっただろうよ
「とんだ親不孝もんだ……クソったれ!」
怒りに身を任せ、壁に向かって拳を振るう。当たり前のように壁はビクともせず、ただ殴りつけた拳だけが痛んだ
その痛みと共に、涙がこぼれ落ちる
「れが…俺が何したってんだよ!何で!チクショ…チクショ!」
椅子に崩れるように座り、感情を机へ向け、2〜3度叩き歯を食いしばる
「う…ぐ……」
―みっともねぇ……漢が泣くなんてよ……
こんな時には何時も思い出す、誰1人参列してもくれない地味な葬式。
雨の中たった1人でずぶ濡れになりながら、雨が止むまで墓の前で誰を憎むでもなく、ただひたすらに泣き続けた幼き自分。
もう誰も頼らない…もう誰も信用しない……信じられるのは己と両拳のみ……それが俺があの時、両親の墓前で誓った最初で最後の言葉であり、俺の夢が消え去った瞬間でもあった。
―――――――――――
私は動揺した。
ラウラが1人で戻ってきたところを察した私は、赤城から話を聞くべく、恐らくいるであろう職員室へ足を運び、入ろうとドアに手を伸ばした時だった。
中から赤城の声が唐突に聞こえたのだ
「素人…………か…」
少々悪い気はするが、私はしばらく職員室の扉近くの柱に寄りかかり聞く事にした。
―久し振りだな…奴の独り言を聞くのは……
「やっぱ誰も信じちゃくれねぇよな、俺1人がやってないって言っても…」
―赤城、お前はやっていない。それは私が断言しよう。付け加えるなら、お前が戦った他の国の代表候補生もそう思っているはずだ……八百長ではないとな。それにお前と戦ったあの日、お前のISが整備不良で、お前自身、満身創痍だったこともわかっている…それでもお前は私を窮地まで追い詰めた…そんな奴が八百長などするわけないだろう
「両親はあの世逝っちまうし、俺は俺で夢が夢で終わっちまった…」
―お前に合わせる顔がなくて葬式へ行けなかった私が今でも不甲斐ない……すまない…赤城…私は身内を守ることで手一杯だったんだ……
「とんだ親不孝もんだよな……クソったれ!」
―違うぞ赤城…親にとって子供の夢というのは自分の夢のように大切な物……赤城お前は、親孝行した部類だ…
「たく、俺が何したってんだよ…何で……チクショ…チクショ!」
―夢を追い掛けただけで………
「酷い物だな………」
「う…ぐ……」
―泣いているのか………
その時私は…あぁ〜そう言えばあいつも、若者だったんだなぁ
と身にしみて実感した…
―忘れていたよ…赤城
「さて、そろそろ入ってもいいだろう……あいつとていつまでも、めそめそしてはいないだろうし」
ゆっくりと職員室のドアを開ける
―何となくだがお前の本質がわかってきた
間違い無くお前と私は同じ部類だ…
特にお互い他を頼らないところとか…な
―――――――――――
時刻は深夜0時、辺りは暗闇が支配し、静寂な時間が流れる。アリーナを一時的に開放させ、俺は打鉄を起動させてラウラの到着を、ただひたすらに待っていた
「………」
―全く持って無意味な戦いだ……
「来るはずないか、アイツに利益は無いからな」
―仕方ない
軽く拳を握り構えシャドーボクシングを開始する
目を閉じ自分が戦うであろう相手をイメージし思い描く、常に最悪な事態だけを想定し拳を振るっていく、時に荒々しく……時に粛々に………
「シュッ!シュッ!」
―憎しみで拳を振るっては………
「ダメだ!!」
最後の一発で、自分の思い描いた相手は膝を着いた、勝敗はついてはいないボクシングで言うならダウンを取ったところだ
「待たせたな」
声がし空を見上げると、垂直降下で地上に激しく着地し土煙が舞う。
右肩に巨大な砲を引っさげた黒きIS、姿を見るだけでセシリアと同じ遠距離仕様のISであることが目に見えて分かった
「遅かったじゃないか…言葉は不要か…」
開始合図など端からなく、目があったと同時に接近し互いに組み付き相手の出方を窺う2人
「随分な様子見だな!」
「それはそっちもだろ!!」
バックステップをしながら、右ストレートを当て離れる
「馬鹿め!このシュヴァルツァレーゲン相手に、わざわざ距離をとるとは!」
巨大な砲の砲身がこちらを向き容赦なしに発砲
「レールカノン!?さすが軍人躊躇いはないか…だが!」
軽くサイドに身を捻り砲撃を回避、そして身を沈めIBで一気に接近する
「かかったな!阿呆が!」
不適な笑いと共に左手を迫り来る赤城へかざす
「な!」
猪突猛進の勢い良いでラウラに迫りノーモーションの右を繰り出そうとした瞬間、機体が硬直したように動かなくなった
「AIC!」
「ほう、AICが分かるとはさすが教師と言ったところか……褒美だ受け取れ」
レールカノンの砲身が眼前に構えられ、チャージ音と共に光が集まっていく
―零距離かよ!!
何とか動かそうにも、機体は言うことを聞かず硬直したまま
「くらえ!!」
「く!」
動かない赤城目掛け発砲そして有無を言わさずに着弾
「完璧な手応え…やはり所詮は素人か」
レールカノンを発砲後バックステップし、土煙が晴れるのをしばし待つ
「な!」
土煙の中から弾丸のようにラウラ目掛け突っ込んでくる一機のIS
―今反応しても遅い!
「歯ぁ食いしばれ!!最強気取り!!」
体全体を使い右拳を腹にぶつけてやる、内臓をえぐるような衝撃がラウラを襲い盛大に吹き飛びアリーナの壁に激突する
「な、何が………」
「詰めが甘いんだよ、レールカノンを撃つ瞬間にAIC解きやがって……ま、おかげでSEを一点集中で集めて砲弾を弾けたんだけどな」
レールカノンの威力は打鉄の左腕が物語っていた。
SEで生成した盾を完膚無きまでに破壊し、左腕の装甲を激しく抉っていた
「まだだ、まだ私は…」
呼吸するのがやっとの筈だが、何とか立ち上がろうとする
「お前の勝ちだよ…ラウラ=ボーデヴィッヒ…」
「な、ふざけるな!」
「ふざけてない。俺のSEは0だ…つまり負けだ」
打鉄のSEは0を示しており指一つ動かず、オマケにあちこちから蒸気が上がる
「ぐ!何故だ…何故アナタのように強い人が」
「強けりゃいいってもんじゃないさ」
打鉄から降り、後片付けを始める
「強くなければ…」
ラウラが盛大にぶつかり、へこんだ壁に色を塗ったダンボールをはっつける
「気をつけて帰れよ」
身を起こし上空に浮上、寮へと戻り始めるラウラ
「ラウラ……過去の俺のようにはなるなよ…頼むから…」
翌朝、朝会で織斑先生にアリーナの件で誘導尋問されたが何とか、かわしきった
「やっぱ段ボールはまずかったか、まぁ、ごまかせたから良しとしよう……うん」
1人デスクワークをしながら次の授業の準備をし始める
「いや〜職員室に人が居ないってのはいいな〜」
―何故なら、伸び伸びと出来るからさ
そんな一時の平和を破るかのように廊下を疾走する2人組
「♪〜」
鼻歌交じりにコーヒーを煎れていると、職員室のドアが勢いよく開かれた
「あっかぎ〜ん!」
「赤城先生!」
息を切らしながらなだれ込むように入ってくる綾瀬と厳島
「どうした?綾瀬に厳島」
コーヒーを啜りながら慌てて入ってきた2人の話を聞く
「鈴ちゃんが、鈴ちゃんが」
今にも泣き出しそうになる綾瀬の顔を見る限り、よほどマズい事になったのだろう。
―確か次はアリーナを……まさか!
コーヒーを机に置き2人の間を抜け、職員室を飛び出す
「場所は第3アリーナですわ!!」
全力疾走する赤城に向かって叫ぶ厳島
「了解!」
軽く手を上げて答え、ボルト顔負けのスピードで第3アリーナへ向け激走する
「ラウラお前が欲した強さは……そんな歪んだ強さじゃないだろ!」
第3アリーナの格納庫に着くや否や、すぐさま打鉄に飛び乗り起動、カタパルトへ接続する
「緊急発進(スクランブル)だ!主導権をこちらに!間に合ってくれよ!!頼むから」
カタパルトからアリーナ内に向け一気に加速する
アリーナ内では、もはや勝負どころの騒ぎでは無くなっていた
「ふん、その程度か」
「「きゃあ!」」
一方的なたこ殴り状態のセシリア、鈴音
「やめろ!!」
アリーナのシールドをぶった斬りそのままの勢いでラウラに斬りかかる一夏
「無駄だ」
「な、体が……」
「このAICの前では貴様等なぞ、敵ではない」
レールカノンの砲身が一夏へと向けられる
「く!」
「ところが、ぎっちょん!ぎっちょんちょん!」
レールカノンを撃とうとしたラウラの脇腹目掛けタックルし、一夏から強引に引き剥がす
「また、私の邪魔をする気か!!」
「悪いね、コレでも教師なもんで、一夏、デュノア2人を頼む」
「あ、赤城先「一夏今は2人を医務室に運ぶのが先だよ」
チラリとこちらを見るデュノアとアイコンタクトを交わす
―感がいいみたいで助かった
「わかった、赤城先生」
「さっさと行け」
「はい!」
―さぁ〜て……どうすっかな……
「そこの生徒!及び赤城先生いったい何の騒ぎですか!緊急発進(スクランブル)までして」
外部スピーカーから他の教師の声が聞こえる
「ち!」
水を指され、そそくさと居なくなるラウラ
「まぁ、何とか何だろう」
頭をかきながら、あれこれと言い訳を考え始める
「減給処分…か……」
「ま、だいぶ生易しい処分だと思うぞ赤城」
あの後、教頭に拷問級の説教をくらい、乱雑に書かれた一枚の紙と共に職員室に追い返された俺は、溜め息をつきながら織斑先生と冷めたコーヒーを飲んでいた
「聞いた話によると生徒達の喧嘩みたいな話だったが?」
「まぁ、俺がいろいろと嘘吹き込みましたし、結果オーライでしょ、当初から予定してたタッグマッチ戦、開始出来ますし」
「そうだな、とりあえず、生徒をかばった礼だけは言っとくぞ赤城」
「当然の事をしたまでですよ」
―しっぺ返しが手痛いですけどね
「当然の事……か…」
「教師が生徒を守るのは当然の事でしょう」
「ふ、お前らしいな」
「よく言われますよ」
「にしては、随分なお粗末な嘘だな」
「咄嗟だったんで勘弁してくだしぁ」
ラウラ及びセシリア、鈴音の三人は私の監修の元模擬戦を行っており、アリーナのバリアについては私が一夏に試し斬りで斬ってみろと言いました。私の目が行き届いていなかった事や軽率な行動のせいであり生徒達には一切の非はありません
―俺にしちゃ上出来な方だ
「困ったら私の所に来い飯ぐらいなら奢ってやる」
「そん時は頼みますよ」
職員室を出て行こうとした織斑先生は何かを思い出したかのように立ち止まった
「セシリア、鈴音、2人とも大ケガでは無かったそうだ、ただ、タッグマッチ戦には出れそうにないな機体の損傷が酷いらしい」
「そうですか、コレであの2人の頭が冷えればいいんですけど」
「専用機持ちだそれぐらいわかっているだろう」
「ですよね…」
それだけ言い残しカツカツと職員室を出て行く千冬
「んじゃ、まぁ2人の顔でも見に行きますかね…」
重い腰を上げ首の骨を鳴らしながら医務室へと向かう
「あの時は貴方が!」
「うっさいわね!あんただってあの時!」
扉を開けると医務室内で、あちこち包帯を巻いた2人が口喧嘩をしていた
「……………」
「あ、赤城先生」
―うん、わかってたけどね………泣けてくるな…
「……ま、まぁ元気そうで何よりだセシリアに鈴音」
「当然ですわ!」
「こんなのかすり傷よ!」
「「あははは………はぁ」」
鈴音、セシリアを見て、苦笑いする一夏、デュノア
「それより、赤城先生聞きましたよ、随分無茶したみたいじゃないですか?」
唐突に切り込んでくるデュノア
「ん?あ、まぁなって、良く知ってんな」
「?シャルロット、赤城先生に何かあったのか」
「私達も知りたいですわ」
「うんうん」
「簡単に言うと…」
「減給処分だ」
「「え!」」
「何で赤城先生が減給処分なのよ!」
「そうですわ!どちらかと言えば私達に処分があってもいいくらいですのに」
「そうだ、それにラウラだって!」
「はいはい、止め止め、こういうのは上が謝ればすむんだからグダグダ言わない」
「だけど!」
「もし、俺の事を少しでもすまないと思うなら、タッグマッチ戦で誠意をだせ!タッグマッチ戦に出れない奴は少しでも早く怪我を治せ!俺はそれで満足だ…以上」
「「…………」」
沈黙する4人
「返事はどうした!」
「「はい!」」
「よろしい、んじゃ、あんまし寄り道しないで帰れよ、これ以上問題出されたら、さすがに庇いきれないからな」
「「はい!」」
医務室を背中を向けて出ようとすると……
「赤城先生!」
返事はあえてせずに歩き出す
「俺……頑張ります!」
一夏の決意に俺は軽く右手を上げて廊下に出、扉を閉める
―織斑一夏……お前は間違いなく強くなる…ま、俺の勘だがな…
そして、来るべきタッグマッチ戦
「まさか初手からこの当たりとはな」
「えぇ、因縁めいた物を感じずにはいられませんね」
オーダー表を職員室で見る千冬、赤城
織斑一夏・シャルロットデュノア
篠ノ之箒・ラウラボーデヴィッヒ
「ラウラのパートナーは箒ですか、まぁご愁傷様としか言いようがありませんね」
「そうだな、ラウラにとってパートナーは邪魔でしかないからな」
「あの〜2人とも見に行かないんですか?」
「山田先生、見に行かなくても勝敗はもう決まってますよ」
「そうだな」
―ラウラは負ける、確実にな
コーヒーを入れながら、アリーナの方角を見すえる
第3アリーナ内では、デュノアは箒を相手し、一夏はラウラを相手に戦いが始まっていた
「く!」
「ごめんねぇ、一夏相手じゃなくて」
「何を!」
ガギン!
箒のIS刀による一撃を、高速切替(ラピッドスイッチ)で左手のショットガンをナイフに替えて受け止め、至近距離から右手に持っていたショットガンを撃つデュノア
立て続けに二発当てた所で、箒が操る打鉄から白い蒸気が上がる
「く!ここまでか………」
SEの残量を見ると0を指しており、箒は戦闘不能
「お待たせ、一夏」
「シャルロット、箒は?」
箒をチラ見する一夏
「お休み中」
「そうか……」
「随分気楽だな…この私が相手なのに」
「ああ、これでようやく、俺は全力で行ける……零落白夜!」
白式の唯一仕様を使用
「サポートは任せて一夏!」
「頼む!」
♪〜
何処からか24時間ひっきりなしに鳴る内線の音が響き渡る
「あ、俺の携帯です、ちょっと失礼します」
職員室から廊下に出、携帯を開く
―非通知か……
とくに気にするでもなく電話にでる
「もしもし?」
「突然すみません、ドイツ軍ブラックラビット部隊副隊長のクラリッサ=ハルフォーフと申します」
「はぁ…」
―何故俺の携帯番号を?個人情報流失怖いわ〜
「要件を手短に話しますと……我が部隊の隊長ラウラ=ボーデヴィッヒを止めていただきたい」
「何故?」
「ことは先日我が軍のISを整備、点検中に起こりました」
「…続けろ」
「ラウラ=ボーデヴィッヒ隊長の機体シュヴァルツェアレーゲンにVTシステムが搭載されていることが明らかになったのです」
壁に背中を預け、天井を見る
「VTシステム……ヴァルキリートレースシステムだったか……国際条約で禁止になっていたはずだが?」
「はい、我々も気づくのが遅すぎました………」
「要は暴走するかもしれないから、止めてくれ…ってとこか」
「大変厚かましい事を言っているのは重々承知です」
「……」
「頼めるのはミスブルー…いや、赤城優さんしかいないのです」
目を閉じしばし考える
「わかった」
「本当ですか!!無論報酬は払います」
「ま、蒼穹の塊で出来た拳闘士が一般ジョブ相手に遅れをとるはずがない……でしょブララビさん」
「……とう」
携帯を切る瞬間に聞こえた「ありがとう」を胸に、アリーナの格納庫に向け歩き始める
「さて……」
携帯を開きメールを千冬に向け送信する
シュヴァルツェアレーゲンにVTの可能性あり…と
「俺は俺の出来ることをやるだけだ」
両手の骨を鳴らし気合いを入れる
―――――――――――
無機質な携帯音が職員室に鳴り響く
「ん?」
携帯を開き着信を見るとメールが一件来ていた
「メールとはな……」
宛名:赤城
シュヴァルツェアレーゲンにVTの可能性あり
―何だと
思わず眉間にしわを寄せる
「どうかなさいましたか?織斑先生?」
「あぁ、少しばかりマズいかもな……」
赤城の携帯にコールするが………
―電源を切っているのか………
「情報が少なすぎるが……手は早めにうっておくか……山田君、今の試合のデータをなるべく外に出ないようにする」
「え!今の織斑君達の試合をですか?」
「ああ、どっかの馬鹿が、また無理をするみたいなのでな」
―全く世話が妬ける
「わかりました。」
職員室を後にする山田先生
―VTシステムか………
「恐らくモデルは……………私だろうな…」
ニヤリと笑う
「まぁ、奴なら偽物の私相手に苦戦する事は無いだろう」
―苦戦するようでは………
「私の見込み違いと言うわけになるしな」
職員室を出、アリーナへ向かう
―不謹慎ではあるが……
「好奇心を抑えずにはいられないな…ふ」
―――――――――――
アリーナ格納庫に辿り着くと、あちこち包帯を巻いた痛々しい姿の鈴音とセシリアが仁王立ちで俺を待っていた
「どうした2人共、怪我はいいのか?」
「先生…答えて………」
やたら深刻そうな目でこちらを見る鈴音
「鈴音、急ぎがあるからあとでいいか?」
仁王立ちする2人の間を抜けようとすると
「神風」
ふとセシリアの口から漏れる言葉
「お前らどっからその話を…」
「ラウラと戦ってる時に聞いた、先生…あたしは先生が八百長なんてやるわけ無いって信じてる、だけどアイツは!」
下を向き泣くのを我慢する鈴音
「私も聞いた時は驚きましたが、そんな事ある訳ないと直ぐに反論出来ました、何故なら赤城先生はそんな事をせずとも充分お強いですから」
―喧嘩の理由は俺と恐らく一夏……か…参ったなこりゃ…
「鈴音、セシリア……お前らがそう思っても世間は八百長の一言で終わりさ、そりゃそれを言ったラウラには超ムカついたさ」
「でしたら何故!」
「でもな……俺はIS乗りである前に『教師なんだ』嫌みを言われたくらいで生徒を省くなんて事はしたくない」
「「…………」」
―それに……ラウラの親友に頼まれちまったしな〜まぁ頼まれなくても、救いに行っただろうがな
「先生…本当に損な役回りしかしてないね」
「うるせーよ、どんな時でも守っちまうのが真のナイトってな」
「ふふ、赤城先生らしいですわ」
2人の頭をガシガシする
「んじゃな、早く怪我治せよー」
打鉄に乗り込み、起動させる
「「はい!」」
カタパルトに手動で電源を供給し、いつでもアリーナ内に入れるように打鉄をカタパルトに固定する
「さぁ、ウサギさんを止めにいきますか……ね!」
アリーナ内では、大変な事態に発展していた
一夏、デュノアのコンビネーションプレイに完全に押され、自慢のAICを封じられラウラは劣勢に立たされていた。
慢心が敗北を招いたのだ
「認めん!この私が敗北などと「懐がお留守だよ!」
ラウラの一瞬の油断を見逃さず、開いていた距離をIBで詰め寄るデュノア
「馬鹿な、IBだと!そんなデータ何処にも」
「今初めて使ったからね、そしてこれで終わりだよ!」
盾の裏から、ひょっこりと出て来る69口径リボルバー機構内蔵のパイルバンカー
「盾殺し(シールドピアース)!?がぁ!」
一撃でほぼ勝負は決まった、と言っていいくらいの駄目押しだった
全弾全て撃ち込まれ、アリーナの壁へ吹き飛ばされ激突、それでも彼女は諦めずに2人に立ち向かう
「私は……私は…こんなところで負ける訳にはいかないんだぁ!!」
シュヴァルツェアレーゲンに取り込まれていくラウラ
「な…なんだ」
「まさか、これってVTシステム!」
シュヴァルツェアレーゲンは黒い人を模したような物に変貌し始める
「グッドタイミング?…いやバッドタイミングか?どっちでもいいか」
一夏、デュノアの前に滑り込むように着地する赤城
「「赤城先生!」」
「一夏、デュノア、試合は中止だ……すみやかっ!」
人を模したそれは、キレのある動きで手にした刀を下段から上段へ振り抜く
「あの動きは!」
「笑わせる、まさか織斑千冬のデータとはな」
その一撃は彼に通ることなく、左肘と左膝で器用に挟み止っていた
右拳を素早く相手の腹部に当て後方に下がる
「織斑千冬の攻撃はな!もっと!エグいんだよ!!偽物!」
攻撃をかいくぐり、右、左のフックのラッシュをかけ、最後に盛大にアッパーをお見舞いしてやる
宙に浮き派手に倒れる黒い人
「赤城先生!」
再び黒い人へ攻撃を加えようとした赤城に叫ぶ一夏
「一夏……お前は何のために力を欲する?」
そんな一夏に背中越しに語りかける
「え………何のため」
赤城の背中を見ながら考え始める間に、SEのデッドラインを超えた白式は待機モードへ移行する
「俺は………」
よろよろと立ち上がり始める黒い人
「俺は…みんなを守る力が欲しい!だから強くなりたい!!」
―守りの強さか…お前らしいな…
「ふぅ、わかった」
唐突に一夏に振り向くや否や、待機モードの白式にコネクターを差す赤城
「あ、赤城先生!」
「その力を手に入れる為には今あいつを倒す必要性があるんだろ?」
「……」
無言で頷く一夏
「なら、お前が戦うためだけの事をするのが教師ってもんさ」
打鉄のSEを全て白式に回すが…
「コレで右手一本くらいか……とんだ金食い虫だなこのIS」
「後は僕のラファールから」
ラファール・リヴァイブカスタムから白式にSEを回す
「え、シャルロット」
「これで雪片弐型と零落白夜が使えるはずだよ」
「一夏やるからには、絶対に勝て!」
「分かってるよ箒」
「頑張れよ、色男」
軽く笑みを浮かべ背中をバシッと叩いてやる
「はい!」
黒い人と対峙しする一夏
―羽ばたけ織斑一夏、お前が目指すその高みへ
「うおおお!」
下段から上段への切り上げ、そして刃を直ぐに真下に向け振り下ろす。
黒い人の刀は宙を舞い、真っ二つになった黒い人の中からゆっくりと倒れるように姿を表すラウラ
「いっちょ上がりだな……さて、俺は報告書でも書きますかね」
「……………はぁ…」
職員室に戻った俺は報告書とにらめっこしながらトントンと机にシャーペンを叩いていた
「参った……どう書けば丸く収まるんだ?」
そう、VTシステムの事は隠せなくても、何故それをしったか問われればマズいのだ、いろんな意味で…
「ニュータイプ的な直感で……はおかしい、つか痛い子と思われるしな……う〜ん、ラウラの様子がおかしかったので事情を聞いたところ……じゃ、ラウラの友人が」
「ドイツから整備連絡があり、確認しに行ったところそうだった」
ふと、右から流れてきた救いの言葉が脳裏をよぎる
「それいいですね、採用……て!いつの間にいたんですか!織斑先生」
右を振り向くとこちらの報告書をのぞき込むようにして見ている千冬
「貴様がいろいろつぶやいている時からだ」
―最初からですか…
「それはそうと…今回ばかりは肝を冷やしたぞ」
「あはは…はぁ」
「まったく私が…」
「?すみません、今…聞き取れなかったんですけど」
「き、気にするな、さほど重要な事ではない、それよりさっさと書いてしまえ!」
いきなり背を向けて言う千冬
「り、了解」
―デ、デレ期に入ったか!まさか…な…
書き初めて直ぐに漢字が出て来なかったため携帯を開き辞書をひきながら書いているとメールが一通届いた。
―?誰からだろう
左手で携帯を動かしながら右手で報告書を書く
宛名:ブララビ
―何だブララビさんか……
ブララビ事、クラリッサさんからのメールにはただ一言だけ
『ありがとう』
と書かれていた
「ふ」
思わず笑みを浮かべてしまった
「書き終わったか?」
「ええ、後は判子押して出すだけですよ」
携帯を机に置き、報告書に判を押す
「私はラウラの様子を見に行って来る」
「わかりました、俺もコイツを出してから行きますよ」
職員室から出て行く2人
ピロリン!
職員室内に赤城の携帯の音が鳴り響く
ディスプレイには一通のメールが届いた事を知らせる内容のようだ。
宛名:クラリッサ
今日PM6:00に自宅にお邪魔します
そう、このメールがあんな悲劇になるなんて誰が思っただろうか……
「はぁ……コッテコテに怒られたな…まぁ仕方ないっちゃ仕方ないんだが」
教頭からどぎつく怒られた俺は溜め息混じりに医務室に向かう。
理由はラウラの様子を見に行くためだ。
―あれくらいの強気っ娘は一度折れると何処までも引きずる傾向があるからな〜何とか踏ん切りつかせないと…マズい
「さて、来たはいいがどう声をかけるべきか…」
医務室の前で佇み悩み始める
―軽く行くか?いやいや流石にそれは………はぁ
行動してから考えようと言うことで、ドアを開ける
要は出たとこ勝負に打って出ることにした
「あ、赤城先生」
「よう、見た感じ大丈夫そうだが、具合はどうだ?」
「ええ、今日は安静にと言われました」
「まぁあんな後だ、誰でもそう言うだろ」
小さな椅子をベットの下から引っ張り出し腰掛ける
「赤城先生……色々すみ」
謝ろうとしたラウラに向かって
ゴン!
頭に軽い拳骨をくらわせる
無論赤城が軽くと言っても食らった本人達からすれば相当な物であることは間違いない……つまりは…
「っつう〜!」
頭を押さえ涙目になるラウラ
「謝るんじゃねーよ、お前が謝ったら俺も謝らないといけないだろうが」
「……」
小さな椅子から立ち上がりそっとラウラを抱きしめる
「お前が無事なら俺はそれでいい、誰だって過ちの1つや2つするものだ、重要なのは、その過ちを今後に活かすかどうかだ」
コクリと頷くラウラ
「お前は素直だから、この先もっと延びる」
ゆっくりラウラを離す
「ありがとうございます……」
「あぁ、じゃあ俺は帰るからな」
ラウラの頭をガシガシし、のんびりと医務室を出て行く