ISてぃーちゃあ〜   作:BlueRider

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第蜂時限目~とある休日の鬼教師~

「ふぃ~久々に仕事が少なくて良かったぜ」

 

最終時限も無事終わり、意気揚々と定時に上がり駐輪場に向かう

 

「最近ドタバタ続きだったからな~神様が、たまには褒美をくれてやろう的なノリでくれたんだろう、うんうん」

 

ヘルメットを被り、愛馬に跨りエンジンキーを回す

 

キュルルン!

 

「?」

 

再度エンジンキーを回す

 

キュルルルルルン!

 

「??」

 

徐々に笑みが薄れ青ざめていく

 

―まさか……

 

恐る恐る給油計を見ると……

 

給油ランプが点灯し、針がEを指していた

 

「チクショウメー!」

 

思わずヘルメットを、脱ぎ地面に叩きつける

 

―誰だ!神様がたまには褒美をくれてやろうっていった奴は!あぁ俺だよ!!すいませんでしたー!こんな褒美いらねーよ!

 

魂の叫びを上げながら、愛馬を押して帰る事、約一時間ようやく我が家につく

 

「何でこんな時に限って、ガソリン代が跳ね上がってるんだよ」

 

嘆きながら家の鍵を開け、中に入りベッドに倒れ込み目を閉じる

 

―疲れた…

 

「Zzz」

 

寝始める事数分、携帯の着信音が鳴り響く

 

「z……んぁ………誰だ?」

 

携帯を手に取り電話に出る

 

「はい……もしもし」

 

「赤城か?今何処にいる?」

 

声の主は千冬さんであった

 

「今自宅ですけど?何かあったんですか?」

 

「あぁ、何事も無ければ今日もお前の家に行きたかったが」

 

―何事も無ければ来るんだ…

 

前日の悪夢が蘇る

 

「ち、千冬ねぇ大丈夫だよ、何とかなる「馬鹿者!人生何とかなるで渡って行けると思うな!」

 

受話器から聞こえてくる一夏の悲鳴を聞きながら、しばし物思いにふける事にした。決して現実逃避ではない……そう現実逃避ではないのだ。大事な事以下略

 

「すまんな赤城」

 

「イエ、ナンラモンダイ、ナイデスヨ」

 

「?何故片言かは聞かんが、この馬鹿者、抜き打ちテストで酷い点を取ってな」

 

―うわぁ、出たよ鬼の抜き打ちテスト

 

「余りにも酷くてな、恐らく来週のテスト赤点取るか取らないかの瀬戸際だ」

 

「それはヒドい状態ですね」

 

他人事のように答える

 

「そこでだ、今からコイツをお前の家に向かわせる」

 

「へぇーそうなんで………はいぃ!?」

 

「コイツに勉強を教えてやってほしい」

 

眠気が一気に覚めベッドから立ち上がる

 

「いやいや!千冬さんが教えれば、いいだけでしょうよ」

 

「私は外せない用事あってな、長々としてられないんだ」

 

―はぁ…俺の休日が…

 

「頼む、お前くらいにしか頼める奴がいないんだ」

 

「…わかりましたよ、今どこにいるんですか?迎えにいきますから」

 

「その心配はない」

 

「はい?」

 

「もうお前の家だからな」

 

「……………」

 

こうして、儚くも鬼教師の優雅な休日計画が丸つぶれし、一夏赤点脱出計画が始動したのだった

 

―俺の休日……涙目

 

嘆き悲しむ間もなく玄関に向かいドアを開けると、我が休日を潰した張本人織斑一夏が笑顔でいた。

 

「と言うわけで、よろしくお願いします」

 

「……まぁ、何はともあれ、ようこそアウターヘヴンへ」

 

「お邪魔しまーす」

 

部屋に入りちゃぶ台を囲うように座る2人

無論会話は無い

 

「こ、これ千冬ねぇからの陣中見舞いだそうです」

 

スッと紙袋をちゃぶ台の上に乗せる

 

「あぁ、そうかい」

 

半ば投げやりに答える

 

「今日どう…「今日はやらん!つか、明日お前の周りの奴らをここに呼べ」

 

「え、全員ですか?」

 

「あぁ、あの5人から教えて貰え、俺はそれでわからなかった時のピンチヒッター…オケェ?」

 

「赤城怒ってます?」

 

「あぁ、今すぐにでもお前を、血だらけのサンドバックにしてやりたいくらい怒り狂ってる」

 

血走った目で睨み付けると、流石の一夏も危機感を察したのか、それ以上この話をしなくなった

 

「だから今日はやらん」

 

「あ!言い忘れてましたけど、俺ここに泊まり込み、みたいなんですけど……」

 

「……………はぁぁぁぁぁ、トイレと風呂と台所の場所説明する、あぁ、風呂と洗面所一緒だから」

 

「赤城先生」

 

「何か用かな?」

 

「こんな日もあります、元気を出してください」

 

満面の笑みを浮かべる一夏に、俺の何かがキレた

 

「誰のせいだと思ってやがる!コノヤロー!」

 

ちゃぶ台を勢い良くひっくり返し、一夏にコブラツイストを決める

 

「す、すいません!」

 

「ウガー!」

 

暴れまわること数分、平穏が戻る

 

「あらかた、間取りはそんな感じだ」

 

「わかりました」

 

「飯は出前にしようと思うが、一夏は何が食いたい?」

 

携帯を開きチラシを見始める

 

「え、冷蔵庫に何も無いんですか?」

 

「ない訳じゃないが、面倒じゃないか?」

 

「少し冷蔵庫の中見てもいいですか?簡単な料理が出来るかも知れませんし」

 

「それなら構わないが、お前料理作れるのか?」

 

「まぁ、人並みくらいには……」

 

冷蔵庫を物色し始める一夏

 

「なら頼もうかなぁ今月何かとヤヴィし」

 

「任せてください!材料もいい感じにあるんで何とかなりそうです」

 

「そうか、んじゃ頼むわ、俺風呂わかしてくるから」

 

「わかりました」

 

「手料理で最近いい思い出ねぇしなぁ、過度な期待はしないことにしよう」

 

自分にそう言い聞かせながら、風呂場のボイラーを動かし台所に向かう

 

「一夏~料理どんな感じだぁ?」

 

「後30分あればできる感じです」

 

「そうか」

 

声だけかけ居間に戻りベッドにダイブする

 

「あぁ、ねみぃ」

 

枕をもふもふし、目を閉じ寝始める

 

―そういや、寝てなかったっけ

 

ふと、昨日の出来事を思い出す。

 

せわしなかったが、とても充実した1日だった。まるで……『友達』と和気あいあいと、遊んでいるようなそんな感じに近かった。

 

思い起こせば今まで、友人と呼べる人間はいなかったに近い

 

学校へ行っても1人……

 

ジムに行っても1人………

 

常に相手を倒す事だけを考え、誰にも縋らず、頼らず、媚びず、生き抜いてきた。

 

その結果が今の………俺自身か

 

「赤城先生、料理出来ましたよ」

 

「あぁ、んじゃ食うか」

 

「何か俺………また気分害するような事しました?」

 

「いや、してねぇよ」

 

ちゃぶ台にはシンプルな焼きそばが並べられ、箸でそれを掴み取り皿に装い始める

 

「あ、赤城先生」

 

この空気に耐えられ無くなった一夏が唐突に声を張り上げる

 

「いきなり声を上げてど うした?」

 

焼きそばを箸で掴み口に運ぼうとすると

 

「親友っていますか?」

 

その言葉を聞き、箸が口に運ばれる前にピタリと止まる

 

「親友と遊ぶだけで結構違うもんですよ、気分的にも肉体的にも」

 

「…………」

 

―親友…ねぇ

 

「赤城先生?」

 

「…ねぇよ」

 

「?」

 

「いねぇよ、そんな奴」

 

ここに来てようやく地雷を踏んだ事に気付き、バツが悪そうに目をそらす一夏

 

箸を静かに置き、立ち上がる

 

「一夏、ちょっくら出掛けるぞ」

 

「ヴェ!∑(OwO)、こんな夜中にですか!?」

 

「黙ってついて来い」

 

一夏の声を遮り、愛馬の鍵を手にとる

 

向かう場所は、誰にも言っていない秘密の場所であり、今の俺の始まりの場所……『両親の墓前』

 

――――――――――――――――――――――――――

 

自宅から走ること数分、辺りは漆黒の闇に包まれ、小さな街灯が一本だけ立った場所に着く

 

ここまで来る途中、会話は当然の事ながら無く終始無言であった。

 

愛馬を寂れた駐輪場に止め石段を登っていく

 

「着いたぞ」

 

唐突に一言それだけを言い放つ

 

墓地が一望できる小高い丘の上に馬鹿でかく、広い墓石が立ち、墓石には赤城家と掘られていた

 

その光景に言葉を失う一夏

 

「驚いたろ?俺の両親な、自殺しちまったんだ………その時の両親の保険金、全部使って建てたんだ、この墓はな……」

 

そんな一夏を尻目に、墓石に手を当てながら静かに語り出す事にした。

 

自分の歩んできた道のり……

 

何故両親が自殺したのか……

 

以前、千冬さんと戦ったことがある事などを……遠くを見つめながらゆっくりと

 

その語りを聞き、ただ呆然と立ち尽くしこちらを見る一夏

 

「それ以来かな……いや、それより前からか……友達を作っていいのか?自分はもっと苦しむべきじゃないか?つう、自問自答を繰り返してる度に今に辿り着いちまった、笑えてくるだろ?」

 

ただ黙々と1人で肩を震わせながら喋り続ける。

 

「あ、赤城先生!俺…俺らは両親に捨てられました!それ以来、俺は……俺は千冬ねぇにずっと支えられ守られて生きてきました」

 

声を張り上げ自ら経験した事を、語り始める一夏

 

「その時に一度だけ、千冬ねぇに本気で怒 られた事があるんです、それは、俺がほんの出来心で家出した時です、あの時は滅茶苦茶怒られました……そして、思ったんです…『人は知らず知らずのウチに誰かを支えてる』んだなって………だから、もうそんなに自分を責めないでください!辛いなら誰かを頼ってください!それだけで辛さは半分になりますから……」

 

限界だった、感情が爆発して嗚咽を漏らしながら涙を流してしまった

 

その時初めて人を頼る意味を理解した気がした、そしてようやく俺の辛さを理解してもらえた。

 

―あぁ、何でこんな簡単な事が出来なかったんだろう……

 

――――

―――

――

 

「お前はもう少し周りの人を頼れ」

 

「それぐらいしても、罰すら当たらん、と言うかそれで釣りが来るくらいお前は働いてるんだ」

 

「は、はぁ……」

 

「お前はまだ若いんだ、甘えられるだけ甘えとけ」

 

――

―――

――――

 

脳裏に今年の新年会での席で俺は千冬さんにそんなことを言われ事を思い出す

 

―そういえば、千冬さんビールジョッキ片手に俺の頭をグシャグシャになるまで撫でたっけ……………

 

「ああ……そうだな…片意地を張るのはやめよう」

 

涙を拳で拭い空を見上げる、夜空には星が綺麗に輝いていた

 

「まさかお前に、説教される日来るとはな…」

 

「いつも、説教じみた事されてるんでお返しですよ、『赤城』」

 

「お前今なんて言った?」

 

「いつも……「違う最後だ最後」

 

「赤城?」

 

「まぁ、先生をつけないでいいが」

 

「?」

 

「ほぼ毎日いろいろ教えてる+年上なんだから……せめて、さんをつけろやデコ助野郎!」

 

「す、すいません!」

 

一目散にその場から走り出す一夏

 

「待てや!ゴラァ!」

 

血走った目でそれを追い掛けるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

翌日、昨日連絡をつけていた5人がやってきた。

 

「「お邪魔しまーす」」

 

 

「よくきたな、歓迎しよう盛大にな!」

 

「赤城先生、一夏「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

5人は見てしまった、うつ伏せでシャーペンを握りしめ失神している我らが旦那(一夏)を

 

「あ、赤城先生」

 

口をパクパク開く鈴音

 

「貴様!我が嫁に」

 

鞄から機関銃を引っ張り出すラウラ

 

「一夏さん一夏さん」

 

一夏を擦るセシリア

 

「い、意識が飛んでる」

 

じっくりと観察し答えるシャルロット

 

「きゅ、救急車を」

 

携帯を開く箒

 

「とりあえず落ち着け」

 

「「コレが落ち着いていられるか!」」

 

「まぁごもっともで」

 

「は!」

 

むくりと起き上がる一夏

 

「よう一夏、よく眠れたか?」

 

「あんまり眠れてませんよ……赤城」

 

「二時間、寝かしてやったんだから感謝してほしいくらいなんだが?後、さんをつけろやデコ助野郎」

 

唖然とする女子5人

 

「そう言う事だ、早いとこ、この馬鹿に勉強を教えてやってくれ、なぁに遠慮はいらん、日頃の鈍感ぶりに頭を悩ませた、そのやり場の無い怒りをはらすがいい」

 

「「!」」

 

その言葉に我に帰る5人

 

「?」

 

「俺は全員分の麦茶を出すから…」

 

ポンと一夏の肩を叩く

 

「ガンバレ」

 

「???」

 

台所に姿を消したと同時に

 

「「一夏!」」

 

「は、はい!?」

 

5人の猛襲が始まったのだった

 

「今日もいい天気だな~」

 

台所の窓を開け、居間から聞こえる怒号をBGMさながらに聞き流しながら、棚から全員分のコップと盆を出す

 

「深紅の空~燃え立つように~♪」

 

歌などを口ずさみながら、冷凍庫から出した氷をコップに入れていく

 

「そういやぁ、陣中見舞いがあったな」

 

麦茶をコップに注ぎ、千冬さんからの陣中見舞いを開ける

 

「ひよこと東京バナナ……」

 

―なんとメジャーな

 

片手に麦茶を乗せた盆、もう片方に陣中見舞いを乗せ居間に戻る

 

「一夏、ここはこうだ」

 

「だ・か・らぁ、そうじゃなくてこうだって言ってるでしょ一夏」

 

「一夏さん、そこは左ではなく右斜めですわ」

 

「一夏……字が違うよ」

 

「我が嫁よ……」

 

「たぁぁぁぁ!わかるかぁぁぁぁぁぁ!」

 

ついに一夏の頭がオーバーヒートし、頭をかきむしりながらノートを広げたちゃぶ台に倒れる

 

―開始10分、ノックアウト…K.O.か……

 

その光景を生暖かい眼差して見守る事にしよう

 

「とりあえず、麦茶と茶菓子だ」

 

「「はーい」」

 

「うぅ……頭が…」

 

「たく、日ごろから復習くらいしとけば、こんなに苦労しないですんだのにな」

 

とりあえず、分かり易いようにノートに書いてやる

 

「まぁ、ここの意味はこんな感じだ、後はそれを応用しながら行けば楽に解ける」

 

「「おおー!」」

 

「何か先生っぽい」

 

「鈴音、先生っぽいんじゃない一応先生なの」

 

「じゃあじゃあ、ここは?」

 

「そこは、後の事を考えながら……こうすれば解ける」

 

渡されたノートに図などを書きながら説明する

 

「なるほど……」

 

「後は自力で解ける内容だから頑張れ、わからなきゃ聞け以上」

 

「さすが、教官が押すだけの事はあ…る!」

 

「何でお前は常に上から目線なのかな?ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「イダダダ」

 

ラウラの頬をつねあげる

 

「まぁまぁ赤城先生、麦茶でも飲んで落ち着きましょう」

 

「ん」

 

シャルロットから渡された麦茶を大人しく飲む赤城

 

「それにしても……」

 

キョロキョロと周りをみるセシリア

 

「随分部屋が綺麗ですわね」

 

「ああ、一昨日、千冬さんとクラリッサさんが遊びに着たからな」

 

「「ヴェ!∑(OwO)」」

 

「安心しろ、何もなかったし逆に殺されかけただけだ」

 

「まさか、赤城さん、千冬ねぇの手料理食べたんですか?」

 

「赤城先生、クラリッサの手料理食べたのか?」

 

同時に喋るラウラと一夏

 

「ま、まぁな……おかげで三途の川が見えたよ」

 

「え、千冬さん料理出来ないの?一夏」

 

不思議そうに聞く鈴音

 

「あ、あぁ、案外そう言うとこずぼらでな……」

 

「あの弁当は一夏が作ったのか?」

 

「あ、はい、千冬ねぇが作れって言ったから」

 

―納得…

 

「それより赤城さん、今日の勉強は何時間ですか?」

 

「9時間でいい!!」

 

「うぇぇ…」

 

こんな感じに、だべりながら勉強会を進めていく七人、果たして、一夏は赤点を回避する事が出来たのだろうか?それは神のみぞ知る。

 

 

 

 

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