地獄の一夏赤点脱出計画を無事に終え、今までの疲労を取るかのように爆睡、窓からは涼しい風が部屋に吹き渡り、風鈴とカーテンを揺らす。
時刻は朝の4時を指し日が登り始めていた、そんな静かな朝を切り裂く携帯音
「んぁ………」
携帯を手に取り寝ぼけたまま応答する
「ふぁい…」
「赤城か?随分眠そうな声をしているな」
その声で瞬間的に頭が超覚醒状態に入り、何故か正座する
「ち、千冬さん」
「今日、ショッピングモールに11時に集合だ……遅れでもしよう物なら……」
ゴクリと生唾を飲み込む
―こ、殺される!
「話は以上だ、ではまたな」
―泣きたい……
携帯の目覚まし機能を起動させ、しばしの現実逃避の二度寝へと移行する
―平和に今日1日が終わりますように…
現実逃避から数時間、携帯の目覚ましで起きた俺はショッピングモールへ着ていたのだが……
「なにしてんだ?あいつら」
シャルルと一夏の後ろを尾行するかのようについて行く、恐らくセシリアと鈴音を後目に、携帯を出し千冬さんが到着するのを待つ
「はぁ……さすがに今朝のあれは心臓に悪かったなぁ」
そんな事を思い出しつつ携帯をいじっていると、ふと聞き覚えのある声が聞こえ始める
「ねぇねぇ、お姉さんたち俺達とお茶しない?」
「すまんな、待ち人がいるのでな」
「右に同じく」
「ぜってぇ損させないからさ~」
―……おいおい…
聞き覚えのある声の方を見ると、自販機の前に千冬さん、山田先生、クラリッサさんの順番で立っており、それを囲むようにチャラい感じの男組五人が族に言うナンパをしていた。
「くどい!」
「んな事言わずにさぁ!」
強引に山田先生の手を掴み引っ張るチャラ男1
「きゃあ!」
「貴様!」
クラリッサさんが山田先生の手を引っ張ったチャラ男1に強烈なビンタもとい、手刀をかます
「っ!この尼!」
「さっきからコッチが下手に出てればいい気になりやがって!」
「もう、グゥの音もでねぇくらいにボコボコにしねぇとダメみてぇだな!」
チャラ男2が腕を大きく振りかぶる
普段なら情け容赦なく反応する2人だが、突然の出来事に反応出来ずに硬直する。
しかし、その腕は彼女達に、振り下ろされる事なく静止していた
「はいはい、喧嘩はやめようねぇ」
チャラ男2の腕を鷲掴み握力を加えながら笑顔で威圧する
「んぎゃー腕が!」
「んだ?てめぇ」
「そこの人達の連れです」
掴んでいた腕を放すと5人がこちらを向く
「悪いこと言わないから、さっさっとずらかれ」
―主にお前らの身を案じてな
「 んだと!」
「てめぇ俺らが誰か知らねーのか!巷じゃ!」
「有名な!」
「不良集団!!」
「ファイブ!」
「ファング!!」
ドォォォン!と背後で爆発しそうな綺麗な決めポーズ
―……………今、日曜7:30じゃないよな
思わず公園の時計塔を見てしまった
「んな!冷めた目で見んじゃねぇ!」
「いや、決してそんなつもりじゃ無かったんだが、それに俺も戦隊シリーズは毎週チェックしてるから安心しろ」
「うるせぇ!てめぇの髪の色みたいにしてやる!行くぞてめぇら!」
「「おう!」」
瞬時にこちらを取り囲むように移動する5人
―思った以上に連携取れてんな、コイツら戦隊やったらすげぇ面白いだろうなぁ
「やれやれ、喧嘩は卒業したんだがな」
拳を握り締めずに緩く構え、脚を肩幅に開く
「くらえ!ファイブ!スタァァァァジェネレェェェション!!」
一斉にこちらに向かって走ってくる5人
「よっと」
それらを、何ら迷い無しに円運動に巻き込み、掴んでは投げ掴んでは投げを繰り返す。
「ぎゃ!」
「あべし!」
「ひでぶ!」
「ギャフン!」
「わぎぁ!」
植木や自販機の取り出し口、ゴミ箱(燃えるごみ、燃えないごみ)に突っ込み動かなくなる5人
「ふぃー…お怪我は…」
「あるわけがない」
「ですよねー」
「さすが赤城様です」
「た、助かりました」
「いえいえ、お気になさらずに……それじゃ、気を取り直して、早速買い出しに行きますか」
その場を悠々と歩いていく4人
――――――――――――――――――――――――――
時間にすればあっと言う間の買い出し、そう備品の買い出しはあっと言う間だったのだ
「赤城」
「赤城様」
「赤城先生」
3人とも声を揃え名前を呼ぶ
「何か用かな?」
「「どの水着がいい?」」
水着の店で約一時間以上、このようなやり取りが繰り返し続いていた。
何故女性と言うのは買い物が長いのだろうか?疑問を浮かべながらも、丁寧に答えていたが
―キ、キリがない…
そう判断した俺は、ある選択肢を実行する
「そうですね、千冬さんは…ワイルドで黒色、山田先生は淡い黄色もしくは白、クラリッサさんは露出控えめの紫ですかね」
「「………」」
―あれ?とちったか?
「センスの塊か?お前は」
「いや、直感ですけど」
「さすが、拳闘士(ナイト)格が違った」
「やめんか、恥ずかしい」
「しかし、見事に的を得てるといいますか、なんといいますか……」
「う~ん、母親の影響ですかね…昔からその辺うるさかったですから」
「よき、母親じゃないか」
「えぇ…まぁ…この話はここまでです、俺、外のベンチに座ってますから」
両親の事を思いだし、すぐにその場からエスケープ、近くのベンチに荷物を置き腰掛ける
「はぁ……あちぃな~」
空を見ながらベンチに横たわる、どうも両親の事になると暗くなりがちだ
「俺も後で、海パンでも見に行かないとな」
「ならば」
「私達が」
「選びましょう」
3人が覗き込むようにこ ちらを見る
―口に出して言うんじゃなかった
山のような荷物を持ち、3人に引っ張られる形で連れて行かれ、店に着くや否や、一斉にバラバラに散り始める女性陣
「はや!」
―嫌な予感しかしないフラグだ
とりあえず、荷物を片手にまとめ商品を物色し始める
―最近は割とシックなのが人気なのか……
人気商品を手に取り値札を見て即座に戻す
―こんなの買ったら餓死に近づくだけだ
うなだれながら、ぶらついていると
「赤城これはどうだ?」
競泳水着を持ってくる千冬
「俺を海でガンガン泳がせる気ですか」
「では、赤城様こちらは?」
ダイバースーツを持ってくるクラリッサ
「潜れと?俺に潜れと言っているんですか?」
「赤城先生こちらは?」
ふんどしを持ってくる山田先生
「今時そんな人いないですよ…てか、何故ここにふんどしがある……」
若干うなだれながらも、先ほど同様、品定めを再開する
「なんだ、海パンなら海パンだと言えばいいものを」
「右に同じく」
「そうです」
―言う前に居なくなったのは何処のどちらさんでしたっけ?
「やっぱ、無難に黒にするか」
「いや、お前は赤だな」
「はい?」
「えぇ、赤城様に合うのは赤です」
「何を……」
「そうですよ、赤です、赤で決まりです」
「俺の意見を……」
「却下だ」
「却下します」
「却下です」
「……」
こうして俺の海パンの色が決まった
―お、俺の意見………涙目
「ん?あれは…」
3人の必要以上な攻めに耐えかね、救いを求めるように外を見た時だった
「デュノアと一……夏ぁぁぁぁ?」
そう、それはちょうど2人が試着室に入る瞬間だった
―今の奴らはそんなに大胆なのか?俺遅れてる?
「…そのようだな、少々灸を据えてくる必要がありそうだな、行くぞ山田君」
「はい、わかりました」
内心罪悪感を感じながらも意気揚々と出て行く2人を見送る
―すまん、一夏あとはそっちで何とかしてくれ
心の中で祈祷している横で
「ですが、それでは……」
クラリッサさんは、携帯で誰かと話していた
「はぁ……」
―ま、楽しいから良しとするか…
正座し山田先生に説教される2人を眺めながら俺はそんな事を思っていた
俺の海パンはと言うと
「赤城」
「赤城様」
「赤城先生」
「あ、決まったんですか?」
「まぁな、思ったよりラッピングで時間を食ってしまった」
ラッピングされた箱を渡す千冬
「別にラッピングしなくても…」
「否!プレゼントイベントではラッピングは基本です!」
―それは誕生日や特別な行事の時の話ですよ、クラリッサさん
「開けるのは自宅に戻ってからでお願いしますね」
―何故?まぁここ の選択肢は……
「わ、わかりました、期待に胸を踊らせながら自宅であけますよ、それじゃ帰りますか」
「あぁ」
荷物を抱え、ゆったりと駅まで歩いていく
――――――――――――――――――――――――――
「期待に胸を踊らせながら自宅であけますよ」
そんな言葉を聞いた時、私は何故か安心た
恐らく、今ここで開けられて赤城の反応を恐れたからだろう
全く私ときたら………
今思えば、そんな考えを持った自分が恥ずかしく思えてきた
そう、そんな考えが合ったから私はあの時だって………
止めよう……嘆き悲しんだところで過去は変えられない
話を切り替えよう…
そうだ…箱の中身だが、あれには意味があってな………
意味は…アイツの肌の色と赤と言うところにある。
一度だけ、アイツに日焼けの話をしたところ。
奴め、私と一緒で黒くならないらしい。
まぁ元から色白だから仕方ないと言えばそれまでだが、だからこそ焼かない工夫としてウェットスーツを採用したのだ……
後は、あまりアイツの肌を誰かに見せた……何を言っているんだ私は…
色の赤については情熱的と言う意味があるらしく、その辺はクラリッサが熱弁していた
だから、赤のウェットスーツとなった訳だ…
あ、背中に入れるロゴについては山田君にお任せした…ふふ、相当驚くぞ
そんな事を思いながら私は帰りの全員が乗る電車の中で揺られていたのだった
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無事、自宅に戻った俺は恐る恐るラッピングを解き箱を開けた
「……………何故全身仕様」
真っ赤なウェットスーツになっていた…
「あぁ、お、俺の海、イベントが………」
部屋で膝を着いてうなだれていたのは言うまでもない