MYTHOS THEATRE   作:飛翔するシカバネ

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第1演目 幕間
幕間①


時雨は聖ビブリオ学園に来ていた。

 

首に外部用と入園許可証を、下げ。

 

 

彼女の向かう先は高等部の部活棟1階の奥。

 

古書研究会と書かれた扉を開く。

 

古い本が山ほど置かれた部屋だった。

 

 

人の気配は無い。

 

 

 

時雨は部屋に入り、掃除ロッカーを開ける。

中にはホウキやバケツ、ちりとりが入っていた。

 

 

1度扉を閉める。

 

カバンから禁書を取り出し、もう一度扉を開ける。

 

ロッカーの扉のような軽い音ではない、重厚な音がする。

 

そこには地下へと続く階段があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を降りた先は地下とは思えない明るさ、そして広い空間だった。

 

忙しくなく、人が動き、仕事をしている。

 

 

警察、医者、学生、サラリーマン。

 

服装に統一感は無い。

 

しかし、誰も彼も共通して文字が書かれたものを持っている。

 

 

メモ帳、日記、大学ノート、週刊誌、iPod、石板。

 

そして自分は和綴りの本。

 

 

その中でこちらに、手を振る人影を見つける。

 

 

数日前、依頼人鬼崎雅司の生存を確認するために向かった鬼崎村。

 

そこで偶然出会った奇妙な2人組の相方。

 

 

名前をウィルバー、ウィルバー・サリンジャー。

 

あの時会った服ではなく、黒いコートを着ている。

 

 

「数日ぶり!支部長が待ってるよ」

 

 

どうやら、ウィルバーが案内人のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お断りさせていただきます」

 

「一応聞こう。何故?」

 

「私は探偵業が好きですから。それにそれ以外にも仕事はありますから。禁書関係の仕事を優先的にやれませんので」

 

「なるほど、残念だ。聖ビブリオは人手不足だからね」

 

 

会議室のような部屋で時雨は白髪の生えた紳士風の男性と話していた。

 

 

真野潟(まのがた) 英司(エイジ)

 

聖ビブリオ日本支部の幹部の1人。

 

この終本市における最高責任者だ。

 

 

叶彗、ウィルバーの2人鬼崎村へと派遣した重宝人であり、本人もある意味もっとも禁書使いとして有名な人物である。

 

「敵対関係は無いんです。正式な依頼を頂けるならこちらもお仕事させていただきますよ」

 

「それは助かる。先程も言ったが禁書災害は至る所で起きている。そのため聖ビブリオも人手不足だ。禁書について知っていても、その人物が必ずしも禁書使いでは無い。それもあり、君の申し出は助かるよ」

 

 

にこやかに英司は笑う。

 

 

世界には『()()』が満ちている。

 

 

盲目的な宇宙意思、【()()()()()()()()()】により世界は無限に分裂して進化し、その度に世界には新たな神話が刻まれる。

 

こうした無限の神話の記録の中には危険で厄介な力を秘めるものが存在する。

 

禁断の知識の倉庫。

 

そしてこれらは禁断の知識はさまざまな方法で盗み出され、あるいは滲み出し、世界に影響を与えてくる。

 

それが『禁書』。

 

 

古来は魔導書や聖書、悪魔祈祷書などにしか、無かった。

 

しかし近代に入り、歴史上前例の無いほど出版が盛んになり、それによって『禁書』のあり方も変わった。

 

 

ごく普通の書物がブラインド・ミトスによって働きかけ、影響を与えることで禁書化してしまったのだ。

 

そのため、いつでも、どこでも、書物さえ存在していれば禁書は出現するようになってしまった。

 

そして禁書は自身の持ち主に欲望へと誘惑をしかけた。

 

持ち主を堕落させ、その理性を乗っ取った『禁書』は持ち主を操り人形にしら世界を変えようと侵食してくる。

 

元となった書物の内容に応じて世界を変える。

 

禁書を中心として影響を与え始める。

 

 

それが『禁書領域』

 

最初は屋敷1つ。

 

次第に街、複数の市町村、国へと影響を拡大させる。

 

それが『禁書災害』

 

 

初期段階の『禁書領域』であれば、禁書を封印することで元通りのなかった状態に戻せる。

 

鬼崎村での禁書の封印で村人が何も覚えてなかったのはそのためだ。

 

禁書が作り出した別の未来が消去され、元の世界が持つ修正力により、別の未来のはじまる分岐点まで巻きもどるからだと考えられている。

 

 

禁書領域が長く存在すると修正力は弱くなる。

悪影響が残ってしまう。

 

雪代紅音が死んでしまったのもそのためだ。

雪代公孝も死んでいたのかも知れない。

しかし、死んでからすぐの封印で無かったことになったのかもしれない。

 

 

そして誘惑に打ち勝ち、禁書を使いこなす者が『禁書使い』なのだ。

 

 

 

「君も、ウィルバー君も、この支部にいる者の殆どが禁書使いだ」

 

「割といるんですね」

 

「そうだな。しかし、禁書災害に対応できる人数がいるとは言えない。禁書領域が世界に汚染し、禁書の回収に失敗してしまえば聖ビブリオから最高位の禁書使いが派遣され、禁書領域ごと封印しなければならない」

 

こうなれば中にいた人も禁書も世界から消滅してしまう。

誰にも認知されず、思い出すこともできない場所となって空白の地帯となってしまう。

 

一般人は禁書の世界変容に最初は違和感を覚える。

しかし、直ぐに変化に気づけなくなり、歪んだ世界に順応してしまう。

 

それを認知できるのは禁書の力を支配している禁書使いのみだけ。

 

その禁書使いも世界から消滅されたらそこに空白の地帯があると知っていながらも中に誰がいたかを思い出せなくなってしまう。

 

 

 

「それに禁書使いは全員聖ビブリオな訳では無い。君のように。そして全員正義の味方でも無い」

 

聖ビブリオは禁書災害から世界を守る為に日夜活動する組織だ。

それに所属する禁書使いはTBファイラーと呼ばれる。

 

Tabooed Biblio Filerの略称であり、禁書取締官の事を指す。

 

当然、禁書はいつ、どこで起こるかは分からない。

 

聖ビブリオが認知する前に発生する。

 

認知する前に禁書使いが現れ、封印されるなんて、ざらだ。

 

その時にフリーの禁書使いが生まれるのだ。

 

 

しかし、禁書使いは禁書使いといずれ惹かれ合う運命にある。

 

そして禁書災害に巻き込まれるのだ。

 

その度に聖ビブリオは組織へのスカウトを行っているのだ。

 

 

「フリーの禁書使いが平和に生きようとするのはいい。しかし、世界には禁書を悪用する組織や禁書の存在を神の意志として解放する組織、様々な組織がいる」

 

真野潟英司は目を伏せながら、ため息をつく。

 

 

「今日はこの辺にしておこう。一度に話しても覚えられないしね。これから長い付き合いになるはずだからね」

 

 

帰り際、時雨は自由入校許可証をもらい、帰宅した。

 

最後の真野潟英司の言葉は願いも込められている気がした。

 

 

 

 

 

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