森深い道を抜け、鬼神村へと到着した3人。
3人は異変を感じ取った。
既にこの村全体が異様な雰囲気に包まれているということを。
山間の古式ゆかしい村の風景。
段々畑や川のせせらぎが心を休ませる…
はずが、全てどこか歪んでいる。
山野には薄くモヤが立ち込めている。
それは時折、赤い色に染まっているようにも見えた。
村人の姿も見える。
しかし、目は虚ろ。
ノロノロと働いているのが見える。
叶彗はスマートフォンを確認する。
電波は県外。
「やっぱり、戻ってきちった」
後ろからはウィルバーが姿を見せている。
「やはり、
このままでは手のつけられない……それこそこの地域ごと封印するしかない事態になるだろう。
そして異様な雰囲気に頭が汚染されているような気を感じる。
まるで自身の輝かしい思い出や大切な思い出が汚されるような感覚が。
「とりあえず、村の人に話を聞いてみましょう」
そう言って時雨は1人駆け出す。
2人もあとに続く。
「すみません」
「あーなんだべか?」
訛ったようすで村人の1人が反応する。
その村人も虚ろな目で焦点はあってないものの、こちらに向き直り、会話に応じてくれる。
「何をしてらっしゃるのですか?」
「アンタらよそ者に話す義理も必要もねーべさ」
「折角来たのですから、少しぐらい…」
「よそ者が口さだすな。よそ者に話すごとなんか1つもねーべさ」
外から来たものを徹底的に排すような物言いに取り付く島も無い。
「しょうがありませんね……」
そう言って時雨は鞄から1冊の和綴りの本を取り出す。
「それは…」
「
時雨は本を開く。
ペラペラとページがめくれていき、次第に時雨のかたわらに1人の青年が姿を現した。
「どうしたの姉さん」
現れた青年は時雨を
「オサム、この方に《耽美な言葉》を」
「分かったよ、姉さん」
記憶が薄れていく。
そんな代償を払い、時雨は目を伏せる。
オサムと呼ばれた青年は村人に近づく。
「お前は姉さんの言葉の虜となる」
こちらに、警戒心丸出しだった村人はその一声を聞くと瞬く間に警戒心を解いた。
「この村のこと教えてください」
「よ、よろこんで!」
村人はまるでその声にまるで恋をしたかの様に反応を変えた。
村人からはそこまで有用な情報は得られなかった。
叶彗達が到着した今日この日。
村では祭りが行われる。
自分たちはその準備の為に動いていたそうだ。
祭りは夕方から始まるようだ。
村長の家は立派なお屋敷に住んでいるとのこと。
「ありがとうございました」
「い、いや、いいんですけど。ま、また今度話せますがね?」
「ええ、きっと」
「は、はい!」
村人と別れ、3人は村長宅へと向かった。