蔵は村の集会所近くにあった。
蔵の鍵は雅司が持ってきており、簡単に開けることが出来た。
「蔵って言っても殆ど入って無いんだなー」
ウィルバーの感想通り、蔵の中はがらんとしていた。
「祭りがあるからな。道具は運び出してるはずさ。俺は入り口を見てる」
入り口に見張りのように雅司が立ち、叶彗達は蔵へ入った。
2階に上り、手分けして探す。
2階には祭具が無いのか殆ど人が出入りした跡は無く、埃が溜まっていた。
すると、しまわれていると聞いていた『鬼ノ舞』と書かれた桐箱を発見した。
置かれていたのは棚の中ではなく外。
しかも、中身はカラだった。
「中身がなぁぁぁぁい!!キンショキンショキンショキンショキンショキンショドコドコドコ」
「
ウィルバーは禁書が無かった事に発狂を上げている。
それを冷静に罵倒する叶彗。
そんな、叶彗はあるものを発見した。
「全く……ん?これは……子どもの足跡?」
桐箱近くには子供用の運動靴の足跡があった。
少しの土と埃に着いた足跡のサイズは小学生くらいのものだろう。
「あれ?本はどうしたんだい?」
2階から降りると雅司が声をかけてきた。
「空っぽだった。そして近くには子ども足跡があった。それで鬼崎さんに聞きたいんだが子どもに心当たりはあるか?」
「子どもかぁ……村には子どもは数人しかいない。それに鍵を開けられる人って言ったらウチか、神主の家くらいだ。子どもが行く場所なんてこの村には殆ど無い。行くとすれば……あそこかな」
「あそことはどこですか?」
「公園だよ」
一行は公園へと足を進めていた。
神社へも人数を割けるべきとの意見もあったが、それだとしても途中まで道順も同じだった。
そんな一行は話し合いながらの道中に村人とすれ違った。
異様に真っ赤な単衣の着物を身につけた中学生くらいの女の子だった。
手には花と桶を持っていた。
そして初めて雅司以外の村人で目が虚ろでない村人だった。
「どこへ行くんですか?」
時雨が話しかけた。
その声に女の子は驚いた顔をするが、立ち止まり返事を返してくれた。
「わ、わたしですか?」
「はい、お嬢さんにですよ。…ああ、これは自己紹介もせずに……私は霧雨時雨です」
「あ、わたしは雪代紅璃です。中学3年生です。これからわたしのお母さんのお墓参りに行くんです」
少し悲しそうな顔を見せる女の子。
しかし、直ぐに何か思い立ったかのように時雨に話しかける。
「あの、おかしくないなら今のうちに村から出てください!」
「どうして?」
「村では今突然切りつけられる事件が頻繁に起きているんです。それに……行方不明者も。村に警察はいないし、通報してもまるで通じてないみたいに来てくれないし」
「そう、それは危険ね」
「はい、だからっ…」
「でも、お姉さんたちやる事があってここに来てるの。心配ありがとう。けど、私たちはこの村にもう少し残るわ」
「……分かりました。気をつけてください」
「ありがとう。そうだ、紅璃ちゃん『鬼ノ舞』っていう本を知らない?」
「祭りの祝詞の代わりに読み上げる本ですね。どこにあるかはお父さんに聞かないと分からないです」
「そうなの、お父さんはどちらに?」
「お父さんは祭りの準備で神社の方に……祭りは今日行われます。今年はちゃんと、最後まで終わらせないと…」
「え?」
「え?いや……そろそろ、お墓参りに…」
「ありがとう。引き止めちゃってごめんね。また、会いましょう」
「いえ、さようならです」
そう言って紅璃は立ち去る。
立ち去っていく紅璃を見ていると、紅璃の足元には赤い肌の醜く顔を歪めた身長30cmほどの小鬼が群れを為してついて歩いていた。
手には禍々しい刃物を持っており、紅璃を、物欲しそうに見つめている。
そんな異常事態が起きているのに近くにいる紅璃は一切気づいていない。
「紅璃ちゃんっ!」
「はい?」
時雨が、声をかけると紅璃が振り返る。
それに合わせて小鬼たちは周囲の森や草むらに入り、煙のように消えていった。
「どうしましたか、時雨さん」
「いえ、なんでもないわ。後で私たちもお墓参りに行くかもしれないわ」
「それはありがとうございます。お母さんも喜んでくれると思います」
そして今度こそ紅璃は立ち去って行った。
「今のは…?」
「
「けど、彼女からは禁書の匂いはしなかったよ」
ウィルバーは鼻を動かし、答える。
「彼女の足のサイズと蔵で発見したのは別のサイズだ。蔵から禁書を持ち出したのは別にいる。問題は…」
「彼女の存在が禁書の作り出した未来に関係するってことだね」
「でしたら、紅璃ちゃんを守るべきでは?」
叶彗とウィルバーの話を聞き、時雨が質問する。
「いや、今は情報を集めるのが先決だな」
「彼女には禁書の気配が無い。なら、禁書の汚染は問題無いはず。それに本のタイトルは『鬼ノ舞』だろ。だったら舞が行われる祭りまでは事が起こらないだろう」
「それに
冷静に言葉を交わす、叶彗とウィルバー。
「だが、確かに心配はある。だから、提案する」
「ここから別行動を取らないか?」