山の斜面にこぢまんりとした神社があった。
鬼神村の神社、雪代神社だ。
30段ほどの先に鳥居があり、その周りを樹木が囲っていた。
石段を登った先には奉納の舞のための簡単な舞台が設えられていた。
神社の奥には山へとつづく小道があり、その左側には川が流れていた。
祭りの準備は一段落したのかもう境内には殆ど人がいなかった。
そして辿り着いた2人の姿に気づいたのか1人の男が出てくる。
「何か用かな?」
「貴方が雪代神社の神主ですね?」
「はい、私が
2人は奥の部屋へと通される。
そこには古い絵巻が額縁に入れられ部屋中の壁という壁に飾られている。
それはどれもこれも鬼によって人が食われ、惨殺されている。
血まみれの惨殺絵の影響のように部屋には赤いモヤが充満している。
著しく不快な気分になる。
それを、ぐっと我慢する。
「この村はかつて鬼に支配されていました。そして私たちは鬼神の末裔なのです」
それは悲しそうに話しているがその表情は恍惚として表情で絵を見ている。
「本は、『鬼ノ舞』はどうしましたか?」
「よく知っておられますね。あの本は大切に保管しております。祭りで使用しますのでね」
「今年は必ず祭りを成功させます。昨年の事件は残念でした。しかし、アレは鬼神様に選ばれなかっただけのこと。紅璃なら……私の娘なら……あの子には素質がある。今年こそは鬼神様に喜んで頂けるはず」
「公孝さん」
部屋の外から村人が声をかける。
「すみません。祭りの準備が残ってますので…申し訳ないですが、お引き取りを…」
そういって公孝は帰るように促してくる。
「ウィルバー行くぞ」
「この神社の何処かに禁書が……」
「行・く・ぞ!」
神社の石段を降りる。
「禁書…」
「我慢しとけ」
「無事ですか、みなさん」
石段を降りた先には時雨が、待っていた。
「そんなことが…」
「やはり、あの神主が怪しいか…」
「キンショキンショキンショキンショキンショキンショキンショキンショキンショキンショキンショ」
三者三葉に深刻な表情を見せる。
時間は既に夕暮れ。
神社の周囲には薪に火がくべられ、境内を幻想的な光に包んでいる。
しかし、境内に入ることはできない。
村人が境内を取り囲み、よそ者を境内に入れることを許さない。
辛うじて遠巻きに中を覗くことしかできない状況にあった。
「私のオサムの能力は数人にしか効きません。あの数は無理です」
「どうにかして入り込まないといけないな…」
「あ!それなら…」
「無事に侵入できたな…」
「紅太君に教えて貰ったんです。神社の隣の小川を通れば気付かれずに入れると…」
「どっかの身長デカイのはバレかけたけどな…」
3人は小川を通り、境内に侵入した。
「その紅太くんはどうしたんですか?」
「雅司さんが、来てくださって。今村長宅に寝かせています」
3人は祭りを眺める。
神社には舞台が組まれ、神主の雪代公孝が正装で現れている。
既にお祓いが始まっていたようだ。
村人たちは舞台を取り囲み、まるで亡霊のような表情でそれを眺めている。
続いて覚悟を決めた顔つきをした紅璃が現れる。
巫女装束に身を包み、舞台へ進み出る。
そして奉納の舞を始めると赤い着物の袖がたなびき、見る者の気を張り詰めさせる。
叶彗とウィルバーは異様な高揚感を抱く。
まるで汚された記憶が元に戻るような、そんな感覚。
紅璃の表情は苦悶とも恍惚ともつかないものとなり、いつの間にか現れていた小鬼は歓喜の叫びを上げながら舞い踊っている。
やがて神秘的とも狂乱的とも言える舞が最高潮を迎え、紅璃の額から汗が落ちる。
そこで紅璃は目を大きく見開いた。
「あ……ああ!鬼が…私を…!私じゃ無理…なの?」
「だめ!やめて…!」
叫び、気を失う。
そして、その場に倒れ込んでしまった。
「ハァーハッハッハッハッ!ついに成ったぞ!鬼ノ門は開く!これで依り代は整った!」
そう荒らげながら、虚ろな村人が紅璃を持ち上げ運び始める。
公孝も村人と共に舞台の奥にある道へと進んで行った。
3人は後を追いかけた。