【休載中】転生したら不思議なことが起こった件 作:鉄血のブリュンヒルデ
光太郎が目を開くと、そこは美しい森の中だった。
東京のビル街に溶け、その景色ばかりを見ていた光太郎にとっては、初めて見る大自然。
突然変わった景色に困惑する光太郎の目の前に現れたのは、牙狼と呼ばれるモンスターだった。
襲い掛かる牙狼に対して、光太郎は丸腰!絶体絶命!
しかしその時、不思議な事が起こった!
第二話 スライム
〈牙狼との戦闘を終えた光太郎は、ジュラの大森林を1人彷徨っていた〉
「絶望的な状況の解説ありがとよ、ナレーター」
この世界?に来て約二日が経った。その間に、コイツが仮面ライダーBLACKのナレーターと同じ様なものだと分かった。そして、俺が仮面ライダーBLACKのチカラを使えるという事も。
「さて、食料調達しなきゃな」
この森には、食料となる果実が豊富だ。まぁ、食えないものはナレーターがそれとなく知らせてくれるから、そこら辺は大丈夫だ。
「そう言えば、昨日でっかい門があったな。行ってみるか」
〈昨日、光太郎は散策の途中で巨大な門を見つけていた。その巨大さは、まるで龍でも閉じ込めている様だった〉
龍か。この世界ならいそうではある。あんなデカい狼がいるくらいだからな。
ナレーターは基本的に先に起こることを事前に知らせてくれる。直前ではあるが。その性質的に、本当に龍がいるのかもしれない。
「さてと、まぁ、とりあえず行きますか」グニュッ
〈光太郎が足を踏み出すと、不思議な音が鳴った〉
どんな解説だよ……。ていうか
「グニュ?」
「オイ!いつまで踏んでんだよ!」
その時、俺の足元から声が聞こえた。
「全く!気をつけろ……よな?………人間?!」
〈光太郎が踏んだのは、スライムの様なモンスターだった〉
いや、見たまんまスライムでいいんじゃないのか?
「この世界スライムまでいんのか。いよいよRPGだな」
俺がふとそんな事を呟くと、目の前のスライムが反応した。
「RPG?まさか、お前も転生者なのか?!」
「ん?転生?…………どうなんだろうな。気が付いたらこの森に居たんだ。だから、よく分からない」
そう言うと、スライムは考える様に下を向いた(というより、傾いた?)
「俺は瀧 光太郎。お前は?ていうか、モンスターに名前なんてあるのか?」
俺がそう聞くや否や、スライムはやや不機嫌そうになった。
「俺には友達が付けてくれた大切な名前があるんだよ!俺はリムル=テンペスト!見ての通りスライムさ!」
「いやいや、そこは悪いスライムじゃ無いよ、だろ?」
「おぉ!やっぱりお前、俺と同郷なんだな!」
俺が言葉を返すと、それに興奮したように跳ねた。
「って事は、お前も日本から来たのか」
まさか、同じ転生者にこんなにも早くに会うとは。
「あぁ!転生する前は三上 悟って名前で人間やってた!」
「っ!三上、悟だと?」
「え?何か問題でもあったか?」
問題も何も、三上 悟って……。
〈三上 悟とは、光太郎がこの世界に転生する直前に取り押さえた通り魔に刺された被害者なのである〉
「…い。おー…!おぉぉぉぉい!」
俺が考え込んでいると、リムルが俺の耳元で叫んだ。
「うおあ!なんだようるせぇな!」
「お前が急に黙り込むからだろ?!っていうか、俺とお前って面識あったか?反応的に、俺のこと知ってそうだったけど」
「……………いや、なんでもねぇよ。本当に日本人なんだなって思ってさ」
なんで、隠してんだ?いや、確かに死んだ時の事を思い出させるのは良くないと思うが、隠す必要は無かったんじゃないか?
「あぁ、そういう事か。確かに見た目じゃ分かんないしな!」
重要な秘密を隠したままの俺に、リムルが明るく言った。
「まぁ、スライムに日系もなにもないだろうしな」
俺は不自然にならない様に、明るく返した。
「うっせぇ!」
もるで旧知の友の様に話し終わった頃、俺はふと、今まで抱えていた疑問を思い出した。
「なぁ、ここは一体、なんなんだ?」
「ンーーッ……俺も詳しくは分からないんだ。何せ俺が今まで話した相手といえば、三百年前に大暴れしたドラゴンだったり、自分のスキルとかだけだしな。他は知性の無い魔物だらけ」
「ふぅぅん。なるほどね………スキルと話すってどゆこと?」
「俺にもよく分からないんだけど、俺のスキルの大賢者は俺の補助をしてくれるんだ。それこそ、スキルの獲得のアドバイスとか」
スキル……この世界では、自分に宿る力をそう呼ぶのか。
「あと、他人のスキルを調べる事も出来るぞ」
「マジか。じゃあ、俺のも見てくれよ。正直俺もよく分からないんだよ」
「おう!いいぜ!」
そう言ってリムルが俺を見る。
「ええっと、ナレーター?って言うのがあるぞ」
「まんまだな、オイ……」
「それと、変身?」
俺がナレーターの名前の安直さに驚いている時、リムルがもう一つのスキルの名前を告げた。
「変身………出来るぞ」
「本当か?一体何にだ?」
コイツも同じ世界から来たなら、名前くらいは聞いた事あるだろ。
「仮面ライダー」
「っ?!仮面ライダー?!マジかよ!一体何になれるんだ?!なぁ、見せてくれよ!」
リムルが怒涛の勢いで(足下に)詰め寄ってくる。
「おう、見せてやるよ…………変っ身!」
俺がポーズをとってそう叫ぶと、体は光に包まれ、体は黒く染まり、大きな赤い複眼を持った姿に変わる。
「そ、その姿は、仮面ライダーBLACK!」
「おっ!知ってるか!」
これは有難い。正直、この世界でこの姿は不審がられるのでは無いかと思い始めていた所だが、コイツには理解を得られている。まぁ、同郷だからなんだけど。それでも、理解者がいると言うのは心強い。
「さて、それじゃあ適当に歩くか」
「そうだなそれじゃあ「強き者達よ!」ん?」
〈光太郎達が歩き始めようとしたその時、後方から声が聞こえた〉
ストレートだな。けど、誰だ?
「強き者達よ。この先に、何か用事がおありですか?」
〈そこに立っていたのは、貧相な体つきにボロボロの武器を持った、か弱き者達だった〉
コイツら、見た目的にゴブリンって奴か。ていうか
「「強き者?」」
「お前じゃね?光太郎」
「いや、ここは逆にお前ってパターンもあるだろ」
「いやいやお前だって」
「いやいやいや。お前だろ」
まぁ、スライムとBLACKなら、本来BLACKに軍配が上がる。しかしコイツは特別性だ。普通に俺より強いかもしれない。
「確か、言葉が思念を乗せて話せばいいんだっけか?」
「今俺と話しているのは違うのか?」
「んー、なんか違うらしいぞ」
そんな会話をした後、リムルが大きく息を吸った。
「えーっとォ!初めましてェ!俺はスライムのォ!リムルって言うゥ!………あれ?」
リムルが気がついた頃には、全員が地べたに土下座していた。この世界にも土下座ってあるんだな。
「貴方様の力は充分に分かりました!ですから、どうか声を鎮めて下さいぃ!」
「思念が強すぎたかな?………それで、俺達になにか用?」
「強力な魔物の気配がしたので、警戒に来た次第です…」
「そんな物、俺には感じられないけど?お前は?」
「いんや全く」
まぁ、恐らくこのパターンは俺かリムル。又は両方ってパターンだな。しかし、俺は魔物とは違うし。
「ご冗談を!その様な姿をされていても、我々は騙されませんぞ!」
「やっぱり俺の事か…」
そりゃな。
「それに、隣に居る貴方様もです!魔物とは違いますが、人間とも違う。しかしながら強大な力を持っている!」
「あー、やっぱり俺も含んでたのか。まぁ、強き者達って言ったしな……」
俺がそう返すと、ゴブリンらしき魔物が、おずおずと告げた。
「強き者達よ。貴方達を見込んでお願いがあるのですが……」
「「ん?」」
唐突に告げられたその言葉に、俺もリムルも、頭にはてなマークを浮かべた。尚、リムルには実際に浮かんでいた。スライムだけど。
〈その後光太郎達は、ゴブリンの村に案内された〉
それにしても粗末な村だ。キングストーンフラッシュだけで壊せるんじゃね?
「ふんん…っ。ようこそお客人。私はこの村の村長をさせて頂いております」
こりゃまた随分とそれらしい奴が出てきたな。
「はい、どうもよろしく…それで、自分らにお願いとは、なんですか?」
リムルがそう聞くと、さっきのゴブリンと村長が頷き合い、そしてこちらに向き直り語り出した。
「実は最近魔物の動きが活発になっているのはご存知でしょうか?」
「いや?」
魔物の動きが活発になっている………。あの牙狼とか言うのもそうなのか?
「我らの神が一月前にお姿をお隠しになったのです。その為近隣の魔物がこの地にちょっかいをかけ始めまして……」
なるほど。それで警戒に来てたのか。
「我々も応戦したのですが、戦力的に厳しく…」
「それで!貴方様達に!」
「力を貸して欲しいってか?」
俺がそう言うと、ゴブリンは頷く。
「しかし、自分はスライムですので、期待されている様な働きは出来ないと思うのですが…」
「俺も人間だし」
俺達がそう言うと、ゴブリンとゴブリンの村長は笑いながら言った。
「ハハハハっ……またまたご謙遜を」
「ご謙遜を」
「「?」」
「ただのスライムにそこまでのオーラは出せませぬよ。相当に名を馳せる魔物なのでしょう。そちらの人間のお方も、オーラこそは発せられておりませんが、先程この者から聞き及んだ限り、何やら姿を変えられるとか」
なるほど、そういう事か。それに、オーラねぇ。
「オーラ?」
リムルはさっぱりみたいだな。
その後、少し間を置いてリムルは頬?を赤く染めて汗?をダラダラと垂らした。
「……フフフッ。流石は村長、分かるか?」
うわ、あからさまに態度変えやがった。
「勿論でございますとも。漂う風格までは隠しきれていません」
「そうかぁ。分かってしまったか。お前達は中々見所があるようだな」
調子に乗った、訳ではなさそうだな。場に合わせたのか。
「フゥーーンッ!」
リムルはそんな掛け声を発した。おっ、視界がスッキリした。こいつと会う前から視界が濁ってた気がしたんだが、オーラのせいだったのか。
「おぉ我々を試されていたのですね?そのオーラに怯える者も多かったので助かりますぅ…」
「そ、そうだな!怯えずに話しかけてくるとは、見所があるぞ!」
(何の見所だ。焦り過ぎだろ)
「ああありがとうございます。それで、お願いと言いますのは……」
〈ゴブリンは語った。この村が、以前光太郎を襲った牙狼と呼ばれる魔物の本体、牙狼族により襲撃を受けていると。そしてその戦いで、ゴブリンの戦士が複数犠牲になった事を。そして、唯一いた名持ちの戦士すらも、牙狼により命を絶たれ、ゴブリンの村は、危機に瀕しているという事を〉
これが、魔物の世界か。弱肉強食とは、まさにこの事か。ていう事は、あの牙狼もその一匹だったって訳だ。
「牙狼族は全部で百匹程度。」
「………こっちの戦力は?」
「戦えるのはメスも合わせて60匹くらい」
絶望的な戦力差だな。こりゃ、誰かに縋りたくもなる。
「その名持ちの戦士は、負けると分かっていて戦ったのか?」
「いいえ牙狼族の情報は、その戦士が命懸けで入手したものなのです」
命、懸け…………。
「戦士は私の息子で、これの兄でした……」
「クッ!」
二人は、今にも泣きそうな声で言った。
「そうか………悪いことを聞いた」
リムルはそう言いながら、出入口から覗くゴブリン達を見た。
「……村長、一つ確認したい」
「は、はいぃ…」
「俺がこの村を助けるなら、その見返りはなんだ。お前達は俺達に、何を差し出せる?」
その言葉に、俺は引っかかった。だが、この会話を止めるのは、良くねぇか。
それに、コイツはきっと本心では見返りなんて求めてねぇ筈だ。
「わ、我々の忠誠を捧げます!我らに守護をお与えください!さすれば我々は、リムル様に忠誠を誓いましょう!」
「っ!誓いましょう!」
二人のゴブリンが、地に頭を伏せる。この光景を、俺は何度も目にしている。
犯人を捕まえてくれと懇願する姿。今回だけ見逃してくれという、小さな犯罪を犯した犯罪者達の謝罪。捜査の失敗を上司や被害者、被害者遺族に報告する時。
それら全てが本意だという訳では無い。だが、この二人は心の底からの言葉を乗せて、地に頭を伏せた。
「分かった。引き受けてやるよ」
俺がそう言うと、ゴブリンは嬉しそうにこちらを見上げた。
その時だった。
ワオォォォォォォンッ!
「っ?!」
「ハッ?!」
若いゴブリンが、その咆哮に咄嗟に振り返った。そして弾かれる様に出口へと向かい、その方角にある岩山を見た。
「が、牙狼族だァァァ!」
「ヤバイヨヤバイヨォ!」
「おしまいだぁ!」
「俺達食われちゃうんだァ!」
一人のゴブリンがそう叫ぶと、他のゴブリン達にもその恐怖が伝播した。
「逃げようよ!」
「どこへ?!」
「おおおお前達落ち着きなさいぃ…」
その時、リムルが表に出た。
「ビビる必要は無い。これから倒す相手だ」
「あぁ、では」
村長の目に、希望の光が差し込む。
「お前達のその願い、暴風龍ヴェルドラに代わり、このリムル=テンペストが聞き届けよう!」
その言葉を告げると共に、全てのゴブリンがリムルの前に頭を下げた。
「はあぁあぁ………ありがとうございます…我々はリムル様達の忠実な下僕でございます!」
「任せておけ」
〈こうしてリムルは、ゴブリン達の主 兼 守護者となった。そして光太郎は、とある決意を固めるのだった〉
魔物がいる世界。コイツらが人間の存在を知っているという事は、共存、もしくは敵対しているのかもしれない。どちらにせよ、この世界に魔王的な奴が存在するのは確実だろうな。
俺がこの世界に転生した意味は、一体何なんだろうな。
〈こうして、リムルと光太郎。二人の転生者の物語が始まったのであった〉