【休載中】転生したら不思議なことが起こった件   作:鉄血のブリュンヒルデ

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前回のあらすじ

光太郎は一体のスライムと出会った。
そのスライムは、なんと光太郎と会話が出来たのだ。
そして、話していくうちに、光太郎が死ぬ直前に逮捕した殺人犯が起こした、殺傷事件の被害者の”三上 悟”である事が分かった。だが光太郎はそれ伏せ、リムルと名乗るスライムと行動を共にする事を決める。
そして、その直後に出会ったゴブリンを助ける事となる。

第三話 牙狼と月の影


第三話 牙狼と月の影

「なるほど。こりゃ絶望的な戦力だな」

 

「おい、光太郎。ハッキリと言い過ぎだぞ」

 

俺がゴブリンの戦力に対してのコメントを告げると、リムルから非難の声が上がる。しかし、仕方ないだろ。

 

〈光太郎の視線の先には、貧弱過ぎる装備のゴブリン達が数十匹群がっていた〉

 

「プレッシャーだなぁ……」

 

リムルはそう言いながら天を仰いだ。しかしそれもすぐに終わり、またシャンとした姿勢(?)に戻った。

 

「皆、状況は分かっているか?」

 

リムルはそう言ってゴブリンのリーダーを見た。

 

「はい!生きるか死ぬかの戦いになると、覚悟は出来ております!」

 

ゴブリンのリーダーが敬礼の様なポーズをとると、近くにいた一匹のゴブリンもそれに習い、敬礼の様なポーズをとった。

 

ちなみに、さっきから敬礼の”様な”と態々言っているのは、あれが正しい敬礼と呼べないからだ。

 

まず一つ。あれは形だけで言えば挙手の敬礼と呼ばれる物だ。挙手の敬礼では、相手に掌は見せない。

二つ。挙手の敬礼をする最低条件。帽子を被っていること。

以上の二つの事から、あれは敬礼とは呼べない。

帽子を被っていない時は、10度の敬礼と言うものを行うのだが、まぁ、そこら辺は追追指導するとしよう。

 

「気負うことはない。気楽にな!最善を尽くす。その事だけを考えろ!」

 

リムルがそう言うと、ゴブリンから歓声があがった。

 

「んんっ!まずは負傷者の所に案内してくれ」

 

そう言ったリムルに対して、一匹のゴブリンが「自分が案内します!」と名乗り出てきた。そして、これもやはりボロボロの建物に案内された。この中に負傷者がいるらしい。

あの牙狼の戦闘力とコイツらの戦闘力。この二つは比べるまでもなく圧倒的だ。一体どの程度で済んだのやら。

 

「出来るだけの手当はしましたが…」

 

その言葉に偽りは無いのだろう。

 

〈負傷したゴブリン達には、汚い布ではあるが、出血部はある程度と覆われていた。骨折しているであろう者のその部位には、しっかりと接木も当ててある〉

 

ナレーターの言う通りだ。だが、恐らく知識も技術も足りていないんだ。回復薬もない。医療器具なんて以ての外。その中で、出来るだけの手当は施してある。

 

そんな事を考えていると、突然リムルが一匹のゴブリンを飲み込んだ。

 

「っ?!」

 

「リムル様?!一体何を?!」

 

村長がおどおどしながら問う。恐らく何か策があるんだろうが、せめて先に説明を入れろ。

 

「んべっ!」

 

そして今度は、さっきのゴブリンを吐き出した。

 

「うぐっ!………あれ?俺……」

 

「ホアァァァァ?!き、傷が?!」

 

「治っている!」

 

村長が枯れた声で驚く。なるほど。アイツ体の中で何かしやがったのか。

 

「おいリムル。一体どういう仕組みだ?」

 

俺は小さくそう聞いた。

 

「ん?あぁ、一回捕食して、そんで体の中に貯めてある回復薬をぶっかけたんだよ」

 

「なんじゃそりゃ」

 

〈光太郎のその言葉を聞かずに、リムルはそれと同じ作業を全てのゴブリンに行った〉

 

「うげっ!」

「へぶぅ!」

「あう!」

「はぎぃ!」

 

いや、せめて、そっと置いてやれ。投げるな。

 

「さ、流石はリムル様!」

 

「「「「「ははぁぁぁ!」」」」」

 

それを見ていた村長を含むゴブリン達は、深深と地に頭を伏せた。そしてリムルは、そのゴブリン達の頭を上げさせ、言った。

 

「柵を作る!村の防備を固めるぞ!」

 

〈リムルのその言葉に、ゴブリン達は力強く頷くのだった〉

 

 

 

「え?光太郎は戦わないのか?」

 

その後、ゴブリン達にある程度の指示を出して暇になった俺達は、少し今後の方針について語り合っていた。

 

「あぁ、そうだ。考えてみろ。俺は人間だ。魔物の長になるのは、同じ魔物の方がいいだろ」

 

リムルの問に対して俺は、そう答えた。

 

「確かにそうだけど、それと今回戦わないのって何か関係あるのか?」

 

まぁ、普通その疑問が浮かぶだろう。予測はしていた。だから俺は、自分の考えの通りに答えればいい。

 

「いくらお前が強くても、実績がなきゃ誰もついてこねぇ。だから、今回はお前一人の手柄にした方が、都合がいいだろ?」

 

「なるほど。そういう事か。じゃあ光太郎は、ここでの立ち位置はどうするつもりなんだ?」

 

そこだ。俺が今回リムルに話したかった事の中で、一番重要な部分だ。

 

「この戦いが終われば、この周辺のゴブリン村にも噂が広まるだろう。恐れていた牙狼族が討たれたってな。そうなった時、お前の元に下ろうとする者が多く現れるはずだ。その時、お前の威光だけで全てを治める事が出来ないかもしれない」

 

「ふむふむ。それで?」

 

リムルがしっかり聞いている事を確認し、俺は話を再開した。

 

「それに、外からの襲撃とかが無いとも限らない。だから俺は、この村に防衛機関を作りたいと思っている」

 

これは俺が、先の戦力の確認の時に思いついた事だ。

 

「防衛機関?」

 

少し押しが弱いか?なら、もう一押しするか。

 

「そうだ。例えば警察の様な、兵団組織を作れればいいと思っている」

 

「なるほど。それなら、戦闘員と非戦闘員をある程度は区別できるって訳だ」

 

「あぁ、そうだ。襲撃時には、少し徴兵制をとるが、それは自由に選ばせる。お前は村の主。俺は村の守護者って訳だ」

 

守護者とは、少し飾った言い方だがな。実際、俺達警察は常に市民を守れる訳じゃなかった。俺達は、事件が起こってからじゃないと動けない。

 

疑わしきは罰せず。

 

俺達の国の美徳とも言える言葉だが、それと同時に、俺達警察を縛る言葉でもあった。

怪しい。アイツが犯人だ。そう確信しても、疑わしいだけでは俺達はソイツを検挙出来ない。

もし証拠が揃っても、金持ちなら慰謝料や保釈金を払ってすぐに出ていく。そもそも、警察上層と繋がりのある政治家の違法行為だって、俺達は捜査を途中で中断させられた。それに反発して、俺は巡査に降格したわけだ。

 

「分かった。それじゃあ、戦いが終わったら詳しく話そうぜ。これからよろしくな!」

 

リムルはそう言って、体の一部をの伸ばして、手を作り出した。握手を求めているのか。

 

「おう」

 

俺は迷うこと無くその手をとった。

 

ヌニュッ

 

だが俺は、変な効果音が出る程柔らかいその手をすぐに離した。

 

「うっわ」

 

「やめろよ!そんな声出すな!スライムなんだからしょうがないだろ!」

 

「ハハハッ!冗談だって」

 

流石に本気では無いがな。少年時代にスライム作って遊んだ事あるから、まぁまぁ慣れてるし。

 

その時だった。

 

「リムル様!コウタロウ様!牙狼族がこの村に近付いています!」

 

一匹のゴブリンが、俺達に駆け寄りそう言った。

 

「っ!分かった!」

 

「俺は一応奴らの後ろに回って退路を塞いでおくが、俺の仕事を増やすなよ?」

 

「安心しろ。今回の手柄は全部俺が持っていくから!」

 

俺達はその言葉を合図に別れた。

 

〈そして光太郎は、森の中に入り気配を消しながら、牙狼族の後ろに回ったのだった。だがその時、何者かが光太郎に近付いていた〉

 

「っ?!誰だ!」

 

俺は気配がした方へと視線を向けた。

 

「…この気配、牙狼なんかじゃねぇな?」

 

「よく気が付いたな。あと一瞬でも遅れていれば、俺の刀の錆にしていた所だ」

 

ガチャッガチャッ

 

まるで、鎧を纏っているかの様な足音だ。暗闇から聞こえる足音に、俺は感覚を研ぎ澄ます。だが俺は、目に映った姿に、呆気にとられてしまった。

 

「シャドームーン、だと?」

 

〈そこに立っていたのは、BLACKの敵役として登場した、シャドームーン。この世界に存在する筈の無い存在だ〉

 

「ほう。俺の名を知っているのか……貴様まさか、転生者か?」

 

シャドームーンは、少し驚いた様な仕草の後に、こちらを見ながら見ながら言った。

 

「さぁな。そういうお前こそどうなんだよ」

 

「質問に答える義理は無い」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すぜ」

 

俺のその言葉と共に、シャドームーンが自身の武器であるサタンサーベルを取り出して、赤い斬撃を飛ばして来た。

 

「っ!変身!」

 

俺はブラックに変身しながら、その攻撃を躱した。

 

「ほう。貴様、ブラックサンか。面白い。互いに運命の出会いという訳だ」

 

コイツ、ブラックを知ってやがる。てことかこいつも転生者か?いや、この世界に同質の力があるのかもしれない。迂闊に喋ると、向こうに情報が行くだけだ。

 

「避けてばかりではつまらんぞ。真面目に戦え」

 

「よく言うぜ。こっちは身一つなのに、そんな武器使ってしかも遠距離技。真面目に戦えよ」

 

挑発に乗るにしても乗らないにしても、まだ策が浮かばない。とにかく今は、攻撃を喰らわない事だ。

 

「そうか。なら、これで平等だな」

 

シャドームーンはそう言いながら、サタンサーベルを地面に突き刺した。

 

「はんっ。後悔すんなよ?」

 

「する筈もないだろう。俺が勝つというのに」

 

確かに奴の言う通りだ。俺と奴じゃ、力の差があり過ぎる。

 

ザッ!

 

俺は地面を蹴って、一気に間合いを詰めた。そして拳を引き、遠心力を加えてシャドームーンの横っ面に拳を当てた。

 

「………その程度か?」

 

オイオイ、マジかよ。今の割と力込めてたんだが。

 

「んな訳!」

 

俺はそのまま体を反転させながら腰をひねり、後ろ回し蹴りを胴体に命中させた。

 

「効かんな」

 

コイツ、硬すぎるだろ。こうなったら初っ端から本気の一撃当てるしかねぇか。

俺はとにかく距離を取ろうとした。だが、それを許す程、奴は甘くない様だ。

 

「フンッ!」

 

ガチャンッ!

 

奴は地面を蹴り、こちらに迫って来る。俺の倍に近い速度で。体制は不安定だが、やるしかねぇか!

 

「ライダーパンチ!」

 

奴が俺に追いつくタイミングを見て、右の拳を突き出した。

 

「グッ?!」

 

流石に奴も、不安定な体制ではまともな防御は出来なかったらしく、後ろに飛ぶ。

しかし俺も、その反動で勢いを増して、そのまま近くの樹木に激突した。

 

ドカァァァンッ!

 

「フフフッ。中々やるようだな」

 

奴は不気味に笑う。まだまだ余裕綽々って感じだな。

 

「だが残念だ。お前はまだ実戦経験が少ないらしいな」

 

「なんだと?一体何の」

 

何の事だ。そう聞こうとしたその時だった。

 

ザクッ

 

何かが、俺の腹部を貫いた。

 

「な、あ、ガァ?!」

 

それは、サタンサーベルだった。

 

「何故これが、こんな所に?!」

 

「俺の力さ。それを操って、お前に飛ばした。それだけさ」

 

「ふざ、けんなぁ!グアァ?!」

 

ふらつきながらも、奴に近付こうとした。だが、勢いよく引き抜かれたサタンサーベルと共に、俺の体から血が溢れ出した。そしてあまりのダメージに、俺の変身が溶けてしまった。

 

「お前の力、中々だったぞ。だが、このまでだ。そこでじわじわと襲ってくる死の恐怖に怯えながら、尽き果てろ」

 

シャドームーンは、そう言いながら森の暗闇に消えていった。

 

〈光太郎は暗闇の中で、シャドームーンの背中を睨みながら、意識を手放したのだった〉




ここで説明です。

これから、リムルなどの漢字を知っている者が光太郎を呼ぶときにはそのまま「光太郎」と書き、それ以外の者が呼ぶときは「コウタロウ」とカタカナで表記します
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