【休載中】転生したら不思議なことが起こった件   作:鉄血のブリュンヒルデ

5 / 5
第五話 憲兵

ブロロロロロロロロロロロロロロ…………ッ

 

〈光太郎が旅立って五時間。

光太郎の目に写っているのは、人が住まう国、ブルムンド王国だ〉

 

俺はバトルホッパーのエンジンを止めて、車体を覆う様に迷彩マントをかける。

 

「ここからは徒歩か。まぁ、五分もあれば着くだろ」

 

〈光太郎の言葉通り、そこからブルムンド王国までは五分程で到着した。そしてそれから、ブルムンド王国の入口に辿り着いた〉

 

あれは、憲兵か?

手を挙げて……止まれってことか。

 

「ここから先はブルムンド王国の領土だ。ただいま国境付近で商人の襲撃が頻発している。念の為に身分証の提示を願おう」

 

丁寧な物腰の憲兵だ。

しかし拙いな。俺は身分証なんて持っていないぞ。

 

「……悪いな。俺は身分証を持っていないんだ。辺境から出てきたもんでな」

 

嘘を言ってもバレる。なら初めから本当の事を言った方がいい。

だが、話の半分は少し危うい。間違ってはいないのだが、魔物の村とまでは言えない。

まだ交番勤務に落とされる前に捕まえた詐欺師が言っていた。

『本当にバレない嘘をつく方法は、本当な話とありそうな話の中にそっと嘘を添えることだ』

犯罪者の考えに同調するようで気乗りはしないが、これも目的の為だ。仕方がない。

 

「では、何をしにこの国へ?」

 

流石にこれだけでは通されないか。当たり前だ。

だが、今ので少し緊張がほぐれたようだ。本物の盗賊なら、ここで攻撃を繰り出す。

俺は少し前まであちら側だったんだ。その位は分かる。

 

「この国に、大きな資料館があるって聞いてな。以前俺を襲った野郎の情報が無いかと思ってきたんだ」

 

そう言って俺は、服をめくり腹部の傷を見せた。

リムルの回復薬でも傷跡までは消せなかったらしい。最初に聞いた時は嫌な感じだったが、ここで役立たせて貰おう。

 

「なるほど。しかし、身分証を持っていないとなると、そう簡単に通す訳にはいかんのだ」

 

そりゃそうだわな。けど、こっちも奴の情報は掴みたい。例え小さくても。

 

「そうだ。この国でその身分証の発行って出来るのか?」

 

俺が聞くと、憲兵は頷きながら答える。

 

「しかし、結局持っていないと入れないのだから、どこか別の入国が簡単な国で作る訳にはいかんのか?」

 

普通ならその手もあるが、俺はなるべく早く情報を手に入れたい。だから、この国に今入る必要があるんだ。

 

「…………あ、だったらアンタが着いてくればいいじゃん。ここは他の兵に任せてさ。あの小屋の中にいるんだろ?」

 

「え?」

 

俺の提案に、憲兵は間の抜けた声を出した。

 

「見た所アンタ、中々の腕の持ち主だろ。そんなアンタが一緒に行くなら、俺が悪人であっても取り押さえられるはずだ。違うか?」

 

「……まぁ、確かに腕に自信はある。だがしかし…」

 

んー、これはどうしたものか。完全な堅物タイプだ。

一か八か、これに賭けるか。

 

「仲間の事、信じてないのか?」

 

「っ?!そんな訳が無いだろう!」

 

よし、食いついた。

 

「なら、任せてもいいんじゃねぇか?それか逆に、アンタが残って他の誰かを付けてもいい。

俺は身分証をとって、資料館に行って、そんで帰るだけだ。そんなに時間はかけねぇよ」

 

「………………分かった。私が同行しよう」

 

これで第一関門は突破だ。

 

「少し待っていてくれ。他の兵を呼んでくる」

 

「あぁ」

 

さてと………身分証か。咄嗟に理由にしていたが、案外いいかも知れない。これから人間の国とリムルの村。交流が全く生まれないはずが無い。

その時に身分を証明されている者がいれば、少しは役立つはずだ。

 

「すまん。待たせたな」

 

「いや、そんなに待ってはいな…………え、アンタ女だったのか?」

 

想定外だなオイ。

 

〈光太郎の前に現れたのは、先程同様甲冑を着込み、唯一兜をとった女性を姿だった〉

 

俺が驚いていると、目の前の女は真面目な顔のまま答える。

 

「女の冒険者は多くいるが、兵となると少ない。女と言うだけで舐めてかかる様な連中もいる。

だから、兜を被っている時のみ、魔法で声を変えているのだ」

 

そんな魔法まであるのか。

リムルに聞いて魔法がある事は知っていたが、この世界の魔法は某RPGの様に戦闘向きの物ばかりという様な感じではないみたいだ。

 

「力で黙らせるってのもあるが、職業的に無理だしな」

 

「そうだ。で、行くのだろう?支度はできているのか?」

 

憲兵は頷きながらそう言った。

 

「出来てないわけないだろ?………あ、いや、一つだけ聞いておこうか」

 

「なんだ?」

 

後々の事を考えると、憲兵の知り合いは貴重だ。

 

「アンタの名前だよ」

 

俺がそう言うと、憲兵は一瞬驚いた様な顔になり、また真面目な顔に戻って背筋を伸ばし言う。

 

「私はブルムンド王国自警団第一部隊 カナリア=アストレイ。これより貴殿を、自由組合の支部へと招待しよう」




4・ヶ・月・ぶ・り

今回オリジナルの組織を作りました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。