死憶の異世界傾国姫 ~ねぇ、はやく、わたしを、殺して~   作:ぎむねま

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モンスターハウス

 俺は覚悟を決めて、重厚な大扉を押し開けた。

 

 謁見の間。

 

 権威の頂点にしてその象徴ともなると、国は違えど間取りつーのは似るもんだ。

 天井は高く、長い部屋の突き当たり、一段高い所に玉座が設えてある。

 エルフの国ならではの変わったトコロと言えば、採光の為に大きく作られた天窓だろうか?

 計算され尽くしたであろう幻想的な日差しが、壁や柱の緻密な装飾を引き立てている。

 

 なるほど、素晴らしい場所だ。だが頂けないのが床の汚れ。謁見の間の床は砂まみれだった。ブーツで踏みしめればジャリッジャリッと音がする。

 

「まぁ……砂じゃねぇよな」

 

 肌にチリリと刺さる様な感覚がある。目に見えないナニかが俺の健康値を傷つけている。

 

「まさか? 魔石を砕いてばらまいてるのか!」

 

 ココに来て霧の無効化方法が解った。思えばゼスリード平原で俺の魔石袋の中の魔道具は力を失っていなかった。

 そうなりゃさっきの戦いのタネも同じだろう。フェノムは当然の様に魔道具を使っていた。

 こんな方法が有ったとは……いや、言うてもこれだけの魔石をばらまくのは余りにお大臣。幾ら掛かるか知れたモノじゃ無い。

 いやいや、戦術として使えるかどうか考えるのは俺の仕事じゃない。

 今、俺が考えなきゃ行けないのは目の前の状況だ。何故、奴らは魔石を撒いた?

 

「まぁ、そうだよな」

 

 謁見の間には幾つか裏口が存在する。ユマ姫だってそこを使って脱出したとは聞いていた。

 そこから出るわ出るわ、三匹も!

 四つ目の虎、お馴染みとなった巨大な蜘蛛、まんま恐竜じゃねーか! ラプトル。

 全てが魔獣だ。いや、俺に魔獣と普通の動物の違いなんざ付かねーけどな。

 

「大歓迎だな。幾ら何でも準備が良過ぎるじゃねーか!」

 

 思わず愚痴をこぼすのもしゃーなしだろう。

 ンだよコレは! 違和感しかねぇよ。まるで俺が霧を撒く事が解っていたみたいじゃねーか!

 返事を期待しない独り言だったが、思いがけず返事があった。

 

「買いかぶりだよ、交渉が決裂して君が攻め込んで来る可能性を考慮していただけさ、ココは普段から霧を薄く撒いているからね」

 

 玉座の裏から姿を現した男。銀髪に中性的な顔立ちは可愛らしく、軍服だってゴテゴテと手が入ってコスプレみたいに見えてしまう。

 いや、実際にコスプレ感覚なんだろうな。俺はコイツに会った事がある、確か黒峰の屋敷に行った時だ。黒峰(ヤツ)のお気に入りと思えばヘンテコな衣装も納得だ。

 

「悪ぃな、会った事は覚えてるが名前を忘れちまった」

「ソルンだよ、名乗るのは初めてだから安心して欲しい」

「なるほど、お返しにコッチも名乗る必要があるかよ?」

 

 尋ねながらも俺はじりじりと後退する。人間相手ならどれだけ囲まれようが問題ないが魔獣相手は流石にマズイ。

 

「知ってるよ、タナカさん。忘れた事も無い。僕はずっと君を殺したかった」

「照れるじゃねぇか」

 

 軽口を言いながらも考える。ソルンってのは兵士から聞いた責任者の名前とも一致する。

 だが、オカシイだろう?

 スフィールでも今回の遠征は話題になっていたが、こんな怪しい奴が総大将のハズが無い。責任者を出せよ!

 

「わざわざ来てやったのに、主役のテムザン大将軍が留守なのはガッカリだな」

 

 兵士に聞いても、その姿を誰も見ていなかった。名の知れた将軍を討ち取るのが俺の役割と自負していたのだが……

 

「ああ、あんなのは名前だけだよ。あんな老人じゃ大森林の魔力に耐えられない」

「そりゃそうか……」

 

 肩をすくめ戯けて見せるが、俺は内心ガックリ来ていた。

 それじゃあ、この戦争を終わらせる方法が無ぇじゃねーか!

 歯噛みする俺に、哀れむようにソルンは言った。

 

「安心して良いよ。僕が死ねば帝国は撤退する、その程度には重要人物のつもりさ。それに欲しいモノはあらかた手に入った」

「そりゃーありがてぇな」

 

 なるほど、技術や魔石の略奪は既に終えたと言う事らしい。霧が有限である以上、何時までも占領を続けられるワケが無い事は解っちゃいたからな。

 だが気になるのは、ソルンは言葉の最後、付け足す様に

 

 ――今はまだ、手が出せない事も解ったしね。

 

 小声でそんな事も呟いたのだ。

 意味が解らねぇが、特に聞かせる気が無かったのだろう。なんせ俺だから聞こえた程度の声量だ。

 忘れるワケには行かないが、とは言え意味をじっくり考える余裕はない。

 

 言葉の通りなら、この優男を一人斬るだけで済むと言うがそんな事があり得るか? だが嘘は感じない。自分の命を餌にしてでも俺を逃がしたくないと見た。

 俺が帝国に与えた被害は相当なモンだが、それ以上に何か恨みを買ったかね?

 

「おしゃべりはここまでにしようか、見せておくれよ。剣一本で魔獣を倒す腕前を」

「良いぜぇ! ちょーっと地味だが我慢しろよ?」

 

 自信満々な態度、それに反して言葉と同時に俺は反転。一気に入り口へと駆け戻る。

 

 そうだ、俺は逃げた!

 相手が逃がしたく無いと言うのなら、勿論逃げるに決まっている!

 

「は? ……逃がすな! 追え!」

 

 虚を突かれたソルンの反応が遅れる。その隙に俺は入り口の扉を引き開き、謁見の間の外へと滑り出る。

 

 そう! 引き開いたのだ。この謁見の間の扉は内開き!

 

 立て籠もるのに都合が良いからだろう、しかしこの場合はどうだ? 操られているとは言え相手は魔獣だ、扉を引いて開くと言う知能はあるのかね?

 

 ――ドンッ! ガンッ!

 

 答えはこの音。ただ引くだけの扉を奴らは開ける事が出来ない。

 しかし、俺はこのまま魔獣が扉をぶち破るのを待つつもりは無い。

 

「ヨッス! 元気?」

 

 廊下側から片方の扉をちょいと開ける。途端にガリッっと長い脚が割り込んできた。

 大土蜘蛛(ザルアブギュリ)、お馴染みになった蜘蛛の魔物がトップバッター。

 勢いよく扉をこじ開けた蜘蛛だが、廊下に顔を出した途端、ピタリと一瞬動きが止まる。

 金属質の四つの大きな眼がキラリと反射して、間近で見ると中々綺麗だ。

 

 ――シュルン!

 

 口に出すならそんな音になるか? それだけで魔獣は死体になった。

 硬質な外殻を切り裂くとギィンと高い金属音がするものだが、そんな音すら無しに刀が通った。我ながら会心の一刀。

 大土蜘蛛(ザルアブギュリ)はあっという間にバラバラに分解される。

 

 なにせ、魔力たっぷりの謁見の間から一転。廊下(コッチ)(がわ)は魔力を掻き消す霧に塗れている。

 その落差に魔獣と言えどもギョッとして動きを止める。その瞬間に斬りつけるなら、巻き藁を斬るのと変わらない。

 

「次の方どうぞ~」

 

 蜘蛛の死体が引っかかって扉は半開きのまま。だがそれが却って都合が良い。その死体を踏みつけて次の獲物が入ってくる。

 

 ――キュォォォ!

 

 ラプトルだ。ピョンと軽快に飛び込んでくる姿はけっこー可愛い。

 

 ――シュッ!

 

 だが、斬る! それで終わり。

 動きが止まった瞬間に首を刎ねた。

 

「引け! 引くんだ! 行くんじゃ無い!」

 

 俺の狙いに気が付いたのか、中から慌てた声が響く。

 だが手遅れだ、既に魔獣は残り一匹。こうなれば逆にソルンが逃げる可能性もある、今度は俺が扉の隙間から中へと滑り込まんと蜘蛛の死骸を踏み越える。

 

「やべっ!」

 

 意気揚々と踏み込んだ瞬間、ガリッっと扉を引っ掻く虎の手が突き込まれたのだ。軽く頭を掠っただけだが、鋭い爪は硬い扉に大きな傷を付けている。兜を付けていなければ死んでいたに違いない。

 完全に油断していた、魔獣はソルンの命令に従ってるかと思っちまった。良く考えれば残ったのは虎、デッカい猫みたいなモンだ、洗脳されてるって言っても獲物を前に素直に従うハズは無ぇ。

 それにしても装備が優秀で助かるね、どうしたって真剣勝負ってのは一瞬の油断で全てが終わっちまうからな。

 さて、反撃だ。俺は扉の隙間からコチラの様子を窺っていた虎の顔面に向けて突きを放つ。

 

 ――ギャオォォン!

 

 手応えと同時、飛び跳ね逃げる勢いはネコ科特有のモノ。途方も無い脚力で、刀を引き抜くのが一瞬遅かったら刀ごともっていかれたに違いない。

 手負いの虎は距離を取って、謁見の間の中央でグルルと喉を鳴らし迎え撃つ構えを見せた。さっきの突きで四つの瞳の内の一つが潰れているが、戦闘力の低下は期待出来そうに無い。

 

「よっす、お待たせ」

 

 俺はソコに自分からふらりと飛び込んだ、コレは殆ど自殺行為に等しい。

 なにせネコ科の生物が飛び掛かる速度は並じゃ無い。まして相手は魔獣、人間の反射神経じゃ迎撃は不可能。

 だがな。

 

 ――バシュ!

 

 狙い澄ました一閃で四つ目の虎の首が飛ぶ。

 刀を振り抜いた瞬間に、虎の方から首を差し出しに来たとしか思えぬ程の絶妙なタイミング。

 自分で言うのもナンだが、神業としか言い様が無い。そうは言ってもタネはあるけどな。

 

 俺が反応出来た理由は簡単。

 

 音だ。

 

 謁見の間には砂状の魔石がばらまかれている。普通の床なら自重が大きくともネコ科の動物が踏み込む音など聞こえないだろう、だが砂が撒かれているこの部屋では踏みしめる音も踏み出す瞬間の音も大きくなる。

 そう言った音の情報は精神を研ぎ澄ませた剣士に取っては光の情報より有益だ。

 なにせ「よーいドン」の合図も音である事から解るように、音での反応の方が目での反応より遙かに早い。

 後は音がした瞬間、踏み込んでくるであろう場所に刀を振るえば猫の死体が出来上がるって寸法よ。

 加えて言えば、砂のお陰で力が逃げて、踏み込み自体が甘かった。

 

「驚いたな、人間技じゃ無い」

 

 呆然と呟くのはソルンだ。綺麗な顔がマヌケに歪むのは気持ちが良いね。

 

「見物料はお前の首で良いぜ」

「悪いが請求は彼に回してくれ」

 

 ん? 見ればソルンの傍らに一人の男が居る。どっから湧いて来やがった?

 俺ほどでは無いが大柄な男だ。歳は四十前ぐらいのオッサン。ボサボサ頭に対して、手入れがバッチリな見事なカイゼル髭。いっそ髭をハンドル代わりに握ってやりたい程ではあるが、それ以上に気になるのはその目つきだ。

 俺と同類、人斬りの目。堂々と人を斬ってきた人間特有のモノで、フェノムの様な殺し屋の腐った瞳とは違う。

 荒々しく、野蛮な人間。凄腕の傭兵と言われれば納得だが、一方で陣羽織みたいなド派手な衣装がちぐはぐに映る。

 成り上がり者丸出しであるが、小金を稼いだ商人にはとても見えない。

 気安い調子でソルンと会話をしているのだから、それなりの地位に違いないのだ

 

「だーっから、ペットなんぞ役に立たんと言ったでしょう」

「奴は選りすぐりの魔獣を三匹、一瞬で倒したのですよ? あなたなら勝てると?」

「とーぜんでしょう、でなければ挑まない。妖獣殺し、前から一度……ヤって見たかった」

 

 そう言って男が発したのは剥き出しの殺意。

 殺し殺されの場に立たぬ者にはとても信じられねーとは思うが、強烈な殺意にあてられた人間は臓腑を押しつぶされる感覚と共に、グラグラと地面が揺れた様に、前後不覚に陥るモノだ。

 まさに達人の圧の掛け方で、雑兵ならこれだけで参ってしまうトコロ、だが俺は違う。すぅーっと息を吸い込み丹田に力を込めて突き刺さる殺意をはね除けた。

 

「結構ヤルみたいだが、自己紹介をお願いしても?」

 

 コイツは途轍もない使い手だ。

 聞きながらも油断なく刀を構える。小手先のフェイントが効く相手じゃ無ぇ。

 名前を聞かれた男は片眉を吊り上げ、口の端を歪ませる。

 

「嘘だろ? 俺を知らねーのか? いーぜぇ、教えてやる。俺は殺人卿こと、ローグウッド男爵。聞いた事は?」

「ああ、あるな」

 

 ローグウッド、山賊殺しのローグウッドだ。寂れた村の自警団の一人に過ぎない男だったが単身で大盗賊団を討伐した功績をもって騎士に叙勲された有名人。

 剣一本で出世したと言う意味では、妖獣殺しで叙勲された俺の大先輩とも言える男だ。

 

 この戦争で出世して男爵にまでなっていたのかよ、殺人卿とはヤベェ二つ名が付いたもんだ。何をやったか想像したくもねーな。

 

 知らないと嘘を吐いて気勢を削いでも良かったが、下らぬ嘘で自分の気持ちが萎えちまったら論外だ。

 こう言う口上は相手を馬鹿にすれば良いってもんじゃないのが難しいのよ。

 

「その程度か? 俺の方は山賊殺しって名前が妖獣殺しってのより地味で、随分気にしてたんだがね?」

「女の事なら兎も角、オッサンの事を気に掛ける趣味は無くてね」

「俺もだが、飲み屋のネーちゃんにどっちが強いのかと毎度聞かれるのが、少々ウザったくてね」

「俺もだ、確かにな。良い機会って訳だ」

 

 軽口を叩きながら相手を観察する。

 アホみたいに派手な衣装だが視線誘導を兼ねているのだろう、キラキラと目障りで邪魔な衣装だ。

 ジャリジャリと無造作に音をたてる足運びは、いっそ素人染みてるがそれもフェイクに違いない。

 何よりマズいのが太刀筋を見られている事。

 一発勝負の殺しの世界でタネが割れている事は恐ろしい程のハンデとなる。

 

 ……だが、まぁ勝てるだろ?

 

 まず、防具が違う。エルフ製で素材から近未来感。

 そして地の利がある、魔石がばらまかれた謁見の間は魔獣はともかく人間では厳しいハズだ。

 そしてなにより武器が違う。モルガン爺さんが作った俺のカタナは俺が知る前世の日本刀よりよっぽど凄い。

 

 考えてみれば負ける要素は一つもねぇ、例え相手が同じレベルの達人であろうとも、装備が中世と未来レベルで違うのだ。

 

「面倒くせぇな、とっとと終わらせようぜ」

 

 俺はいっそ無造作に歩を進め……なんだ? 何かオカシイ。

 

 ……不安。それが頭をよぎった。

 

 完全に理屈抜き、直感が俺の足を止めさせた。

 よく見れば、ローグウッドは抜いていない。二本の剣は鞘に収まったまま腰にぶら下がっている。

 

 ……気になる、何故かその二本の剣から目が離せない。

 

 二刀流。格好いいのは認めるが、剣術として主流じゃないのはこの世界でも同じだ。

 分厚い剣で重厚な鎧を身に纏った騎士をガツンとぶん殴るのが主流、重い剣は片手でブンブン振れるものじゃ無い。

 そうでなくても利き手じゃ無い腕で剣を扱うのは人一倍の技術が必要だし、力も必要だ。だったら片手で盾を使うか、両手でより長くて大きい得物を持つかした方が普通は強い。

 

 ……だが、一つだけ例外に心当たりがある。茶化す様に探りを入れる。

 

「なぁ、随分とゴキゲンな剣じゃないか、見せてくれよ?」

 

 俺は自然に笑えただろうか? 嫌な予感が止まらねぇ。

 

「ハッハッハッ! 気が付いたか? 最近手に入れたモノだがこれだけで戦争に参加した甲斐があった、爵位など今となってはオマケと思える」

 

 引き抜いて見せた両の剣、その刃は冴え冴えと蒼く輝いて、言い知れないプレッシャーを放っていた。

 

「魔剣……か」

「そうだ、それも森に棲む者(ザバ)共が持つ中でも最強の魔剣、名前はファルファリッサ」

 

 ……その名は聞いた事がある。なぜならレジスタンスの連中が必死に探していたからだ。

 何故かって? この魔剣がユマ姫(アイツ)の兄の形見、王族の秘宝だからだ!

 ユマ姫が狩猟小屋に隠したが、レジスタンスは見つける事が出来なかった。それも当然、帝国が先んじて手に入れていたのだ。

 

「そりゃあ、土産が増えたな」

 

 言いながらも俺は内心焦っていた。マーロゥ少年の持つ魔剣……恐らくはずっとグレードの低いソレですら、かなりの切れ味を誇っていたからだ。

 少年は手練れとは言えない未熟な腕前だったが、それでも据物斬りでは俺の刀に匹敵するような切れ味を披露した。

 ならば最強の魔剣が相手では、どんな防具も紙切れ同然に違いない。魔力で切り裂くならば力は不要。片手で扱う不利も無い。

 そして魔剣を使える人間は高い健康値を持っている事が多い。強い魔力も苦にならないに違いないのだ。

 アレだけあった有利が一瞬で無くなっちまった。 

 それどころか、頼もしかった防具がむしろ足かせになる。兜は視界を遮るし、鎧は動きを阻害する。

 かといって悠長に脱がせてくれるとは思えねぇ。

 ローグウッドは俺の焦りを見透かした様に嫌らしい目で俺の刀を見る。

 

「お前の剣も面白いじゃないか、俺が使ってやるさ」

「そりゃどうも、って言っても俺のはそんな高級品じゃないんでね」

「ほう? 随分と暴れ回ったと聞いたが?」

「そりゃ俺の腕が良いからさ」

 

 半分ホントで半分嘘だ。確かに刀は高級な素材と複雑な魔術を使った魔剣では無く、ただの鉄のカタマリ。

 それでも刀って奴は魔剣と比べても捨てたもんじゃ無いハズだ。

 現に俺は魔剣使いのマーロゥ少年に圧勝してるが……まぁ、使い手も未熟だし、魔剣のグレードもずっと低かった、それでも刀が魔剣に勝てる事は証明済みだ。

 俺の強気に対し、ローグウッドは抜き放った二剣を広げ、見せつけるようにゆったりと構える。

 

「ほぅ、言うじゃねぇか妖獣殺し。見せてみろよ、その腕前を」

「ジジイじゃ見切れない速度だ、諦めな!」

 

 ズシリと空気が重くなるのは濃厚な魔力の所為では無いだろう。

 

 ……負けられねぇ。

 

 妖獣殺しとしてじゃないし、ましてやこの国の為でも、アイツの為でも無い。

 日本の剣士を代表するような思いで俺は居た。

 

 異世界最強の剣士に最強の魔剣。

 

 上等じゃねーか! きっと俺の刀の方が強い。

 そうじゃなきゃ納得が行かねぇ! 日本の剣と剣技はどの世界でも最強だ。

 俺はそれを証明する!


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