〜中央暦1639年○月□日〜
ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城
「本当ですか!?」
ここは、ハーク城内に置かれた前ロウリア王の一人娘、現ロウリア王国女王ローラの執務室。現在ここには、王国の内政を請け負う各大臣達が集まっていた。
ロウリア王国内閣府、内閣総理大臣に任命された男性リュイが報告する。
「はい。彼の国大日本帝国は、先の戦争で捕虜となった海将シャークン氏を始め、将官のみならず全ての兵士を、条件付きではありますが、返還する用意があるとのことです」
その言葉を聞いたローラは、嬉しそうに頬を綻ばせた。他の大臣達も、嬉しそうな表情を浮かべる。
それもそうだ。彼らの中には、戦争に参加して帰ってこなかった家族や兄弟がいる者もいる。帰ってきてくれるかもしれないと、期待が膨らんだのだ。
「しかし条件ですか……一体どのような条件ですか?」
大臣の一人が尋ねる。それを聞いた他の大臣達の視線が、リュイへと注がれる。
「お手元の資料13Pをご覧ください」
各々が事前に配られていた資料を手に取り、ページを捲っていくと、そこには大日本帝国側からの条件が記載されていた。
①ロウリア王国は、クワ・トイネ公国及びクイラ王国との関係改善に努めること。
②ロウリア王国は、国内に大日本帝国軍の駐留を認めること。
③ロウリア王国は、大日本帝国が新たに発足する連合組織へと加盟し、第三文明圏全体の平和維持活動に貢献すること。
④ロウリア王国は、連合組織加盟にあたり、既存の陸海空軍その他軍事組織を新編すること。その際、生産や建造等が起動に乗るまでの間、兵器や弾薬類は大日本帝国並びにクワ・トイネ公国、クイラ王国が負担する。
⑤ロウリア王国は……。
「それでは、皆さんの意見をお聞かせください」
一通り読み終えたローラが、大臣達に話しかけた。
「これはまた、なんとも……」
「他国の軍隊を招き入れることは、到底認められるものではありません」
「まぁ、土地に関しても租借と言う形ではありますが、問題はその期限です。100年というのはどうも……」
難しい顔をする大臣達。それもそうだろう。
他国の軍隊を自国に招き入れて、いい気分はしないだろう。史実の日本国でも、在日米軍基地問題等、いろいろとあったのだから。
だが中には、前向きに捉えられる者……主に若手大臣達がいた。
「現在我が王国軍は殆どが壊滅状態であり、新編事態はそこまで難しくはありません」
「兵器等は連合組織加盟国は全て統一し、補給や製造を容易にですか……まぁ、そこまで悪くはないと思われます」
「ここは、彼の国を信じてみるのもよろしいかと」
「……わかりました」
こうしてロウリア王国政府は大日本帝国側の条件を受諾。捕虜となった将兵は返還され、ロウリア王国の再建に従事することとなった。
あれから時は流れ……。
〜中央暦1639年○月□日〜
ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城
「ここも、ずいぶん変わりましたね」
ローラはリュイ総理と共に、ハーク城の窓から変わり行く街並みを眺めていた。
石畳の道は繋ぎ目のないコンクリートの道路へと代わり、石造りの家も新しく日本式の家へと立て替えられているところがちらほらと目に入る。
水道技術や電気技術も導入され、夜になれば街灯が、夜の王都ジン・ハークを明るく照らす。
他にも、新しく新編された新生ロウリア王国警備軍では、クワ・トイネやクイラにも配備されてると言う自動小銃や戦車、野砲といった機械兵器が王都の陸上警備軍基地に配備され、大日本帝国からの軍事顧問団によって実用化され始めている。
海軍は名前を海上警備軍と変え、鋼鉄製の軍船……軍艦が配備され始めていた。
先日も、新たにクワ・トイネから、カーマ級装甲艦を元に建造された装甲艦〈パンドール〉が1隻配備された。自国でも建造できるようになるらしいが、それがいつになるかはまだわからない。
流石に航空警備軍はまだ時間がかかるようだが、それは仕方がないだろう。そもそもクワ・トイネ公国やクイラ王国でもまだ航空機の数が足りないのだとか。
そして、日本側から条件として提示されていた軍の駐留だが、何とか海に面した土地を提供することができた。
そこには自国の軍港を凌駕するほどの規模の軍港が建てられるそうだ。いずれは連合組織、大東亜共栄圏の連合艦隊が拠点とするのかもしれない。
「陛下、そろそろお時間です」
「わかりました、今向かいます」
リュイの言葉を受け、ローラは最後に街並みを一眺めした後、部屋を後にするのだった。