〜中央暦1639年10月18日〜
大日本帝国 横須賀基地
大日本帝国に到着した〈グレード・アトラスター〉含む艦隊は、誘導に従い軍港へと停泊した。
「それでは行ってくる。艦長、留守は頼んだぞ」
「お任せください。お気をつけて」
ラクスタルと参謀幹部たちに見送られ、シエリアはダラスを含む数人の技術者や護衛と共にタラップを降りていく。降りた先には、青い斑模様の服を着た軍人と思われる集団に護衛された、スーツ姿の男が待っていた。
「初めまして、私は外交官の真壁と申します。ようこそ大日本帝国へ。心より歓迎致します」
「ご丁寧にどうも。グラ・バルカス帝国極東派遣団代表のシエリアです。突然の訪問を受け入れて下さり、感謝します」
まずはお互いの自己紹介から始まった。
「長旅でお疲れでしょう。ホテルの手配をさせていただきました。本日はそちらでお休みになった後、明日の朝9時より帝都東京までご案内致します」
シエリア達は真壁の案内を受け、横須賀市にあるホテルで宿泊することになった。
その日の夜、シエリアはホテルの一室にダラス達を集めて話し合っていた。
「お前達はこの国をどう見る?」
シエリアの問いに、同行した技術者が答える。
「まだ初日ですので多くは言えませんが、我が帝国の技術力を遥かに超えていることは確かでしょう。自動車の性能、道路交通インフラ、数百m超えの高層ビル群、どれをとっても我が国を凌駕してます」
「軍事力に関してですが、正直まだなんとも……我が国のグレード・アトラスターを超える超巨大戦艦を保有しているにも関わらず、巡洋艦はたった1門の主砲しか搭載していないのが気がかりです。また、港に停泊していた超巨大空母は脅威です。少なくとも、100機近く艦載機を搭載できるのではないでしょうか?」
技術者の報告を聞き、シエリアは腕を組んで考える。確かに超巨大戦艦には驚いたが、それだけで帝国の軍事力を上回るとは思えなかった。
「失礼ですが、ルナアーク様の預言が外れたということは……」
「貴様! ルナアーク様を愚弄する気か!!」
軍人の1人の発言に、ダラスが怒鳴り散らした。彼は良くも悪くも皇族盲信者である。ルナアーク様の預言は神の声であると言わんばかりの言動が目立つが、あながち間違えではないので黙認されている。
「ダラス、少し冷静になれ。そんな調子だと明日の会談に障るぞ」
「はっ、失礼しました」
「しかし、この国はつくづく不思議だ。やはりこの国も、我が国と同じく転移国家なのだろうな」
翌日、ホテルを出発した一行は新幹線と呼ばれる高速列車に乗り、大日本帝国の首都東京へと向かった。
「おぉ、何という都市だ」
「横須賀と呼ばれる都市も凄かったが、ここは更に凄いな」
車へと乗り換えたシエリア達は、東京の町並みに圧倒されながら会談の場所へと到着した。
「お疲れ様でした。間もなく担当の者が参りますので、こちらでお待ちください」
応接室へと案内されたシエリア達は、会談へ向け気合を入れ直した。そこへ、数人のスーツを着た人達が入ってきた。
「お待たせしました。大日本帝国外務大臣の国平です」
「極東派遣団代表のシエリアです」
まさか外務大臣が出てくるとは思わなかったシエリアは驚きを顔に出さないように自己紹介を行い、会談へと映った。
「我が国は貴国、大日本帝国との安全保障条約を含む、国交開設を考えております」
「そうですか。ですが、貴国と我が帝国ではかなり距離が離れておりますが…」
「問題ありません。必要とあらば、国内に貴国の租借地を作ることも視野に入れています」
「なぜ、そこまで我が国に拘るのでしょうか」
「それが、皇帝陛下の御意思であり、ルナアーク様の願いですから」
その後、大日本帝国とグラ・バルカス帝国との間に安全保障条約を初めとした各種条約の締結が行われ、更に大日本帝国側から一部通信技術をグラ・バルカス帝国へ提供され、両国間の連絡を容易化していった。