生活の方に一区切り付き、書き溜めの方も安定してきましたので、また少しづつ更新を再開しようと思います。
また、一部書き方などに変更がございますので、ご了承ください。
〜中央暦1639年11月17日〜
第二文明圏 列強ムー
大日本帝国政府がパーパルディア皇国との武力衝突に備えている頃、遠く離れた第二文明圏最強の国、列強ムーに二組の来訪者の姿があった。
一組は白地に赤丸の描かれた旗を掲げる白い船に乗ってやってきた国家、『大日本帝国』。
もう一組は、短期間で列強レイフォルを滅ぼした未知の国家、『グラ・バルカス帝国』。
謎の多い2ヵ国の来訪に、ムー国政府は非常事態宣言を発令すると同時にムー統括軍に出動待機命令を下した。
〜中央暦1639年11月17日〜
列強ムー 空軍基地アイナンク空港
技術士官マイラスは、軍を通じて伝えられた外務省からの急な呼び出しに困惑していた。
上司からは行けばわかる、とだけ説明を受けているマイラスは、通された控室で呼び出された意味を考える。
(まず思いつくのは大日本帝国とグラ・バルカス帝国だが……しかし、なぜ空軍基地に呼ばれるんだ?)
大日本帝国とグラ・バルカス帝国の船がムーに来ていることは知っているマイラスだったが、だとすれば余計に疑問が残る。
呼び出された場所は空軍基地が併設されているアイナンク空港であり、なぜ軍港ではないのか、と。
マイラスが窓辺に立ってぼんやりと考えていると、控室の扉が開かれ、3人の人物が入ってきた。
1人はマイラスの上司である人間種の男性で、他の2人は外交用礼服を来た人間種の男性だった。
「待たせたね、マイラス君……彼が技術士官のマイラス君です。我が軍1の技術士官であり、この若さにして第1級総合技将の資格を持っています」
「初めまして、技術士官のマイラスです」
慣れない笑みを浮かべて、マイラスは2人の外交官と握手を交わす。
「かけたまえ」
一同はそこそこ上等そうなソファに腰掛け、上役らしき外交官が話を切り出す。
「なんと説明しようか……今回君を呼び出した理由は、とある国の技術水準を探ってほしいのだよ」
「それは、大日本帝国とグラ・バルカス帝国のことですか?」
頷く外交官を見て、マイラスは先日のことを思い出した。
今亡き列強レイフォルの首都、レイフォリア襲撃の際に魔写(魔導写真撮影)された、グラ・バルカス帝国の超大型戦艦『グレード・アトラスター』。
ロデニウス沖海戦直後に魔写された、空母と戦艦を掛け合わせたような大日本帝国の軍艦『イセ』。
その2隻の分析を担当していたマイラスは、この時点で2ヵ国がムー以上に発達しているのではと考察していた。
更に外交官の話によると、この2ヵ国は機械動力船でやって来て、飛行機械までも実用化しているらしい。
今回は大日本帝国の飛行機械で一緒にやってきたらしいが、その飛行機械は時速380㎞と自国の最新鋭戦闘機マリン以上の速さで飛べるらしく、先導した空軍パイロットに「空戦したら勝てるか」と聞いたところ、「負けるとは思わないが、勝つのも難しい」と答えたそうだ。
「会談は1週間後に行われる。それまでの間に、我が国の技術力の高さを見せつけると同時に、両国の技術水準を探ってほしい」
「……わかりました、やってみます」
このところ情報分析ばかりだったマイラスは、久々に技術者魂が震えるのを感じた。
そして、マイラスは逸る気持ちを抑え、早足で空港東側へと向かっていった。
〜中央暦1639年11月17日〜
列強ムー ホテル
「なんという技術だ……っ!!」
本日何度目かになるセリフを呟くマイラスは、今日見た出来事を思い出していた。
まず始めに、マイラスは大日本帝国の飛行機械を調べるために格納庫へと足を運んだ。
そして、格納庫に鎮座する大日本帝国海上保安庁のヘリコプター、あきたか1号を見て冷や汗を流した。
「一体どれだけの出力が必要なんだ……こんなもの、今のムーじゃ実現は不可能だ」
空軍詰め所の応接室へ向かうマイラスの足取りは、先程と比べて重かった。
「どうなることやら……」
マイラスは内心不安を抱えたまま、大日本帝国とグラ・バルカス帝国の使節が待つ応接室の扉をノックした。
──コンコン。
「どうぞ」
ゆっくりと扉を開けると、異なる軍服を着た2人の人間種の男性と、外交用礼服と思われる服装を着た人間種の男女が出迎えた。
「初めまして。会談までの1週間、ムーをご紹介させていただきます。マイラスと申します」
出来るだけ丁重に挨拶するマイラスに、外交官と思われる男女が返答する。
「大日本帝国外務省より参りました、御園です。今回はムー国をご紹介頂けること、大変嬉しく思います。こちらは国防省より派遣された護衛の前原です」
「私は、グラ・バルカス帝国外務省より派遣された外交官のシルビアです。こちらは軍部より派遣された護衛のベック。どうぞよろしくお願いします」
文明圏外の国とは思えないほど、落ち着いた態度と丁重な言葉遣いに、マイラスは少しだけ安堵する。
「長旅でお疲れでしょうから、本格的にご案内するのは明日からとして、本日はここ、アイナンク空港をご案内した後に、首都にあるホテルへとご案内します」
そう言って、マイラスは御園たちを連れてアイナンク空港を案内した。
途中、整備中の最新鋭戦闘機マリンを紹介したところ、両者からは……。
「複翼機ですか。このレトロな感じが素晴らしいですね」
「我が国では数年前まで現役でしたので、あまり懐かしさはありませんが……いい機体なのはわかります」
との評価がされていた。
どうやら両国にとって複翼機は時代遅れの産物であり、大日本帝国にいたっては100年以上昔の骨董品の価値しかないらしい。
しかも、話を聞けば大日本帝国の戦闘機は音速を超えるようで……頭が痛くなってくる。
明日は歴史資料館と海軍基地を案内する予定となっているが、はたして両国にどれだけ反応を与えられることやら……。
「……よし、もう寝よう」
軽い現実逃避をしながら、マイラスは布団へと潜り込んだ。
〜中央暦1639年11月18日〜
列強ムー 海軍基地
早朝から移動を始めたマイラスたちは、数時間かけて海軍基地へと辿り着いた。
「ご覧ください。こちらに停泊しているのが、戦艦ラ・カサミとその同型艦であるラ・エルドです。既に旧式の艦艇に分類されていますが、依然として艦隊の主力を担っている艦艇になります」
マイラスが示す先、前弩級戦艦に分類される艦艇が2隻、停泊していた。
一行は更に進む。
「そして、こちらが我がムー統括海軍の保有する最新鋭戦艦、ラ・チエゴになります!」
マイラスが自身を持って紹介したのは、先程のラ・カサミ級よりも一回りも大きい戦艦だった。
44口径30.5㎝連装砲を背負式で4基搭載し、20㎜機銃をハリネズミのように設置したその戦艦に、御園たちは「ほぉ……」っと声を漏らした。
「弩級をすっ飛ばして超弩級かぁ。でも主砲は30㎝クラスかな?」
「魔法文明が支配するこの世界で、よくこれほどの成長が出来ましたね」
思っていたより薄い反応に、マイラスはふと報告書の内容を思い出す。
「束のことをお聞きしますが、確か貴国らも戦艦を保有していると、第3国経由でお聞きしたのですが」
嘘である。
この男、諜報員が上げた報告書で知ったのである。
「えぇ。我が国には最強と名高いグレード・アトラスターを始め、30隻以上の戦艦を保有しています」
グレード・アトラスター。
列強レイフォルを単艦で滅ぼした戦艦だけでも脅威なのに、それに近い戦艦が30隻以上も存在すると考えたマイラスは軽い目眩を感じた。
「そ……それは凄いですね……大日本帝国はどうでしょうか?」
「はい。我が国は70年以上前から現役で活躍する伊勢型戦艦と、近年建造された大和型戦艦、合計4隻を保有しています」
御園の説明に、マイラスは小さく安堵する。
いくら技術水準がムーより高くとも、戦艦の保有数が少ないなら脅威度は低いと考えたのだ。
だが、そんなマイラスの思いは破られた。
「でもあなた方にとって、戦艦の保有数なんて関係ないじゃないですか」
「えぇ、まぁだいたい戦艦の射程に入る前に、対艦ミサイルで終わりますからね」
「た、対艦みさいる?」
聞いたことのない兵器に首を傾げるマイラスに、御園が簡単に説明する。
「要は誘導式のロケット弾です。最大射程は大体200㎞前後になるので、主砲は主に自衛用として扱われます(大和型のは自衛用の域を越えてるけど)」
「に、200㎞……そ、それはとんでもないですな……」
自身の常識を逸脱した情報に、マイラスは考えるのをやめた。
「そ、それでは、次は歴史資料館をご案内します……」
一行は軍港を離れ、歴史資料館へと向かう。
〜中央暦1639年11月18日〜
列強ムー 歴史資料館
ムーのあらゆる歴史が集まる歴史資料館。
ロビーの休憩スペースを陣取り、マイラスが説明を始める。
「まず始めにお伝えすることがございます。他国にはなかなか信じてもらえないのですが、我々のご先祖様はこの星の住人ではありません」
「「え?」」
御園とシルビアの驚いた声が重なる。
「遡ること1万2千年前、大陸大転移と呼ばれる現象が起こりました。これにより、ムー大陸の殆どがこの世界に転移しました。当時の記録も、この歴史資料館に保管されています」
そう言ってマイラスは、地球儀を取り出して机の上においた。
「世界が球体であることはご存知ですよね。これは前世界の「地球だ!」……え?」
「ちきゅう?」
シルビアが首を傾げ、マイラスが驚きの表情を浮かべる中、御園は地球儀に釘付けになる。
「これは……地軸の位置が少し違うのか? む、南極大陸がこの位置にある?」
「え、えぇ。この大陸は『アトランティス』と言いまして、ムーとともに世界を二分するほどの力を持った国家でした。ムーがいなくなった今、おそらく全世界を支配していることでしょうね」
「少しよろしいでしょうか?」
御園がマイラスの解説に割って入った。
「我が国を紹介するのに、一番いい方法があります」
「はい?」
前原がバッグから2冊の地図を取り出し、御園に手渡した。
「我が大日本帝国も転移国家です。同一次元にあった星かは不明ですが、おそらくあなた方が昔いた星から転移してきたものと思われます。因みに、この4つの島が我が国になります」
御園が指差した4つの島が集まった場所を見たマイラスは、地球儀と地図を何度も見直しながら目を見開いた。
「こ、この国は『ヤムート』と言いまして、我が国一の友好国だったそうです。いや、まさかそんな……」
「我々の元いた世界にも、『1万2千年前に突如として海に沈んだ大陸がある』と、言い伝え程度ですが残されています」
御園とマイラスの視線が交差する。
「は……はは……あなた方大日本帝国とは、個人的には友好国になりたいものです……この後直ぐに、上に報告します」
「私も、同じ気持ちです」
この歴史的大発見が、後に大日本帝国とムーの関係を良い方向へと導いていくこととなる。
因みに……。
「別に……仲間はずれが寂しいとか……全っ然思ってませんけど? ……グスッ」
その後、歴史資料館の一室で、シルビアに対して必死に頭を下げる御園とマイラスの姿があったとかなかったとか。