大日本帝国召喚【リメイク版】   作:ゼロ総統

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予約投稿を忘れて、この時間の投稿となってしまいました。
ですが、これからも投稿は続けていきますので、よろしくお願いします。


第13話─列強との衝突─

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 洋上

 

 

 晴れた空、暖かく南国を思わせる積乱雲が広がり、風は殆ど無い。

 海は凪であり、海鳥たちがのんびりと浮かんでいる。

 そんな平和な海を多数の船が白い航跡を引き、南西方向に向かっていた。

 

 パーパルディア皇国『皇軍』主力第5艦隊である。

 

 中央世界を基準とすると、東側に位置する第三文明圏において、他に追従を許さないほどの圧倒的戦力。

 100門級戦列艦を含む砲艦211隻、竜母12隻、更に揚陸艦101隻を加えた合計324隻の艦隊は、アルタラス王国を滅するため、南西方面へと向かっていた。

 

「間もなく、アルタラス王国軍のワイバーン飛行圏内に入ります」

 

 水兵からの報告に、将軍シウスは海を眺めたまま頷く。

 戦略家であり冷血、無慈悲な将軍と言うのが、部下たちのシウスに対する評価であった。

 

「まだ来ぬか……対空魔振感知器に反応が出たら、竜母から100騎程を発艦させ、艦隊上空の直掩に当たらせろ。以後の指揮は各大隊長に任せるが、深追いはするな」

 

 ワイバーンを視覚外で発見するために開発された『対空魔振探知機』に反応があれば、ワイバーンロード隊を発艦させるよう指示を出す。

 

 アルタラス王国艦隊は、既に皇軍から約17㎞先の水平線に目視できる距離まで迫っている。まだ距離があるので、戦闘に突入するまでは時間がかかる。

 

 最小の被害で最大の効果を。シウスは決して敵を侮ることなく、船影の彼方を睨みつけた。

 

「対空魔振探知機に反応! アルタラス王国軍のワイバーン約120騎を探知!」

 

 レーダー員から報告が上がる。

 

「ようやくか……事前の指示通り、行動を開始せよ!」

 

 シウスの命令を受け、各竜母からワイバーンロードが発艦していく。

 

 アルタラス王国とパーパルディア皇国の初戦は、上空で始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 アルタラス王国北方沿岸警備竜騎士団

 

 

 アルタラス王国北方沿岸警備竜騎士団長のザラムは、配下のワイバーン120騎を率いて、北東方面に展開するパーパルティア皇国皇軍第5艦隊に一撃を加えるため、編隊を組んで飛行していた。

 

『全小隊に通達! 事前の指示通りに散会し、突入せよ! 各個撃破に気をつけろ! 各小隊、士長の指示に従え!』

 

 アルタラス王国竜騎士団は散会し、パーパルディア皇国皇軍第5艦隊へと向かっていく。

 

「おかしい……敵のワイバーンロードは何処だ?」

 

 異変に思ったザラムは、直ぐに気付くことができた。

 

「しまった! 上だ……ッッ!!」

 

 対空魔振探知機にかからないよう低空から近付いたことが仇となり、積乱雲に隠れてワイバーンロードが迫っていた。

 

『上空斜め後方! 太陽を背に突っ込んでくるぞ! 総員回避行動に移れ!!』

 

 咄嗟にザラムが指示を飛ばすが、既に発射体制に入っていたワイバーンロードから導力火炎弾が発射され、すれ違いざまに約60騎のワイバーンが撃墜されてしまう。

 

「畜生っ!!」

 

 ザラムは必死に食らいつこうとするが、速度差もあり追いつけない。

 それを理解しているワイバーンロード隊は、一撃を加えたら速やかに離脱し、距離を取ってから再び上昇して急降下、導力火炎弾を発射してワイバーンを撃墜していく。

 

 その後すぐにザラム自身も導力火炎弾に焼かれて絶命、僅か30分ほどでアルタラス王国竜騎士団は全滅した。

 皇軍のワイバーンロード隊の損害は、ゼロであった。

 

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 アルタラス王国海軍連合艦隊

 

 

 アルタラス王国海軍の全軍艦を掻き集めた連合艦隊を率いる海軍長ボルドは、竜騎士団の全滅を聞いて拳を握りしめた。

 

「早いな……もう全滅してしまうとは……」

 

 部下に不安を見せまいとするボルドだったが、内心は不安に満ちていた。

 

 敵は砲艦だけでも200隻を越える大艦隊に対し、こちらは連合艦隊64隻、中には旧式の手漕ぎ軍船の姿もある。

 

「大日本帝国は間に合いませんでしたか……」

 

 ボルドの隣に並ぶ参謀が、悔しそうに俯く。

 王国海軍司令本部からの話では、大日本帝国海軍の艦隊が、アルタラス王国に向かっているらしいのだが、今この場にその姿はない。

 

「本来は我が国だけで立ち向かう筈だったのだ、贅沢は言えん。それに……まだ負けたわけではない」

 

 そう諭すボルドの視線は、戦列艦の艦首に搭載された1門の大砲に向けられる。

 

 大日本帝国が各国に輸出している兵器の1つ、米式37㎜対戦車砲である。

 最大射程6.5㎞、パーパルディア皇国の保有する魔導砲を越える性能を持っていた。

 

「敵艦隊、対戦車砲の最大射程に入りました!」

「まだだ! 対戦車砲の有効射程距離まで引きつけろ! 1発たりとも無駄にはするな!」

 

 5.5㎞……5㎞……両艦隊の距離が縮まっていくにつれ、緊張が高まっていく。

 そして、その時は訪れた。

 

「敵艦隊との距離、約4㎞に到達!」

 

 兵士の報告に、ボルドは目を見開いた。

 

「全艦、撃ち方始めぇ!!」

 

 米式37㎜対戦車砲を搭載した戦列艦15隻から、37㎜砲弾が発射された。

 

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 パーパルディア皇国皇軍第5艦隊

 

 

 アルタラス王国からの砲炎は、パーパルディア艦隊からも視認できた。

 

「敵艦隊、発砲!」

「まだ4㎞も離れているぞ。何の儀式だ?」

「威嚇のつもりでしょうか?」

 

 アルタラス王国の行動に、シウスと副官は相手の意図を測りかねた。

 

 アルタラス王国が文明圏国家から魔導砲を購入しているとの情報は入っている。

 しかし、文明圏国家が製造する魔導砲の最大射程は約1㎞、こちらの半分程度しかない筈……そう考えた時だった。

 

 ドドドドーン!!

 

 複数の水柱が、味方戦列艦の周辺に立ち上がった。

 

「何事だ!」

「て、敵の砲撃です!! 敵の砲撃がここまで届きました!!」

「な、何だと!?」

 

 ありえない事態に、シウスは驚愕する。

 

 列強パーパルディア皇国の保有する魔導砲を越える大砲を、文明圏外国家であるアルタラス王国が保有している。

 その事実に、兵士たちの間に不安が広がる。

 

「せ、戦列艦〈バラス〉〈アルガード〉轟沈!!」

「戦列艦〈ワーミング〉に至近弾! 転覆します!」

 

 次々と味方戦列艦が被害を受けていく光景に、シウスは拳を握りしめた。

 

「お、おのれぇぇぇぇ!! ワイバーンロード隊は対艦攻撃を開始せよ!!」

 

 シウスの指示により、ワイバーンロード隊が敵艦隊に襲いかかる。

 

「クソっ! クソッ!!」

 

 本来は戦列艦だけでアルタラス艦隊を蹴散らすつもりでいたシウスは、悪態をついた。

 

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 アルタラス王国海軍連合艦隊

 

 

 大した防空装備を持たないアルタラス艦隊は、ワイバーンロードの放つ導力火炎弾によって次々に沈んでいく。

 

「味方損耗率、98%!!」

 

 旗艦以外の全艦が沈められたにも関わらず、ボルドの目は諦めていなかった。

 

「1発でも多く敵にお見舞いしてやれ!! 我々はまだ、負けていない!!」

 

 ボルドの激励と同時に、37㎜砲弾が発射される。

 しかし、砲弾はパーパルディア艦隊の手前に着弾した。

 

「次弾装填!!」

「海軍長! 残弾がありません!!」

 

 遂に、搭載していた37㎜砲弾が尽きてしまった。

 残るは射程の短い旧式魔導砲と、アルタラス王国が独自に開発した『風神の矢』だけである。

 

「敵艦隊転進!!」

 

 視線を向けると、パーパルディア艦隊の戦列艦が側面を向け、魔導砲の発射体制に移ったのが見えた。

 

「この距離で届くのか……皆すまない。我々は……」

「敵艦隊発砲!!」

 

 ボルドが謝罪を口にしたとき、パーパルディア艦隊から砲撃が開始された。

 いくら散布界があらがろうと、十数隻から放たれた砲弾は避けようがない。

 

(ここまでか……)

 

 迫りくる砲弾がゆっくりと見える。

 自身の最後を悟ったボルドは意識が途切れる瞬間、『ボォォォォォッ!』という力強い音が聞こえた気がした。

 

 

 


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