大日本帝国召喚【リメイク版】   作:ゼロ総統

18 / 30
過去話の一部を変更しました。
また、大日本帝国国防軍から、一般的な大日本帝国軍へと変更いたします。


第14話─アルタラス島沖事変─

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 大日本帝国海軍第4艦隊 先遣艦〈松風〉

 

 

「間に合わなかったか……」

 

 駆逐艦〈松風〉艦長の室伏は、沈んでいくアルタラス王国海軍の旗艦を見て、拳を握りしめた。

 

「艦長……」

「わかっている。本隊に連絡、アルタラス王国艦隊は全滅。これより本艦は、大東亜条約に基づき、アルタラス王国の警備行動に入る」

 

 駆逐艦〈松風〉は速度を上げていく。

 

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 パーパルディア皇国皇軍第5艦隊

 

 

「なんだ、あの船は……」

 

 警笛を鳴らし、接近してくる〈松風〉にシウスが疑問を浮かべる中、〈松風〉の姿を見た副官が若干顔色を悪くして口を開いた。

 

「し、シウス将軍! あれはおそらく、神聖ミリシアル帝国の保有する魔導船、或いはそれに近いものであると、愚考致します!」

「なんだと!?」

 

 副官の発言に、シウスは目を見開いて驚いた。

 

 神聖ミリシアル帝国とは、全世界が認める最強の国家である。

 五大列強国第1位の文明力を誇り、列強第2位であるムーでさえ、単独で戦えば勝てないだろうと言われている。

 

 そんな国の魔導船が、何故第三文明圏、それも文明圏外国家であるアルタラス王国の領海付近に居るのか。

 

 そうシウスが考えていると、魔導探知機を操作していた水兵が慌てた様子で報告する。

 

「将軍! あの船からは魔力を探知できません! あれは恐らく、機械動力式の船と思われます!」

「機械動力式……つまりムーの連中か。奴らめ、一体何を考えている」

 

 シウスは苛立ちを露わにしながら、接近してくる〈松風〉を睨みつける。

 神聖ミリシアル帝国よりも劣るとはいえ、ムーは列強第2位の位に君臨する超大国であり、パーパルディア皇国よりも格上の存在である。

 

 ムーの戦艦一隻に対して、パーパルディア皇国側は数十隻もの戦列艦を差向けねばならないと言われており、敵の規模によっては、少なからず損耗した第5艦隊では対処出来ない可能性があった。

 

 そんな時、ワイバーンロード隊を率いている竜騎士隊長から魔信が入る。

 

『不明船の後方に艦影確認! 数は11隻! あり得ない速度でそちらに向かっている!』

「クソっ! ムーの奴らめ! 我々の邪魔はさせんぞ!」

 

 接近する日本艦隊をムーの艦隊と誤認したシウスは、魔信に向かって叫んだ。

 

「ワイバーンロード隊は全騎、対艦攻撃を開始せよ! 竜母から残りのワイバーンロードを全て上げろ! 戦列艦は30隻を揚陸艦隊の護衛に残し、全艦突撃! 敵船を包囲せよ!」

 

 シウスの命令を受け、竜母艦隊から残りのワイバーンロードが次々に発艦していく。

 そして、アルタラス艦隊との戦闘で損傷した戦列艦16隻と無傷の14隻を残し、残存する157隻が日本艦隊に向け、突撃を開始した。

 

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 大日本帝国海軍第4艦隊 旗艦〈扶桑〉

 

 

 パーパルディア艦隊の動きは、先行する〈松風〉を通して旗艦〈扶桑〉へと届けられていた。

 

「所属不明艦隊、〈松風〉に向かっていきます! また、上空の所属不明機も多数、〈松風〉に向かいます!!」

 

 レーダー員の報告を受け、高嶋はすぐさま指示を飛ばす。

 

「全艦対空、対水上戦闘よーい! 本国に打電! 『我、所属不明武装勢力ニヨル攻撃ヲ受ケ、コレト交戦ス』! 以上!」

「「了解!」」

 

 高嶋の命令は素早く各所に伝達され、戦闘準備が整っていく。

 

 そして、全ての準備が完了した時、先行する〈松風〉から通信が入る。

 

「〈松風〉が交戦許可を求めています!」

「許可しなさい! 私達も、〈松風〉を援護します!」

 

 高嶋が許可を出すと、すぐさま先行する〈松島〉から複数のミサイルが発射されるのが遠目で確認できた。

 そして、〈扶桑〉を始め、〈白龍〉を除く他9隻の艦艇からも、6式対空誘導弾を始めとした各種対空ミサイルが発射される。

 

「誘導弾全弾、目標着弾まで、後10秒!」

「主砲発射用意! 本艦は全速力で〈松風〉と合流する! 最大せんそーく!!」

 

 〈扶桑〉は〈松風〉と合流すべく、最大速45ktへと増速する。

 その他の艦艇は、空母である〈白龍〉と護衛の〈追風〉〈江風〉を残し、〈扶桑〉の後を続いていく。

 

「まさか、退去勧告を行う暇もなく、攻撃を受けるとは……」

「外交官の報告だと、パーパルディア皇国は産業革命一歩手前レベルの文明力だそうよ。列強とはいえ、文明力に差があると、こういった事態が起こることも、容易に想像できるわ」

「そうですか……しかしこの数相手は、実弾演習にもってこいですなぁ」

 

 荻原の発した冗談で、艦橋内に笑いが起こる。

 その様子を見た高嶋も、薄っすらと笑みを浮かべながら注意する。

 

「そうね。あなた達も肩の力を抜いて、かつ油断することないよう、気をつけなさい」

「お任せください、司令長官殿。我々の実力、見せつけてやりますよ」

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 大日本帝国海軍第4艦隊 先遣艦〈松風〉

 

 

 本隊が現場へ急行している時、先行する〈松風〉は単艦、敵の猛攻撃を引き受けていた。

 

「航空目標10、本艦右舷より低空で接近!」

「主砲、撃ちぃ方始め! 各機関砲手! 各個に撃て!」

 

 目まぐるしく戦況が動いていく中、室伏が指示を飛ばしていく。

 〈松風〉に搭載されている25㎜近接防御火器(CIWS)2基が接近するワイバーンロードを跡形もなく消滅させ、給弾の為に停止した隙を、レーダーと連動した35㎜機関砲4基4門が埋めていく。

 更には、後方から飛んでくる対空ミサイルの支援もあり、迫りくる航空攻撃を撃退することには成功していた。

 

「航空目標、残り10機です!」

「よし! 航空目標を殲滅した後、対水上目標へと切り替える! 敵艦隊の動きは!?」

 

 室伏の質問に、レーダー員が答える。

 

「敵艦隊、本艦を半包囲するつもりのようです! 既に、敵艦隊の殆どが配置についたものと見られます!」

「流石に無視しすぎたか……対水上戦闘! 主砲、撃ち方よーい!」

 

 ワイバーンロードに向けられていた12.7㎝単装砲が、パーパルディア艦隊の戦列艦に向けられる。

 生き残ったワイバーンロードがそれに気が付き、突撃を開始するが、給弾を終えたCIWSの弾幕を前に全滅した。

 

「航空目標、全機撃墜!」

「これで上を気にする必要は無くなった! 主砲、撃ちぃ方、始め!!」

 

 〈松風〉の主砲が、パーパルディア艦隊に牙を向く。

 

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 パーパラディア皇国皇軍第5艦隊

 

 

「そんな……バカな!?」

 

 シウスは目の前で起きた出来事が信じられずにいた。

 第5艦隊の有するワイバーンロード全てを動員して行われた対艦攻撃が防がれ、逆に全騎撃墜されるなど、シウスの想像を遥かに上回っていた。

 シウスの隣に立つ副長も同じようで、顔色を悪くしながら、震える声で呟いた。

 

「まさか、そんな……シウス将軍! あれは、古に伝わる、誘導魔光弾ではないでしょうか!?」

「な、なんだと!?」

 

 誘導魔光弾……それは、古の魔法帝国と呼ばれるラヴァーナル帝国が運用していた誘導爆弾であり、神聖ミリシアル帝国でも実用化されていない超兵器である。

 

 そんな兵器が目の前で使用されたという憶測に、シウスは青ざめる。

 

「まさか……古の魔法帝国が復活したとでもいうのか!?」

 

 そんなシウスの言葉に、幹部の一人が答える。

 

「しかし、シウス将軍。敵船からは魔力反応が無いとの事ですし、もしかしたら、ムーが古の魔法帝国の遺産である誘導魔光弾をどこからか調達し、使用しているとの可能性もあります」

「そ、そうか……そうだな。その方が辻褄が合う」

 

 幹部の推測に、シウスは落ち着きを取り戻していく。

 確かに、敵船から魔力反応が無い以上、ムーの艦隊であることは間違いない。

 もしかすると、誘導魔光弾というものは、使用するまで魔力反応が出ない兵器なのかもしれない。

 

「航空支援が無くなった以上、艦隊決戦で決めるしかない……全艦、陣形を維持したまま突撃せよ! 可能であれば、敵船を鹵獲する!」

 

 ムーの軍艦を鹵獲出来れば、自国の軍事力向上に繋がると考えたシウスは、全艦に新たな命令を下した。

 

 風神の涙をふんだんに使用した艦隊は、最大速16ktにまで増速し、〈松風〉に迫っていく。

 その時、一人の幹部が〈松風〉の変化に気が付いた。

 

「シウス将軍! 敵船の大砲に動きがあります!」

「なんだと? まだかなり距離があるに、敵は何を考えているんだ?」

「さぁ……もしや、威嚇のつもりでしょうか?」

 

 シウス達が〈松風〉の動きを不審に感じていると、〈松風〉の主砲が発砲したと同時に、先頭を進んでいた戦列艦が爆発した。

 

「せ、戦列艦〈ラディア〉被弾! あぁ……沈みます!」

「なんだと!?」

 

 〈ラディア〉の方を見ると、そこには船体が真っ二つにへし折れ、水兵が海に飛び込んでいる姿があった。

 そして、火の手が弾薬庫に到達したのか、再度大きな爆発と共に、〈ラディア〉は海の底へと沈んでいく。

 

「まさか……まさかそんな!? たった1発で当てたというのか!?」

「そんな! あり得ません! そんな芸当が出来る筈は……」

 

 シウス達が狼狽えている間にも、〈松風〉の主砲が攻撃する度に、味方の戦列艦が沈んでいく。

 百発百中の射撃を目の当たりにし、シウス達は勝ち目のない戦いに挑んでしまったと後悔した。

 

「我が艦隊の損耗率、50%を超えます!!」

「ぜ、全艦離脱!! 後方の揚陸艦隊、竜母艦隊にも伝えろ! このままでは犬死だ!」

 

 シウスが撤退の指示を出した瞬間、上空から無数の破片が艦隊に降り注いだ。

 

「戦列艦〈バルト〉〈ローム〉〈ディアントロ〉轟沈!」

「今度は一体何なんだ!!?」

 

 最早泣き声に近い叫びを上げるシウスであったが、次の瞬間、彼の乗艦する戦列艦に敵の砲弾が直撃し、シウスは意識を手放した。

 旗艦が沈められた事で、艦隊は陣形を崩壊させながら、散り散りに撤退を開始するが、駆けつけた大日本帝国海軍第4艦隊の攻撃を受け、全滅した。

 

 後に、『アルタラス島沖事変』と呼ばれるこの戦いは、戦列艦181隻喪失、ワイバーンロード隊全滅という結果で幕を閉じることとなった。

 

 しかし、生き残った揚陸艦隊と竜母艦隊生存者の証言によって、パーパルディア皇国はある決断を下そうとしていた。

 

 

 

 

 

〜中央暦1639年11月24日〜

 アルタラス王国北東海域 大日本帝国海軍第4艦隊 旗艦〈扶桑〉

 

 

 パーパルディア艦隊を退けた大日本帝国海軍第4艦隊は、洋上に浮かんでいた僅かなアルタラス・パーパルディア両国の生存者を救出した後、アルタラス王国東部の軍港へとやって来ていた。

 

 アルタラス王国東部に位置するこの軍港は、将来的に大日本帝国やロデニウス大陸国家から購入した軍艦の母港とする予定であった為に拡張工事が行われており、大日本帝国の艦艇であっても問題なく寄港することが出来ていた。

 

「司令、各艦の残弾状況が纏まりました」

 

 荻原が報告書を高嶋に手渡す。

 報告書を受け取った高嶋は暫く読み進めた後に、小さく息を吐いた。

 

「やはり、〈松風〉の消耗は激しいわね」

「えぇ。敵の攻撃を一身に受けたのですから、仕方がありません」

 

 他の艦艇が3割近い消費に落ち着いている中、〈松風〉は8割近い弾薬を消費しており、補給艦を派遣するか、本国に一度帰港させねばならない状態になっていた。

 

 もし仮に、同じような戦闘が勃発した場合、〈松風〉は撃沈まではいかずとも、重大な損傷を受ける可能性もあった。

 

「……まぁ、そこは上の判断に任せるわ。それより……今は、彼らを守れたことを喜びましょう」

 

 高嶋の視線の先には、アルタラス王国の軍港に押し寄せるアルタラス王国民の姿があった。

 彼らの表情は明るく、祖国の窮地を救った日本艦隊と褒め称えている。

 

 その反面、高嶋達大日本帝国軍人の表情は暗い。

 何せ、後一歩のところで、戦友の危機に間に合わなかったからである。

 

 高嶋は艦外マイクを手に取り、静かに話し始める。

 

「この放送を聞く全ての者達に告げる。我々は当初の予定通り、アルタラス王国の存亡をかけた戦いに勝利した。しかし……我々は、祖国を護らんとその身を捧げた、誇り高き勇者達を喪った」

 

 その言葉を聞いた荻原が、悲痛そうに表情を歪める。

 確かに戦闘には勝利した。しかし、アルタラス王国海軍連合艦隊将兵の殆どが、帰らぬ人となったのも事実である。

 彼らにも家族は居ただろう。

 家族のため、愛する者のために命を散らした勇敢な戦士達。

 荻原と同じような表情を浮かべる大日本帝国軍人、そしてアルタラス王国民が、高嶋の次の言葉を待った。

 

「私は彼らの誇り高き献身に、敬意を表するものである。よって、警笛の後に1分間の黙祷を捧げるものとする。そして、胸に刻んでほしい。我々は彼らの思いを受け継ぎ、この美しきアルタラス王国を守り抜くのだと! この放送を聞く者達に告ぐ。私の思いに賛同する者は、その答えを示せ!」

 

 次の瞬間、〈扶桑〉の周囲に展開していた大日本帝国海軍第4艦隊全艦が、警笛を鳴らした。

 それに留まらず、軍港に押し寄せる民衆から高らかな歓声が響き渡る。

 艦内からも、高嶋の思いに賛同した大日本帝国軍人の雄叫びが聞こえてくる。

 

「……ありがとう……ッ警笛を鳴らせ! 黙祷っ!!」

 

 高嶋の号令と同時に、戦艦〈扶桑〉の警笛が、歓声に包まれた軍港内に響き渡った。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。