大日本帝国召喚【リメイク版】   作:ゼロ総統

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第1話─接触─

〜中央暦1639年1月1日午前8時─

 クワ・トイネ公国軍第6飛竜隊

 

 

 その日は快晴な青空が広がっていた。

 クワ・トイネ公国軍第6飛竜隊所属の竜騎士マールパティマは、相棒のワイバーンと呼ばれる飛竜を操り、公国北東部の警戒任務に当たっていた。

 

 公国の東側に国家は存在せず、青い海が広がるばかりで特に興味の引くものはないはずだった。しかし、ここ最近仮想敵国であるロウリア王国との緊張状態が続いており、軍船による奇襲が想定され、早期に探知、対策をとる為の哨戒任務として、彼は相棒を北東方面へと飛ばしていた。

 

「ん?……な、なんだあれは……?」

 

 彼は自分以外にいる筈のない空で、何かを見つけた。最初は友軍騎かと思われたが、この時間帯に近くを飛行する友軍騎はいないことを思い出す。

 

 ロウリア王国の可能性も考えたが、ロウリア王国のワイバーンでは航続距離が圧倒的に不足している。文明国以上には竜母と呼ばれる、ワイバーンを載せて運用する飛竜母艦が存在するらしいのだが、わざわざ蛮地と蔑まれているこの地にいるとは思えない。

 

 やがて距離が近付くにつれ、それの正体がはっきりと見えるようになってくる。それは羽ばたくことなく、真っ直ぐこちらへと迫っていた。

 

『我、未確認騎を発見。これより要撃し、確認を行う。現在地……』

 

 彼はすぐに通信用魔法具、通称魔力通信と呼ばれる通信方法を用いて司令部に報告する。幸いにも高度差は殆どない。

 彼は一度すれ違ってから距離を詰めるつもりでいた。

 

 ワイバーンの最高速度は時速235㎞。生物の中ではほぼ最速を誇り(三大文明圏には更に品種改良を加えた上位種が存在するらしい)、直ぐに追い付ける……そう思っていたのだが、まったく追い付けない。

 

「な…バカな!?」

 

 未確認騎の速度に驚愕し、無茶を承知でワイバーンを加速させるが、それでも追い付けない。それどころか、ぐんぐんと距離が離されていく。

 

「くそっ! なんなんだアイツは!! 司令部! 司令部!! 我、未確認騎を確認しようとするも、速度が違いすぎる!! 追い付けない!! 未確認騎は本土マイハーク方面へ進行。繰り返す、マイハーク方面へ進行した!!」

 

『落ち着いて、騎の特徴は?』

 

「白色で硬質な外装!! 巨大な翼を動かすことなく飛んでいる!! しかも速い!! このままだと直ぐにマイハーク上空に到達する!!」

 

 マールパティマは必死に魔信(魔力通信のこと)に叫んだ。すると思いが通じたのか、第6飛竜隊基地にて出撃待機中だったワイバーン12騎が、透き通るような青い空めがけて羽ばたいていく。

 

「頼んだぞ……万が一にでも攻撃を受けたら、軍の威信に関わってしまう」

 

 第6飛竜隊基地司令はそんな願いを込めて、第6飛竜隊12騎の飛び立った方角を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 丁度その頃、未確認騎改め大日本帝国国防海軍所属の92式対潜哨戒機の機内で、数人の搭乗員が先程の光景について議論していた。

 

「機長! 今の見ましたか!?」

 

「あぁ、空飛ぶ蜥蜴だなんて、まるでお伽噺の世界に来てしまったかのようだ」

 

「機長、ここはもう異世界です」

 

 彼らは空飛ぶ蜥蜴……ワイバーンを見て、改めてここが異世界であると認識した。なお異世界転移の情報は、関係省庁上層部の他、陸海空軍の佐官以上並びに空軍の偵察飛行隊各機にのみ伝えられていた。

 

「機長! 前方に都市が見えます!」

 

 地上の撮影を行っていた乗員から報告が上がる。機長が目を凝らすと、確かに都市らしき建造物が見えた、だが……。

 

「前方より未確認機! 数は凡そ12! 時速235㎞の速度で接近中!!」

 

「高度を上げるぞ! 地上の撮影が終わり次第、すぐに撤収する!!」

 

 それと同時に、多数の未確認機がこちらに向かってきている事を知り、即座に高度6,000mまで上昇した。未確認機は高度4,000m付近まで上昇してくるも、そこから上昇してくることはなかった。

 

「未確認機、高度4,000m付近を飛行中です!」

 

「どうやらこの高度までは上がれないらしいな……撮影は終わったな? これより帰投するぞ」

 

 

 

 

 

 マイハーク防衛騎士団団長イーネは、第6飛竜隊からの報告を受け、直ぐ様部下を武装させて町の四方にある監視塔に向かわせていた。

 イーネ自身も監視塔へ向かいながら、思考を巡らす。報告によれば、飛行物体はワイバーンをあっさりと置き去りにし、こちらに向かってくるようだ。

 

 一般的に、飛竜から地上への攻撃方法は口から吐く火炎のみとされている。それは、飛竜が存外、重いものを運ぶことができないからである。単騎で来るなら、攻撃されても大した被害は出ない。おそらく敵の目的は偵察と推測される。

 だが、生物の中でほぼ最速を誇るワイバーンを置き去りにするとは、敵はいったいなんなのか。

 

「来たぞーっ!!」

 

 東の監視塔に向かわせた騎士団員が、大声で叫ぶ。その直後、マイハーク上空に1騎の飛行物体が侵入してきた。

 その飛行物体は白い騎体で大きく、そして羽ばたかない翼には赤い正円が描かれている。

 

「味方だ!! 第6飛竜隊が到着したぞーっ!!」

 

 今度は西の監視塔に向かわせた騎士団員が叫ぶ。そちらの方向を見ると、第6飛竜隊所属のワイバーン12騎が、マイハーク上空に到着した。

 

「頼むぞ……っ!」

 

 イーネは第6飛竜隊の健闘を祈った……だが。

 

「な、なんだと!?」

 

 近くにいた騎士団員が叫んだ。正体不明の飛行物体が、更に高度を上げたのだ。第6飛竜隊が必死に追いかけるも、途中で上昇をやめてしまう、限界高度まで上がったのだ。

 

 イーネもこの光景に呆然とし、ただその飛行物体を見つめていた。

 ワイバーンでは辿り着けない高度まで上昇し、ワイバーン以上の速さでマイハーク上空を旋回するその飛行物体は、暫くすると満足したのか、北東方面へと飛び去っていった。

 

「いったい……何が起こると言うんだ」

 

 静まり返った空間に、イーネの呟きははっきりと響き渡った。

 

 

 

 

 

 場所は変わり、クワ・トイネ公国政治部会。

 

 国の代表が集まるこの会議で、首相カナタは悩んでいた。

 今より3日程前、クワ・トイネ公国軍の防空網をあっさりと破り、マイハーク上空に侵入してきた所属不明の飛行物体。ワイバーンでは高度、速度共に追い付くことができず、飛行物体はマイハーク上空を旋回してから去っていったという。これは明らかな偵察行為である。

 カナタは発言する。

 

「皆の者、この報告についてどう思い、どう解釈する」

 

 情報分析部長が手を挙げて発言する。

 

「情報分析部によれば、同物体は三大文明圏の一つ、西方の第二文明圏の大国、ムー国が開発している飛行機械に酷似しているとのことです。しかし、ムー国において開発されている飛行機械は、最新の物でも最高速力が時速350㎞前後との事で、今回の飛行物体は明らかに時速800㎞を超えています」

 

政治部会の誰もが信じられないといった表情を見せる。もしその飛行物体がムー国のでなかった場合、ムー国以上の力を持った国家の所属と言うことになる。

 

「しかも、ムー国までの距離でさえ我が国から20,000㎞以上離れています。もし仮にムー国で極秘に造られていた物だとしても、今回の物体がムー国のものであることは考えにくいのです」

 

 会議は振り出しに戻る、結局解らないのだ。

 

 ただでさえロウリア王国との緊張状態が続き、準有事体制のこの状態で、頭の痛いこの情報は首脳部を更に悩ませた。

 

 その時、政治部会に外交部の若手幹部が息を切らして入り込んでくる。通常は考えられない、明らかに緊急事態であった。

 

「何事か!!」

 

 政治部会の1人が声を張り上げる。

 

「報告します!!」

 

 若手幹部が報告を始める。

 要約すると、つい先程クワ・トイネ公国の北方海域に全長約200mクラスの超巨大船が現れたとのこと。

 付近を航行していた第2艦隊所属の軍船ピーマ船長ミドリが臨検を行ったところ、大日本帝国という国の特使が乗っており、敵対の意思は無いことを伝えてきた。

 捜査を行ったところ、下記の事項が判明した。なお、発言は本人の申し立てである。

 

 

 …大日本帝国という国は、突如としてこの世界に転移してきた。

 

 …元の世界との全てが断絶されたため、哨戒機により付近の偵察を行っていたところ、陸地があることを発見した。偵察活動の一環として貴国上空に進入しており、その際領空を侵犯したことについては深く謝罪する。

 

 …クワ・トイネ公国と会談を行いたい。

 

 

 突拍子もない話に政治部会の誰もが信じられない思いでいた。

 しかし、先日マイハーク上空にあっさり進入されたのは事実であり、200mクラスという考えられないほどの大きさの船も報告に上がってきている。

 国ごと転移などは神話には登場することはあるが、現実にはありえない。しかし、大日本帝国という国は礼節を弁えており、謝罪や会談の申し入れは筋が通っている。

 まずはその外交官とやらを官邸に招致することを決定した。

 

 

 

 

 

 本棚に囲まれた、小さな部屋。

 そこは歴代内閣や天皇陛下が夢の中でのみ辿り着ける、少女の部屋。

 

 部屋の中で1人、イズルは部屋中の本を引っ張り出していた。手に取った本が探している本でないと知るや後ろへと放り投げ、再び本棚から本を出していく。

 その時、1冊の本が本棚の上段から滑り落ち、イズルの頭に直撃した。

 

 頭を押さえて踞り、痛みを堪えながら落ちてきた本に視線を移すイズルであったが、その本を見た途端に痛みなど無かったかのように飛び付き、本のページを捲っていく。

 

 暫く読み進めていくと、本を捲る指が止まった。

 

 

ー……なるほど、神様も人が悪いや。

 

 

 小さく息を吐いて呟く。

 イズルは手に持つ本を本棚以外で唯一存在する机の上に置くと、部屋の惨状を見て頬を歪ませる。

 

 

ー……これ、僕がやったんだよね……はぁ。

 

 

 もう一度小さく息を吐き、イズルは本を本棚に戻す…後片付けを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




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