大日本帝国召喚【リメイク版】   作:ゼロ総統

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第19話─科学文明の怒り─

〜中央暦1640年1月20日〜

 列強ムー 首都オタハイト 王城

 

 

 列強第2位の国力を持つ大国、ムー。

 そんなムーの王城で、ムー国政府の閣僚が集まり、ある映像を閲覧していた。

 そして、全員が険しい表情を浮かべている。

 

「なんと酷い……パーパルディア皇国とは、これ程までに野蛮だったとは……」

 

 1人の閣僚の呟きに、その場にいる閣僚全員が頷く。

 内容は、皇軍兵士が日本人観光客を無差別に処刑しているものであった。

 

「最早、パーパルディア皇国との関係修繕は、諦めるべきかと」

「その通りだ。既に奴等は、我々を敵視している。ここで関係修繕などしたら、国民からの突き上げが酷いぞ」

 

 満場一致で、パーパルディア皇国との関係改善を取り止める方向へと進んでいく。

 そんな中、1人の閣僚が、映像に映ったあるもの(・・・・)を見つけた……見つけてしまった。

 

「す、すみません! 今のシーン、もう一度お願いします!」

 

 映像が巻き戻される。

 そして、改めて再生されたシーンに映ったある映像を見て、その場にいる全員が驚愕し、同時に怒りを露わにした。

 

「や、奴らめぇ! 遂に我が国の民にまで手を出しおったかぁ!!」

 

 一時停止された映像には、皇軍兵士が日本人以外の生存者……それも、国籍問わずに陵辱の限りを尽くしているシーンが映し出されていた。

 そして、その中にはムー国人と思われる女性の姿も、ハッキリと映り込んでいる。

 

 僅か一瞬のシーンであったが、これが決定的な決め手となったのは、事実であった。

 

「すぐさま統括軍に出撃準備をさせろ! 奴らが誰を敵に回したのか、思い知らせてやる!!」

「神聖ミリシアル帝国に連絡を入れろ! 我が列強ムーは永世中立を破棄し、パーパルディア皇国に宣戦布告するとな!!」

「ラ・ムー様! ご許可を!!」

 

 全員の視線が、これまで静かにしていたラ・ムーへと注がれる。

 彼は日本人観光客が処刑されている時点でかなり心を痛めていたのだが、追い打ちとばかりに自国民が被害にあっているシーンを見て、力強く頷いた。

 

「諸君の判断を支持する! ムーにとって、最善と思う行動を取ってほしい!」

「「はっ!!」」

 

 第二文明圏列強たるムーは、戦争の準備を開始する。

 

 

 

 

 

〜中央暦1640年1月20日〜

 グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ 帝王府 大会議室

 

 

 グラ・バルカス帝国帝王府でもまた、大日本帝国から提供された映像を閲覧していた。

 

「これがこの世界の列強か……はっ! やはりレイフォルと同レベルの野蛮人ではないか!」

「いや、しかし同盟を結んだムーやイルネティア王国はかなり良心的であった。やはり、全てを一纏めにして考えてはいけないぞ」

 

 そんな内容の言葉が飛び交う。

 過激派と穏健派による派閥争いが続く中、グラルークスが手を上げたことで静まり返る。

 

「諸君の言い分も理解した。だが、それよりも今は、やらねばならん事があるだろうが! シエリア! 報告せよ!」

 

 グラルークスの怒りを宿した言葉に、その場にいるほぼ全員が青ざめる中、シエリアは落ち着いた声で報告を始める。

 

「はい。先日、大日本帝国外務省の友人から得た情報によりますと、当時、フェン王国に滞在していた我が帝国の臣民が、行方不明となっている事が判明いたしました」

「な、なんだと!?」

 

 シエリアの報告に、その場にいる全員の表情が変わる。

 そして、付け加えるようにハイラスが提言する。

 

「それだけではない。映像を少し巻き戻せ。おそらくそこに、答えは有る」

 

 映像が巻き戻され、絶句する。

 ハイラスの見つけたそれは、奇しくもムーの閣僚が見つけたのと同じシーンであった。

 

「ま、まさか……帝国の臣民が、あのような目に……?」

「……可能性は、高いだろうな」

 

 悔しそうにそう呟くハイラスの発言が、大会議室内に響き渡る。

 シエリアもまた同じ女性として、思わず被害を受ける女性達から目を逸らす。

 

 それ程までに屈辱的で野蛮な行為が、映し出されているのだ。

 

 暫しの静寂の末、グラルークスが口を開く。

 

「諸君。最早これは、大日本帝国だけの問題ではない。このような蛮行を放っておいて、果たして良いのだろうか?」

 

 この言葉が切っ掛けとなり、大会議室内に怒声が巻き起こる。

 

「帝国軍を派遣しろ! 奴らを1人残らず殲滅するのだ!!」

「奴らをレイフォルの二の舞にしてやれ!!」

 

 熱気に包まれる大会議室を一望したグラルークスは満足そうに頷き、シエリアへと視線を向けて指示を出した。

 

「大日本帝国とムーに通達せよ。我がグラ・バルカス帝国は本日を持って、パーパルディア皇国に対する懲罰戦争を開始する、とな」

「はっ! 承知いたしました!」

 

 異界の大帝国たるグラ・バルカス帝国は、戦争の準備を開始する。

 

 

 

 

 

〜中央暦1640年1月20日深夜〜

 大日本帝国 帝都東京都 首相官邸

 

 

『間もなく、今村総理の緊急記者会見が開かれます』

 

 大日本帝国に大使館を置く各国の大使達は、大使館内に設置されたテレビを食い入るように見つめている。

 

 民間人を虐殺された大日本帝国が、一体どのような行動を起こすのか……注目が集まる。

 

「総理、入られます!」

 

 遂に、今村が姿を表した。

 無数のシャッター音と共にフラッシュがたかれる中、今村は国旗にお辞儀をして、演台へと上る。

 今村の表情は険しく、笑顔など微塵も見せないその姿に、ざわついた空気が一瞬で静寂へと変わる。

 

 今村はゆっくりと話し始める。

 

「皆様もご存知の通り、先日、フェン王国ニシノミヤコが、パーパルディア皇国の侵攻を受け、陥落いたしました。ここにおいて、逃げ遅れた日本人観光客約200名が捕らえられ、交渉の余地もなく、あろう事かパーパルディア皇国の非道な論理で、虐殺されました」

 

 沈鬱な表情で俯く今村に、少しだけシャッターが切られる。

 そして、今村が再び顔を上げた時、一層険しい怒りの形相を見せ、告げた。

 

「私は……私達は、このような蛮行を、断じて許すことはできません! 今回の虐殺の首謀者には! 必ず報いを受けてもらいます! そして!!」

 

 ひと呼吸おいてから、今村は声高らかに宣言する。

 

「我が大日本帝国は今日、この時を持って! パーパルディア皇国との開戦に踏み切る事を、決定いたしました!!」

 

 シャッター音が鳴り響く。

 ロデニウス大戦から僅か5ヶ月で、大日本帝国は新たな戦いへと身を投じる事となった。

 

「また、今戦争に関しまして、我が大日本帝国のみならず、同盟国であるムーとグラ・バルカス帝国が、我が陣営にて参戦するとの声明がありました事を、加えて報告させていただきます」

 

 今村の発言に、記者達は一瞬だけ沈黙し、そして再び無数のシャッターが切られる。

 この世界で確認されている科学文明国家。

 その全ての牙が、パーパルディア皇国へ向けられようとしていた。

 

 地球世界の覇者たる大日本帝国は、戦争の準備を開始する。

 

 

 

 

 

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