〜中央暦1640年1月28日〜
フェン王国 首都アマノキ沖合 大日本帝国海軍第4戦隊
パーパルディア皇国と戦争状態に突入した大日本帝国は、先ずはじめにフェン王国内のパーパルディア皇国軍の殲滅を行おうとしていた。
「司令、陸軍第12旅団の揚陸作業が完了しました。これより、我が第4戦隊はフェン王国水軍と合同で、パーパルディア艦隊との交戦海域へと向かいます」
「あぁ、わかった……だが、これはちと厳しいかもな」
的場は本国から送られてきた敵の予想戦力の数値を見て、小さく唸る。
味方戦力
・ミサイル巡洋艦 2隻
・ミサイル駆逐艦 4隻
・装甲艦(重巡相当) 1隻
・旧式駆逐艦 4隻
敵予想戦力
・魔導戦列艦 約650隻
・竜母 約40隻
・揚陸艦 約300隻
「弾数が足りないだろ。増援の話は聞いているか?」
「いえ、何も。本国の方では、フェン王国以外にも多方面に部隊を動かしているそうですので、おそらく増援は無いかと」
「不味いな……」
的場達の胸内に僅かな不安を残し、大日本帝国海軍第4戦隊とフェン王国水軍第1艦隊は、パーパルディア皇国艦隊へ向け、出撃した。
〜中央暦1640年1月28日〜
フェン王国沖合 パーパルディア皇国海軍第7艦隊
「素晴らしい……そうは思わんかね」
パーパルディア皇国海軍第7艦隊副司令長官のムスタは、眼前に広がる光景に感銘の声を上げた。
第7艦隊の他、増援として送られてきた第4艦隊と第8艦隊の艦艇群。
総数は約900隻とかなり多く、戦闘可能な魔導戦列艦だけを見ても600隻を超えている。
これ程の数が揃えば、ムー相手でも勝てるだろうという自信があった。
「艦長、我が皇国は強い! それは何故かね?」
「はっ! それは一重に、総合力が高いからです!」
「うむ、実に模範的な解答だ。だが、我が海軍ではこう答えるのだ」
それは、最強の竜母艦隊があるからだッ!!
「……とな。制空権を制する者が、制海権も制地権も制するのだ……最も、これは受け売りだがな」
「なる程、実に先進的な考え方であります!」
艦長の言葉に気分を良くしたムスタが竜母艦隊へと視線を向けた時……。
「ん? ……なんだ、あれは」
ムスタは高速で迫りくる槍状の何かを見つけた。
その何かは一度上昇すると、先頭を航行する竜母〈メズズ〉目掛けて突っ込んでいく。
刹那、巨大な爆発が〈メズズ〉を包み込む。
「な、何だ!?」
「何かが〈メズズ〉に命中したぞ!」
「敵の攻撃か!?」
突然の出来事にムスタ達が狼狽する間にも、先ほどと同じなにかが竜母へと突き刺さっていく。
「竜母〈ガズム〉〈レントン〉轟沈!!」
「馬鹿な……パーパルディア皇国海軍最強の竜母艦隊が、こんなあっさりと……ッ!!!」
次の瞬間、ムスタの乗艦する竜母〈メノール〉に、大日本帝国海軍ミサイル駆逐艦〈桜風〉の放った10式対艦誘導弾が命中し、ムスタの意識を刈り取った。
「竜母艦隊、全滅ッ!!」
「今のは一体何なんだ!?」
虎の子の竜母艦隊が敵と会敵する前に全滅するという事態に、動揺が広がる。
今回、3個艦隊の総司令長官に任命されたレギルドもまた、己の目を信じられないでいた。
「ゆ、誘導魔光弾だと!? 何故フェン王国如きが、古代兵器を保有しているのだ!!?」
「レギルド司令! 我々はどうすれば……」
副官の言葉でレギルドは我に返り、一度深く深呼吸をする。
ここでトップが動揺すれば、その下で動く兵士達にも悪影響が出てしまう。
それだけは避けねばならなかった。
「おほん……落ち着くのだ。確かに敵が誘導魔光弾を保有していた事には驚いたが、だがそれ程数はないのだろう。現に、狙われたのは竜母のみであり、魔導戦列艦の被害はゼロだ」
「い、言われてみれば……」
竜母が全滅したことは痛いが、それでも魔導戦列艦約650隻は無傷で残っている。
例え誘導魔光弾がまだ残っていたとしても、これ程の大艦隊を撃破する数はないだろう。
まだ勝機はある。
そして、遂に待ちかねた報告が飛び込んでくる。
「レギルド司令! 前方に艦影多数! 敵艦隊と思われます!」
「来たか!!」
部下の示す方角を見ると、確かに艦影のようなものが見えてくる。
それらはパーパルディア皇国の魔導戦列艦よりも大きく、まるで要塞が浮かんでいるのではと錯覚させられる。
しかし、その数はたったの11隻と、圧倒的に少ない。
例え、単艦性能が高くとも、物量差でゴリ押し出来るだろう。
「全艦突撃! 敵艦隊を包囲し、殲滅せよ!! 直掩のワイバーンロードも全て向かわせろ!!」
レギルドの命令を受け、既に上空へ上がっていたワイバーンロード200騎が、敵艦隊に向かっていく。
それに続くように、風神の涙を帆いっぱいに受けた魔導戦列艦が、約16ktの速度で前進する。
レギルドは勝利を確信していた。
〜中央暦1640年1月28日〜
フェン王国沖合 大日本帝国海軍第4戦隊
竜母艦隊に先制攻撃を与えた大日本帝国海軍第4戦隊は、フェン王国水軍第1艦隊に合わせて30ktの速度で前進していた。
「敵艦隊を視認! また、敵航空目標200、向かってきます!」
「対空戦闘! 6式、撃ちぃ方始め!」
的場の指示で、第4戦隊所属艦艇から次々に6式対空誘導弾が発射されていく。
時速350㎞程度の速さで飛ぶワイバーンロードでは6式対空誘導弾を回避することなど出来る筈もなく、次々に命中してはその数を減らしていく。
「やはり数が多いな……敵艦隊の様子はどうだ!?」
「はっ! 敵艦隊、こちらを包囲する動きを見せています! 敵艦隊との距離、約15,000!!」
「敵航空目標、約30がフェン王国艦隊に向かう!」
「いかん! そちらを優先して攻撃しろ!」
直ぐに的場が指示を飛ばすが、少しばかり遅かった。
一応、フェン王国艦隊にも対空能力は備わっているが、まだ練度が低いこともあり、13騎を撃墜したところで導力火炎弾の発射を許してしまった。
大半の導力火炎弾が海上に着弾する中、1発が駆逐艦〈水剣〉に被弾する。
「〈水剣〉被弾! 火災発生!」
「これ以上撃たせるな! 短SAM、撃ちぃ方始め!!」
その後、直ぐにフェン王国艦隊へと向かったワイバーンロード全てを撃墜することに成功したが、今度は第4戦隊へとワイバーンロードが殺到する。
だが、相手が悪かった。
「CIWS、AAWオート! 機関砲、撃ち続けろ!」
主砲や短SAMの防空圏を突破したワイバーンロードは、CIWSと35㎜機関砲の弾幕に絡め取られ、全滅した。
「敵機、全機撃墜!」
「これからが本番だ! 対水上戦闘! 主砲、撃ちぃ方始め!!」
続けて、〈長良〉の主砲が魔導戦列艦へと向けられ、火を吹く。
更に距離を縮められ、現在の相対距離は8㎞と近付いているが、それは逆に、大日本帝国のみならずフェン王国艦隊でもほぼ必中を出せる距離となっていた。
「我々も続けぇ! 祖国を護るのは、我々フェン王国水軍だ!!」
「「おぉぉーッ!!」」
〈長良〉や他の大日本帝国艦艇に続くように、フェン王国艦隊も攻撃を開始した。
20.3㎝砲弾が、12.7㎝砲弾が、35㎜機関砲弾が、25㎜機関砲弾が、12.7㎜機銃弾が、パーパルディア艦隊へと殺到する。
文字通り、持てる力全てを使った攻撃に、パーパルディア艦隊は急激にその数を減らしていく。
だが、それも長くは続かなかった。
「〈由良〉、給弾作業に入ります! また、〈華風〉は残弾が少なく、この後の指示を求めています!」
「〈剣王〉が先行し過ぎです! このままでは、敵艦隊の砲撃に晒される危険が!!」
「司令ッ!!」
艦長の悲鳴に近い声に、的場は答えられずにいた。
敵の数は少なくなったとはいえ、それでもかなりの数が未だに残っている。
ここで取り逃せば、フェン王国首都アマノキは壊滅的被害を受けてしまう可能性があった。
的場は悩む。
(どうすればいい。ラムアタックでも仕掛けるか……いや、現代艦の装甲でそれは不可能だ。それに、それでは部下にも被害が……)
こうしている間にも、味方から次々に報告が上がっていく。
乗艦する〈長良〉も弾薬が残り僅かとなり、これ以上の交戦は出来ないと全軍に撤退を指示しようとした、その時だった。
「レーダーに艦影確認! これは……ッ!? クワ・トイネ艦隊ですッ!!」
「な、何ぃぃッ!!?」
予想外の報告に、動揺が走る。
何故クワ・トイネ公国の艦隊がこの海域にいるのだろうか。
クワ・トイネ艦隊から通信が入る。
『こちらは、ロデニウス連合艦隊である。大日本帝国の要請により、我が艦隊はパーパルディア艦隊との戦闘に突入する』
「ろ、ロデニウス連合艦隊?」
的場がレーダー員に視線を向けると、レーダー員は直ぐ様訂正する。
「し、失礼しました! 確かに、クワ・トイネ公国の他にも、クイラ王国、ロウリア王国の艦艇も確認できます!」
「そ、そうか……いや、これは好機だ! ロデニウス連合艦隊に通達! 敵航空戦力は殲滅した。心置きなく攻撃してほしいと伝えろ。全艦、後の事は気にせず、残りの砲弾を全て叩きこめ!!」
「「了解ッ!!」」
大日本帝国海軍第4戦隊全艦艇は、攻撃の勢いを強めていく。
〜クワ・トイネ公国海軍第1艦隊〜
「お前ら! 〈サナイク〉の初陣だ! ド派手な戦果を挙げてやれ!!」
「「了解ッ!!!」」
遂に配備された戦艦〈サナイク〉の35.6㎝連装砲4基8門が火を吹く。
〜クイラ王国海軍混成艦隊〜
「野郎ども! パーパルディアの奴等に、俺達の底力をぶつけるんだ!!」
「「応ッ!!!」」
軽装甲艦、駆逐艦から必殺の酸素魚雷が発射され、パーパルディア艦隊目掛けて突き進む。
〜ロウリア王国海上警備軍竜母機動部隊〜
「ワイバーン隊、全騎発艦せよッ! 敵艦隊を殲滅するッ!!」
「「オォォーッ!!!」」
竜母4隻から次々にワイバーンが発艦していき、竜母と直掩を失ったパーパルディア艦隊に殺到する。
突然のロデニウス大陸国家の乱入は、パーパルディア艦隊に大きな衝撃を与えた。
「ロデニウス連合艦隊だとッ!? まさかムーは、ロデニウスの蛮族共まで味方につけたというのか!?」
「司令! 我が方の損耗率が80%を超えます! 揚陸艦隊の方も……このままではッ!!」
目の前で魔導戦列艦が、ワイバーンの導力火炎弾を受けて炎上するのを見て、レギルドは決断を下す。
「て、撤退だ……全軍撤退ッ!! この戦、我々の……」
「敵騎直上ーッ!!!」
艦隊に撤退を命令しようとした時、見張り員の叫び声で空を見上げる。
そこには、導力火炎弾の発射体制を取るワイバーンの姿があった。
次の瞬間、放たれた導力火炎弾が艦隊総旗艦〈ガルシア〉へと命中し、レギルドは意識を永遠に手放した。
パーパルディア皇国と大日本帝国、フェン王国の間で始まった海戦は、ロデニウス連合艦隊の介入により、パーパルディア皇国艦隊全滅という結果で、幕を閉じた。
3個艦隊所属の戦列艦隊、竜母艦隊、揚陸艦隊全てを失ったパーパルディア皇国であったが、彼等の苦難は、まだ始まったばかりである。
〜おまけ(?)〜
〘ロデニウス連合艦隊〙
■クワ・トイネ公国海軍第1艦隊
戦艦 1隻
装甲艦 3隻
軽装甲艦 4隻
駆逐艦 8隻
■クイラ王国海軍混成艦隊
軽装甲艦 8隻
駆逐艦 12隻
■ロウリア王国海上警備軍竜母機動部隊
竜母 4隻
軽装甲艦 4隻
駆逐艦 12隻