全てのプロローグ
希望の光。
創られし希望は、未だ微睡む。
この世界は、愛と平和には程遠い。
雑音を消すは、戦姫の歌。
歌でしか世界を救えないと紡いで。
【戦姫創造シンフォギア】
◇
満月に惑う、月華の劔。
雑音を切り払いて、唄う。
【絶刀・天羽々斬】
首掛けの青色の髪が一房揺れる。
戦の場に、咲き乱れる一輪の花。
雑音は、それを天敵と見做した。
天敵には、執拗なる攻撃を。それが雑音の思考回路。
しかし、考えが至るまで遅かった。
攻撃とは苛烈であり、鮮烈な一撃こそが足り得る。
戦姫は飛び上がり唄う。
【千ノ落涙】
上空から降り注ぐ劔の雨。
その一つ一つが殺意を持ち、雑音を消す。
およそ千の涙が落ちた跡には、一つも雑音は残ってはいない。
戦姫は終わった戦場に降り立つ。
高速道路のアスファルトは、溶けて独特な匂いを発している。
辺りに満ちるは雑音の死骸である、灰のみ。
戦姫はその戦の場を後にする。
自分だけが防人と信じて。
灰が舞う、月光が満ちる世界で。幾千の劔は鈍く蒼く紅く輝く。
◇
私は拠点へと戻ってきた。
司令室には、図体の大きい赤髪の男性が椅子に座りモニターを睨んでいた。
私に気づいた男性は、戦姫の方へ椅子を回転させる。
「任務ご苦労。夜中に済まないな、翼」
「いえ、叔父さまこそ何をなさっているんですか?」
私はモニターを覗く。
そこには、私ともう一人の戦姫が映っていた。
「解析だ。二度とあんな惨劇を繰り返す訳にいかないからな」
男性は再生のボタンを押す。
すると映像の時が動き出して、過去が再現されていく。
【Are you Ready?】
元々会場らしき場所は地面が捲り上がり、姿も形もない雑音だけが蔓延る唄う戦場でそれは場違いな音声だった。
一人の戦姫。オレンジ色のロングヘアーが特徴的な、一振りの槍を構える人物が音声に一足早く反応する。
「誰だ! 出て来い!」
「奏......っ!」
言葉に反応したのか、雑音を吹き飛ばしながら謎の怪人は戦場に降り立つ。二人の戦姫に向かって鷹のようなトンプソン機関銃らしきものを構える。
【シュワっと弾ける! ラビットタンクスパークリング! イェイイェーイ!】
「......君達は誰だ?」
怪人の仮面の中から、男の声が聞こえてくる。
明らかに声色は暗く、疑っている感じだった。
怪人の質問にオレンジ色の戦姫が言葉を掛ける。
「先ずは、私の質問に答えるんだな。理髪店のポールみたいな色しやがって」
「理髪店って......あー確かに、まぁ、こちら側から名乗るのが筋ってものか。俺の名はビルド、作る形成するのビルドだ。以後お見知り置きを」
怪人はビルドと名乗り、武器を下ろす。
しかして、もう一人の戦姫は槍をビルドに向けたまま言葉を続ける。
「あんた、相当なお人好しだな。それで信用されたと思っているのか? 」
「奏! 何を!」
ビルドと呼ばれた怪人に向かって突貫するもう一人の戦姫。
怪人は人間離れした反射神経と跳躍力で宙返りをして回避する。
戦姫が持っていた槍の矛先は雑音を突き刺していた。
今になって思えば、試したという事。
戦場で敵に背後を狙われるというのは日常茶飯事であり、それを咄嗟に対処するというのは戦い慣れている証明。
彼らはこの短時間でそれを理解したという事だった。
「やっぱり、面白い。アタシの名前は
天羽奏と名乗った戦姫は、槍を回転させて旋風を巻き起こし周囲の雑音を塵屑当然に消していく。
「Yesだ。このビルドを舐めるなよ!」
腰についた機械からドリルを呼び出して、その刃を回転させる。
撫で斬り、貫き、薙ぎ払う。その力強い動作で雑音を消していくビルド。
そして、
【Ready go!】【Vortex Blake!】
ビルドが赤色のボトル型アイテムをドリルの鍔に差し込み、破壊力を高めた武器を振るい、雑音をざっくばらんに滅していく。
その破壊力が高すぎたのか、映像を映す機械は壊れた。
映像が終わったのを確認した赤髪の男性は、映像を映すウィンドウを消して他の映像の一部をくり抜いた画像を数枚映す。
一つは、クリーム色のトレンチコートを着た男性がライブを観ている画像。
一つは、先程の鷹の意匠を用いた機関砲を持ち、雑音に攻撃を仕掛けている画像。
一つは、二つの分割された歯車に挟まれてる男性の姿。
「2年前、彼がビルドとして戦っている姿を我々は初めて目撃した。シンフォギアでなければ倒せないノイズを、未知の技術を使うことで倒してしまう快挙を成し遂げた」
赤髪の男性はこれまで分かっていた情報の再整理を始める。
私にはもう何度も聞いた考察だった。
私の興味は薄れていた、彼はビルドとして現れたのはこれが最初で最後だったから。
あの出来事の後、雑音討伐を私一人が背負うことになった一因だ。
憎むことはない、ただ無責任にも程があると落胆していた。
「彼の情報は、一つもないのでしょう。なのに、繰り返し繰り返し情報が磨耗しきるまで見て何になるというのです」
私は赤髪の男性へ問う。
これ以上は無意味なのではないかと。
探したところで見つかるのは虚無であり、喪ったものを取り戻そうとする醜態を晒すなど見ているだけで虫唾が走ると。
「彼は、ビルドは、英雄気取りの自己陶酔者です。私は彼を同じ志を持つ仲間だと思いませんから」
答えも聞く間も無く踵を返し、休憩室へ歩く。
一歩一歩が僅かに重く、その重みが自分に課せられた使命だと私には感じられていた。
◆
File67 『ノイズとシンフォギア』
世間一般的に、ノイズと呼ばれるものが世に憚っている。
ノイズを一言で言うならば、生きる自然災害。
どこで発生するのか、まだ原理など分かっていない。
分かっていることは、人間を殺す対処不可能な兵器ということだ。
ノイズは、ある一定の範囲に居る人間を積極的に殺す。
殺害方法は単純だ。触るだけでいい。接触するだけでノイズ共々、人間が炭に変換されて殺される。
攻撃して抵抗すればいいという声もあるが、彼らには位層差障壁という絶対的防御を持っている。ノイズとこちらの次元がずれてすり抜けているということだ。
詳しく説明すれば、どっかの馬鹿が理解不能になるからここまでにしよう。
ま、攻撃が当たらないということ、もし当たっても微妙なものだ。
で、そのノイズに対する策ってのもある。
シンフォギア。正式名称FG式回天特機装束。
独自調査によれば櫻井良子氏が提唱した、「フォニックゲイン理論」の元設計された対ノイズ兵器。
基本的に聖遺物と呼ばれる、過去の凄い神秘的なものに適合する女性の人間が聖詠という起動キーを元に纏うものらしい。
因みに、俺が出会った槍と刀の二人のシンフォギア装者は、「ガングニール」「アメノハバキリ」の聖遺物だ。
ここまで調べるのにも時間がかかった訳だし、政府のデータベースにハッキングして潜り込むなんてことをしなければならなかった。
犯罪行為は二度とごめんだな。
......今回は、もうこれぐらいでデータを纏めておこう。
あれから、2年という月日が流れている。
俺はまたこの新世界を救うために戦う。
その為に、ビルドにはあるものを搭載しなければならない。
「シンフォニックトリガー(仮)」
ハザードトリガーの骨子を使った拡張型装置。フルボトルとの適合実験を越えれば、実戦投入出来るだろう。
レポート作成者 桐生戦兎